容姿端麗文武両道なカップルは異世界でも悠々自適だが少し特殊だ。

仔犬

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時間と繋がりが

80.寵愛と剣技が

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雛野は神と約束をする中で、これはただのプレゼントであると気付いていた。力のあるものが気に入ったものに与える気まぐれなプレゼント。

馬鹿げたように聞こえても人間だって大して変わらない。気に入ったものに何かをあげたい、感謝されたい、分け与えたい。余裕のあるものがする行為でもある。

この世界の神はそれが顕著で、神の世界でいう文化に近い。人間に力を与えることに人の好き嫌いはあれど違和感を感じていないのだ。


「貴方も私に力をくれるのね」

『ああ』


草木の冠をつけた髪の長い男。背中に大きな白い羽と足を全て隠す白いマント。深くかぶった帽子から覗く顔は美しかった。

「何故?」

「愛しいからだ」

「何故?」

「魂が気に入った」


神には人間の姿形と同じくらいに、その魂が見えるという。そのありようが好みか、そうでないかで最終的に力を与える選定をしている。魔力の大きさは前提に過ぎないのだと雛野はすでに知っていた。

雛野が微笑むとその場の光が満ちる。それは徐々に雛野に集まり体内へと吸収された。

「私がこの力も悪い事につかったらどうするの?」

「どうもしない。この世界のあり方に俺は興味がない」

「私は?」

「今のままであればいい。その美しい姿と魂のままで」


神は世界に優しい者もいれば、カインのように人間側に付き気に入ったものを手助けする者もいる。目の前の神のように力を与えた以外の人間はどうでもいいと言う者も。


「分かったわ。ありがとう」

「人間よ」

「なあに」

「この地の魔物はお前でも倒せない可能性がある。人間は弱い。やめておけ」

「そう」

「他の神もそう願っている」



そう言い残し、神は消えた。
それは時限の神だった。

「倒せないのかな」

横で雛野と神のやり取りを見ていた零蘭が本から顔を上げずに答えた。

「さあ、どうかしらね」

「時間を使っても?」

「次元の神が倒せないと言うなら、私達は未来で負けたのかしら」


地下の個室に彼等はいた。魔法を練習するためのこの場は図書館はよくあるものだという。覚えた知識をすぐに実戦に使う、または神を呼ぶためだ。

この街の図書館はそれは大きなもので、読んだ書物を省いても読み切るのに雛野でも数日は掛かった。日が暮れついに書物を読み切り顔をあげる。窓の外は太陽の光なのか月明かりなのか並んでいるせいでよく分からないが、それでも世界はちゃんと夜になっていた。

太陽の光り方が月と同じなのだ。
壁に沿って立っていた清が驚いた声で呟いた。


「雛野さんたちが負ける……?」

「私たちも15発くらい銃で打たれたら死ぬと思うけど」

その場の誰も今更疑問を持たないが、一発でも死ぬ人は死ぬ。涼が雛野の真横まで来ると彼女の方にマントを肩にかけ笑った。

「冷えますよ」

「ありがとう涼くん」

「まあ、気になるけど明日にしましょう?お腹が空いたわ」

立ち上がる零蘭の元に雛野が微笑んで駆け寄る。緩やかに繋がれた手が楽しげに揺れた。


「敬紫達も頃合いかな」

「ええ、そろそろ発散したいと言い始める頃」



微笑む2人に清と涼は感じていた。そろそろ、終わりも近いのかもしれないと。



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