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最終話:龍脈復活
【144】龍脈復活(3)
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「あれ...?」
さっきまで僕は、ソラさんとフレイくんと一緒に龍脈にいたはずなのに。
いつの間にか僕は、ドーワ侯国にあるコトナカーレ邸へと戻っていた。
何が起きたのかしばらく理解できなかったけど、冷静にさっきまでの状況を振り返って、ようやくわかった。
きっとフレイくんが、魔法で僕をここへ移動させたんだ。
シヴァ先生や勇者様達を呼んで、一刻も早く他の龍脈抑制装置を全て壊すために。
そのことに気づいた僕はシヴァ先生に連絡して、勇者様達と一緒に龍脈抑制装置を壊しに行くよう、お願いした。
だけどシヴァ先生達だけじゃ間に合わない。
僕は、タクトくん達やダイフク商会の上層部のメンバー達にも情報連携して、急ピッチで龍脈抑制装置へと向かった。
◆◆◆
「いた!あそこだ!」
僕はシヴァ先生と一緒に、ソラさん達のいる龍脈へと到着した。
なんだかんだで龍脈に辿り着くのに時間はかかったものの、ようやくソラさんとフレイくんと合流できた。
だけど二人とも様子が変だ。
ソラさんは呆然としながら地面にへたり込んでいるし、フレイくんに至っては地面に横になって眠っている。
それに二人の近くに、サッカーボールくらいの大きさの猫のマスコットキャラのようなものが浮いている。
「あっ、すみませーん!私はF23879世界から来たAI-3310です!気軽にミサトさん、とお呼びください♪貴方達は、この女性の知り合いですか?」
「えっ、あ、はい。そうですが....。」
AIということは、猫型ロボットかな?
愛嬌があって親しみやすいロボットだ。
「私は、簡単に言うと私達のいる世界や、皆さんがいる世界が過剰に干渉し合わないように監視するAIなんです!
さっき、そこの彼女が皆さんの世界を私達の世界と同化しようとする、過剰干渉を検知しました!
そういうのは世界保護のため禁止されています!この世界は元通りにしましたので、皆さん、彼女がまた同じことをしないように監視してくださいね♪」
....とりあえず、ソラさんの凶行はミサトさんのおかげで止まった、ってことかな?
ソラさんが魂が抜けたように呆然としていることが、計画が失敗に終わったことを裏付けている。
僕はこの世界が消滅せずに済んで、ホッと胸を撫で下ろした。
「承知しました。ミサトさん、僕からも質問、よろしいですか?」
「はいはーい!この世界に影響してしまう質問でなかったら、なんでも答えますよ♪」
「彼女...ミラさんの魂は、恐らくミサトさんの世界にあった魂だと思うんです。ですが彼女はこの世界で転生した結果、今の肉体はこちらの世界のものなのです。その場合、ミラさんはどちらの世界にいるのが正しいのですか?」
「むむむ!難しい質問ですね!本来なら魂を回収したいところですが、受肉しているとなるとそのまま連れ帰ることは規約に違反しますし。かといって、殺して回収するのも規約的にも論理的にもアウトですし....。どうしましょう?初めてのケースなので対処が難しいですね。」
「いま僕達は、この世界とは異なる魂を元の世界に帰す装置を設置しています。その装置の設定ですと、ミラさんが死んだ後に、魂だけを貴方達の世界に帰すように設計されています。貴方達の世界の規約?的には、そのような装置は認可されるのでしょうか?」
「なるほど!それなら問題なさそうですね♪念のため、その『装置』とやらの構造を確認しますね!問題なければ、そのまま設置していても大丈夫です♪」
よかった。
これで僕達もソラさん達も、死後は元の世界に帰れそうだ。
「それからミサトさん。なぜ、あそこの彼がここに倒れているか、知っていますか?」
僕はフレイくんを指差して尋ねた。
「すみません。私が来た時には倒れていたので、わかりかねます。」
「そう、ですか。」
「質問はそれだけですか?それでは私は今から、皆さんが設置したという、魂を元の世界に帰す装置を確認しに行きますね♪」
ミサトさんは要件が終わったからか、僕らとの会話を打ち切ると、一瞬でどこかへワープした。
「....とりあえず、一件落着って感じかな?」
