121 / 145
第26話:短期留学
【121】短期留学(6)
しおりを挟む
お会計を済ませて外に出ると、緑のスカーフを巻いた厳つい男の人達が、お店の周りでたむろしていた。
男の人達は、まるで私達を品定めするかのように、ジロジロと見つめてくる。
その視線が、なんだか不気味で怖い。
「なんでよりによってコイツらがいるのよ。....みんな、お店の中へ逃げてて!」
マイクさんの言う通りに、お店へ戻ろうとすると、お店の中から緑のスカーフを巻いた男の人が出てきて、入り口を塞がれた。
「もしかして、この人達って...!」
「ジャンクグリーンっていうチームの奴らよ。よりによってコイツらが絡んでくるなんて!」
すると奥から、全身にタトゥーの入った周囲より一回り大きい男性が現れた。
「アイツがジャンクグリーンの総長よ。」
その男性は舌なめずりをして、私達のことを上から下までじっくり見つめてきた。
「へぇ~♪例の勇者のガキの連れ、なかなかの上玉じゃねえか。こいつは高く売れそうだけど、その前に野郎ども!コイツらでちょっと遊びたくねえか?」
総長の男性に賛同するかのように、周りの男性は雄叫びをあげた。
その光景に、私は恐怖と嫌悪が相まって、全身に鳥肌が立った。
「アイツらはカラーギャングの中で一番最低な連中よ。女性を襲うのは日常茶飯事だし、女性を脅して無理矢理風俗で働かせたり、攫って性奴隷として売ったりしているの。」
マイクさんの説明を聞いて、余計に嫌悪感が増して周りを囲う男の人達から離れたくなった。
「あぁ~、でもそこのチビはいらねぇや。誰かガキでもイケるって奴はいるか?」
総長の男性の問いに、周りのメンバーの人達は、まるでマイクさんを馬鹿にするかのように大笑いしながら『いないッス』と否定した。
「なら良かった。こっちもアンタらみたいなクズはお断りだから。3人とも、バリアを張ったから、そこから出ちゃダメよ。」
えっ、バリア?どこに?
周囲を見てみると、足元に魔法陣が浮き出ているのに気がついた。
もしかして、バリアってコレのこと?
マイクさん、いつの間にこんな魔術を使ったの?
「この3人がどうしても欲しいのなら、私を倒してからにしなさい。」
そう言って、マイクさんはジャンクグリーンの人達に攻撃を仕掛けた。
彼らの足元に魔法陣が浮かび上がると、彼らはまるで地面に引き寄せられるように、その場で倒れた。
「クソッ!」
「何だコレ!」
「過重力よ。アンタ達の周りだけ重力を強めにしたの。って言っても、馬鹿には理解できないでしょうけどね。」
凄い。
これだけの数の相手を、一瞬で倒しちゃうなんて。
それでも総長を含む何人かは、魔術に抗って立ち上がった。
「...生意気なことするじゃねえか、このクソガキが。」
「へぇ~、過重力から抜け出せるんだ。クズの集まりとはいえ、一応総長をやるだけはあるわね。」
総長は根性で魔法陣の外へ出ると、瞬時にマイクさんに襲いかかる。
でもその攻撃は、マイクさんには当たらない。
というより、マイクさんの身体を通過するものの、触れることができない。
「ふ~ん、アンタ、普通に戦えばそれなりに強そうね。でも無駄よ。だって私、今透明人間だもの。」
そして総長を指差しながら、魔法を放った。
「疾風弾。」
マイクさんの指から、小さな竜巻みたいな風が出てきて、総長に向かって放たれた。
それが総長に当たると、総長は勢いよく吹っ飛んで、そのまま気絶した。
「マイクさん、凄いわ!ジャンクグリーンを一瞬で蹴散らしちゃうなんて!」
「いやぁ~。それほどでも、あるけどね!」
マイクさんは褒められて照れ笑いをしている。
「正直、マイクさんは小柄なのにカラーギャング相手に戦えるのかな?って思ってたわ。ごめんなさい。」
「いいのよいいのよ。私がコイツらを倒せるのは魔法と魔術のお陰だしね。それにカラーギャングの奴らって、大抵は学がないから、力任せの攻撃しかしてこないのよね。だからさっきみたいな、魔術の知識をちょっと応用した程度の攻撃でも簡単に倒せちゃうの。」
さっきの攻撃が『ちょっと魔術を応用した程度』?
