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最終話:龍脈復活
【142】龍脈復活(1)
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某日某所にて。
「お待たせ~♪いやぁ、ドーワ侯国の技術力は凄いねぇ。学校の至るところに高位魔術を組み込んだ魔道具が置いてあって、おじさんビックリだよ。」
「そうかい。ところでシヴァ、さっき言っていた『渡したい物』って何だ?」
「まぁまぁ、そう焦らないでよ。サラちゃん。....いや、ソラくん、って言った方が正しいのかな?」
「...そうか。シヴァはもうそこまで気づいていたんだね。」
「まーね♪しっかし、つれないよね。ボクになーんにも教えてくれないまま、あっさり転生しちゃうんだからさ。キミを探すのにホント苦労したんだよ?」
「君、案外諦めが悪いね。僕のことなんか忘れて自由に生きればいいのに。」
「そうはいかないよ。だって約束したでしょ?『根源を持つ魂』を見つけたら、ボクの言うことを何でも聞くって。」
「そんな約束、まだ覚えていたんだ。で、『根源を持つ魂』を見つけたから会いに来たのかい?まさか君の言う『根源を持つ魂』は厄災の魔王のことじゃないよね?」
「チッチッチ!ボクのことをナメてもらっちゃ困るよ~♪キミが探していたのは、コレでしょ?」
「....コレは?」
「キミのお友達、リクくんの魂だよ♪」
「リクの?!この魂は本当に、リクなのか?!」
「もちろん♪ちなみに、サラちゃんがソラくんだった時の話は、彼から聞いたよ!」
「そうか。だから君は全部知っていたんだね。」
「ところでさぁ~。今のサラちゃん、あの時死んで転生したんだよね?それににしては、若干若くない?死んだ時期と生まれ変わった時期が合ってないような....。」
「あぁ。それは何度かリセマラしたからね。これでもリセマラは早めに終わった方だよ。」
「リセマラ?」
「ダイフク達がいた世界だと『良い個体が出るまで何度もやり直す』ことをそう呼ぶらしいよ。」
「へぇ~、なるほど!ってことは....。
....うん♪
普通にドン引きだ♪」
◆◆◆
厄災の魔王が処刑されてから数ヶ月経った。
あの後、俺の狙い通り、各国は半永久的な停戦条約を結んだ。
全人類の脅威である『厄災の魔王』が再び復活する可能性を懸念して、4カ国で厄災の魔王復活に備えよう、という話になったらしい。
まぁ、停戦条約が結ばれたのは、それ以外にも色んな要素が重なったことも大きいだろう。
まず聖ソラトリク教団が方針を改めて各国に謝罪したのが大きく影響しているだろう。
謝罪するようにクロノ総裁に命令できたのが功を奏した。
俺が倒れた後、クロノ総裁はタクトやゼルが俺の仇を討って全壊させたらしい。
だけどクロノ総裁がいないと、センガや他の種命地人達はカイシュ星に帰れない。
俺は仕方なくクロノ総裁を魔法で修理...と思ったが魔法は効かなかった。
代わりに、センガにクロノ総裁を修理できるほどの知識を魔法で植え付けてやった。
その知識でセンガがクロノ総裁を修理する時、ついでに俺に逆らわないように設定したらしく、そのおかげかクロノ総裁は俺の命令を何でも聞くようになった。
だから俺は、聖ソラトリク教団を健全な組織に改めさせるよう命令した。
とはいえ、コイツに命令したいことなんて、ほとんどない。