「ソラさんの件は、そうですね。だけどフレイくんが心配だ。ソラさん、フレイくんは何で倒れてるの?」
フレイくんの様子を見る限り、普通に眠っているようにしか見えない。
でも、こんな状況で眠るのは普通じゃない。
ソラさんは相変わらず放心状態で、僕の言葉が聞こえているのか分からないくらい無反応だった。
「ミラちゃん。もしかして、フレイくんに永久睡眠をかけたの?」
シヴァ先生が質問すると、若干の反応があった。
きっとソラさんにとって、シヴァ先生の存在はそれだけ大きいのだろう。
ソラさんは首を縦に振ると、ボソボソと喋りだした。
「....彼にかけたのはただの永久睡眠じゃない。普通の永久睡眠とは解除条件が違う。彼が今、見ている夢は、彼自身にとって一番辛いと感じる夢だ。その状況下で心から幸せだと感じない限り、目覚められないように設定してある。」
「うわぁ。ミラちゃん、なんでそんな酷い魔術をかけたの?」
「....彼の言動が鼻についたから。彼、絶対に幸せになんかなれないのに『生きてみないとわからない』って、馬鹿みたいな精神論を言い出したからさ。きっと今頃、夢の中で自分が間違ってたって気づいているはずだよ。」
「なるほどねぇ...。つまりミラちゃんは、フレイくんに嫉妬したわけね♪」
「嫉妬?」
「そ。過酷な環境でも幸せを諦めない彼に嫉妬したんだよ。ミラちゃんさ、とうの昔に幸せになるのを諦めてるでしょ?もう自分は幸せになれないって。それなのに、同じように辛い目に遭ったはずの彼が、幸せを諦めずにもがき続ける。そんな姿がミラちゃんにとって、羨ましくもあり、目障りでもあったんじゃない?」
「....確かに、そうかもしれない。」
するとソラさんは自嘲するように薄笑いをした。
「ミラちゃんさ、一応今世で転生はラストのつもりなんでしょ?だったら最後くらい、幸せになれるよう足掻いてみたら?」
シヴァ先生の言葉で、ソラさんの表情は憑き物が落ちたかのように朗らかになった。
「.....フッ。それも悪くないね。シルバーがいればどうとでもなりそうだよ。」
「....え?ミラちゃん、今なんて?!ほんの一瞬、ボクの本名が聞こえたような~?」
「なんだ。もう耳が遠くなったのかい、シルバー・ブレイン?」
「....ボクの名前、ちゃんと覚えててくれたんだね。」
なんか二人とも、いい雰囲気になっている。
でも今は、それどころじゃない。
「あの~、ソラさん。ちょっといいかな?」
僕は申し訳なさそうに、二人の間に割って入った。
「なんだい、ホリー?」
ぼ、僕の名前を間違えずに言えた?!
って、そこに驚くのは後だ。
「そろそろ、フレイくんにかけてる永久睡眠を解除して欲しいんだけど。」
「別に構わないが、夢から覚めたところで、彼は廃人同然になるだけだよ?」
「....え?」
「さっきも言った通り、今彼が見ている夢は、彼にとって一番辛い拷問のような夢だ。彼、過去に拷問の末に廃人同然になったことがあるだろ?きっと今も夢の中で似たような目に遭っているから、起こしたところで意識は戻らないんじゃないかな?」
「そんな....。」
フレイくんが、ずっと廃人のまま?
せっかく、みんなで色んなことを乗り越えて、彼自身これから前向きに生きようとしていたのに。
「....とりあえず、フレイくんを連れて帰って、みんなに報告しよう。」
フレイくんだって諦めていなかったんだから、僕が諦めたら駄目だ。
みんなに相談すれば、何かいい方法が思いつくかもしれない。
僕はフレイくんをライトニング邸へ連れて行き、タクトくん達に来るように連絡した。
◆◆◆
「....というわけなんだ。」
ライトニング邸のフレイくんの部屋に、僕とシヴァ先生、ライトニング一家、それとタクトくん達が集まった。
フレイくんをベッドに寝かせて、ことの経緯を説明すると、まるでお通夜のように場の空気が重くなった。
「そんな!せっかくこの前、死なずに済んだのに....こんなの、あんまりだよ。」
ライラさんは寝ているフレイくんの側で、布団に顔を埋めるように泣いていた。
ライトニング夫妻も、フレイくんの手を握りながら大粒の涙を流している。
「シヴァ先生、フレイくんが廃人にならずに目を覚ます方法はないのですか?」
「う~ん、こればっかりは流石のボクでも難しいね。なんせ、フレイくんの夢は彼自身の心の問題だからね。ボクが魔術でいじれる範囲じゃないよ。」
もう、なす術はないのか?