あんな魔術、どうすれば書けるのか私には到底想像できない。
授業の時も感じたけど、ヒノモト魔術学園の人って魔術の技術が凄いなぁ。
感心していると突然、後ろから誰かに抱きつかれて身動きが取れなくなった。
「嫌っ!」
いきなりの出来事にパニックになる。
後ろを振り返ると、私を拘束しているのはジャンクグリーンの男性だった。
何で?マイクさんのバリアで守られていたはずなのに。
足元を見てみると、私はマイクさんのバリアから少しはみ出ていたみたい。
私を捉えたジャンクグリーンの男性は、私の首にナイフを突き立て、マイクさんを脅した。
「おいテメェ!動くんじゃねえ!この女がぶっ殺されてもいいのか?!」
「.....チッ!」
マイクさんは私のせいで魔術が使えず、舌打ちをして悔しそうに男性を睨みつけていた。
「そうそう。聞き分けがいいじゃねえか。少しでも怪しい動きをしたら、すぐ殺すからな。」
マイクさんの顔に焦りの色が見える。
せっかくバリアまで作ってくれたのに足手纏いになってしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
すると突然、頬に生暖かくてヌメヌメとしたものがスッと通った気がした。
それが男性の舌だと気づいた時、吐き気を催すような気持ち悪さに、声にならない叫びが出た。
「へへへ、ブルブル震えて可愛いじゃねえか。後でたっぷり可愛がってやるぜ。」
嫌っ!
この後に起きることを想像しただけで、悍ましくて涙が出そうだ。
身の危険を感じた私は、咄嗟に、特殊魔法を発動させた。
「なぁっ?!」
男になれば襲われずに済む。
そう思って変身したところ、私を拘束していた男性は怯んで手を緩めた。
今がチャンスだ。
私は男性の手を掴んで拘束を解こうとした。
だけど男性はすぐに正気に戻り、再び私の手を掴んで捕まえようとした。
男になったお陰で力負けすることはないものの、このままじゃ振り切れない。
それなら。
私は、特殊魔法で男性を女性にした。
そして相手が驚いているうちに、強引に手を離してマイクさんのところへ逃げた。
「ライラちゃん、ナイス!」
マイクさんはすかさず、ジャンクグリーンの人に魔術を使って、気絶させた。
「ふぅ、これで一安心だね。」
私はジャンクグリーンの人達が倒れていることを確認すると、性別を元に戻した。
「ねぇ、ライラちゃん。さっきの魔法は一体、なに?」
「さっきの魔法、私の特殊魔法なの。」
考えて見れば、今まで自分も含めて『性別を変えたい』って思ったことは一度もなかった。
けど、まさかまた使う機会があるなんて思いもしなかったな。
「性別を変える特殊魔法ってこと?」
「うん。」
するとマイクさんは私の手を握って、目を輝かせながら見つめてきた。
「その魔法、素敵!ねぇお願い!私、ずっと女の子になりたかったの。よければその魔法で女の子にしてくれない?」
