【R18】どうか、私を愛してください。

かのん

文字の大きさ
28 / 99

涙のキス。③

しおりを挟む
唇に残る感触が本当に誠二さんなら……
私が目覚める前に誠二さんが姿を消したなら
誠二さんがこの部屋に来たかもしれないってことは伏せたほうがいい気がした。



「誠一…さん?」



部屋から出て行こうと開けた扉を後ろから誠一さんに閉められる。
背中から誠一さんの体温の高さが感じられる。
首にかかる吐息も温度が高い。



「この部屋にいたってことは……まだ誠二のことを忘れていないのか?」



「ただ……換気していただけです。」



閉められたドアノブをもう一度握ると今度は私の手に誠一さんの手が重なってくる。
誠一さんにこんな風に手を重ねられるのはいつぶりなんだろう…?



「誠一……さん?」



左手は私の手に重ねたまま
右手はシャツの中に手をスルリといれてくる。
パチンとブラのホックを外されて、そのまま胸を触ってくる。
熱い吐息とは正反対に、誠一さんの指は冷たかった。



「あの、永一が起きてますから……それに家庭教師の先生だってっ…」



どうして…今なの?
10年間夜のベッドでこういう風に触る機会はあったはずなのに
こんなの……嫌だ。



「君が声を出さなきゃ聞こえないよ。永一の部屋からこの部屋は遠いし。」



「そういう問題じゃっ……お願いです。やめてください……」



やめてほしい。
だけど、私は誠一さんの妻だ。
昔はあんなに受け入れてきたのに――



「どうしてなんだっ!!」



「誠一さん…ごめんなさい、ごめんなさい……私誠二さんのことがっ…」



何度もこの気持ちは嘘だと
これは愛情ではなく同情だと
言い聞かせては自分の気持ちに蓋をしてきた。



答えはずっと出せなかったけど
やっぱりこうやって誠二さんの話を聞くと胸が高鳴る。



10年経っても忘れられない。
誠二さんに……会いたい。



「誠二とは…数日しか過ごしていないのに。俺とは15年も一緒に過ごしてきたのに……」



誠一さんの言う通りだ。
誠二さんとは誠一さんに比べるとほんの少ししか過ごしていないのに
誠二さんに惹かれてしまった。



誠二さんの中にある暗闇や悲しみ、そして温かい心に惹かれたの。



「はい……誠二が会社に!?」



一目会いたくて
誠一さんの電話を聞いたらいてもたってもいられなくて
気づいたら何も持たずに走っていた。



誠二さん……私の気持ちを聞いてほしい。
この溢れる思いを聞いてほしいの。



「誠二さん!!!」



「美緒……」



誠二さんのスーツ姿初めて見た。
まるで誠二さんが社長のようにも見える。
ぼさぼさだった髪も綺麗に整えていて端正な顔がさらに目立つ。



「誠二さっ……」



誠二さんに再会したら何を言いたいんだっけ?
でも涙で言葉が発せれない。
こんな日がくるなんて夢にも思ってもみなかったから……



「お兄さんの奥さん?」



「え…?」



スラリと伸びた手足だけどグラマラスで妖艶な雰囲気を漂わせる女性が誠二さんの背後から現れた。
初対面だけど目が合うとすぐにニコっと笑顔になって……可愛らしい女性だ。



「は、初めまして。」



「義理の弟にあって泣いてくれるなんて……いい人ですね!」



誠二さんは義理の弟で私は兄の嫁――
現実が一気に突きつけられて今度は息がうまくできない…
だけど、今から誠二さんから言われる言葉は
もっと私をどん底に突き落とす。
誠二さん……嘘だと言って。



「…お義姉さん、紹介するよ。円花(まどか)とはアメリカで隣の部屋に住んでいたんだ。」



「初めまして~たまたま隣が日本人だったなんて驚きましたけどね♪」












「美緒……いや、お義姉さん。円花と俺結婚したいんだ。」





「婚約と入籍するために日本に帰ってきたんだ。」















誠二さん、10年は決して短くなかったよ?
私にとって誰かを恋しく思いながらずっと待つ10年は本当に長く感じた。
なのに……こんなことって…こんなことって……















誠二さん、10年は決して短くなかったよ?
私にとって誰かを恋しく思いながらずっと待つ10年は本当に長く感じた。
なのに……こんなことって…こんなことって……











ただ、あなたが好きなだけなのに――





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...