10 / 44
悪役令嬢のモデルは?
しおりを挟む
昼下がりの午後。
私はブーケと一緒に中庭で日向ぼっこをしながら、おしゃべりをしていた。
「はぁ。まただわ。」
最近、学校で妙な視線を感じる。
悪役令嬢だと散々陰で言われているので、侮蔑の目でジロジロ見られることには慣れていた。
だけど、この視線はソレとは少し違う。
ずっとつけ回すような、粘着質な感じの視線だ。
教室、食堂、廊下、中庭...。
どこにいても、時折感じるこの視線。
あまりにもしつこいので、昨日視線を感じた方向を睨んでみたが、私を見つめている相手は逃げるだけで姿を現さない。
「何なんだろうね、アイツ。」
度々感じる視線にブーケも苛立っていた。
いい加減、鬱陶しく感じてきたので、休み時間は生徒会室へ避難しようかしら?
ユミル殿下に相談して、生徒会室に避難させてもらおう。
私はその日の放課後、いつものように生徒会室へ行き、そのことを相談した。
◆◆◆
「なるほど。ジュリー嬢をつけ回す、不審な視線か。それは気になるね。」
早速ユミル殿下に相談すると、殿下は親身に私の話を聞いてくださった。
「ホント、困っているんですよ。ユミル殿下、何とかして下さい。このままだと、私もジュリーもイライラして悪魔憑きにされちゃいます。」
「それは大変だ。視線の相手を捕まえて、話を聞かないとね。」
「ですが捕まえると言われましても、相手は逃げ足が早く、なかなか捕まりません。」
「そっか。だったら作戦を立てよう。」
「作戦、ですか?」
「うん。ジュリー嬢、その視線を感じるタイミングは決まっているの?」
「いつも学校にいる時に視線を感じます。」
「ということは、この学校の生徒か教師か。視線を感じる時間帯や場所は、もう少し具体的に解る?」
「すみません、そこまではわかりません。ですが、学校にいる間は不定期に、頻繁に感じます。」
「う~ん...じゃあ、今は感じる?」
「流石に生徒会室までは追ってこないみたいです。」
「ということは、その人は今、生徒会室の外にいるってことだよね。もしかして外から、ここの窓を除いていたりして。」
ユミル殿下はそのような事を考えながら、窓から対面にある校舎を覗いた。
「あっ! もしかしてアレかな?」
「えっ! どこですか?!」
慌ててブーケと一緒に、殿下が指差す方向を窓から覗くも、既に人影は消えていた。
生徒会室になら安心と思っていたのに、ここも覗かれていたなんて。
私は思わずため息が出た。
「だけど、これで相手を捕まえる方法を思いついたよ。相手は生徒会室にいる時も覗いているってことは、逆にそのタイミングがチャンスだ。外から生徒会室の様子がわかる場所は限られているからね。今日は警戒されているだろうし、明日またチャレンジしよう。」
「はい!」
◆◆◆
翌日。
生徒会室に入った私は、殿下の指示に従い、殿下とブーケの三人でいつも通りに過ごしていた。
その間にジャズ先輩が隠れながら対面にある校舎へ移動し、生徒会室を覗く人物を捕まえるという作戦だ。
「これで相手が捕まればいいのですが。」
「大丈夫。ジャズを信じよう。」
「そうだよジュリー。いくら逃げ足の速いアイツでも、流石にジャズ先輩からは逃げられないでしょ。」
「だといいのだけれど。」
そんな心配をよそに、ジャズ先輩は小一時間後、生徒会室へ帰ってきた。
「おい、ジュリー! 捕まえたぞ。」
「すみません、すみません! 放してくださーい!」
ジャズ先輩が肩に担いでいたのは、見るからに小柄で愛らしい感じの女子生徒だった。
女子生徒はじたばた暴れていたが、剛腕なジャズ先輩の腕から逃げられないようだ。
「先輩、ナイス!」
「流石だ、ジャズ。」
「へへっ、どんなもんよ。」
ブーケと殿下が退路を塞ぐと、ジャズ先輩は椅子に座らせるように女子生徒を置いた。
「えぇ~っと、そのぉ......。」
女子生徒は私達に睨まれると、困惑して苦笑いをした。
淡いピンク色の髪と瞳の彼女は、小柄で華奢で、誰からも愛されそうな穏和な雰囲気の少女だった。
この娘、確か同じクラスの子だ。
名前は確かキャリー・シェリルだ。
