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最終話:龍脈復活
【145】龍脈復活(4)
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....ここは?
薄暗くて不気味な部屋。
四肢を拘束されている感覚は、辛うじてある。
首につけられているものも、きっと拘束魔道具だろう。
あぁ、思い出した。
俺はさっきまで、ありもしない幸せな夢を見ていたんだ。
優しくて愛情溢れる家族。
ずっと一緒にいた、大切な友人達。
充実した学園生活。
そんな漫画にしかないような世界で、幸せに暮らす俺。
いくら夢見ても、絶対に叶うことのない絵空事の世界。
なんで俺は、そんな夢を見てしまったんだろう。
そんな夢を見たら、これから始まる拷問に耐えられなくなってしまうのに。
「今日は君の臓器が、どう再生されるのか実験してみようか。」
その声が天から響くと、俺の胴体は縦に真っ直ぐ切れ、そこから抉られるようにあらゆる臓器が出てきた。
「痛ぁぁぁ!!!」
痛い痛い痛い!!
早く、早く終わってくれ!!
「次は細かく切り刻んだら、どう修復されるのかを観察してみようか。」
「ぁああああああああ!!!!!」
早く、早く終われ!!
痛い!
痛い痛い!
気が狂いそうだ!
「酸に漬けたら、溶けて消えるのか、残るのか試してみよう」
「熱っつぁぁぁつい!!!」
終われ!
終われ終われ!
.....死なせてくれ。
......。
...............。
......................。
「魔物の臓器を移植したら、どのように機能するのか見てみるか。」
...........。
「他の奴隷の頭をくっつけたら、くっつけた奴隷の意識は健在するのだろうか?」
...........。
「待てよ。美しい魔物のパーツを組み合わせていけば、最高に美しい魔物が作れるんじゃないか?!よし。お前は私が素晴らしい魔物へと作り変えてやろう。」
...........。
......。
...............。
......................。
......................。
...............。
......?
.....あたた、かい?
.....みず?
........なみだ?
...........泣き声?
あ、ライラか......。
涙と鼻水で、ぐっちゃぐちゃだ。
ぐっちゃぐちゃ。
「......ップ!
アハハハハハッ!」
ライラの顔、面白すぎだろ。
「お前、その顔!汚くて、不細工だな!」
ライラの顔がおかしくて、一日中笑っていられそうだ。
「フレイくん...!」
するとライラは涙を拭って、いつもの笑顔を俺に向けた。
あぁ....。
「やっぱ俺、お前の笑った顔、好きだわ。」
「フレイくんっ!」
ライラは感極まって、俺を強く抱きしめた。
霧がかかったようにボケっとしている頭で、俺は今どこにいるのかを思い出す。
....そういえば、ミラに永久睡眠をかけられた気がする。
ってことは、ここは、夢?
「おーい!フレイ!やっと起きたか?」
顔を上げると、そこにはタクトもいた。
「宮藤くんだった時の夢も酷かったけど、ここの方が相当ヤバいわね。フレイくん、大丈夫だった?」
「フレイ、もう起きてるんだったら、さっさと現実に帰るぞ。また父さんと母さんを泣かせやがって。まったく、お前は手にかかる弟だよ。」
カタリーナ達や兄さん達もいる。
「ここは、俺の夢、だよな....?」
「そうだよ!」
「私達、フレイくんを起こしに夢の中入ってきたの!」
「俺を、起こしに?」
それだけのために、わざわざみんな来てくれたのか?
俺があのまま放心状態だったら、一緒に出られなくなっていたかもしれないのに?
そんな危険を冒してまで、俺を.....?
