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第27話:断罪劇
【133】断罪劇(7)
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「兄上。なぜ....なぜ、このようなことを?」
国王陛下の声は、怒りなのか悲しみなのか、それとも恐怖なのか、わなわなと震えていた。
「自身の息子を次期国王にするためです。」
公爵に代わって答えたのは、ショーン殿下だった。
「コーキナル公爵は、レックス殿下さえいなくなれば、自身の息子を国王にすることができると考えたのでしょう。僕には王位を継承する資格がないと知っていたからこそ、僕は狙われなかった。むしろ僕を推薦することで、聖ソラトリク教団との結びつきを強め、教団を利用したのでしょう。」
ショーン殿下に『王位を継承する資格がない』?
いくら持病があるとはいっても、継承する資格がないなんてありえるの?
「先王に本性を見抜かれ王位を継承できなかった公爵は、自分の息子を国王にして、裏で操る計画でも立てていたのでしょう。だからキョウシュー帝国の皇族である母上を王妃に迎え入れるよう、父上を唆した。キョウシュー帝国の皇族を迎え入れた国々は、側室を持つことを事実上許されなかった。そのため国王と王妃の間に男児が生まれなければ、必然的に血族であるコーキナル公爵の息子が国王になる、という算段です。
母上が長年不妊であった理由が、コーキナル公爵の手によるものです。これに関しても証拠があります。」
その事実を告げられたスイ王妃は顔が引き攣り、手を口に当てて小さく悲鳴をあげた。
「弁護人。聖ソラトリク教団とコーキナル公爵の動機は分かりました。ですが、フォージー侯爵がカタリーナ嬢の命を狙う動機は何でしょうか?」
混乱した場の空気を引き締めるように、裁判長は話を戻した。
「フォージー侯爵がカタリーナ嬢を狙う理由は、アリーシャ嬢をレックスの婚約者に仕立て上げるためです。」
えっ?!
それって、何だかアップスターオレンジの設定に似ている。
じゃあシナリオで殿下とアリーシャ様がくっついたのは、裏でフォージー侯爵の策略もあったからなの?
「フォージー侯爵は自分の娘をレックスと結婚させ、レックスが王位を継いだら義父という立場を利用して実権を握ろうと考えていたのです。」
「なるほど。ですが弁護人、その理屈ですと狙うべきは王位継承順位第一位であるショーン殿下の婚約者ではありませんか?」
「フォージー侯爵がそうしなかった理由は色々ありますが、その理由は今回の事件とは殆ど関係がありません。それでもよろしければ説明させてください。」
「構いません。続けてください。」
「感謝いたします。フォージー侯爵が僕の婚約者を狙わなかった理由の一つは、僕がブルッグリン症候群だからです。」
「ブルッグリン症候群?それは一体、何でしょうか?」
やっぱり、そうだったのね。
薄々勘づいていたからさほど驚かなかったけど、その症状を初めて聞いた傍聴席の人々は、ざわざわと騒いでいた。
「ブルッグリン症候群は、魔力量や知能が桁違いに高くなる反面、肉体の成長が著しく遅い症状のことです。主にエルフやハーフエルフに稀に発症します。」
すると、それを聞いたスイ王妃は取り乱し、立ち上がって怒鳴るように否定した。
「そんなはずはありません!貴方はエルフやハーフエルフではありませんもの!冗談はおやめなさい!」
いつも毅然としているスイ王妃が、ここまで取り乱しているのは初めて見る。
もしかして、スイ王妃は不貞を...?
そんな疑念が頭によぎった。
そんなスイ王妃に対し、ショーン殿下は憐れむような切ない目をして、首を横に振った。
「僕の種族がエルフか否かは、こちらの魔道具を使えば一目瞭然です。」
ショーン殿下が取り出したのは、どこかで見たことのある少し大きめの箱のような魔道具だった。
「こちらの魔道具は『血縁関係特定機』と呼ばれるものです。血縁関係を調べたい人達の毛を登録すると、登録された毛の情報から親子であるか否かを特定できます。
この魔道具は元々『魔物個体特定機』と呼ばれる魔道具を改良して作られたものだからか、登録された固体の種族や詳細な個体情報も調べることができるのです。
父上、母上、試しにお二方の情報を登録させていただいてもよろしいでしょうか?」
魔物個体特定機?