接点が皆無でほとんど話すことが無いから、今の今まで気づかなかった。
「ねぇ貴女。同じクラスのキャリー・シェリルよね? 最近、私のことを熱心に観察していたけれども、私に何か用事でもあるのかしら?」
私は極力穏やかな口調で、優しく尋ねる。
だけど彼女は、そんな私に怯えながら、恐る恐る話した。
「えっと~、用事、というほど大層なものではありません。」
「だったら何?」
「ひぃ!」
ブーケが凄むと、キャリーは猫に睨まれた鼠のようにビクビクと震えた。
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
私達はただ尋ねているだけなのに、大袈裟に謝られても困る。
側から見たら、まるで私達がいじめているみたいじゃないの。
嗚呼、こんなことだから、いつも悪役令嬢だと陰で言われてしまうのね。
「ねぇ、キャリー。私達、怒っているわけではないのよ? ただ、ここ最近私を観察していた理由を知りたいだけなの。」
怖がらせないように笑顔で話しかけたけれど、それが逆に怖かったのか、彼女は今にも泣きそうなくらい怯えていた。
「あ? コイツ、なんか鞄に隠し持っているぞ。」
「あっ! ダメッ!」
ジャズ先輩はキャリーの鞄を強引に取り上げると、乱暴に中身を取り出した。
中から出てきたのは何枚かの資料だった。
もしかして、私を調査した内容でも書いているのかしら?
ジャズ先輩は無粋にも、嫌がる彼女を無視して資料を音読した。
「えっ~と、なになに?
『王子殿下と虐げられた私。
作・ジョニー・マロンズ』」
ジョニー・マロンズ?
どこかで聞いたことがあるような...?
「『君の、漆黒の髪も、宝石のように紅く煌めくその瞳も。誰がどう言おうと、僕は美しいと思う。心から、好きだ。』
その言葉は、まるで胸の奥に優しく触れる風のようだった。私のような存在に向けられるには、あまりにも暖かく、優しすぎる。
それでも、嘘ではないと感じられた。
『ユリル殿下……っ。悪魔のように醜悪な見目の私を、そう言ってくださるのは……殿下だけです。』
声が震えたのは、嬉しさからか、それとも長く抱えていた孤独が溶け出したせいなのか、自分でもわからない。
ユリル殿下は、静かに手を伸ばし、凛とした美しさを湛える指先で私の顎をそっと持ち上げた。視線が交わる。そこには恐れも、偽りもない。
そして彼は、何のためらいもなく、私の唇に、自らの唇を重ねた。
それは、誓いにも似た優しい口づけだった。」
私達は一体、何を聞かされているの?
先輩が大きな声で音読するせいで、キャリーは顔を真っ赤にして伏せている。
それより、漆黒の髪に紅い瞳って......まるで私のようだ。
「この内容って、まるでロマンス小説みたいじゃねえか。」
「しかもモデルは、明らかに僕とジュリー嬢だよね。」
先輩も殿下も、その内容に若干、引いていた。
かく言う私も、勝手にモデルにされた上に、殿下と恋仲という設定にされたので、彼女のことが少し不気味で気持ち悪いと感じた。
「まさか、コレを書くためにジュリーをつけ回していたってこと?!」
「えっと...あの……ハイ、そうです。」
消え入りそうな声で、とうとう彼女は自白した。
どおりで視線から、ねっとりとした不気味な何かを感じたワケね。
「貴女、何か勘違いしているようだけれども、私と殿下はそういう関係ではないのよ?」
「別に構いません。ジュリー様が、ユミル殿下やカイル殿下と一緒に微笑ましく話されているだけで目の保養になります。それだけで、私の妄想が膨らみますので。」
勝手に妄想の肥やしにされても困る。
「ちょっと待って! ジョニー・マロンズって、もしかして...!」
ブーケは何かに気づいたのか、鋭い目つきでキャリーの胸元を掴んだ。
「アンタだったの?! 『男爵令嬢の午後』を書いたのは!」
「はい、そうですが...?」
そうだ、思い出したわ。
私がモデルの悪役が出るあの小説、作者の名前が確かジョニー・マロンズだった。
「アンタねぇ! ジュリーを散々コケにしていたくせに、またジュリーを悪く書くつもり?」
「えっ? どういうことですか?」
この期に及んで、とぼけるつもり?