こんなお願いをされたのは、お兄ちゃん以来だ。
お兄ちゃんに『フレイくんを女にしろ』とか『女湯に入る時だけ女にしてくれ』とねだられた時は、心底気持ち悪いと感じた。
でもマイクさんのお願いは全然嫌悪感が湧かないし、むしろすんなり聞き入れられる。
私は魔法で、マイクさんを女の子にした。
でも幼い見た目だからか、ぱっと見では変化がみられない。
「さっき特殊魔法を使ってみたよ。ちゃんと変わっているかな?」
「えっ、本当?!」
マイクさんは慌てて後ろを向き、パンツの中を確認する。
「本当に女の子になってる...!やったー!ありがとう、ライラちゃん!」
マイクさんは満面の笑みで、私にハグをした。
魔法を使って、こんな風に感謝される日がくるなんて思わなかった。
私の魔法で喜んでくれる人がいるんだ。
ちょっと嬉しいな。
「ところでマイクさん。彼ら、どうしますか?」
アリーシャさんは倒れているジャンクグリーンを警戒しながら、心配そうにマイクさんに尋ねた。
確かに、今は倒れているからいいけれど、後日また出くわしたら嫌だな。
しかも今日のことを根に持たれて、報復に来られたら怖い。
「そうねぇ。私、前々からコイツらにしたかったことがあるの。」
「それって、なんですか?」
「去勢よ。」
「えっ!去勢?!」
「コイツらにはソレが妥当よ。だってジャンクグリーンの連中って、全員もれなく性犯罪者だもの。か弱い女の子を泣かせる性犯罪者は、死刑か去勢をすべきだわ。」
死刑か去勢かって、ちょっと極端だな。
「私もその意見に賛成!ライラちゃんを襲おうとした罪、万死に値するわ!」
カタリーナちゃんも、怒りで声を荒げてマイクさんに同調した。
「ちなみに私の特殊魔法は『圧縮』といって、小さいものであれば圧縮して潰せるの。だから彼らの彼らのアレだけを潰すなんて、朝飯前よ。」
爽やかな笑顔でそう話すカタリーナちゃんは、どこか怖い。
「ですが、そんなことをして万が一にでも死ぬようなことがあれば、罪に問われてしまうのではないのでしょうか?」
「大丈夫よ。カラーギャングすらまともに取り締まれない衛兵達が、私達にどうこう言えるわけないじゃない。」
「ですが....。」
「もっと穏便な方法は、ないのかな?」
「そうは言ってもねぇ。.....あ!そうよ!」
するとカタリーナちゃんは、私の両肩を叩いた。
「ライラちゃんの特殊魔法を使えばいいじゃない!」
「え?私の?」
「さすがに女にしたら、もう女の子を襲うこともないだろうしね。それに、私がアレを潰すより、よっぽど穏便じゃない?」
「それはそうだけど...。」
ヒトの性別を勝手に変えるのは流石に良くない気がする。
でも、ここで断ったら、カタリーナちゃんが本気で強引に去勢しそうだ。
.....潰されて痛い思いをするよりかは、マシだよね?
