淫魔アディクション

石月煤子

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0-7【最終話】

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岬は志摩の代わりにクリーム色の壁を空しく睨みつけた。

が、恐ろしく硬度を保ったままのペニスにもったいぶったスローテンポで最奥を小突かれると、険しげだった吊り目は見る間にとろんとした。


志摩の残滓で卑猥に泡立つ結合部。

後ろから蜜孔に深々とめり込み、子宮口付近にまで頂きが届くと、堪らず壁を引っ掻いた。


「あ、あたる……あたってる……俺の子宮に……志摩の……」


ポルチオ性感帯をゆっくりたっぷり刺激されて今にも脱力してしまいそうな岬のうなじに、志摩は、密やかに笑いかける。


「ふにゃふにゃになってく岬、可愛い」
「っ、ぅぅぅ……っ……お前も、ふにゃふにゃの、ふにゃちんにしてやる……っ」
「本当? ふにゃふにゃになるまで俺の相手してくれるんだ?」


……しまった、墓穴掘ったかもしんねぇ。


「あっ?」


それまで長らく放置されていた純潔ペニスが志摩の利き手に捕らわれた。

シャツを脱ぎ捨て、全裸になっていた彼は膣孔最奥へ押し込んだ肉杭を細やかに振動させつつ、岬の熱源を愛撫した。


インキュバスを父親に持つ岬は童貞男子ながらもなかなかご立派で。

カリ首から上の、華麗に剥けた薔薇色の先端を掌で包み込み、揉むようにしごき立てた。


「っ……っ……だ……め……っ……っ……!!」


岬は呆気なく達した。

ほんの数回、志摩の掌が上下しただけで溜め込まれていた白濁を存分に解放させた。


「うッ、ッ、ッ……ッ……はーーー……ッ……はーーー……ッ……」


鈴口から次々と噴き零れてくる濃密泡。

親指の先を浸からせ、小さな円を描くように志摩がやんわり擦ってやれば「やらっっ」と呂律の回らない悲鳴が上がった。


「も……チンコさわんなぁ……っ……俺からチンコ抜けぇ……」
「岬、俺のことふにゃふにゃにするんじゃなかったの」
「ひッッ」


ペニスの次にクリトリスをムニ、ムニ、意地悪に弄(いじ)くられて岬は危うく崩れ落ちそうになった。


寸でのところで堪えると涙ボロボロな吊り目で肩越しに志摩を睨んだ。

次から次に涙の溢れ出る双眸で睨まれた志摩は、正直なところ、ド興奮した。


「もっと睨んで」


さり気なく括れた腰を抱え込み、子宮口付近にペニスを押し当て、グリグリと擦りつけた。


「もっと泣いて?」


逃げようともがく岬にさらに身を寄せ、壁と我が身で挟み込むと腰を大きく回し、深部に潜むポルチオ性感帯に際どい刺激を植えつけた。


「や……っだ……やらってばぁ……そこ、やぁ……っ」


より一層ふにゃふにゃ化していく岬に心身共に限りなく滾る。


「岬の子宮、俺のでいっぱいにしたい」


淫魔の性(さが)が猛然と暴れ出し、かつて純潔のインキュバスが本能としていた孕ませ欲に駆られた。


「奥の奥まで俺のものにしたい」
「っ……も……なってる……」


一度踏み入れたら誰もが虜になる、茹(う)だる肉奥の迷宮に我を忘れて耽溺していた眼鏡淫魔は、かろうじて聞こえた呟きに微かに息を呑んだ。


「ずっと前から……おれ……志摩のモンになってる……」


志摩は……インサバスの魅惑の迷宮から脱した。

もうへろへろになりかけているヤンキー淫魔を抱き抱え、ベッドへ戻った。


「ん……ぷ……」


お膝に乗っけて不安定にグラつく体を支えてやり、緩んだ唇にキスを繰り返す。

ほんの束の間の隔たりにさえ心許なく感じていた肉杭をインサバスの蜜壺へ速やかに帰らせた。


「ふ……ぁ……っ……志摩ぁ……」