だけど彼女の表情を見る限り、本当に心当たりが無さそうだ。
「知らないとは言わせないわよ? 男爵令嬢の午後に出てくる悪役令嬢の特徴が、あれだけジュリーと一致するんだから、しらを切っても無駄よ!」
「あぁ! 確かに、容姿の設定はジュリー様と似ていますね。」
『確かに』って、今更気づいたの?
「ですけど、誤解しないで下さい。確かにあのキャラは、ユミル殿下のアドバイスで実在する女性をモデルにしました。ですが、モデルにしたのはジュリー様ではありません。」
ん?
ユミル殿下のアドバイス?
初耳なんですが?
彼女の一言で、今度はユミル殿下に注目が集まった。
「まさか、僕があんなこと言ったせいなのか。ジュリー嬢、迷惑をかけてごめん!」
殿下に頭を下げられても、経緯を知らないので怒るべきなのか分からない。
「おいユミル。話が全然見えねぇ。コイツに何言ったんだ?」
「前に彼女と廊下でぶつかって、彼女が持っていた原稿を落としちゃったことがあったんだ。原稿を一緒に拾ったら、成り行きで小説のアドバイスをして欲しいって言われてさ。
『恋敵を出した方が盛り上がるんじゃないか』ってアドバイスをしたら『恋敵キャラが思い浮かばない』って言われたんだ。だから『実在の人物をモデルにしてみたら?』って助言したのさ。
過去にいた悪女をモデルにしたら?という意味で言ったつもりだったんだけど、まさかジュリー嬢がモデルにされるなんて思ってもみなかったよ。」
「それなら仕方ありません。殿下は悪くないですわ。」
むしろ親切で言ったアドバイスのせいでとばっちりを受けるなんて、少し哀れだ。
「あのぉ...。私、ジュリー様をモデルにしたとは一言も言っていないのですが...。」
「まだとぼけるつもり?! だったら何で、あのキャラの見た目がジュリーそっくりなのよ?」
「黒髪とつり目と赤い瞳にすれば、読者にも悪役のイメージが伝わるのではと思ったのです。」
「それって、ジュリーが悪役っぽいって言いたいワケ?」
本当ならば私が怒るべきなのだろうけど、ブーケが私以上に怒ってくれるから、彼女に対する怒りが湧いてこない。
むしろブーケがまた悪魔憑きにされるんじゃないかと心配になってくる。
「まぁブーケ、落ち着けって。実際にモデルにしたのは別人なんだろ? だったら話だけでも聞けばいいじゃねえか。」
ジャズ先輩が宥めてくれたおかげで、ブーケは彼女を睨むのをやめ、冷静になって話を聞いた。
「ねぇキャリー。私がモデルでないなら、誰がモデルなの? 教えてくれる?」
「えっと......絶対に、内緒にしてくださいますか?」
彼女は尚、狙われている小動物のように怯えている。
何をそんなに怯える必要があるのかしら?
「大丈夫。ここにいる全員、貴女の秘密を話したりしないわ。だから教えて頂戴?」
「わかりました。それでは...。」
彼女は深呼吸をすると、意を決して話してくれた。
「あのキャラのモデルは、ロザリア様です!」
「えっ?」
まさか、ロザリアだったの?
だけど思い返してみれば、確かにロザリアみたいな性格のキャラクターだった。
あまりに性格が悪すぎて『私はこんな悪女だと作者に思われているのか』と酷く傷ついたが、ロザリアがモデルなら納得だわ。
「......言われてみれば、ロザリアに似てるかも!」
すると、さっきまで眉間に皺を寄せて怒っていたブーケが、嘘みたいに柔らかい表情になった。
「それにキャラ名も『ローザ・ルティリア』って、ロザリアの名前をもじっているしね。何で今まで気づかなかったんだろ。」
ブーケは思わず、笑みを浮かべる。
その笑顔につられて、私も思わず笑ってしまった。
そんな私達を見て、キャリーは安堵したように苦笑いをした。
「私、もう一度貴女の小説を読んでみようかしら?あの悪役令嬢が私だと思っていたから嫌厭していたのよね。」
するとキャリーは花が咲くような笑顔で、私の手を掴んで大はしゃぎをした。
「是非! 是非読んでください! 感激です、まさか推し様に拙作を読む宣言をして頂けるなんて!」
「お、推し様?」
「はい! 私、前から密かにジュリー様に憧れていたんです。気高くて、優しくて、美しくて。まさに私の理想とする淑女そのものなのです!」
私に偏見を持たずに接してくれる人は何人かいても、私に憧れる人は初めて見た。
しかもフィーネじゃなくて、今の私を慕ってくれるなんて。
「フフ。貴女、変わっているのね。」
「嗚呼、私に笑いかけて下さるなんて尊い。もっとジュリー様とお近づきなりたい...って、ダメよキャリー! 私とジュリー様とでは住む世界が違うもの。私に許されるのは今まで通り遠くから眺めることだけよ!」
私はストーカー行為を許した覚えはないのだけれども?