私は自分に言い訳をしながら、その場にいたジャンクグリーンの人達を、全員女の子にした。
「これできっと、彼らも悪いことしないよね?」
「さぁ。根っこがクズだから、性格は変わらないんじゃないかしら?それでも、コイツらに襲われて泣く女の子は、もういないと思うわよ。」
マイクさんは総長の男性...いや、女性に近づいて、耳を引っ張って大声を出した。
「おーい!今度から風俗で稼ぎたかったら、自分たちの身体を売りなー!」
それだけを言うと、マイクさんは総長の女性をそのまま放置した。
「それじゃ、帰りましょうか。」
「えっ、このまま放置して大丈夫なの?」
「今日のところは大丈夫でしょ。それに後日報復に来るとしても、きっとあなた達じゃなくて私のところに来ると思うから安心して。」
それはそれで、マイクさんに悪い気がする。
「とにかくもう夜だし、さっさと帰らないと学校の食堂が閉まっちゃうわよ。」
「それもそうね。急いで帰りましょう。」
心配な部分はあるけど、これ以上考えても仕方がない。
とにかく、今日は色々あって疲れたし、早く帰ろう。
私達は最寄りのテレポーターから、ヒノモト魔術学園へ戻った。
男の人達は、まるで私達を品定めするかのように、ジロジロと見つめてくる。
その視線が、なんだか不気味で怖い。
「なんでよりによってコイツらがいるのよ。....みんな、お店の中へ逃げてて!」
マイクさんの言う通りに、お店へ戻ろうとすると、お店の中から緑のスカーフを巻いた男の人が出てきて、入り口を塞がれた。
「もしかして、この人達って...!」
「ジャンクグリーンっていうチームの奴らよ。よりによってコイツらが絡んでくるなんて!」
すると奥から、全身にタトゥーの入った周囲より一回り大きい男性が現れた。
「アイツがジャンクグリーンの総長よ。」
その男性は舌なめずりをして、私達のことを上から下までじっくり見つめてきた。
「へぇ~♪例の勇者のガキの連れ、なかなかの上玉じゃねえか。こいつは高く売れそうだけど、その前に野郎ども!コイツらでちょっと遊びたくねえか?」
総長の男性に賛同するかのように、周りの男性は雄叫びをあげた。
その光景に、私は恐怖と嫌悪が相まって、全身に鳥肌が立った。
「アイツらはカラーギャングの中で一番最低な連中よ。女性を襲うのは日常茶飯事だし、女性を脅して無理矢理風俗で働かせたり、攫って性奴隷として売ったりしているの。」
マイクさんの説明を聞いて、余計に嫌悪感が増して周りを囲う男の人達から離れたくなった。
「あぁ~、でもそこのチビはいらねぇや。誰かガキでもイケるって奴はいるか?」
総長の男性の問いに、周りのメンバーの人達は、まるでマイクさんを馬鹿にするかのように大笑いしながら『いないッス』と否定した。
「なら良かった。こっちもアンタらみたいなクズはお断りだから。3人とも、バリアを張ったから、そこから出ちゃダメよ。」
えっ、バリア?どこに?
周囲を見てみると、足元に魔法陣が浮き出ているのに気がついた。
もしかして、バリアってコレのこと?
マイクさん、いつの間にこんな魔術を使ったの?
「この3人がどうしても欲しいのなら、私を倒してからにしなさい。」
そう言って、マイクさんはジャンクグリーンの人達に攻撃を仕掛けた。
彼らの足元に魔法陣が浮かび上がると、彼らはまるで地面に引き寄せられるように、その場で倒れた。
「クソッ!」
「何だコレ!」
「過重力よ。アンタ達の周りだけ重力を強めにしたの。って言っても、馬鹿には理解できないでしょうけどね。」
凄い。
これだけの数の相手を、一瞬で倒しちゃうなんて。
それでも総長を含む何人かは、魔術に抗って立ち上がった。
「...生意気なことするじゃねえか、このクソガキが。」
「へぇ~、過重力から抜け出せるんだ。クズの集まりとはいえ、一応総長をやるだけはあるわね。」
総長は根性で魔法陣の外へ出ると、瞬時にマイクさんに襲いかかる。
でもその攻撃は、マイクさんには当たらない。
というより、マイクさんの身体を通過するものの、触れることができない。
「ふ~ん、アンタ、普通に戦えばそれなりに強そうね。でも無駄よ。だって私、今透明人間だもの。」
そして総長を指差しながら、魔法を放った。
「疾風弾。」
マイクさんの指から、小さな竜巻みたいな風が出てきて、総長に向かって放たれた。
それが総長に当たると、総長は勢いよく吹っ飛んで、そのまま気絶した。
「マイクさん、凄いわ!ジャンクグリーンを一瞬で蹴散らしちゃうなんて!」
「いやぁ~。それほどでも、あるけどね!」
マイクさんは褒められて照れ笑いをしている。
「正直、マイクさんは小柄なのにカラーギャング相手に戦えるのかな?って思ってたわ。ごめんなさい。」
「いいのよいいのよ。私がコイツらを倒せるのは魔法と魔術のお陰だしね。それにカラーギャングの奴らって、大抵は学がないから、力任せの攻撃しかしてこないのよね。だからさっきみたいな、魔術の知識をちょっと応用した程度の攻撃でも簡単に倒せちゃうの。」
さっきの攻撃が『ちょっと魔術を応用した程度』?