「もう、さっきみたいに、あんな奥までは行かないから」
「……うん……」


岬はこどもみたいにこっくり頷いて志摩に抱きついた。




「岬も動いてみて」
「わ、わかんねぇ……」
「適当でいい。自分のイイトコに当たるよう動けばいい」
「……イイトコばっかで絞れねぇ」
「……なんでそう煽るかな」


キスをしながら飽き足りずに繋がり続ける二人。


「あ……ぁん……すげ、ぇ……ぃぃ……」


岬は食まれたばかりの下唇をジンジンさせて天井を仰いだ。


志摩の肩を両手で掴み、初めてにしては滑らかな腰遣いでスタミナ漲る逞しい肉杭を一生懸命もてなした。


「上手」


志摩はヤンキー淫魔の律動を補佐してやる。

褐色の尻丘に両手を添え、時に自らも動いて、交わりをより深く濃厚にした。


「はぅ……志摩……志摩ぁ……」


もうすっかり蕩け落ちている吊り目を上目遣いに見、控え目に色づく胸の突起を美味しそうに舐め上げ、恥ずかしげもなくむしゃぶりついた。


「ひ、ぃ、ん……っ……っ」
「お前のペニス、おもらしでもしたみたいに濡れてる」
「っ……してねぇっ……おもらしなんか……してねぇもん……っ」


こどもっぽさが増している岬が可愛くて仕方なく、志摩は、巧みに腰を上下させながら問いかけてみた。


「岬、俺のこと好き?」


物欲しげに疼きっぱなしの蜜孔をグチュグチュと突き上げられ、純潔ペニスから白濁をだらしなく垂らした岬は、志摩をぼんやり見下ろした。


「好き……一番、好き……しゅんげぇ好き……」
「……」
「あぅ……また、でっかくなった……?」
「俺が恋人になって嬉しい?」
「うれひぃ……志摩ぁ……好き……」


岬に頬擦りされて、志摩は、そのまま欲望に従った。

加速した末に再びインサバスの蜜孔に勢いさめやらない熱流を注ぎ込んだ。



「……岬、まだ、もっと……」



これまでに感じたことのない極上の恍惚に傅(かしず)く。


胎底でしぶとく燻る肉杭に息も絶え絶えな岬を掻き抱き、興奮するのと同時に安心する居場所に志摩は延々と甘えた。





いつの間にか遠退いていた雷鳴。

途絶えた雨音。

レースカーテンの向こうで瑞々しい夕焼けに街が浸食されていく。





「はい、どうぞ」


西日と宵闇が隣り合い、三日月が地平線に引っ掛かる頃、枕に俯せていた岬はもぞりと顔を上げる。


一旦、ベッドを離れ、間もなくして戻ってきた志摩。

その手には絵に描いたような小さなプレゼントの箱が。


「……こんなのリアルで初めて見た、正方形の箱に赤いリボン……」


冷房をガンガンに効かせた部屋、羽布団に包まった素っ裸の岬は掠れた声で呟いた。


「プレゼント用意してたのかよ」


ボクサーパンツのみ履いた志摩はヤンキー淫魔の隣に潜り込む。

枕元に置いたプレゼントをただまじまじと凝視するだけ、リボンすら解こうとしないので、尋ねた。


「開けないの」
「なぁ、志摩の誕生日っていつだよ」
「俺は十一月」
「ふぅん。そんときに開けよーかな」


ラッピングされた小さな箱を両手で大事そうに包み込み、岬は、くすぐったそうに照れ笑いを浮かべた。


「もったいなくて開けらんねぇ」


懲りずに無意識に自分を煽ってくるヤンキー淫魔に眼鏡淫魔の心臓(ハート)は蕩けた。


初めての恋を捧げたクラスメートに何の迷いもなく告げた。


「大好き」


いつも通り、淡々とした口調ながらも思いも寄らなかった直球の告白、岬は衝撃の余りプレゼントをあわや握り潰しそうになった……。


誰そ彼の逢魔が時。


ヒトと魔が擦れ違う宵の片隅で、淫魔の二人は笑い合って番(つが)うのだった。



end
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