「ねぇ、キャリー。我が校の教育理念をご存知?」
「教育理念、ですか?」
「『学問の前に人は平等』よ。要するに、この学校で学ぶ全ての生徒は、家柄に関係なく平等であると言うこと。つまり、私とキャリーも対等な立場なのよ?」
「えっ、でも私はしがない平民ですし、キャリー様は雲の上のお方です。」
「だけど、この学校では平等よ。」
「そうよ。私だって一応平民だけど、ジュリーとは対等な関係だし。っていうか親友だし。」
「それにコソコソつけ回されるくらいなら、一緒にお話ししてくれた方が嬉しくてよ?」
キャリーはウルウルと目を輝かせて、私を見つめる。
「良いのですか...?」
「勿論よ。ただし! 私や殿下で勝手に妄想して、それを小説にするのはやめてね。」
「はい! 妄想はしますけど、小説にはしません!」
妄想は諦めないのね。
まぁ、妄想していないか確かめる方法もないし、小説にしないのであれば許してあげてもいいか。
「ジュリー様。できれば、もう一つお願いしても良いですか?」
「何かしら?」
「ジュリー様のことを、『ジュリーちゃん』って呼んでもいいですか?」
「えぇ、構わないわ。何なら、同じクラスなんだし、敬語も不要よ。」
「やったー♪ ジュリーちゃん、ありがとう!」
テンションの上がったキャリーは、私に勢いよく抱きついて喜んだ。
何だかこの感じ、レディーナに似てるわね。
私は大はしゃぎする彼女が微笑ましく感じた。
この日、私は思いがけない形で友人が一人増えたのだった。
私はブーケと一緒に中庭で日向ぼっこをしながら、おしゃべりをしていた。
「はぁ。まただわ。」
最近、学校で妙な視線を感じる。
悪役令嬢だと散々陰で言われているので、侮蔑の目でジロジロ見られることには慣れていた。
だけど、この視線はソレとは少し違う。
ずっとつけ回すような、粘着質な感じの視線だ。
教室、食堂、廊下、中庭...。
どこにいても、時折感じるこの視線。
あまりにもしつこいので、昨日視線を感じた方向を睨んでみたが、私を見つめている相手は逃げるだけで姿を現さない。
「何なんだろうね、アイツ。」
度々感じる視線にブーケも苛立っていた。
いい加減、鬱陶しく感じてきたので、休み時間は生徒会室へ避難しようかしら?
ユミル殿下に相談して、生徒会室に避難させてもらおう。
私はその日の放課後、いつものように生徒会室へ行き、そのことを相談した。
◆◆◆
「なるほど。ジュリー嬢をつけ回す、不審な視線か。それは気になるね。」
早速ユミル殿下に相談すると、殿下は親身に私の話を聞いてくださった。
「ホント、困っているんですよ。ユミル殿下、何とかして下さい。このままだと、私もジュリーもイライラして悪魔憑きにされちゃいます。」
「それは大変だ。視線の相手を捕まえて、話を聞かないとね。」
「ですが捕まえると言われましても、相手は逃げ足が早く、なかなか捕まりません。」
「そっか。だったら作戦を立てよう。」
「作戦、ですか?」
「うん。ジュリー嬢、その視線を感じるタイミングは決まっているの?」
「いつも学校にいる時に視線を感じます。」
「ということは、この学校の生徒か教師か。視線を感じる時間帯や場所は、もう少し具体的に解る?」
「すみません、そこまではわかりません。ですが、学校にいる間は不定期に、頻繁に感じます。」
「う~ん...じゃあ、今は感じる?」
「流石に生徒会室までは追ってこないみたいです。」
「ということは、その人は今、生徒会室の外にいるってことだよね。もしかして外から、ここの窓を除いていたりして。」
ユミル殿下はそのような事を考えながら、窓から対面にある校舎を覗いた。
「あっ! もしかしてアレかな?」
「えっ! どこですか?!」
慌ててブーケと一緒に、殿下が指差す方向を窓から覗くも、既に人影は消えていた。
生徒会室になら安心と思っていたのに、ここも覗かれていたなんて。
私は思わずため息が出た。
