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ごめんなさい
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「アイツら、大丈夫かなぁ。」
「本当に、心配ですね。」
二人、取り残されるようにカフェに留まった私とレディーナは、去っていくユミル殿下達を見守るように眺めていた。
「店員さんが怒る気持ちも分かりますが、接客業であの態度は良くないですよね。」
「だよなー。まぁ、どっちもどっちな感じもするけど。」
あんな事があったせいで、カフェにいるのが少し気まずい。
ウイン様はもうここに来ないだろうから、待つ意味はない。だけど『ジュリーはフィーネを待っている』という設定がある以上、今帰ったら不自然だ。
レディーナもフィーネと会いたいからか、帰る気はないようね。
「…なぁ、ふと思ったんだけどさ。」
「はい、何ですか?」
「もしタマモがさっきのことで悪魔憑きになっちまったら、アイツと戦えるのは私だけなのかな?」
「えっ?」
彼女の意表を突くような疑問に、私は言葉を失った。
流石に悪魔憑きが現れたら、フィーネは現れざるを得ない。ウイン様も絶対、現れるはずだ。
だけど、カフェに来れなかった理由はどう説明しよう?
流石に二人同時に『急用ができた』と言うのは不自然よね?
『体調不良』で誤魔化すのも難しいし、かといって『来るのが遅くなっただけ』だとその後は変身したまま一緒にいないといけない。そしたらジュリーの姿でウイン様と会えなくなる。
…だけどよく考えると、ウイン様は恐らく悪魔憑きを倒したらすぐに帰られるのよね?
だったらどのみち、ジュリーの姿でウイン様とは会えないわ。なら別に『来るのが遅くなった』ということにして、悪魔憑きを倒した後はフィーネの姿のままレディーナと過ごしても良いかもしれない。
…いいえ、駄目よ。それだと今度は『フィーネが来た途端ジュリーがいなくなった!』とレディーナに不審に思われる。
「どうした、ジュリー? 急に黙っちゃって。」
「いえ、すみません…。」
「まぁ、そんな心配すんな! いざという時は、私がちゃちゃっと悪魔祓いしてやるからさ。」
自信満々に胸を叩いて言い切る彼女が、頼もしい。
すると突然、何かが破壊されたかのような轟音がカフェに響き渡った。その音は出入口の方から聞こえてきた。
恐る恐る出入口を見てみると、そこには黒い狐の化け物が尻尾を立たせて、威嚇するように店の中に入ってきた。
あれは間違いなく悪魔憑きだ。
狐の悪魔憑きは、尻尾の先に赤いクッションがついていた。あのクッションは武器かしら?
「無礼な店員はどこじゃ! 出てこい!」
あの狐の声、まさかタマモ様?
やっぱりあの店員さんの事が許せなかったのね。
「ジュリー、下がってな!」
レディーナはタマモ様に向かって飛び蹴りしようとする。だけどタマモ様は尻尾を大きく振ってレディーナを叩きつけた。
タマモ様は倒れているレディーナに目もくれず、店内を見回す。幸い、あの店員さんは近くにいないようだ。
「おい、無礼な店員はおらぬのか! おらぬのなら、この店の者全員で詫びよ!」
理不尽な要求だ。
タマモ様は尻尾を振り回しながらクッションを投げつける。そのクッションが当たった人は、クッションに座るように跪いて、両手と頭を地面につけていた。
クッションは何度投げつけても、尻尾から無限に湧くように現れる。タマモ様はその度に、クッションを店にいる人に投げて跪かせた。
「無関係な奴に手ェ出してんじゃねえよ!」
レディーナは起き上がって、尻尾の動きを警戒しながら再びタマモ様に飛びかかる。
レディーナがタマモ様の気を引いてくれている間に、急いで加勢しないと!
私は変身するためにトイレへ隠れようとした。
だけどトイレに入る直前で、私もクッションの餌食となり、その場で跪いた。
「しまった!」
試しに立ちあがろうとしても、足は固定されているかのように動かない。
それならと頭や手を動かそうとしたけれど、無駄だった。
これじゃ戦うどころか、変身すらできない。
私は耳をすませて周囲の様子を聞くくらいしかできなかった。
「ええい! 妾はただ、あの店員に土下座させたいだけなのじゃ! そなたはそこで大人しくしておれ!」
「ぅわっ?!」
レディーナの叫び声とともに、クッションが叩かれるような音が聞こえた。
嫌な予感がする。
「ヤベェ...どうしよう...。」
困惑するようなレディーナの声からして、彼女もクッションの餌食になったのだろう。
「あの店員はもうおらぬのか? ならばここには用はない。お主ら、しっかり反省するのじゃ!」
タマモ様の足音が遠ざかっていくのを感じる。
きっと店員さんを探すために店から出て行ったのだろう。
「クッソ! どうにかしないと! いま世界樹を狙われたら終わりじゃねえか!」
本当にその通りだわ。
賢者3人のうち、2人は身動きが取れない。
残っているのはウイン様だけだけど、未だに現れないところを考えると既にクッションの餌食になっているかもしれない。
このクッションから解放される方法はないかしら?
変な態勢で座っているせいか、段々と足が痺れてきた。
「...ごめん、ジュリー。悪魔憑きなんか私が倒すとかいってたくせに、このザマで。情けない。」
「いえ、仕方ありません。きっと他の賢者様が助けに来てくださいます!」
ウイン様が無事であることを祈ろう。
それくらいしか、今の私にはできない。
「あぁ、もう! なんでよりにもよって二人がいない時に悪魔憑きが出るんだよ!」
レディーナは悔しそうに、床を手で何度も叩いた。
...あれ? 手で叩いた?
「レディーナ様。もしかして、手が動いているのですか?」
「え? …あっ、本当だ! 動ける!」
彼女はなぜかクッションの呪縛から解放され、自由になったみたいだ。
「よし! なんか分かんねぇけど、これで戦いに行けるな!」
「あっ、お待ちください!」
レディーナは立ち上がると、私の制止を聞かずにどこか遠くの方へと走っていった。きっと悪魔憑きを探しに行ったのだろう。
せっかくクッションから解放されたのだから、その方法を教えて欲しかった。まぁでも、このクッションをどうにかできると分かっただけでもありがたい。さっきのレディーナの行動にヒントがあるはずだ。冷静に考えるのよ。
『ここには用はない。お主ら、しっかり反省するのじゃ!』
『...ごめん、ジュリー。悪魔憑きなんか私が倒すとかいってたくせに、このザマで。』
タマモ様とレディーナの言葉を思い出した瞬間、雷に打たれたように閃いた。
タマモ様は店員さんに謝らせたがっていた。そんな彼女の攻撃を喰らったレディーナは、謝った直後にクッションから解放された。
つまり、謝ればこのクッションから解放される!
「街の皆様、黒い髪と赤い瞳のせいでいつも驚かしてしまい、申し訳ありません!」
よし。これで私も自由に動けるはずだ。
試しに手を動かそうとする。だけど手は固定されたかのように動かなかった。
「えっ、どうして?」
謝れば解放されるという私の考えは間違っていたのかしら?
(形だけの謝罪はダメってことなんじゃない? ジュリー、さっき謝ったことって、本当に自分が悪いと思ってる?)
なるほど、ワイティの言う通りかも。
適当な謝罪がダメなのであれば、本当に悪いと思っていることを謝ればいい。
それなら、あの事を謝ろう。
謝るべき相手が去ってから言うのもどうかと思うけど、今はそんな事を言っている場合ではない。
「今日、本当は別の用事があったにも関わらず、ウイン様に会いたくてドタキャンしてしまい、すみませんでした! 私のことが大好きで会いたがっていた人がいるのに、本当に申し訳ありません!」
私が来るのをずっと待っていたレディーナ。
彼女のことを考えると、反省の気持ちが自然と湧き出た。
これで動けるかしら?
試しに頭を動かすと、すんなりと頭は上がった。
「よかった…!」
その事に安堵した私は、立ち上がって辺りを見回す。
すると ─── 後ろには私を見つめるウイン様の姿があった。
「本当に、心配ですね。」
二人、取り残されるようにカフェに留まった私とレディーナは、去っていくユミル殿下達を見守るように眺めていた。
「店員さんが怒る気持ちも分かりますが、接客業であの態度は良くないですよね。」
「だよなー。まぁ、どっちもどっちな感じもするけど。」
あんな事があったせいで、カフェにいるのが少し気まずい。
ウイン様はもうここに来ないだろうから、待つ意味はない。だけど『ジュリーはフィーネを待っている』という設定がある以上、今帰ったら不自然だ。
レディーナもフィーネと会いたいからか、帰る気はないようね。
「…なぁ、ふと思ったんだけどさ。」
「はい、何ですか?」
「もしタマモがさっきのことで悪魔憑きになっちまったら、アイツと戦えるのは私だけなのかな?」
「えっ?」
彼女の意表を突くような疑問に、私は言葉を失った。
流石に悪魔憑きが現れたら、フィーネは現れざるを得ない。ウイン様も絶対、現れるはずだ。
だけど、カフェに来れなかった理由はどう説明しよう?
流石に二人同時に『急用ができた』と言うのは不自然よね?
『体調不良』で誤魔化すのも難しいし、かといって『来るのが遅くなっただけ』だとその後は変身したまま一緒にいないといけない。そしたらジュリーの姿でウイン様と会えなくなる。
…だけどよく考えると、ウイン様は恐らく悪魔憑きを倒したらすぐに帰られるのよね?
だったらどのみち、ジュリーの姿でウイン様とは会えないわ。なら別に『来るのが遅くなった』ということにして、悪魔憑きを倒した後はフィーネの姿のままレディーナと過ごしても良いかもしれない。
…いいえ、駄目よ。それだと今度は『フィーネが来た途端ジュリーがいなくなった!』とレディーナに不審に思われる。
「どうした、ジュリー? 急に黙っちゃって。」
「いえ、すみません…。」
「まぁ、そんな心配すんな! いざという時は、私がちゃちゃっと悪魔祓いしてやるからさ。」
自信満々に胸を叩いて言い切る彼女が、頼もしい。
すると突然、何かが破壊されたかのような轟音がカフェに響き渡った。その音は出入口の方から聞こえてきた。
恐る恐る出入口を見てみると、そこには黒い狐の化け物が尻尾を立たせて、威嚇するように店の中に入ってきた。
あれは間違いなく悪魔憑きだ。
狐の悪魔憑きは、尻尾の先に赤いクッションがついていた。あのクッションは武器かしら?
「無礼な店員はどこじゃ! 出てこい!」
あの狐の声、まさかタマモ様?
やっぱりあの店員さんの事が許せなかったのね。
「ジュリー、下がってな!」
レディーナはタマモ様に向かって飛び蹴りしようとする。だけどタマモ様は尻尾を大きく振ってレディーナを叩きつけた。
タマモ様は倒れているレディーナに目もくれず、店内を見回す。幸い、あの店員さんは近くにいないようだ。
「おい、無礼な店員はおらぬのか! おらぬのなら、この店の者全員で詫びよ!」
理不尽な要求だ。
タマモ様は尻尾を振り回しながらクッションを投げつける。そのクッションが当たった人は、クッションに座るように跪いて、両手と頭を地面につけていた。
クッションは何度投げつけても、尻尾から無限に湧くように現れる。タマモ様はその度に、クッションを店にいる人に投げて跪かせた。
「無関係な奴に手ェ出してんじゃねえよ!」
レディーナは起き上がって、尻尾の動きを警戒しながら再びタマモ様に飛びかかる。
レディーナがタマモ様の気を引いてくれている間に、急いで加勢しないと!
私は変身するためにトイレへ隠れようとした。
だけどトイレに入る直前で、私もクッションの餌食となり、その場で跪いた。
「しまった!」
試しに立ちあがろうとしても、足は固定されているかのように動かない。
それならと頭や手を動かそうとしたけれど、無駄だった。
これじゃ戦うどころか、変身すらできない。
私は耳をすませて周囲の様子を聞くくらいしかできなかった。
「ええい! 妾はただ、あの店員に土下座させたいだけなのじゃ! そなたはそこで大人しくしておれ!」
「ぅわっ?!」
レディーナの叫び声とともに、クッションが叩かれるような音が聞こえた。
嫌な予感がする。
「ヤベェ...どうしよう...。」
困惑するようなレディーナの声からして、彼女もクッションの餌食になったのだろう。
「あの店員はもうおらぬのか? ならばここには用はない。お主ら、しっかり反省するのじゃ!」
タマモ様の足音が遠ざかっていくのを感じる。
きっと店員さんを探すために店から出て行ったのだろう。
「クッソ! どうにかしないと! いま世界樹を狙われたら終わりじゃねえか!」
本当にその通りだわ。
賢者3人のうち、2人は身動きが取れない。
残っているのはウイン様だけだけど、未だに現れないところを考えると既にクッションの餌食になっているかもしれない。
このクッションから解放される方法はないかしら?
変な態勢で座っているせいか、段々と足が痺れてきた。
「...ごめん、ジュリー。悪魔憑きなんか私が倒すとかいってたくせに、このザマで。情けない。」
「いえ、仕方ありません。きっと他の賢者様が助けに来てくださいます!」
ウイン様が無事であることを祈ろう。
それくらいしか、今の私にはできない。
「あぁ、もう! なんでよりにもよって二人がいない時に悪魔憑きが出るんだよ!」
レディーナは悔しそうに、床を手で何度も叩いた。
...あれ? 手で叩いた?
「レディーナ様。もしかして、手が動いているのですか?」
「え? …あっ、本当だ! 動ける!」
彼女はなぜかクッションの呪縛から解放され、自由になったみたいだ。
「よし! なんか分かんねぇけど、これで戦いに行けるな!」
「あっ、お待ちください!」
レディーナは立ち上がると、私の制止を聞かずにどこか遠くの方へと走っていった。きっと悪魔憑きを探しに行ったのだろう。
せっかくクッションから解放されたのだから、その方法を教えて欲しかった。まぁでも、このクッションをどうにかできると分かっただけでもありがたい。さっきのレディーナの行動にヒントがあるはずだ。冷静に考えるのよ。
『ここには用はない。お主ら、しっかり反省するのじゃ!』
『...ごめん、ジュリー。悪魔憑きなんか私が倒すとかいってたくせに、このザマで。』
タマモ様とレディーナの言葉を思い出した瞬間、雷に打たれたように閃いた。
タマモ様は店員さんに謝らせたがっていた。そんな彼女の攻撃を喰らったレディーナは、謝った直後にクッションから解放された。
つまり、謝ればこのクッションから解放される!
「街の皆様、黒い髪と赤い瞳のせいでいつも驚かしてしまい、申し訳ありません!」
よし。これで私も自由に動けるはずだ。
試しに手を動かそうとする。だけど手は固定されたかのように動かなかった。
「えっ、どうして?」
謝れば解放されるという私の考えは間違っていたのかしら?
(形だけの謝罪はダメってことなんじゃない? ジュリー、さっき謝ったことって、本当に自分が悪いと思ってる?)
なるほど、ワイティの言う通りかも。
適当な謝罪がダメなのであれば、本当に悪いと思っていることを謝ればいい。
それなら、あの事を謝ろう。
謝るべき相手が去ってから言うのもどうかと思うけど、今はそんな事を言っている場合ではない。
「今日、本当は別の用事があったにも関わらず、ウイン様に会いたくてドタキャンしてしまい、すみませんでした! 私のことが大好きで会いたがっていた人がいるのに、本当に申し訳ありません!」
私が来るのをずっと待っていたレディーナ。
彼女のことを考えると、反省の気持ちが自然と湧き出た。
これで動けるかしら?
試しに頭を動かすと、すんなりと頭は上がった。
「よかった…!」
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