あんな魔術、どうすれば書けるのか私には到底想像できない。
授業の時も感じたけど、ヒノモト魔術学園の人って魔術の技術が凄いなぁ。
感心していると突然、後ろから誰かに抱きつかれて身動きが取れなくなった。
「嫌っ!」
いきなりの出来事にパニックになる。
後ろを振り返ると、私を拘束しているのはジャンクグリーンの男性だった。
何で?マイクさんのバリアで守られていたはずなのに。
足元を見てみると、私はマイクさんのバリアから少しはみ出ていたみたい。
私を捉えたジャンクグリーンの男性は、私の首にナイフを突き立て、マイクさんを脅した。
「おいテメェ!動くんじゃねえ!この女がぶっ殺されてもいいのか?!」
「.....チッ!」
マイクさんは私のせいで魔術が使えず、舌打ちをして悔しそうに男性を睨みつけていた。
「そうそう。聞き分けがいいじゃねえか。少しでも怪しい動きをしたら、すぐ殺すからな。」
マイクさんの顔に焦りの色が見える。
せっかくバリアまで作ってくれたのに足手纏いになってしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
すると突然、頬に生暖かくてヌメヌメとしたものがスッと通った気がした。
それが男性の舌だと気づいた時、吐き気を催すような気持ち悪さに、声にならない叫びが出た。
「へへへ、ブルブル震えて可愛いじゃねえか。後でたっぷり可愛がってやるぜ。」
嫌っ!
この後に起きることを想像しただけで、悍ましくて涙が出そうだ。
身の危険を感じた私は、咄嗟に、特殊魔法を発動させた。
「なぁっ?!」
男になれば襲われずに済む。
そう思って変身したところ、私を拘束していた男性は怯んで手を緩めた。
今がチャンスだ。
私は男性の手を掴んで拘束を解こうとした。
だけど男性はすぐに正気に戻り、再び私の手を掴んで捕まえようとした。
男になったお陰で力負けすることはないものの、このままじゃ振り切れない。
それなら。
私は、特殊魔法で男性を女性にした。
そして相手が驚いているうちに、強引に手を離してマイクさんのところへ逃げた。
「ライラちゃん、ナイス!」
マイクさんはすかさず、ジャンクグリーンの人に魔術を使って、気絶させた。
「ふぅ、これで一安心だね。」
私はジャンクグリーンの人達が倒れていることを確認すると、性別を元に戻した。
「ねぇ、ライラちゃん。さっきの魔法は一体、なに?」
「さっきの魔法、私の特殊魔法なの。」
考えて見れば、今まで自分も含めて『性別を変えたい』って思ったことは一度もなかった。
けど、まさかまた使う機会があるなんて思いもしなかったな。
「性別を変える特殊魔法ってこと?」
「うん。」
するとマイクさんは私の手を握って、目を輝かせながら見つめてきた。
「その魔法、素敵!ねぇお願い!私、ずっと女の子になりたかったの。よければその魔法で女の子にしてくれない?」
こんなお願いをされたのは、お兄ちゃん以来だ。
お兄ちゃんに『フレイくんを女にしろ』とか『女湯に入る時だけ女にしてくれ』とねだられた時は、心底気持ち悪いと感じた。
でもマイクさんのお願いは全然嫌悪感が湧かないし、むしろすんなり聞き入れられる。
私は魔法で、マイクさんを女の子にした。
でも幼い見た目だからか、ぱっと見では変化がみられない。
「さっき特殊魔法を使ってみたよ。ちゃんと変わっているかな?」
「えっ、本当?!」
マイクさんは慌てて後ろを向き、パンツの中を確認する。