「だけど、これで相手を捕まえる方法を思いついたよ。相手は生徒会室にいる時も覗いているってことは、逆にそのタイミングがチャンスだ。外から生徒会室の様子がわかる場所は限られているからね。今日は警戒されているだろうし、明日またチャレンジしよう。」
「はい!」
◆◆◆
翌日。
生徒会室に入った私は、殿下の指示に従い、殿下とブーケの三人でいつも通りに過ごしていた。
その間にジャズ先輩が隠れながら対面にある校舎へ移動し、生徒会室を覗く人物を捕まえるという作戦だ。
「これで相手が捕まればいいのですが。」
「大丈夫。ジャズを信じよう。」
「そうだよジュリー。いくら逃げ足の速いアイツでも、流石にジャズ先輩からは逃げられないでしょ。」
「だといいのだけれど。」
そんな心配をよそに、ジャズ先輩は小一時間後、生徒会室へ帰ってきた。
「おい、ジュリー! 捕まえたぞ。」
「すみません、すみません! 放してくださーい!」
ジャズ先輩が肩に担いでいたのは、見るからに小柄で愛らしい感じの女子生徒だった。
女子生徒はじたばた暴れていたが、剛腕なジャズ先輩の腕から逃げられないようだ。
「先輩、ナイス!」
「流石だ、ジャズ。」
「へへっ、どんなもんよ。」
ブーケと殿下が退路を塞ぐと、ジャズ先輩は椅子に座らせるように女子生徒を置いた。
「えぇ~っと、そのぉ......。」
女子生徒は私達に睨まれると、困惑して苦笑いをした。
淡いピンク色の髪と瞳の彼女は、小柄で華奢で、誰からも愛されそうな穏和な雰囲気の少女だった。
この娘、確か同じクラスの子だ。
名前は確かキャリー・シェリルだ。
接点が皆無でほとんど話すことが無いから、今の今まで気づかなかった。
「ねぇ貴女。同じクラスのキャリー・シェリルよね? 最近、私のことを熱心に観察していたけれども、私に何か用事でもあるのかしら?」
私は極力穏やかな口調で、優しく尋ねる。
だけど彼女は、そんな私に怯えながら、恐る恐る話した。
「えっと~、用事、というほど大層なものではありません。」
「だったら何?」
「ひぃ!」
ブーケが凄むと、キャリーは猫に睨まれた鼠のようにビクビクと震えた。
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
私達はただ尋ねているだけなのに、大袈裟に謝られても困る。
側から見たら、まるで私達がいじめているみたいじゃないの。
嗚呼、こんなことだから、いつも悪役令嬢だと陰で言われてしまうのね。
「ねぇ、キャリー。私達、怒っているわけではないのよ? ただ、ここ最近私を観察していた理由を知りたいだけなの。」
怖がらせないように笑顔で話しかけたけれど、それが逆に怖かったのか、彼女は今にも泣きそうなくらい怯えていた。
「あ? コイツ、なんか鞄に隠し持っているぞ。」
「あっ! ダメッ!」
ジャズ先輩はキャリーの鞄を強引に取り上げると、乱暴に中身を取り出した。
中から出てきたのは何枚かの資料だった。
もしかして、私を調査した内容でも書いているのかしら?
ジャズ先輩は無粋にも、嫌がる彼女を無視して資料を音読した。
「えっ~と、なになに?
『王子殿下と虐げられた私。
作・ジョニー・マロンズ』」
ジョニー・マロンズ?
どこかで聞いたことがあるような...?
「『君の、漆黒の髪も、宝石のように紅く煌めくその瞳も。誰がどう言おうと、僕は美しいと思う。心から、好きだ。』
その言葉は、まるで胸の奥に優しく触れる風のようだった。私のような存在に向けられるには、あまりにも暖かく、優しすぎる。
それでも、嘘ではないと感じられた。
『ユリル殿下……っ。悪魔のように醜悪な見目の私を、そう言ってくださるのは……殿下だけです。』
声が震えたのは、嬉しさからか、それとも長く抱えていた孤独が溶け出したせいなのか、自分でもわからない。
ユリル殿下は、静かに手を伸ばし、凛とした美しさを湛える指先で私の顎をそっと持ち上げた。視線が交わる。そこには恐れも、偽りもない。
そして彼は、何のためらいもなく、私の唇に、自らの唇を重ねた。
それは、誓いにも似た優しい口づけだった。」
私達は一体、何を聞かされているの?