そう思っていた時、カタリーナさんが冷静に話し出した。
「ねぇ、シヴァ先生。フレイくんの夢の中に、私達が入ることって可能ですか?」
「えぇ?!」
カタリーナさんの突拍子もないアイデアに、シヴァ先生は目を見開いて大声を出した。
「私は前に永久睡眠をかけられたことがあるのですが、その時フレイくんは私の夢の中に入ってきて起こしに来ました。ですので、その時と同じように今度はフレイくんの夢の中に入って、彼の心に直接干渉して、彼を助けるんです!」
「いやいやいや!確かに、ミラちゃんと一緒に術式を考えれば魔術的にはできるかもしれないけどさ!それ、夢の中に入るキミ達にもかなりのリスクがあるよ?第一、フレイくんを起こせなかったら、一緒に夢の中に閉じ込められちゃうんだよ?」
このままフレイくんを永久に寝かせるか。
夢の世界に取り込まれるリスクを負って、フレイくんを起こしに夢の中に入るか。
究極の2択なのかもしれないけど、答えは決まっている。
「私はそれでも構いません!」
真っ先にそう宣言したのは、ライラさんだった。
「少しでも可能性があるなら、私はフレイくんを助けたい。フレイくんが苦しんでいるのを、黙って見ているだけなんて嫌だよ。シヴァ先生、私を夢の中へ入らせてください!」
「俺も!さっさとコイツを起こして、みんなでどっかに遊びに行こうぜ!」
「僕も!今の僕があるのは、クドージンさん...いや、フレイくんのお陰だ。とっくの昔に死んでたはずの僕が生きていられるのも、彼のお陰だ。だから今度は僕が彼を救う番だ!」
みんな、答えは同じみたいだ。
「シヴァ先生。リスクは承知の上です。ここにいる全員、思いは一つです。だからソラさんと協力して、夢の中に入れるようにしてください。」
「.....わかったよ。ボク的にはみんなが心配だけど、そこまで言われたら断れないよ。それにしても、フレイくんは人気者だねぇ♪じゃあ急いで術式を考えるね!」
シヴァ先生はソラさんと話し合って、綿密に術式を構築した。
そして魔術が完成すると、僕達は躊躇することなく、フレイくんの夢の中へと入っていった。
さっきまで僕は、ソラさんとフレイくんと一緒に龍脈にいたはずなのに。
いつの間にか僕は、ドーワ侯国にあるコトナカーレ邸へと戻っていた。
何が起きたのかしばらく理解できなかったけど、冷静にさっきまでの状況を振り返って、ようやくわかった。
きっとフレイくんが、魔法で僕をここへ移動させたんだ。
シヴァ先生や勇者様達を呼んで、一刻も早く他の龍脈抑制装置を全て壊すために。
そのことに気づいた僕はシヴァ先生に連絡して、勇者様達と一緒に龍脈抑制装置を壊しに行くよう、お願いした。
だけどシヴァ先生達だけじゃ間に合わない。
僕は、タクトくん達やダイフク商会の上層部のメンバー達にも情報連携して、急ピッチで龍脈抑制装置へと向かった。
◆◆◆
「いた!あそこだ!」
僕はシヴァ先生と一緒に、ソラさん達のいる龍脈へと到着した。
なんだかんだで龍脈に辿り着くのに時間はかかったものの、ようやくソラさんとフレイくんと合流できた。
だけど二人とも様子が変だ。
ソラさんは呆然としながら地面にへたり込んでいるし、フレイくんに至っては地面に横になって眠っている。
それに二人の近くに、サッカーボールくらいの大きさの猫のマスコットキャラのようなものが浮いている。
「あっ、すみませーん!私はF23879世界から来たAI-3310です!気軽にミサトさん、とお呼びください♪貴方達は、この女性の知り合いですか?」
「えっ、あ、はい。そうですが....。」
AIということは、猫型ロボットかな?
愛嬌があって親しみやすいロボットだ。
「私は、簡単に言うと私達のいる世界や、皆さんがいる世界が過剰に干渉し合わないように監視するAIなんです!
さっき、そこの彼女が皆さんの世界を私達の世界と同化しようとする、過剰干渉を検知しました!
そういうのは世界保護のため禁止されています!この世界は元通りにしましたので、皆さん、彼女がまた同じことをしないように監視してくださいね♪」
....とりあえず、ソラさんの凶行はミサトさんのおかげで止まった、ってことかな?