これっきり、もうコイツに命令することはないだろう。
それからスイ王妃の実の娘・アリーシャについて。スイ王妃自らが国外追放を望んだと発表したことで、キョウシュー帝国皇帝や帝国民のディシュメイン王国に対する怒りを鎮めることができた。
しかもアランがアリーシャと結婚すると言い出したこともあり、キメイラ帝国の亜人達は人間に対する憎悪を緩和させた。
そういった色々な出来事が積み重なったおかげで、世界大戦勃発前の平和な世界が戻ってきた。
世界大戦のゴタゴタで学校の始業式は遅れに遅れたが、他国にいたみんなも無事に学校に来られるようになった。
学校でみんなと会うのは、最初は気まずかった。
でもみんな、俺の正体を知っても大して気にしていないみたいだ。
そんなみんなを見ていると、いい加減『良い子ちゃん』のフリをしているのが馬鹿らしくなり、俺はフレイの時でも素の状態でいることにした。
2年に進級して数ヶ月経ったある日、とある人物から一件のメールが届いた。
「宮藤迅様
お久しぶりです。
ダイフク商会会長のショージ・ダイフクと申します。
この度、宮藤迅様に龍脈の件で依頼したいことがあり、連絡致しました。
もしよろしければ、⚪︎月×日に、再び私の住むタワーマンション最上階までお越しください。
その際、交通費は後ほどお渡しします。
また、以前お会いした際は弊会のザボエル・ヨーグマンが対応しましたが、今回は私自身が伺います。
その際、弊会のソラ氏も随伴いたします。
以上、よろしくお願い致します。」
わざわざフレイのメールアドレスで送ってくるということは、ダイフク会長も俺の正体に気づいたのか。
まぁいい。もう色んなヤツにバレてるし、今更だ。
ついでにアイツらの正体を知れるんだし、行っても損はない。
俺は後日、ドーワ侯国にあるダイフク会長のタワーマンションまで出向いた。
◆◆◆
ドーワ侯国・タワーマンション前。
久々に訪れたが、改めて見てもドデカい建物だ。
俺はインターホンを押して、ダイフク会長に話しかける。
「お待ちしていました。どうぞお入りください。」
ん?この声....。
まぁいい。
俺は玄関の自動ドアから中に入り、最上階にいるダイフク会長のもとへと向かった。
エレベーターが最上階に着いて降りると、そこにはホリーが立って出迎えていた。
「いらっしゃい。待っていたよ。こっちの応接間で話そうか。」
ホリーに案内されるまま、応接間へ移動する。
そこにはあのクソ女....ミラもいた。
「それじゃあ、改めて自己紹介するね。
僕はホリー・コトナカーレ。
ダイフク商会の会長を務めているよ。」
やっぱりそうか。
インターホン越しに声を聞いた時から薄々勘付いてはいた。
「そして彼女はミラ・コトナカーレ。現世での僕の姉で、元々は『ソラ』という名前の異世界人だったんだ。」
ソラの正体がクソ女だったとは。
魔術の知識に関して言えば、クソ女がソラでも不思議ではない。
「まさかホリーがダイフク会長だったとはな。何で今まで黙ってた?」
「う~ん....難しい質問だね。最初の頃はビジネスをする上で正体を知られるのが不利だったから隠していたけど、今の僕にとって『ダイフク会長』ってポジションは僕のもう一つのアイデンティティみたいなものなんだ。『ホリー・コトナカーレ』としての僕でしか見られない世界があるように、『ダイフク会長』としての僕でしか見えない世界もある。だから今更一括りにしたくない、っていうのが今の僕の本音かな?