どこかで聞いたような....。
まぁ、そんなことどうでもいいわ。
ショーン殿下に言われた通り、国王陛下とスイ王妃はDNA情報を血縁関係特定機に登録した。
「ご覧の通り、父上と母上の種族・身長・魔力量などの情報が正確に登録されているのを確認できます。
では本題に戻ります。
僕の個体情報を確認しましょう。」
ショーン殿下は血縁関係特定機に自身のDNA情報を登録した。
すると特記事項に『先天性疾患:ブルッグリン症候群』と表情された。
これは決定的だ。
そのことを裏付けるように『種族:魔人+エルフ』という表示もある。
....え、ちょっと待って?
魔人+エルフ?
人間+エルフ、じゃなくて?
「ご覧の通り、僕がブルッグリン症候群であることが証明されました。」
衝撃の真実に法廷中がざわつく。
息子から告げられた真実に、スイ王妃はその場で前のめりに倒れそうになった。
そんなスイ王妃を心配した国王陛下は、倒れないように慌てて王妃を支えた。
「静粛に、静粛に!弁護人、これは一体どういうことですか?弁護人がブルッグリン症候群であることは理解しましたが、種族が『魔人+エルフ』と表示されているのはなぜですか?」
「....その真相を知るためにも、血縁関係特定機の本来の使用用途を試してみましょう。」
殿下が血縁関係特定機を操作すると、鑑定結果が出た。
結果は国王陛下・スイ王妃ともに『血縁関係なし』と出た。
国王陛下どころかスイ王妃とも血縁関係じゃないって、どういうことなの?
その結果に法廷がかつてない程に混沌とした。
「う.....嘘、嘘よ!ショーンはこの私が、お腹を痛めて産んだ子よ!」
悲鳴に近い声を出して錯乱するスイ王妃は、見ているこっちも辛くなるくらいに痛々しかった。
「静粛に!では弁護人。貴方は一体.....いえ、スイ王妃のお子様は一体、どちらに?」
「裁判長。その答えを知る人を、今ここに呼び出したいのですが可能でしょうか。」
「その人物とは?」
「フォージー侯爵です。」
「フォージー侯爵、ですか。.....わかりました。今は本件の重要参考人でもありますし、特別に許可致しましょう。」
ここでフォージー侯爵がまた関係してくるの?
フォージー侯爵が出廷するまでの間、法廷は最早お祭り状態だった。
聖ソラトリク教団とコーキナル公爵による、レックス殿下抹消計画。
フォージー侯爵による私の暗殺計画。
ショーン殿下が王族ではなかった事実。
これだけの超大型スキャンダルが次々と出てきたのだから、騒がないというのは無理がある。
それでも小一時間後にフォージー侯爵が現れると、あれだけ騒いでいた人々も、口を閉じて事の成り行きを見守った。
フォージー侯爵の自己紹介が終わると、ショーン殿下は早速彼に質問した。
「フォージー侯爵。先程までの裁判で、僕は父上・母上と血縁関係がないことが判明しました。その件に関して、貴方は何か知っているのではありませんか?」
「....知りません。」
「では質問を変えましょう。貴方は、本当は亜人なのではありませんか?」
「違います。」
ショーン殿下の質問に、フォージー侯爵は一切動じない。
この前のあの暴れようからは想像できない程に、フォージー侯爵は落ち着いている。
きっとアリーシャ様が生きているのを知って、冷静さを取り戻したのね。
「そうですか。でしたらその証拠に、血縁関係特定機に貴方の情報を登録させください。勿論、ご婦人とご令嬢の分も併せて登録お願いします。」
「?....わかりました。」
フォージー侯爵はショーン殿下の意図が掴めず、疑問に感じながらも血縁関係特定機に3人分の情報を登録した。
「それでは先程裁判長から出た質問の答えをお見せしましょう。『僕が何者なのか?』『国王陛下とスイ王妃とのお子様はどうなったのか?』全て結果を見れば一目瞭然です。」
血縁関係特定機の鑑定結果に、その場にいた全員が目を見張る。
鑑定結果には、こう書かれていた。
アリーシャ・フォージー
種族:人間
親族:(父)ノーブル・ディシュメイン
(母)スイ・ディシュメイン
ショーン・ディシュメイン
種族:魔人+エルフ
親族:(父)ゼロス・フォージー
(母)ヨナ・フォージー
鑑定結果に、一瞬、理解が追いつかなかった。
これって、まさかアリーシャ様とショーン殿下って....。
「鑑定結果から分かる通り、僕とアリーシャ嬢は、入れ替えられていたのです。」
またしても特大スキャンダルが発覚し、傍聴席はまた大騒ぎとなった。
国王陛下の声は、怒りなのか悲しみなのか、それとも恐怖なのか、わなわなと震えていた。
「自身の息子を次期国王にするためです。」
公爵に代わって答えたのは、ショーン殿下だった。
「コーキナル公爵は、レックス殿下さえいなくなれば、自身の息子を国王にすることができると考えたのでしょう。僕には王位を継承する資格がないと知っていたからこそ、僕は狙われなかった。むしろ僕を推薦することで、聖ソラトリク教団との結びつきを強め、教団を利用したのでしょう。」
ショーン殿下に『王位を継承する資格がない』?