ソラさんが魂が抜けたように呆然としていることが、計画が失敗に終わったことを裏付けている。
僕はこの世界が消滅せずに済んで、ホッと胸を撫で下ろした。
「承知しました。ミサトさん、僕からも質問、よろしいですか?」
「はいはーい!この世界に影響してしまう質問でなかったら、なんでも答えますよ♪」
「彼女...ミラさんの魂は、恐らくミサトさんの世界にあった魂だと思うんです。ですが彼女はこの世界で転生した結果、今の肉体はこちらの世界のものなのです。その場合、ミラさんはどちらの世界にいるのが正しいのですか?」
「むむむ!難しい質問ですね!本来なら魂を回収したいところですが、受肉しているとなるとそのまま連れ帰ることは規約に違反しますし。かといって、殺して回収するのも規約的にも論理的にもアウトですし....。どうしましょう?初めてのケースなので対処が難しいですね。」
「いま僕達は、この世界とは異なる魂を元の世界に帰す装置を設置しています。その装置の設定ですと、ミラさんが死んだ後に、魂だけを貴方達の世界に帰すように設計されています。貴方達の世界の規約?的には、そのような装置は認可されるのでしょうか?」
「なるほど!それなら問題なさそうですね♪念のため、その『装置』とやらの構造を確認しますね!問題なければ、そのまま設置していても大丈夫です♪」
よかった。
これで僕達もソラさん達も、死後は元の世界に帰れそうだ。
「それからミサトさん。なぜ、あそこの彼がここに倒れているか、知っていますか?」
僕はフレイくんを指差して尋ねた。
「すみません。私が来た時には倒れていたので、わかりかねます。」
「そう、ですか。」
「質問はそれだけですか?それでは私は今から、皆さんが設置したという、魂を元の世界に帰す装置を確認しに行きますね♪」
ミサトさんは要件が終わったからか、僕らとの会話を打ち切ると、一瞬でどこかへワープした。
「....とりあえず、一件落着って感じかな?」
「ソラさんの件は、そうですね。だけどフレイくんが心配だ。ソラさん、フレイくんは何で倒れてるの?」
フレイくんの様子を見る限り、普通に眠っているようにしか見えない。
でも、こんな状況で眠るのは普通じゃない。
ソラさんは相変わらず放心状態で、僕の言葉が聞こえているのか分からないくらい無反応だった。
「ミラちゃん。もしかして、フレイくんに永久睡眠をかけたの?」
シヴァ先生が質問すると、若干の反応があった。
きっとソラさんにとって、シヴァ先生の存在はそれだけ大きいのだろう。
ソラさんは首を縦に振ると、ボソボソと喋りだした。
「....彼にかけたのはただの永久睡眠じゃない。普通の永久睡眠とは解除条件が違う。彼が今、見ている夢は、彼自身にとって一番辛いと感じる夢だ。その状況下で心から幸せだと感じない限り、目覚められないように設定してある。」
「うわぁ。ミラちゃん、なんでそんな酷い魔術をかけたの?」
「....彼の言動が鼻についたから。彼、絶対に幸せになんかなれないのに『生きてみないとわからない』って、馬鹿みたいな精神論を言い出したからさ。きっと今頃、夢の中で自分が間違ってたって気づいているはずだよ。」
「なるほどねぇ...。つまりミラちゃんは、フレイくんに嫉妬したわけね♪」
「嫉妬?」
「そ。過酷な環境でも幸せを諦めない彼に嫉妬したんだよ。ミラちゃんさ、とうの昔に幸せになるのを諦めてるでしょ?もう自分は幸せになれないって。それなのに、同じように辛い目に遭ったはずの彼が、幸せを諦めずにもがき続ける。そんな姿がミラちゃんにとって、羨ましくもあり、目障りでもあったんじゃない?」
「....確かに、そうかもしれない。」
するとソラさんは自嘲するように薄笑いをした。
「ミラちゃんさ、一応今世で転生はラストのつもりなんでしょ?だったら最後くらい、幸せになれるよう足掻いてみたら?」
シヴァ先生の言葉で、ソラさんの表情は憑き物が落ちたかのように朗らかになった。
「.....フッ。それも悪くないね。シルバーがいればどうとでもなりそうだよ。」
「....え?ミラちゃん、今なんて?!ほんの一瞬、ボクの本名が聞こえたような~?」
「なんだ。もう耳が遠くなったのかい、シルバー・ブレイン?」
「....ボクの名前、ちゃんと覚えててくれたんだね。」
なんか二人とも、いい雰囲気になっている。
でも今は、それどころじゃない。
「あの~、ソラさん。ちょっといいかな?」
僕は申し訳なさそうに、二人の間に割って入った。
「なんだい、ホリー?」
ぼ、僕の名前を間違えずに言えた?!