「本当に女の子になってる...!やったー!ありがとう、ライラちゃん!」
マイクさんは満面の笑みで、私にハグをした。
魔法を使って、こんな風に感謝される日がくるなんて思わなかった。
私の魔法で喜んでくれる人がいるんだ。
ちょっと嬉しいな。
「ところでマイクさん。彼ら、どうしますか?」
アリーシャさんは倒れているジャンクグリーンを警戒しながら、心配そうにマイクさんに尋ねた。
確かに、今は倒れているからいいけれど、後日また出くわしたら嫌だな。
しかも今日のことを根に持たれて、報復に来られたら怖い。
「そうねぇ。私、前々からコイツらにしたかったことがあるの。」
「それって、なんですか?」
「去勢よ。」
「えっ!去勢?!」
「コイツらにはソレが妥当よ。だってジャンクグリーンの連中って、全員もれなく性犯罪者だもの。か弱い女の子を泣かせる性犯罪者は、死刑か去勢をすべきだわ。」
死刑か去勢かって、ちょっと極端だな。
「私もその意見に賛成!ライラちゃんを襲おうとした罪、万死に値するわ!」
カタリーナちゃんも、怒りで声を荒げてマイクさんに同調した。
「ちなみに私の特殊魔法は『圧縮』といって、小さいものであれば圧縮して潰せるの。だから彼らの彼らのアレだけを潰すなんて、朝飯前よ。」
爽やかな笑顔でそう話すカタリーナちゃんは、どこか怖い。
「ですが、そんなことをして万が一にでも死ぬようなことがあれば、罪に問われてしまうのではないのでしょうか?」
「大丈夫よ。カラーギャングすらまともに取り締まれない衛兵達が、私達にどうこう言えるわけないじゃない。」
「ですが....。」
「もっと穏便な方法は、ないのかな?」
「そうは言ってもねぇ。.....あ!そうよ!」
するとカタリーナちゃんは、私の両肩を叩いた。
「ライラちゃんの特殊魔法を使えばいいじゃない!」
「え?私の?」
「さすがに女にしたら、もう女の子を襲うこともないだろうしね。それに、私がアレを潰すより、よっぽど穏便じゃない?」
「それはそうだけど...。」
ヒトの性別を勝手に変えるのは流石に良くない気がする。
でも、ここで断ったら、カタリーナちゃんが本気で強引に去勢しそうだ。
.....潰されて痛い思いをするよりかは、マシだよね?
私は自分に言い訳をしながら、その場にいたジャンクグリーンの人達を、全員女の子にした。
「これできっと、彼らも悪いことしないよね?」
「さぁ。根っこがクズだから、性格は変わらないんじゃないかしら?それでも、コイツらに襲われて泣く女の子は、もういないと思うわよ。」
マイクさんは総長の男性...いや、女性に近づいて、耳を引っ張って大声を出した。
「おーい!今度から風俗で稼ぎたかったら、自分たちの身体を売りなー!」
それだけを言うと、マイクさんは総長の女性をそのまま放置した。
「それじゃ、帰りましょうか。」
「えっ、このまま放置して大丈夫なの?」
「今日のところは大丈夫でしょ。それに後日報復に来るとしても、きっとあなた達じゃなくて私のところに来ると思うから安心して。」
それはそれで、マイクさんに悪い気がする。
「とにかくもう夜だし、さっさと帰らないと学校の食堂が閉まっちゃうわよ。」
「それもそうね。急いで帰りましょう。」
心配な部分はあるけど、これ以上考えても仕方がない。
とにかく、今日は色々あって疲れたし、早く帰ろう。
私達は最寄りのテレポーターから、ヒノモト魔術学園へ戻った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる