催眠アプリで恋人を寝取られて「労働奴隷」にされたけど、仕事の才能が開花したことで成り上がり、人生逆転しました

フーラー

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第3章 鳥頭野郎が、売れっ子シナリオライターになるまで

3-2 鳥頭野郎は、BSS状態になるようです

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それから数日後。


「おはよう、ミケル君」
「あ、うん」

僕はいつものように遅く出社した。
幸い今日はクーゲルさんはいないようだ。あの人、いっつも怒るから会うのは嫌なんだよなあ……。

そう思いながら僕は椅子に座った。
……なんかちょっと喉が渇いたな。

「あ、そうそう。ミケル君が忘れていた水汲み、私がやっといたから」
「え? ありがと」

そうだ、今日は朝早く来て、※水汲み場に水をくむこと頼まれていたんだった(※この世界の水道は十分に整備されていないので、水汲み場に井戸水を置くようにしている)。

僕は水を飲むために席を立つ。



……すると、そこにはでっぷりとした体形の、醜悪な容姿の男が、やたらときれいな姿の美女を二人引き連れて入ってきていた。

年齢は……30代半ばだろうが、不健康そうな容姿から50代くらいにも見える。不摂生のせいか髪や肌がだいぶ荒れており、重そうな体をゆらゆらと揺らしながら歩いていた。


「ふーん、ここがニルセンの奴の会社か……」
「ま、あの偽旦那にふさわしい、小さなオフィスですね」

一緒に歩いているのは、あの男の愛人か何かだろうか。
二人の美女が引っ付いて歩いていた。
その男は見下すような口調で、この会社を馬鹿にしていた。

「本当だよね~? こんなちんけな会社の社長なんて言っても、ダサいよねえ?」
「ええ。やっぱりご主人様が一番かっこいいと思いますよ?」

男の発言に対して、やたらとヨイショしている彼女たち。
二人はメイド服、その中でも見栄えの良さを重視した『パーラーメイド』の格好をしている。

もっとも男は、彼女たちにメイドとしての役割を期待しているのではなく、単なる趣味としてあの服を着せているのだろう。


「ウヒヒ、なんか面白いのあるかな?」
「完成したゲームが何本かあるみたいですよ? あ、けどご主人様はもうやってましたっけ」
「うん。けど、キャラは良いと思うけど、シナリオはクソだったな。まったく、ニルセンも、もっとマシなゲーム作れよな」

ずいぶん失礼な奴だ。
ニルセン社長は、この男をつまみ出さないのか?
そう思っていると、サキュバスの方のメイド(?)が何枚かの金貨をその男に見せた。

「そういえば、あの偽旦那の部屋の金庫の中に、お金が結構ありましたわ? ちょっとだけ持ってきたので、お昼はどこかで美味しいものを食べませんか?」
「良いじゃん! けど、取ってもいいお金なの?」
「いいんですよ。主人のお金は私のお金だもの。だから主人の会社のお金をちょっととっても、主人は許してくれますわ?」


会社のお金を自分のお金として使う?
……それ、まずいんじゃないか? あとで報告しないと。

そう思っていると、男は僕の方に目を向けてきた。
僕を見るなり、その男は怪訝そうな表情をした。

「ん、なんだこいつ?」
「ああ、彼はフクロウ型の有翼人ですね。有翼人は、この大陸では珍しい種族です」
「へ~。ってことは飛べるの?」
「ええ。もちろんです」


そう聞くとご主人様は少し興味がありそうな表情を見せた。

「なるほどねえ。まあそれは後で考えるとして、一番のメインイベント……新しい性奴隷ちゃんを見つけないとね!」

何てこと言うんだ、こいつは。
とにかく、ニルセン社長に報告に行かないと。

「流石ご主人様! やっぱりそれが一番大事ですよね? どんな子が良いんですか?」



「うーん。次は清楚な子が良いな。元の世界ではさ。『こいつくらいならボクでも行ける!』って思って告白した地味な女がいるんだけどね」
「まあ、ご主人様に告白されるなんて光栄ですね!」
「でしょ? けどそいつ『うわ、あんたと付き合うとか、生理的に無理!』って断ってきたんだよ」



そりゃ当然だろう、と思ったが、取り巻きのメイド(?)たちは男にべたべたと触りながら、気の毒そうな表情を見せた。

「え~ それってご主人様、可哀そう~!」
「ご主人様の魅力、分からないんですね~?」
「でしょ? だから、その女の代わりになるような奴隷ちゃんが欲しいなって思ってんだよ」


ほんの数分の出会いだが、僕にはこの男の魅力が分からない。
彼女たちも具体的な魅力は言えないんじゃないだろうか。

……よく考えたらさっきから二人は「凄い」「素敵」としか言っておらず、この男の具体的な外見・内面の良さを一度も褒めてない。

そうは思ったが、僕は急いで社長室に向かった。



「社長、社長!」
「なんだ?」
「なんか変な男が会社に来て『性奴隷』がどうとか言ってるんですが……」
「なに? ……はあ、ご主人様か……」


いつもははつらつとした雰囲気のニルセン社長が、何故かその時は諦めたような表情を見せた。

「……分かった、私が今から会いに行く」
「僕も一緒に行きます」
「ダメだ。……お前は自分の席に戻ってろ、良いな?」

そうニルセン社長は僕に念を押した。
そう言えば、何かもう一つニルセン社長に伝えないといけないことがあった気がしたけど……。

まあいいや、いったん戻ろう。




そして僕が席に戻ってから数十分後。
僕は信じられない言葉を口にした。

「ご主人様~? 私はあ、あなたの奴隷になれて幸せですう!」

いつも隣にいた経理の子、サラの声だ。
僕は驚いてドアを開けると、そこには先ほどの男が立っていた。

「やあ、ミケルって言うんだね、お前」

そう勝ち誇ったように答える男。
そして隣には、

「ミケル君……ううん、クソミケル? どう、この格好?」

そう言って彼女は僕に下着姿にメイドのヘッドセットだけを付けた自身の姿を見せてきた。
メイド服の予備が無かったのだろう。


「え……」
「私これから、ご主人様に性奉仕する奴隷になったのよ? いいでしょう?」
「ウヒヒ! お前、この性奴隷3号ちゃんのこと好きだったんだろ? どうだよ、気分は?」


見せつけるように彼女の胸を揉みしだきながら、男はそうつぶやく。


「ニルセン社長はどこですか?」

リザードマンであるニルセン社長であれば、この男を退治できるはずだ。
そう僕は尋ねたが、ニルセン社長は何故か、その男の隣で正座させられていた。……よく見るとイグニスさんも一緒だ。

「ミケル、逃げろ!」
「お前まで奴隷になるな!」

二人は必死の形相でそう言いながらも立ち上がる様子はない。
……何か術をかけられているのか?
そう思った矢先、その男は僕に対して奇妙な形の板を取り出してきた。

「おっと、折角だからお前も催眠アプリで『労働奴隷』にしてやろうっと。『お前はこれから僕をご主人様と呼び、従うこと』と……」


キイイイン……と頭に何かが走った。
一体ご主人様は僕に何をしたんだ?

そう思っていると、ご主人様はべろべろと経理の子の身体を舐めまわしながら、ニヤニヤと笑った。


「うーん、僕が先に好きだったのに、って感じの男の前で寝取るのって気持ちいい~! ほら、性奴隷3号ちゃん! こいつを悔しがらせるようなこと、言ってやりなよ!」
「勿論です、あなた? 私、こいつに言ってやりたいこと、それはもう、沢山ありますから!」

そう言うと彼女は軽く息を吸い、僕に対して侮蔑するような口調で言い放つ。


「いつもいつも、あんたのフォローばかりやらされて! あんた、私にどれだけ迷惑かけたと思ってんの?」

何言ってるんだ彼女は。
そう思いながらも僕は反論した。

「え? けどさ、それって僕が頼んだことじゃないよね? なんなら君が勝手にやったことじゃん」

だが、彼女は続けざまに怒りをぶつけてきた。

「なによ、また、それ? いつもいつも、自分は悪くないって考えばっかりで! それに、あんたが私に好意持ってたのは知ってるわよ! はっきり言って嫌だったのよ!」
「嫌だったら、はっきり言えば良いじゃないか! いきなり言われても知らないよ!」
「コネで入ったあんたに言えるわけないでしょ? と言うか、あんたに好かれるの、ほんとに嫌! あんたと結婚したらどれだけ私が不幸になると思ってんの? 最低な人生になるわよ!」

またそれか。
そもそも、この会社は僕のことを正しく評価していない。だから雑用ばかりやらされているんだ。
そのことを彼女は分かってないんだな。


「それは君が僕のことを分かっていないだけだよ。分かればきっと僕を好きになってくれるからさ。だから奴隷になんかなるのはやめようよ?」
「なにが僕のこと、よ! もうあんたのことなんか分かりたくもないっての!」



その様子を見て、ご主人様は少し意外そうな顔を見せた。


「ん? 珍しい反応だな。……お前は寝取っても堪えないタイプか~。ま、たまにはいいか。性奴隷3号ちゃん、もういいぞ?」
「あ、はい。ご主人様?」

そう甘い声をかけながらしなだれる彼女を見ると、流石に嫉妬心が湧いてくる。


「ところでこいつの給料ってどれくらいだい、ニルセン?」

そう言うと、催眠アプリを見せつけてニルセン社長は僕の給与額を伝えるよう命令した。

「はい、大体ですが……」

ニルセン社長はそれに答えた。
……よく社員全員の給料を把握しているな。


「ふーん。じゃ、労働奴隷にしてもしょうがないな。……よし、それならお前は今日から『パシリ奴隷』だ!」
「え?」
「ウヒヒ! 元の世界ではボクがやらされていたようなパシリの役を、今度は僕がさせることが出来るなんて、最高だねえ?」


なるほど、要するに使いっぱしりということか。
だったら、今までとそうやることは変わらないのかもな。

「それじゃあ、また催眠かけるね? 『お前はこれから、僕のパシリになること』!」

そう思っていると、またキイイイン……と頭に響いた。
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