容姿端麗文武両道なカップルは異世界でも悠々自適だが少し特殊だ。

仔犬

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それぞれの欲望を

33.魔獣と笑顔が

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「カイン、乗れるんだ」

敬紫もまた呑気なものである。


清も涼も何故その二択なのか、ユニコーンとはあのユニコーンなのか、お前は何人乗りなんだ、等の疑問が数秒のうちに溢れ出る。しかし次の晫斗の言葉で全ては流された。


「速い方」

「我だ」


この二言でカインが選ばれた。
敬紫も何も言わないが同意らしく外に向かうカインに着いていく。置いてきぼりなのはいつも清と涼だが、反対する理由など1つもないので重くなった荷物を肩に持ち直し敬紫達に続いていく。


大きな門にも警備兵にも目もくれず歩くカインは街の外に出てもその足取りは止まらなかった。しばらく歩いて涼が後ろを振り向いた時にはもう街がかなり小さくなっていた。

整備された土の道に広がる草原、奥には少しの森林も見える。人通りは少なく、少し強めの風の音が聞こえるだけだった。


「あの木ところまで行く」


道を外れて奥の森林に向けて歩き出したカインは街を出てから一度も振り返ることがない。今のところ所謂敵、というものは出てきていないが用心に越したことはない。清と涼は少し気を張り詰める。

森林に近づくと光が遮られ少し暗く、それでも昼寝するにはちょうど良さそうな気候だった。
しかしここにきた理由はどう考えても人避けだろう、カインは何も言わないがそう感じ取れるものがあった。ここで良いとの言葉に4人はカインから一歩下がった。


「見られては困るの?」

「女、子供には」


それはどういう意味だと聞く前にカインの体が輝き出す。青い髪も目もその肌も全てが青く光っている。その体が宙に浮くと、丸くなり光る球体になった。

触ってみたい、そう思った敬紫が指を伸ばすと、晫斗の声で止められた。

「もっと下がれ」

「悪い気配はしないよ」

「いや、大きさだ」


晫斗の言う通りカインの影はどんどん大きくなる。その形も丸ではなくアーモンド型になってきていた。

大きくなるにつれて4人は一歩ずつ下がっていく。5歩でも足りない。


「どこまで大きくなるんだよ……」

涼の言葉に清も眼を見張る。
9歩目のその時アーモンド型の光が動き、両側から光が広がった。


「翼……?」


確かに広がった光の部分は翼だった。そこだけ白い光にかわる。すると放出するだけだった光がまるでレーザーで絵を描くようにその形をなぞっていく。その毛並み、ドラゴンのような鱗の付いた手足、鋭い眼、大きく鋭い牙、まさしくライオンだった。ただ、青く翼がある。


「カイン」

敬紫がその大きな顔の下に行くと頭を下げて敬紫に撫でさせる。その口は動かずに4人の頭に直接カインの声が響いた。


「我が怖いか」

「まさか、雛野が喜びそうだよ」

これが敬紫が始めてカインに笑顔を見せた時である。





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