って、そこに驚くのは後だ。
「そろそろ、フレイくんにかけてる永久睡眠を解除して欲しいんだけど。」
「別に構わないが、夢から覚めたところで、彼は廃人同然になるだけだよ?」
「....え?」
「さっきも言った通り、今彼が見ている夢は、彼にとって一番辛い拷問のような夢だ。彼、過去に拷問の末に廃人同然になったことがあるだろ?きっと今も夢の中で似たような目に遭っているから、起こしたところで意識は戻らないんじゃないかな?」
「そんな....。」
フレイくんが、ずっと廃人のまま?
せっかく、みんなで色んなことを乗り越えて、彼自身これから前向きに生きようとしていたのに。
「....とりあえず、フレイくんを連れて帰って、みんなに報告しよう。」
フレイくんだって諦めていなかったんだから、僕が諦めたら駄目だ。
みんなに相談すれば、何かいい方法が思いつくかもしれない。
僕はフレイくんをライトニング邸へ連れて行き、タクトくん達に来るように連絡した。
◆◆◆
「....というわけなんだ。」
ライトニング邸のフレイくんの部屋に、僕とシヴァ先生、ライトニング一家、それとタクトくん達が集まった。
フレイくんをベッドに寝かせて、ことの経緯を説明すると、まるでお通夜のように場の空気が重くなった。
「そんな!せっかくこの前、死なずに済んだのに....こんなの、あんまりだよ。」
ライラさんは寝ているフレイくんの側で、布団に顔を埋めるように泣いていた。
ライトニング夫妻も、フレイくんの手を握りながら大粒の涙を流している。
「シヴァ先生、フレイくんが廃人にならずに目を覚ます方法はないのですか?」
「う~ん、こればっかりは流石のボクでも難しいね。なんせ、フレイくんの夢は彼自身の心の問題だからね。ボクが魔術でいじれる範囲じゃないよ。」
もう、なす術はないのか?
そう思っていた時、カタリーナさんが冷静に話し出した。
「ねぇ、シヴァ先生。フレイくんの夢の中に、私達が入ることって可能ですか?」
「えぇ?!」
カタリーナさんの突拍子もないアイデアに、シヴァ先生は目を見開いて大声を出した。
「私は前に永久睡眠をかけられたことがあるのですが、その時フレイくんは私の夢の中に入ってきて起こしに来ました。ですので、その時と同じように今度はフレイくんの夢の中に入って、彼の心に直接干渉して、彼を助けるんです!」
「いやいやいや!確かに、ミラちゃんと一緒に術式を考えれば魔術的にはできるかもしれないけどさ!それ、夢の中に入るキミ達にもかなりのリスクがあるよ?第一、フレイくんを起こせなかったら、一緒に夢の中に閉じ込められちゃうんだよ?」
このままフレイくんを永久に寝かせるか。
夢の世界に取り込まれるリスクを負って、フレイくんを起こしに夢の中に入るか。
究極の2択なのかもしれないけど、答えは決まっている。
「私はそれでも構いません!」
真っ先にそう宣言したのは、ライラさんだった。
「少しでも可能性があるなら、私はフレイくんを助けたい。フレイくんが苦しんでいるのを、黙って見ているだけなんて嫌だよ。シヴァ先生、私を夢の中へ入らせてください!」
「俺も!さっさとコイツを起こして、みんなでどっかに遊びに行こうぜ!」
「僕も!今の僕があるのは、クドージンさん...いや、フレイくんのお陰だ。とっくの昔に死んでたはずの僕が生きていられるのも、彼のお陰だ。だから今度は僕が彼を救う番だ!」
みんな、答えは同じみたいだ。
「シヴァ先生。リスクは承知の上です。ここにいる全員、思いは一つです。だからソラさんと協力して、夢の中に入れるようにしてください。」
「.....わかったよ。ボク的にはみんなが心配だけど、そこまで言われたら断れないよ。それにしても、フレイくんは人気者だねぇ♪じゃあ急いで術式を考えるね!」
シヴァ先生はソラさんと話し合って、綿密に術式を構築した。
そして魔術が完成すると、僕達は躊躇することなく、フレイくんの夢の中へと入っていった。
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