「.....みんな、馬鹿だなぁ。」
俺は呆れて、思わず笑った。
そこでまた意識が途切れ、次に目が覚めたら、俺はライトニング邸の自室のベッドで横になっていた。
上半身を起こして周りを見ると、さっき夢の中で会ったみんなが、俺を囲うようにして寝ている。
「....ハハハ。コレ、どういう状況だよ。」
その光景が何だか面白くて、俺は笑いが止まらなかった。
◆◆◆
この世界の龍脈が全て元通りになって、4年。
俺は今年で20歳になった。
ライトニング領のライトニング邸の近くに建てた屋敷に、俺は今住んでいる。
この4年間、色んなことがあった。
俺は学校での成績と魔法の才能が評価されて、国から「現人神」の称号をもらった。
国からたまに指示された通りに魔法を使ってやるだけで、毎月、遊んでも使い切れない程のお金が送られてくる。
そのお金だけで生活できるせいで、ぶっちゃけ毎日暇だ。
暇つぶしに兄さんの仕事を手伝ったり、センガの種命地復興を手伝ったりしている。
タクトはキョウシュー帝国一の、凄腕冒険者として日々魔物狩りや新天地開拓に勤しんでいる。
本人はそんな現状に「これだけ実績があるのに女にモテないのはなぜなんだ!」と嘆いていたが、モテない理由は別にあるんじゃないか?
カタリーナは殿下と結婚して、晴れて二人は国王陛下と王妃になった。
殿下が即位してから、この国は亜人差別を無くし、他国との融和を積極的に進めるようになった。
キメイラ帝国の王妃がアリーシャに、ドーワ侯国の君主がホリーになったからか、ディシュメイン王国はキメイラ帝国とドーワ侯国とも友好国になった。
そのせいか、ディシュメイン王国は急速に近代化が進み、奴隷ではない亜人達も以前より遥かに増えた。
ちなみにカタリーナは来年、殿下との子どもが生まれるらしい。
そのため、今ディシュメイン王国中が祝福ムードだ。
ゼルは学校卒業後、なんと教師になった。
元々アイツはタクト並みに座学がダメダメだったが、3年の後半から本気を出した結果、成績が嘘のように急激に伸びで念願の教師になれた。
ゼルは魔人だし、キレやすいから大丈夫か?と思ったが、案外生徒に人気があるらしい。
ホリーはドーワ侯国の君主をする傍ら、ダイフク商会の会長として毎日せわしなく働いているらしい。
ホリー曰く「限られた財源の中で国を良くするのは難しい」らしく、しょっちゅう「ダイフク商会が善意で国に納税」という形で予算を補填しているらしい。
クソ女、もといミラは今もダイフク商会の研究員として働いているそうだ。
龍脈が復活した後、シヴァも教師を辞めて一緒に研究員になったらしく、二人は毎日一緒に自由に研究しているらしい。
父さんと母さんは隠居して、兄さんは家督を継いで毎日ライトニング家のために働いている。
兄さんはじいちゃんの死後、アーロン商会も引き継いでいる。
父さんは「アニスはどちらも疎かにすることなく、むしろ業績を良くしている。本当に自慢の息子だ。」とべた褒めしていたが、兄さんの目は多忙なあまりに死んでいた。
その上、兄さんは近々キョウシュー帝国の侯爵令嬢と結婚することが決まっている。
一度相手の令嬢に会ったことがあるが、美人だがとにかく気の強い女で、結婚したら尻に敷かれることは容易に想像できた。
そして最後に、ライラは......。
「ねぇフレイくん。今日のお昼は近くにできたスシ屋さんに行かない?」
「寿司か。この辺にまで日本の飲食店が建つようになったんだな。ま、いいんじゃねーか?」
「やったぁ!」
今、俺の隣で昼飯のことを考えていた。
数ヶ月前から俺の屋敷に住んでいて、来週には式を挙げる予定だ。
プロポーズした時は死ぬほど恥ずかしかったが、あの頃はライラに縁談の話がかなり来ていたらしいし、何もせずに他の奴に取られるよりは数倍マシだ。
もうそろそろお昼時だ。
俺はライラの手を握って、一緒に寿司屋まで歩いて出かけた。
魔法で移動すれば一瞬だけど、こういう冗長的な時間を二人で過ごすのも悪くない。
「あと一週間、だね。」
「そうだな。」
「初めて会った時のこと、今でも思い出すよ。フレイくんがかけてくれた蘇生魔法は、暖かくて、優しくて、きっとこの魔法を使える人は素敵な人なんだろうなって思ったよ。」
「ハハ、俺が素敵な人?全くの見当違いじゃないか。」