フレイくんもさ、『厄災の魔王』としてのフレイくんと『ライトニング家次男』としてのフレイくんとで、見える世界が違ったでしょ?それはそれで楽しくなかった?」
「確かにな。でも、だったら何で今更俺に正体を明かした?」
「大事な要件であればある程、直接相手に会って依頼するのが礼儀だと思ったからだよ。それにフレイくんにはザボエルさんが影武者だってバレてる。一度騙すようなことをしているんだから、正体を明かすくらいのことはしないと、信頼は得られないと思ったんだ。」
「律儀な奴だな。ってか、そもそも影武者なんか使わなくても、お前が直接表に立った方がいいんじゃないか?曲がりなりにもドーワ侯国の次期君主だしな。」
「僕がビジネスを始めた当初は、僕自らが交渉の場に立つのは無理があった。なんせ僕がビジネスを始めたのは生後間もなくのことだったからね。いくら現君主の息子とは言え、赤ん坊のセールストークを真面目に聞く人はいないでしょ?だから、僕の代わりに色んな人と関わり合いをもって、交渉してくれる人が必要だった。そんな人を探していた時にザボエルさんと出会ったんだ。」
「つーか、赤ん坊の時からビジネスするとか正気か?そもそも、赤ん坊のお前がザボエルと会話なんかできたのか?」
「そこは姉さん、もといソラさんの魔術で会話できるようにしてもらったから、問題なかったよ。
そもそも僕が赤ん坊の時点で起業する気になったのは、ソラさんの話を聞いたからなんだ。
僕の魂に根源があるからか、ソラさんは僕のことをリクさんと勘違いしてね。誤解が解けた後にお互い自己紹介をしたんだ。その時に、僕ら異世界人の魂は死後も記憶がリセットされないことを教えてもらったんだ。
これはマズいと思った僕は、ソラさんと一緒に異界穴を開けることにしたのさ。ソラさんは技術担当、僕は開発資金調達担当、って感じで役割分担してね。元々前世でも商売は好きだったし、がむしゃらにやっていたら、いつの間にかこんなに大きな商会になっていたよ。」
「へぇ、良かったな。それで、異界穴研究はあれから進んだのか?」
「うん。というか、今日フレイくんを呼び出したのはその件でお願いしたかったからなんだ。ソラさんとザボエルさんを筆頭にみんなが開発してくれたお陰で、死の大地でも移動できる服と車が完成したんだ。とはいえ、この服と車はフレイくんがいなかったら意味がないんだけどね。」
「俺が協力するかもわからないのに、よく作ったな。」
「ハハハ。確かに、前まではクドージンさんと連絡を取る手段がほぼ無かったから、どうにかしてクドージンさんと接点が持てないか考えていたよ。
最悪、無理だった場合のプランも考えてはいたけど、そうなると開発費用が国家予算レベルで高くなってね。そっちもそっちで、あまり現実的じゃないから、フレイくんが協力してくれたら凄く助かるよ。」
「ダイフク商会がこれだけ大きけりゃ、国家予算ぐらい稼げるだろ?」
「フレイくん、それは言い過ぎだよ。いくらダイフク商会でも、国家予算レベルの額を稼ぐとなったら、あと十数年はかかるよ。」
あと十数年で稼げるのかよ!
「そうかよ。まぁ、いいぜ。別に今更断る理由もないしな。で、俺は何をすればいいんだ?一緒に行けばいいのか?」
「うん。死の大地へ移動できる車には宇宙服みたいな特殊な服が繋がっているんだけど、僕とソラさん、それからフレイくんの3人でその服を着て車に乗るんだ。
とは言っても、フレイくんが着る服と僕達が着る服は役割が違うんだよね。フレイくんに着てもらう服は、着用者の魔力を吸収してそのエネルギーを車や僕達に供給する役割があるんだ。一方の僕とソラさんの服はフレイくんから供給された魔力を効率よく受け取るための服なんだ。」
「ちょっと待て。お前ら二人がその服で俺から命属性の魔力を受け取るから死の大地でも大丈夫だ、っていう理屈はわかる。でもそれだと俺はどうなる?死ぬんじゃないか?」
「それは大丈夫だよ。フレイくんは自分自身から出ている命属性の魔力があるから、仮に今、死の大地に入っても死ぬことはないよ。それにさっき説明した服も、フレイくんの命を脅かすほどの魔力は吸収しないから安心して。」
「なら、まぁいいか。」
「それで、さっき説明した車に乗って、死の大地にある龍脈を順番に回るんだ。ソラさんが龍脈を復活させて、僕達やソラさんの世界と繋がる異界穴が開けるか、1つずつチェックするんだ。それで最終的にはこの星の龍脈を全て復活させる予定だよ。」
「なるほどな。....ん?そういえば前にカタリーナと話した時、龍脈が復活した後の土地についてなんか言ってなかったか?異界穴の研究を無闇に明かせないとか何とか言ってた気がするけど、そっちはどうなったんだ?」
「あぁ、その問題なら解決してるよ。実は停戦条約が結ばれた後の4ヶ国会議で、龍脈の復活させようという話が出たんだ。
その際、聖ソラトリク教団が信頼回復のために技術提供を持ちかけてきてね。そこでドーワ侯国も前から龍脈復活のために研究していたことを明かして、各国で合同研究をする流れになったんだ。
もちろん、龍脈が復活したらその土地の所有権についても後日4ヶ国で話し合う前提でね。
ここまではカタリーナさんが以前提案していた通りに事が運んだよ。
合同研究に移行した後、さっきフレイくんに話した死の大地を移動できる車がほぼ完成していることを報告したんだ。その際、リスクや死亡率が高いことを報告したら、どこの国も乗りたがらなくて、結局ダイフク商会側で搭乗者を選ぶことになったよ。
それで、僕ら3人を搭乗者に選定したんだ。
ちなみに異界穴研究に関しては、悪用や二次被害を起こさないためにも他国には秘密のままにしておくよ。
だから異界穴は、龍脈の封印を解く時に、各国に内緒でこっそり開ける予定なんだ。
異界穴を開ける装置は、なるべくコンパクトに設計した上で、認識阻害機能もつける予定だから、後から他の人が確認しに来ても気づかれないと思うよ。」
ホリーがそこまで言うんだったら、大丈夫なのか?
龍脈を復活した後の土地だの、異界穴研究は秘密にしておくだの、まどろっこしいことを考えずにさっさと龍脈を復活させれたらいいのに。
とりあえず俺はホリー達と一緒に、龍脈を復活させに行くことになった。
「お待たせ~♪いやぁ、ドーワ侯国の技術力は凄いねぇ。学校の至るところに高位魔術を組み込んだ魔道具が置いてあって、おじさんビックリだよ。」
「そうかい。ところでシヴァ、さっき言っていた『渡したい物』って何だ?」
「まぁまぁ、そう焦らないでよ。サラちゃん。....いや、ソラくん、って言った方が正しいのかな?」
「...そうか。シヴァはもうそこまで気づいていたんだね。」
「まーね♪しっかし、つれないよね。ボクになーんにも教えてくれないまま、あっさり転生しちゃうんだからさ。キミを探すのにホント苦労したんだよ?」
「君、案外諦めが悪いね。僕のことなんか忘れて自由に生きればいいのに。」
「そうはいかないよ。だって約束したでしょ?『根源を持つ魂』を見つけたら、ボクの言うことを何でも聞くって。」
「そんな約束、まだ覚えていたんだ。で、『根源を持つ魂』を見つけたから会いに来たのかい?まさか君の言う『根源を持つ魂』は厄災の魔王のことじゃないよね?」
「チッチッチ!ボクのことをナメてもらっちゃ困るよ~♪キミが探していたのは、コレでしょ?」
「....コレは?」
「キミのお友達、リクくんの魂だよ♪」
「リクの?!この魂は本当に、リクなのか?!」
「もちろん♪ちなみに、サラちゃんがソラくんだった時の話は、彼から聞いたよ!」
「そうか。だから君は全部知っていたんだね。」
「ところでさぁ~。今のサラちゃん、あの時死んで転生したんだよね?それににしては、若干若くない?死んだ時期と生まれ変わった時期が合ってないような....。」
「あぁ。それは何度かリセマラしたからね。これでもリセマラは早めに終わった方だよ。」
「リセマラ?」
「ダイフク達がいた世界だと『良い個体が出るまで何度もやり直す』ことをそう呼ぶらしいよ。」
「へぇ~、なるほど!ってことは....。
....うん♪
普通にドン引きだ♪」
◆◆◆
厄災の魔王が処刑されてから数ヶ月経った。
あの後、俺の狙い通り、各国は半永久的な停戦条約を結んだ。
全人類の脅威である『厄災の魔王』が再び復活する可能性を懸念して、4カ国で厄災の魔王復活に備えよう、という話になったらしい。
まぁ、停戦条約が結ばれたのは、それ以外にも色んな要素が重なったことも大きいだろう。
まず聖ソラトリク教団が方針を改めて各国に謝罪したのが大きく影響しているだろう。
謝罪するようにクロノ総裁に命令できたのが功を奏した。
俺が倒れた後、クロノ総裁はタクトやゼルが俺の仇を討って全壊させたらしい。
だけどクロノ総裁がいないと、センガや他の種命地人達はカイシュ星に帰れない。
俺は仕方なくクロノ総裁を魔法で修理...と思ったが魔法は効かなかった。
代わりに、センガにクロノ総裁を修理できるほどの知識を魔法で植え付けてやった。
その知識でセンガがクロノ総裁を修理する時、ついでに俺に逆らわないように設定したらしく、そのおかげかクロノ総裁は俺の命令を何でも聞くようになった。
だから俺は、聖ソラトリク教団を健全な組織に改めさせるよう命令した。
とはいえ、コイツに命令したいことなんて、ほとんどない。
これっきり、もうコイツに命令することはないだろう。
それからスイ王妃の実の娘・アリーシャについて。スイ王妃自らが国外追放を望んだと発表したことで、キョウシュー帝国皇帝や帝国民のディシュメイン王国に対する怒りを鎮めることができた。
しかもアランがアリーシャと結婚すると言い出したこともあり、キメイラ帝国の亜人達は人間に対する憎悪を緩和させた。
そういった色々な出来事が積み重なったおかげで、世界大戦勃発前の平和な世界が戻ってきた。
世界大戦のゴタゴタで学校の始業式は遅れに遅れたが、他国にいたみんなも無事に学校に来られるようになった。
学校でみんなと会うのは、最初は気まずかった。
でもみんな、俺の正体を知っても大して気にしていないみたいだ。
そんなみんなを見ていると、いい加減『良い子ちゃん』のフリをしているのが馬鹿らしくなり、俺はフレイの時でも素の状態でいることにした。
2年に進級して数ヶ月経ったある日、とある人物から一件のメールが届いた。
「宮藤迅様
お久しぶりです。
ダイフク商会会長のショージ・ダイフクと申します。
この度、宮藤迅様に龍脈の件で依頼したいことがあり、連絡致しました。
もしよろしければ、⚪︎月×日に、再び私の住むタワーマンション最上階までお越しください。
その際、交通費は後ほどお渡しします。
また、以前お会いした際は弊会のザボエル・ヨーグマンが対応しましたが、今回は私自身が伺います。
その際、弊会のソラ氏も随伴いたします。
以上、よろしくお願い致します。」
わざわざフレイのメールアドレスで送ってくるということは、ダイフク会長も俺の正体に気づいたのか。
まぁいい。もう色んなヤツにバレてるし、今更だ。
ついでにアイツらの正体を知れるんだし、行っても損はない。
俺は後日、ドーワ侯国にあるダイフク会長のタワーマンションまで出向いた。
◆◆◆
ドーワ侯国・タワーマンション前。
久々に訪れたが、改めて見てもドデカい建物だ。
俺はインターホンを押して、ダイフク会長に話しかける。
「お待ちしていました。どうぞお入りください。」
ん?この声....。
まぁいい。
俺は玄関の自動ドアから中に入り、最上階にいるダイフク会長のもとへと向かった。
エレベーターが最上階に着いて降りると、そこにはホリーが立って出迎えていた。
「いらっしゃい。待っていたよ。こっちの応接間で話そうか。」
ホリーに案内されるまま、応接間へ移動する。
そこにはあのクソ女....ミラもいた。
「それじゃあ、改めて自己紹介するね。
僕はホリー・コトナカーレ。
ダイフク商会の会長を務めているよ。」
やっぱりそうか。
インターホン越しに声を聞いた時から薄々勘付いてはいた。
「そして彼女はミラ・コトナカーレ。現世での僕の姉で、元々は『ソラ』という名前の異世界人だったんだ。」
ソラの正体がクソ女だったとは。
魔術の知識に関して言えば、クソ女がソラでも不思議ではない。
「まさかホリーがダイフク会長だったとはな。何で今まで黙ってた?」
「う~ん....難しい質問だね。最初の頃はビジネスをする上で正体を知られるのが不利だったから隠していたけど、今の僕にとって『ダイフク会長』ってポジションは僕のもう一つのアイデンティティみたいなものなんだ。『ホリー・コトナカーレ』としての僕でしか見られない世界があるように、『ダイフク会長』としての僕でしか見えない世界もある。だから今更一括りにしたくない、っていうのが今の僕の本音かな?
フレイくんもさ、『厄災の魔王』としてのフレイくんと『ライトニング家次男』としてのフレイくんとで、見える世界が違ったでしょ?それはそれで楽しくなかった?」
「確かにな。でも、だったら何で今更俺に正体を明かした?」
「大事な要件であればある程、直接相手に会って依頼するのが礼儀だと思ったからだよ。それにフレイくんにはザボエルさんが影武者だってバレてる。一度騙すようなことをしているんだから、正体を明かすくらいのことはしないと、信頼は得られないと思ったんだ。」
「律儀な奴だな。ってか、そもそも影武者なんか使わなくても、お前が直接表に立った方がいいんじゃないか?曲がりなりにもドーワ侯国の次期君主だしな。」
「僕がビジネスを始めた当初は、僕自らが交渉の場に立つのは無理があった。なんせ僕がビジネスを始めたのは生後間もなくのことだったからね。いくら現君主の息子とは言え、赤ん坊のセールストークを真面目に聞く人はいないでしょ?だから、僕の代わりに色んな人と関わり合いをもって、交渉してくれる人が必要だった。そんな人を探していた時にザボエルさんと出会ったんだ。」
「つーか、赤ん坊の時からビジネスするとか正気か?そもそも、赤ん坊のお前がザボエルと会話なんかできたのか?」
「そこは姉さん、もといソラさんの魔術で会話できるようにしてもらったから、問題なかったよ。
そもそも僕が赤ん坊の時点で起業する気になったのは、ソラさんの話を聞いたからなんだ。
僕の魂に根源があるからか、ソラさんは僕のことをリクさんと勘違いしてね。誤解が解けた後にお互い自己紹介をしたんだ。その時に、僕ら異世界人の魂は死後も記憶がリセットされないことを教えてもらったんだ。
これはマズいと思った僕は、ソラさんと一緒に異界穴を開けることにしたのさ。ソラさんは技術担当、僕は開発資金調達担当、って感じで役割分担してね。元々前世でも商売は好きだったし、がむしゃらにやっていたら、いつの間にかこんなに大きな商会になっていたよ。」
「へぇ、良かったな。それで、異界穴研究はあれから進んだのか?」
「うん。というか、今日フレイくんを呼び出したのはその件でお願いしたかったからなんだ。ソラさんとザボエルさんを筆頭にみんなが開発してくれたお陰で、死の大地でも移動できる服と車が完成したんだ。とはいえ、この服と車はフレイくんがいなかったら意味がないんだけどね。」
「俺が協力するかもわからないのに、よく作ったな。」
「ハハハ。確かに、前まではクドージンさんと連絡を取る手段がほぼ無かったから、どうにかしてクドージンさんと接点が持てないか考えていたよ。
最悪、無理だった場合のプランも考えてはいたけど、そうなると開発費用が国家予算レベルで高くなってね。そっちもそっちで、あまり現実的じゃないから、フレイくんが協力してくれたら凄く助かるよ。」
「ダイフク商会がこれだけ大きけりゃ、国家予算ぐらい稼げるだろ?」
「フレイくん、それは言い過ぎだよ。いくらダイフク商会でも、国家予算レベルの額を稼ぐとなったら、あと十数年はかかるよ。」
あと十数年で稼げるのかよ!
