菜の花は五分咲き

白妙スイ@1/9新刊発売

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謎のお誘い

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 翌日、杏子の家に向かい、話をするつもりだった。
 杏子と、それから咲耶と。
 だがそれは延期となってしまった。
 あれだけ雨に当たったのだ。幼い子がだ。
 咲耶は熱を出してしまった。
 病院にかかり、入院するほどではないと言われたものの、安静を余儀なくされたのは言うまでもない。
 電話で報告してくれた杏子にまた、「あなたのせいよ」と責められた。
 想像の範囲内であったけれど。
 だいぶ落ち着いていた茂は「そうだな。悪い」と受け入れ、謝り、電話を切った。
 ちょうど今日は土曜日であった。
 大学は一応、休みである。
 が、昨日の突然の早退がある。
 その件について、あちこち連絡しなければいけなかったし、休講としてしまった授業の振り替えやら、埋め合わせやらの手続きや支度もしなければいけない。
 茂は家で今日はパソコンに向かい、書類を作るやら、メールを送るやらに没頭した。
 翌日、日曜日も同じであった。
 咲耶の調子もすぐに良くなるはずがない。
 大学へ行き、休日受付窓口に最低限の書類を提出した。
 学校が休みではほかにできることもないので、それだけ。
 帰りはいつも通り、電車だった。
 七月も終わり、真夏だ。
 電車の窓の外は、車内でも熱を感じそうなほど暑そうで。
 いつの間にか、夏が来てた。
 当たり前のことを、窓の外を見ながら思う。
 春の盛り、駅で突然捕まえられた。
 『ずっと貴方を見てました! 俺と付き合ってください!』
 ジャケットを掴んで捕まえてきた、菜月からの告白。
 なんとなく思い出した。
 それから色々話をして、何故か水曜日に会おうなんて約束を取り付けられて。
 毎日に近いほど、電車で会った。
 水曜日はカフェなんかでお茶を飲みながら話をした。
 幼稚園でのことやら、色々あったけれど、菜月は自分がいいと言ってくれたのだ。
 そして茂からも、菜月に惹かれていった。
 自分にはないものをたくさん持っていたからかもしれない。
 純粋さ、無邪気さ、積極性。
 明るい笑顔と性格。
 茂にも妹にも優しくて、手料理はほかほかでとても美味しい。
 それからちょっとどきっとするような、頼り甲斐と色気すらある大人の顔も、時々見せてくるのだ。
 今さらになって、はっきり言葉になるような魅力として実感できるなんて、遅すぎると思いつつも、頭に浮かんでしまう。
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