「そんなことないよ。やっぱりフレイくんは、素敵な人だった。
色んなことでぶつかり合ったり、すれ違ったりしたこともあったけど、それでもフレイくんは私達に歩み寄ってくれた。
色んな困難もあったけど、それでも真剣に考えて、前を向いて生きようとするフレイくんはカッコいいと思う。
愛情表現が凄く不器用だなって思うけど、そういうところも私は好き。
だから今、一緒にいれることが、凄く幸せなの。」
「....そうかよ。」
「あっ、フレイくん、顔赤い!もしかして、照れてるの?」
「うるせぇ!」
「あはははは!フレイくんは私のこと、どう思っているの?」
「どうって、いきなり聞かれてもな。いつも勝手に俺に期待して、感謝して、好意を寄せてきて、変なヤツだと思ってる。」
「へ、変なヤツ?!」
「....でも、そんなお前だからこそ、お前だったらどんな俺でも受け入れてくれるんだろうなっていう謎の確信が持てる。だから、一緒にいて一番安心する。」
「そんなの、当たり前だよ。私はクドージンさんも、厄災の魔王さんも、フレイくんも、みんな大好きだよ。」
「....そうか。」
屈託のない笑顔で『好きだ』と言うライラを見ていると、ついこっちまで笑ってしまいそうな、ずっとその笑顔を見ていたいような、心が満たされるような、そんな不思議な感覚になる。
この不思議な感覚の正体には、もう気づいている。
ライラに対してだけ感じる、暖かいこの気持ち。
だけど、ライラにこの気持ちのことを、俺はちゃんと伝えられていない。
「ライラ」
「なぁに?」
「....やっぱり、何でもない。」
「えぇ~!気になる!何を言おうとしたの?」
言おうと思ったが、直前でやめた。
この気持ちを伝えるのは、来週にしよう。
これから先の人生も、きっと何度かライラ達と価値観の違いでぶつかり合うことがあるだろう。
過去のことで、俺に復讐しに来る奴らもいるかもしれない。
そんな時、俺はまた悩んで、苦しんで、怒って、逃げ出したくなるかもしれない。
それでも。
俺は絶対に、幸せを諦めない。
薄暗くて不気味な部屋。
四肢を拘束されている感覚は、辛うじてある。
首につけられているものも、きっと拘束魔道具だろう。
あぁ、思い出した。
俺はさっきまで、ありもしない幸せな夢を見ていたんだ。
優しくて愛情溢れる家族。
ずっと一緒にいた、大切な友人達。
充実した学園生活。
そんな漫画にしかないような世界で、幸せに暮らす俺。
いくら夢見ても、絶対に叶うことのない絵空事の世界。
なんで俺は、そんな夢を見てしまったんだろう。
そんな夢を見たら、これから始まる拷問に耐えられなくなってしまうのに。
「今日は君の臓器が、どう再生されるのか実験してみようか。」
その声が天から響くと、俺の胴体は縦に真っ直ぐ切れ、そこから抉られるようにあらゆる臓器が出てきた。
「痛ぁぁぁ!!!」
痛い痛い痛い!!
早く、早く終わってくれ!!
「次は細かく切り刻んだら、どう修復されるのかを観察してみようか。」
「ぁああああああああ!!!!!」
早く、早く終われ!!
痛い!
痛い痛い!
気が狂いそうだ!
「酸に漬けたら、溶けて消えるのか、残るのか試してみよう」
「熱っつぁぁぁつい!!!」
終われ!
終われ終われ!
.....死なせてくれ。
......。
...............。
......................。
「魔物の臓器を移植したら、どのように機能するのか見てみるか。」
...........。
「他の奴隷の頭をくっつけたら、くっつけた奴隷の意識は健在するのだろうか?」
...........。
「待てよ。美しい魔物のパーツを組み合わせていけば、最高に美しい魔物が作れるんじゃないか?!よし。お前は私が素晴らしい魔物へと作り変えてやろう。」
...........。
......。
...............。
......................。
......................。
...............。
......?
.....あたた、かい?
.....みず?
........なみだ?
...........泣き声?
あ、ライラか......。
涙と鼻水で、ぐっちゃぐちゃだ。
ぐっちゃぐちゃ。
「......ップ!