「そうかよ。まぁ、いいぜ。別に今更断る理由もないしな。で、俺は何をすればいいんだ?一緒に行けばいいのか?」
「うん。死の大地へ移動できる車には宇宙服みたいな特殊な服が繋がっているんだけど、僕とソラさん、それからフレイくんの3人でその服を着て車に乗るんだ。
とは言っても、フレイくんが着る服と僕達が着る服は役割が違うんだよね。フレイくんに着てもらう服は、着用者の魔力を吸収してそのエネルギーを車や僕達に供給する役割があるんだ。一方の僕とソラさんの服はフレイくんから供給された魔力を効率よく受け取るための服なんだ。」
「ちょっと待て。お前ら二人がその服で俺から命属性の魔力を受け取るから死の大地でも大丈夫だ、っていう理屈はわかる。でもそれだと俺はどうなる?死ぬんじゃないか?」
「それは大丈夫だよ。フレイくんは自分自身から出ている命属性の魔力があるから、仮に今、死の大地に入っても死ぬことはないよ。それにさっき説明した服も、フレイくんの命を脅かすほどの魔力は吸収しないから安心して。」
「なら、まぁいいか。」
「それで、さっき説明した車に乗って、死の大地にある龍脈を順番に回るんだ。ソラさんが龍脈を復活させて、僕達やソラさんの世界と繋がる異界穴が開けるか、1つずつチェックするんだ。それで最終的にはこの星の龍脈を全て復活させる予定だよ。」
「なるほどな。....ん?そういえば前にカタリーナと話した時、龍脈が復活した後の土地についてなんか言ってなかったか?異界穴の研究を無闇に明かせないとか何とか言ってた気がするけど、そっちはどうなったんだ?」
「あぁ、その問題なら解決してるよ。実は停戦条約が結ばれた後の4ヶ国会議で、龍脈の復活させようという話が出たんだ。
その際、聖ソラトリク教団が信頼回復のために技術提供を持ちかけてきてね。そこでドーワ侯国も前から龍脈復活のために研究していたことを明かして、各国で合同研究をする流れになったんだ。
もちろん、龍脈が復活したらその土地の所有権についても後日4ヶ国で話し合う前提でね。
ここまではカタリーナさんが以前提案していた通りに事が運んだよ。
合同研究に移行した後、さっきフレイくんに話した死の大地を移動できる車がほぼ完成していることを報告したんだ。その際、リスクや死亡率が高いことを報告したら、どこの国も乗りたがらなくて、結局ダイフク商会側で搭乗者を選ぶことになったよ。
それで、僕ら3人を搭乗者に選定したんだ。
ちなみに異界穴研究に関しては、悪用や二次被害を起こさないためにも他国には秘密のままにしておくよ。
だから異界穴は、龍脈の封印を解く時に、各国に内緒でこっそり開ける予定なんだ。
異界穴を開ける装置は、なるべくコンパクトに設計した上で、認識阻害機能もつける予定だから、後から他の人が確認しに来ても気づかれないと思うよ。」
ホリーがそこまで言うんだったら、大丈夫なのか?
龍脈を復活した後の土地だの、異界穴研究は秘密にしておくだの、まどろっこしいことを考えずにさっさと龍脈を復活させれたらいいのに。
とりあえず俺はホリー達と一緒に、龍脈を復活させに行くことになった。
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王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
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ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
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ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
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「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
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「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
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