いくら持病があるとはいっても、継承する資格がないなんてありえるの?
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その事実を告げられたスイ王妃は顔が引き攣り、手を口に当てて小さく悲鳴をあげた。
「弁護人。聖ソラトリク教団とコーキナル公爵の動機は分かりました。ですが、フォージー侯爵がカタリーナ嬢の命を狙う動機は何でしょうか?」
混乱した場の空気を引き締めるように、裁判長は話を戻した。
「フォージー侯爵がカタリーナ嬢を狙う理由は、アリーシャ嬢をレックスの婚約者に仕立て上げるためです。」
えっ?!
それって、何だかアップスターオレンジの設定に似ている。
じゃあシナリオで殿下とアリーシャ様がくっついたのは、裏でフォージー侯爵の策略もあったからなの?
「フォージー侯爵は自分の娘をレックスと結婚させ、レックスが王位を継いだら義父という立場を利用して実権を握ろうと考えていたのです。」
「なるほど。ですが弁護人、その理屈ですと狙うべきは王位継承順位第一位であるショーン殿下の婚約者ではありませんか?」
「フォージー侯爵がそうしなかった理由は色々ありますが、その理由は今回の事件とは殆ど関係がありません。それでもよろしければ説明させてください。」
「構いません。続けてください。」
「感謝いたします。フォージー侯爵が僕の婚約者を狙わなかった理由の一つは、僕がブルッグリン症候群だからです。」
「ブルッグリン症候群?それは一体、何でしょうか?」
やっぱり、そうだったのね。
薄々勘づいていたからさほど驚かなかったけど、その症状を初めて聞いた傍聴席の人々は、ざわざわと騒いでいた。
「ブルッグリン症候群は、魔力量や知能が桁違いに高くなる反面、肉体の成長が著しく遅い症状のことです。主にエルフやハーフエルフに稀に発症します。」
すると、それを聞いたスイ王妃は取り乱し、立ち上がって怒鳴るように否定した。
「そんなはずはありません!貴方はエルフやハーフエルフではありませんもの!冗談はおやめなさい!」
いつも毅然としているスイ王妃が、ここまで取り乱しているのは初めて見る。
もしかして、スイ王妃は不貞を...?
そんな疑念が頭によぎった。
そんなスイ王妃に対し、ショーン殿下は憐れむような切ない目をして、首を横に振った。
「僕の種族がエルフか否かは、こちらの魔道具を使えば一目瞭然です。」
ショーン殿下が取り出したのは、どこかで見たことのある少し大きめの箱のような魔道具だった。
「こちらの魔道具は『血縁関係特定機』と呼ばれるものです。血縁関係を調べたい人達の毛を登録すると、登録された毛の情報から親子であるか否かを特定できます。
この魔道具は元々『魔物個体特定機』と呼ばれる魔道具を改良して作られたものだからか、登録された固体の種族や詳細な個体情報も調べることができるのです。
父上、母上、試しにお二方の情報を登録させていただいてもよろしいでしょうか?」
魔物個体特定機?