アハハハハハッ!」
ライラの顔、面白すぎだろ。
「お前、その顔!汚くて、不細工だな!」
ライラの顔がおかしくて、一日中笑っていられそうだ。
「フレイくん...!」
するとライラは涙を拭って、いつもの笑顔を俺に向けた。
あぁ....。
「やっぱ俺、お前の笑った顔、好きだわ。」
「フレイくんっ!」
ライラは感極まって、俺を強く抱きしめた。
霧がかかったようにボケっとしている頭で、俺は今どこにいるのかを思い出す。
....そういえば、ミラに永久睡眠をかけられた気がする。
ってことは、ここは、夢?
「おーい!フレイ!やっと起きたか?」
顔を上げると、そこにはタクトもいた。
「宮藤くんだった時の夢も酷かったけど、ここの方が相当ヤバいわね。フレイくん、大丈夫だった?」
「フレイ、もう起きてるんだったら、さっさと現実に帰るぞ。また父さんと母さんを泣かせやがって。まったく、お前は手にかかる弟だよ。」
カタリーナ達や兄さん達もいる。
「ここは、俺の夢、だよな....?」
「そうだよ!」
「私達、フレイくんを起こしに夢の中入ってきたの!」
「俺を、起こしに?」
それだけのために、わざわざみんな来てくれたのか?
俺があのまま放心状態だったら、一緒に出られなくなっていたかもしれないのに?
そんな危険を冒してまで、俺を.....?
「.....みんな、馬鹿だなぁ。」
俺は呆れて、思わず笑った。
そこでまた意識が途切れ、次に目が覚めたら、俺はライトニング邸の自室のベッドで横になっていた。
上半身を起こして周りを見ると、さっき夢の中で会ったみんなが、俺を囲うようにして寝ている。
「....ハハハ。コレ、どういう状況だよ。」
その光景が何だか面白くて、俺は笑いが止まらなかった。
◆◆◆
この世界の龍脈が全て元通りになって、4年。
俺は今年で20歳になった。
ライトニング領のライトニング邸の近くに建てた屋敷に、俺は今住んでいる。
この4年間、色んなことがあった。
俺は学校での成績と魔法の才能が評価されて、国から「現人神」の称号をもらった。
国からたまに指示された通りに魔法を使ってやるだけで、毎月、遊んでも使い切れない程のお金が送られてくる。
そのお金だけで生活できるせいで、ぶっちゃけ毎日暇だ。
暇つぶしに兄さんの仕事を手伝ったり、センガの種命地復興を手伝ったりしている。
タクトはキョウシュー帝国一の、凄腕冒険者として日々魔物狩りや新天地開拓に勤しんでいる。
本人はそんな現状に「これだけ実績があるのに女にモテないのはなぜなんだ!」と嘆いていたが、モテない理由は別にあるんじゃないか?
カタリーナは殿下と結婚して、晴れて二人は国王陛下と王妃になった。
殿下が即位してから、この国は亜人差別を無くし、他国との融和を積極的に進めるようになった。
キメイラ帝国の王妃がアリーシャに、ドーワ侯国の君主がホリーになったからか、ディシュメイン王国はキメイラ帝国とドーワ侯国とも友好国になった。
そのせいか、ディシュメイン王国は急速に近代化が進み、奴隷ではない亜人達も以前より遥かに増えた。
ちなみにカタリーナは来年、殿下との子どもが生まれるらしい。
そのため、今ディシュメイン王国中が祝福ムードだ。
ゼルは学校卒業後、なんと教師になった。
元々アイツはタクト並みに座学がダメダメだったが、3年の後半から本気を出した結果、成績が嘘のように急激に伸びで念願の教師になれた。
ゼルは魔人だし、キレやすいから大丈夫か?と思ったが、案外生徒に人気があるらしい。
ホリーはドーワ侯国の君主をする傍ら、ダイフク商会の会長として毎日せわしなく働いているらしい。
ホリー曰く「限られた財源の中で国を良くするのは難しい」らしく、しょっちゅう「ダイフク商会が善意で国に納税」という形で予算を補填しているらしい。
クソ女、もといミラは今もダイフク商会の研究員として働いているそうだ。
龍脈が復活した後、シヴァも教師を辞めて一緒に研究員になったらしく、二人は毎日一緒に自由に研究しているらしい。