先輩が大きな声で音読するせいで、キャリーは顔を真っ赤にして伏せている。
それより、漆黒の髪に紅い瞳って......まるで私のようだ。
「この内容って、まるでロマンス小説みたいじゃねえか。」
「しかもモデルは、明らかに僕とジュリー嬢だよね。」
先輩も殿下も、その内容に若干、引いていた。
かく言う私も、勝手にモデルにされた上に、殿下と恋仲という設定にされたので、彼女のことが少し不気味で気持ち悪いと感じた。
「まさか、コレを書くためにジュリーをつけ回していたってこと?!」
「えっと...あの……ハイ、そうです。」
消え入りそうな声で、とうとう彼女は自白した。
どおりで視線から、ねっとりとした不気味な何かを感じたワケね。
「貴女、何か勘違いしているようだけれども、私と殿下はそういう関係ではないのよ?」
「別に構いません。ジュリー様が、ユミル殿下やカイル殿下と一緒に微笑ましく話されているだけで目の保養になります。それだけで、私の妄想が膨らみますので。」
勝手に妄想の肥やしにされても困る。
「ちょっと待って! ジョニー・マロンズって、もしかして...!」
ブーケは何かに気づいたのか、鋭い目つきでキャリーの胸元を掴んだ。
「アンタだったの?! 『男爵令嬢の午後』を書いたのは!」
「はい、そうですが...?」
そうだ、思い出したわ。
私がモデルの悪役が出るあの小説、作者の名前が確かジョニー・マロンズだった。
「アンタねぇ! ジュリーを散々コケにしていたくせに、またジュリーを悪く書くつもり?」
「えっ? どういうことですか?」
この期に及んで、とぼけるつもり?
だけど彼女の表情を見る限り、本当に心当たりが無さそうだ。
「知らないとは言わせないわよ? 男爵令嬢の午後に出てくる悪役令嬢の特徴が、あれだけジュリーと一致するんだから、しらを切っても無駄よ!」
「あぁ! 確かに、容姿の設定はジュリー様と似ていますね。」
『確かに』って、今更気づいたの?
「ですけど、誤解しないで下さい。確かにあのキャラは、ユミル殿下のアドバイスで実在する女性をモデルにしました。ですが、モデルにしたのはジュリー様ではありません。」
ん?
ユミル殿下のアドバイス?
初耳なんですが?
彼女の一言で、今度はユミル殿下に注目が集まった。
「まさか、僕があんなこと言ったせいなのか。ジュリー嬢、迷惑をかけてごめん!」
殿下に頭を下げられても、経緯を知らないので怒るべきなのか分からない。
「おいユミル。話が全然見えねぇ。コイツに何言ったんだ?」
「前に彼女と廊下でぶつかって、彼女が持っていた原稿を落としちゃったことがあったんだ。原稿を一緒に拾ったら、成り行きで小説のアドバイスをして欲しいって言われてさ。
『恋敵を出した方が盛り上がるんじゃないか』ってアドバイスをしたら『恋敵キャラが思い浮かばない』って言われたんだ。だから『実在の人物をモデルにしてみたら?』って助言したのさ。
過去にいた悪女をモデルにしたら?という意味で言ったつもりだったんだけど、まさかジュリー嬢がモデルにされるなんて思ってもみなかったよ。」
「それなら仕方ありません。殿下は悪くないですわ。」
むしろ親切で言ったアドバイスのせいでとばっちりを受けるなんて、少し哀れだ。
「あのぉ...。私、ジュリー様をモデルにしたとは一言も言っていないのですが...。」
「まだとぼけるつもり?! だったら何で、あのキャラの見た目がジュリーそっくりなのよ?」
「黒髪とつり目と赤い瞳にすれば、読者にも悪役のイメージが伝わるのではと思ったのです。」
「それって、ジュリーが悪役っぽいって言いたいワケ?」
本当ならば私が怒るべきなのだろうけど、ブーケが私以上に怒ってくれるから、彼女に対する怒りが湧いてこない。
むしろブーケがまた悪魔憑きにされるんじゃないかと心配になってくる。
「まぁブーケ、落ち着けって。実際にモデルにしたのは別人なんだろ? だったら話だけでも聞けばいいじゃねえか。」
ジャズ先輩が宥めてくれたおかげで、ブーケは彼女を睨むのをやめ、冷静になって話を聞いた。
「ねぇキャリー。私がモデルでないなら、誰がモデルなの? 教えてくれる?」
「えっと......絶対に、内緒にしてくださいますか?」
彼女は尚、狙われている小動物のように怯えている。
何をそんなに怯える必要があるのかしら?