どこかで聞いたような....。
まぁ、そんなことどうでもいいわ。
ショーン殿下に言われた通り、国王陛下とスイ王妃はDNA情報を血縁関係特定機に登録した。
「ご覧の通り、父上と母上の種族・身長・魔力量などの情報が正確に登録されているのを確認できます。
では本題に戻ります。
僕の個体情報を確認しましょう。」
ショーン殿下は血縁関係特定機に自身のDNA情報を登録した。
すると特記事項に『先天性疾患:ブルッグリン症候群』と表情された。
これは決定的だ。
そのことを裏付けるように『種族:魔人+エルフ』という表示もある。
....え、ちょっと待って?
魔人+エルフ?
人間+エルフ、じゃなくて?
「ご覧の通り、僕がブルッグリン症候群であることが証明されました。」
衝撃の真実に法廷中がざわつく。
息子から告げられた真実に、スイ王妃はその場で前のめりに倒れそうになった。
そんなスイ王妃を心配した国王陛下は、倒れないように慌てて王妃を支えた。
「静粛に、静粛に!弁護人、これは一体どういうことですか?弁護人がブルッグリン症候群であることは理解しましたが、種族が『魔人+エルフ』と表示されているのはなぜですか?」
「....その真相を知るためにも、血縁関係特定機の本来の使用用途を試してみましょう。」
殿下が血縁関係特定機を操作すると、鑑定結果が出た。
結果は国王陛下・スイ王妃ともに『血縁関係なし』と出た。
国王陛下どころかスイ王妃とも血縁関係じゃないって、どういうことなの?
その結果に法廷がかつてない程に混沌とした。
「う.....嘘、嘘よ!ショーンはこの私が、お腹を痛めて産んだ子よ!」
悲鳴に近い声を出して錯乱するスイ王妃は、見ているこっちも辛くなるくらいに痛々しかった。
「静粛に!では弁護人。貴方は一体.....いえ、スイ王妃のお子様は一体、どちらに?」
「裁判長。その答えを知る人を、今ここに呼び出したいのですが可能でしょうか。」
「その人物とは?」
「フォージー侯爵です。」
「フォージー侯爵、ですか。.....わかりました。今は本件の重要参考人でもありますし、特別に許可致しましょう。」
ここでフォージー侯爵がまた関係してくるの?
フォージー侯爵が出廷するまでの間、法廷は最早お祭り状態だった。
聖ソラトリク教団とコーキナル公爵による、レックス殿下抹消計画。
フォージー侯爵による私の暗殺計画。
ショーン殿下が王族ではなかった事実。
これだけの超大型スキャンダルが次々と出てきたのだから、騒がないというのは無理がある。
それでも小一時間後にフォージー侯爵が現れると、あれだけ騒いでいた人々も、口を閉じて事の成り行きを見守った。
フォージー侯爵の自己紹介が終わると、ショーン殿下は早速彼に質問した。
「フォージー侯爵。先程までの裁判で、僕は父上・母上と血縁関係がないことが判明しました。その件に関して、貴方は何か知っているのではありませんか?」
「....知りません。」
「では質問を変えましょう。貴方は、本当は亜人なのではありませんか?」
「違います。」
ショーン殿下の質問に、フォージー侯爵は一切動じない。
この前のあの暴れようからは想像できない程に、フォージー侯爵は落ち着いている。
きっとアリーシャ様が生きているのを知って、冷静さを取り戻したのね。
「そうですか。でしたらその証拠に、血縁関係特定機に貴方の情報を登録させください。勿論、ご婦人とご令嬢の分も併せて登録お願いします。」
「?....わかりました。」
フォージー侯爵はショーン殿下の意図が掴めず、疑問に感じながらも血縁関係特定機に3人分の情報を登録した。
「それでは先程裁判長から出た質問の答えをお見せしましょう。『僕が何者なのか?』『国王陛下とスイ王妃とのお子様はどうなったのか?』全て結果を見れば一目瞭然です。」
血縁関係特定機の鑑定結果に、その場にいた全員が目を見張る。
鑑定結果には、こう書かれていた。
アリーシャ・フォージー
種族:人間
親族:(父)ノーブル・ディシュメイン
(母)スイ・ディシュメイン
ショーン・ディシュメイン
種族:魔人+エルフ
親族:(父)ゼロス・フォージー
(母)ヨナ・フォージー
鑑定結果に、一瞬、理解が追いつかなかった。
これって、まさかアリーシャ様とショーン殿下って....。
「鑑定結果から分かる通り、僕とアリーシャ嬢は、入れ替えられていたのです。」
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