父さんと母さんは隠居して、兄さんは家督を継いで毎日ライトニング家のために働いている。
兄さんはじいちゃんの死後、アーロン商会も引き継いでいる。
父さんは「アニスはどちらも疎かにすることなく、むしろ業績を良くしている。本当に自慢の息子だ。」とべた褒めしていたが、兄さんの目は多忙なあまりに死んでいた。
その上、兄さんは近々キョウシュー帝国の侯爵令嬢と結婚することが決まっている。
一度相手の令嬢に会ったことがあるが、美人だがとにかく気の強い女で、結婚したら尻に敷かれることは容易に想像できた。
そして最後に、ライラは......。
「ねぇフレイくん。今日のお昼は近くにできたスシ屋さんに行かない?」
「寿司か。この辺にまで日本の飲食店が建つようになったんだな。ま、いいんじゃねーか?」
「やったぁ!」
今、俺の隣で昼飯のことを考えていた。
数ヶ月前から俺の屋敷に住んでいて、来週には式を挙げる予定だ。
プロポーズした時は死ぬほど恥ずかしかったが、あの頃はライラに縁談の話がかなり来ていたらしいし、何もせずに他の奴に取られるよりは数倍マシだ。
もうそろそろお昼時だ。
俺はライラの手を握って、一緒に寿司屋まで歩いて出かけた。
魔法で移動すれば一瞬だけど、こういう冗長的な時間を二人で過ごすのも悪くない。
「あと一週間、だね。」
「そうだな。」
「初めて会った時のこと、今でも思い出すよ。フレイくんがかけてくれた蘇生魔法は、暖かくて、優しくて、きっとこの魔法を使える人は素敵な人なんだろうなって思ったよ。」
「ハハ、俺が素敵な人?全くの見当違いじゃないか。」
「そんなことないよ。やっぱりフレイくんは、素敵な人だった。
色んなことでぶつかり合ったり、すれ違ったりしたこともあったけど、それでもフレイくんは私達に歩み寄ってくれた。
色んな困難もあったけど、それでも真剣に考えて、前を向いて生きようとするフレイくんはカッコいいと思う。
愛情表現が凄く不器用だなって思うけど、そういうところも私は好き。
だから今、一緒にいれることが、凄く幸せなの。」
「....そうかよ。」
「あっ、フレイくん、顔赤い!もしかして、照れてるの?」
「うるせぇ!」
「あはははは!フレイくんは私のこと、どう思っているの?」
「どうって、いきなり聞かれてもな。いつも勝手に俺に期待して、感謝して、好意を寄せてきて、変なヤツだと思ってる。」
「へ、変なヤツ?!」
「....でも、そんなお前だからこそ、お前だったらどんな俺でも受け入れてくれるんだろうなっていう謎の確信が持てる。だから、一緒にいて一番安心する。」
「そんなの、当たり前だよ。私はクドージンさんも、厄災の魔王さんも、フレイくんも、みんな大好きだよ。」
「....そうか。」
屈託のない笑顔で『好きだ』と言うライラを見ていると、ついこっちまで笑ってしまいそうな、ずっとその笑顔を見ていたいような、心が満たされるような、そんな不思議な感覚になる。
この不思議な感覚の正体には、もう気づいている。
ライラに対してだけ感じる、暖かいこの気持ち。
だけど、ライラにこの気持ちのことを、俺はちゃんと伝えられていない。
「ライラ」
「なぁに?」
「....やっぱり、何でもない。」
「えぇ~!気になる!何を言おうとしたの?」
言おうと思ったが、直前でやめた。
この気持ちを伝えるのは、来週にしよう。
これから先の人生も、きっと何度かライラ達と価値観の違いでぶつかり合うことがあるだろう。
過去のことで、俺に復讐しに来る奴らもいるかもしれない。
そんな時、俺はまた悩んで、苦しんで、怒って、逃げ出したくなるかもしれない。
それでも。
俺は絶対に、幸せを諦めない。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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---------------
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