「大丈夫。ここにいる全員、貴女の秘密を話したりしないわ。だから教えて頂戴?」
「わかりました。それでは...。」
彼女は深呼吸をすると、意を決して話してくれた。
「あのキャラのモデルは、ロザリア様です!」
「えっ?」
まさか、ロザリアだったの?
だけど思い返してみれば、確かにロザリアみたいな性格のキャラクターだった。
あまりに性格が悪すぎて『私はこんな悪女だと作者に思われているのか』と酷く傷ついたが、ロザリアがモデルなら納得だわ。
「......言われてみれば、ロザリアに似てるかも!」
すると、さっきまで眉間に皺を寄せて怒っていたブーケが、嘘みたいに柔らかい表情になった。
「それにキャラ名も『ローザ・ルティリア』って、ロザリアの名前をもじっているしね。何で今まで気づかなかったんだろ。」
ブーケは思わず、笑みを浮かべる。
その笑顔につられて、私も思わず笑ってしまった。
そんな私達を見て、キャリーは安堵したように苦笑いをした。
「私、もう一度貴女の小説を読んでみようかしら?あの悪役令嬢が私だと思っていたから嫌厭していたのよね。」
するとキャリーは花が咲くような笑顔で、私の手を掴んで大はしゃぎをした。
「是非! 是非読んでください! 感激です、まさか推し様に拙作を読む宣言をして頂けるなんて!」
「お、推し様?」
「はい! 私、前から密かにジュリー様に憧れていたんです。気高くて、優しくて、美しくて。まさに私の理想とする淑女そのものなのです!」
私に偏見を持たずに接してくれる人は何人かいても、私に憧れる人は初めて見た。
しかもフィーネじゃなくて、今の私を慕ってくれるなんて。
「フフ。貴女、変わっているのね。」
「嗚呼、私に笑いかけて下さるなんて尊い。もっとジュリー様とお近づきなりたい...って、ダメよキャリー! 私とジュリー様とでは住む世界が違うもの。私に許されるのは今まで通り遠くから眺めることだけよ!」
私はストーカー行為を許した覚えはないのだけれども?
「ねぇ、キャリー。我が校の教育理念をご存知?」
「教育理念、ですか?」
「『学問の前に人は平等』よ。要するに、この学校で学ぶ全ての生徒は、家柄に関係なく平等であると言うこと。つまり、私とキャリーも対等な立場なのよ?」
「えっ、でも私はしがない平民ですし、キャリー様は雲の上のお方です。」
「だけど、この学校では平等よ。」
「そうよ。私だって一応平民だけど、ジュリーとは対等な関係だし。っていうか親友だし。」
「それにコソコソつけ回されるくらいなら、一緒にお話ししてくれた方が嬉しくてよ?」
キャリーはウルウルと目を輝かせて、私を見つめる。
「良いのですか...?」
「勿論よ。ただし! 私や殿下で勝手に妄想して、それを小説にするのはやめてね。」
「はい! 妄想はしますけど、小説にはしません!」
妄想は諦めないのね。
まぁ、妄想していないか確かめる方法もないし、小説にしないのであれば許してあげてもいいか。
「ジュリー様。できれば、もう一つお願いしても良いですか?」
「何かしら?」
「ジュリー様のことを、『ジュリーちゃん』って呼んでもいいですか?」
「えぇ、構わないわ。何なら、同じクラスなんだし、敬語も不要よ。」
「やったー♪ ジュリーちゃん、ありがとう!」
テンションの上がったキャリーは、私に勢いよく抱きついて喜んだ。
何だかこの感じ、レディーナに似てるわね。
私は大はしゃぎする彼女が微笑ましく感じた。
この日、私は思いがけない形で友人が一人増えたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。
このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる!
それは、悪役教授ネクロセフ。
顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。
「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」
……のはずが。
「夢小説とは何だ?」
「殿下、私の夢小説を読まないでください!」
完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。
破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ!
小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる