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無計画なようで確実なモノ
27.度胸か無謀か
しおりを挟む「そうだけど、あんたは?」
一瞬だけ停止していた涼に代わり、さらりと答えたのは晫斗だった。未だ眠そうに欠伸をしている。
青い目の男はジッとその動作を見つめるとしっかりと話し始めた。
「我は魔法師ギルドに所属する者。名はカインだ。お主達の名は」
低い声とひどく癖の強い話し方に涼は眉を寄せた。カインがあまり人間らしくないなと感じたのは自分でもなぜだかわからない。魔法師ギルド、と言うことはここはやはり魔法の存在する世界。ならば今話せているのも魔法だろうか。頭はフル回転していてもその横で主人が名乗るので涼も続けて答えた。
「晫斗」
「涼だ、どうして分かった?」
疑問をそのままぶつけるとカインは片眉を上げた。涼はすぐに見定められたと思い張り詰めるも、晫斗は再び欠伸をしただけだ。
男は静かにスマホに指を向けた。
「……その機械に見覚えがある。それを持っていた奴らも異世界から来たと言っていた。そして魔法を知らない」
「へえ、他にも居るのか」
返事をしたのは晫斗だった。返事をした割に興味はさしてなく、魔法を使ったことにも心は一ミリも動いてない。晫斗の視線が男から移動して、大通りの向こうに向いたので涼もその視線を追った。
「なあに、話せたの?」
敬紫と清が戻ってきた。清の荷物が2倍に増えていること以外は何も変化はない。敬紫の質問に涼が答えた。
「この男の魔法で話が通じています」
「へえ、俺も話したいな」
「はい。カイン、あの2人とも話せるか?」
カインは返事もせずに最初と同じように人差し指と中指を立て敬紫と清に向けた。やはり魔法陣が出現し呪文を唱えた。
「……もう話せる」
「ああ、本当だ分かるよ。カイン、俺は敬紫」
「清です」
カインはこくりと頷く。
そこでやっと立ち上がった晫斗が大きく伸びをした。敬紫も晫斗もかなりの長身ではあるがカインは規格外に大きい。涼はいまだにしゃがんだままだったためその圧迫感をさらに感じる。よく見ればその目は猫のように瞳孔が縦長に開いていた。
「あんたどうして俺たちに構ってる」
「違和感のある者は接触していくことで糧となる」
「……そうか」
意味のわからない動機に晫斗は興味を失った。基本的にどうでもいい事なのだ。零蘭達を除いては。
代わりに清が丁度いいとばかりにその言葉を拾った。
「ではカイン、俺達向こうの方角に進みたいのですが、助けて頂けないですか?」
指差した方角にカインがゆっくりと目を向ける。
「我もそちらの方角にある町に向かう。付いて行きたければ来い。街までは何もない。森と砂漠が続く。必要なものはここで揃えるべきだ」
「そう、じゃあ着いていくよ」
箇条書きの日記のようなしゃべり方がやはり人間味が薄く感じさせるが、清と涼にとっては晫斗と敬紫が群を抜いて神に等しい。その2人がこの男に着いて行くと言ったので異論は出なかった。
こうして無表情な同行人がまた1人増えたのである。
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