上 下
13 / 45
「ここは異世界だよ」編

十三話めぇ~ 「いざ出発!」

しおりを挟む
「あっ、これ買おうっと」

 ぷるんが革で作られた白い軽鎧を見つけた。
 胴体と肘、膝から下をガードできるタイプで「軽いが丈夫」が売りの防具のようだ。
 もとは何の皮か知らないが、白くて女の子が着るにはなかなか似合うものだ。

 それと同時に頑丈な篭手(こて)も買った。
 こちらは銀色に赤い線がペイントされたおしゃれな合金製で、左手につけてちょっとした盾代わりにもなる。

「これで遠慮なく殴れるね」

 と思っていた俺とは用途が違うらしい。
 攻撃のことしか考えていないとは恐ろしいが頼もしいな。

 それと、改めて俺は防具を買った。
 ヒツジ用の防護服の一つで、あれだ、飼い犬に服を着せている感じだ。
 こちらも厚い革で作られており肉食動物に攻撃されても多少耐えられるそうだ。

「ヌーボーとかいう亜ヒツジの皮だって」

 お前たちの命をくれ!!!
 無駄にはしないぞ。仲間よ。
 その無念、いつか晴らしてやるからな!

「ヌーボーは肉食で他の種類のヒツジを食べるらしいよ」
「ざまあみろ、ヌーボー。俺の盾になれ」

「回復アイテム買おうか」

 おっ、そうだった。
 俺はまだいいが、薬草とかはこれからの戦いには絶対必要な道具だよな。
 特にぷるんは戦士だから前線に立つしな。

「モヒカン、回復ドリンコ20個ちょうだい」

 どっかで聞いた名前だが、回復ドリンコはHPを30前後回復できる薬草と同じものだ。
 ちなみに薬草も薬局に行けば煎じたものが売っているが、自分で外で採取することも可能らしい。
 薬草には種類が色々あるみたいだな。今度覗いてみるか。

 モヒカンとすでに呼び捨てなことはもう気にしない。
 というか、モヒカンが名前じゃねーけどな。
 「そこのハゲ」とか「そこのロンゲ」と同じだ。今ロンゲって言わないのかなぁ。

「それとユンケル10個ちょうだい」

 ユンケル!!?
 ユンケルあるの!?
 え? あのサングラスの人がCMしているやつ!?

「同じ名前だけどMP回復アイテムだよ」

 MPはスキルを使うと減るらしい。
 ぷるんの野性化も毎ターンMPが減っていくそうだ。
 なるほどな。そういう制限があるならあの攻撃力も頷けるよな。

 まあ、俺の増毛スキルは年齢が減るけどな。
 俺をずっとラム肉にしておこうという悪意すら感じるスキルだ。

 その後、市場を見回して必要そうなものを買い集めてみた。

「こんなところかな」

 最後にぷるんの武器の予備として長めのナイフを3本買って買い物を終わりにする。

 では、買った物を確認してみよう。


・肉切り包丁 攻撃力20 痛恨の一撃能力付き
・鉄のナイフ 3本 投擲(とうてき)可
・ウサドリルホーン小 攻撃力6 発射機能付き(予備5本)
・白革の鎧 膝ガード付き 防御力5
・ミーリムの篭手 打撃武器 攻撃力3 防御力4
・ヌーボーの防護服 防御力10
・アイテム袋 5つ
・回復ドリンコ 20個
・ユンケル 10個
・食料一週間分 水と携帯保存食メイン
・野宿用品 簡易寝袋 たき火セット等


 うん、なかなか買ったな。
 どれも必要なものばかりで、まさに異世界に来たって感じが伝わってくる。

「どれくらい使った?」
「うーん、八十万くらいかな」

 本当はGで表したほうがいいんだろうが、面倒なんでぷるんは日本円で言う。
 そのほうがわかりやすいけどな。

「高いのか安いのかわからないな」
「ニッキーが五十万だった」

 高いよぉ!! 包丁で半分以上使っているじゃんか!

 だが、まだ四百万以上残っているのか。
 あの店の兄ちゃんのおかげではあるが複雑な気持ちだ。

「この仕事が終わったら謝るつもりなんだ」

 言葉だけ見れば死亡フラグにも思えるが、そんなものよりもはるかに悪質だ。
 この言葉を訳そうか。

「もう罪に問えなくなったら適当にあしらってやるか」

 である。
 完全に犯罪者の理屈だ。

「そうだ。ティッシュか紙も欲しいかな」
「ティッシュっておい…俺たちそんな関係だったか?」

 へへ、いいぜ。そうなってもさ。
 今はヒツジだから「プレイ」になっちまうけどな。

「シゲキ君に触れたあとに使うやつ」

 やめろよぉおおおーーーーー!
 俺のことばい菌みたいに言うなよぉおおお!

 お前バイキンマンがいたら絶対に差別するよな! な!
 いいか、いじめカッコワルイ。絶対にするなよ。
 いつか自分に返ってくるだけだからな。


 気がつけばもう夕方である。
 本当は宿に泊まりたいのだが、まず何よりも先にクエストをクリアしないといけないので町を出た。

 その理由が犯罪歴を消すことでなければ楽しい旅になったかもしれないのにな。
 現実は厳しい。

「ねえ、シゲキ君、このまま逃げちゃおうか」
「ぷるん…」

 こいつもやっぱり後悔しているんだな。
 そりゃそうさ。誰だって罪と向き合うのはつらい。

 逃げられるものなら逃げたくもなるさ。
 だがな、それはいけない。最後まで立ち向かおうぜ。

「お金持って逃げちゃおうか」

 ちがーーーーーう!
 最初の一文が加わっただけで全然意味が違うーー!
 それではただ面倒臭くなったから途中で放り出すだけだ。

 そのときだった。
 夕闇に紛れて三つの影が忍び寄る。
 姿を見せたのは巨大なコウモリ二匹と、こちらも大きな野犬だった。

「シゲキ君、イヤージョーとガルドッグだよ! ビビルンより強いからね」
「お、おうっ…!」

 イヤージョーはコウモリモンスターで耳がやたらでかい。
 ガルドッグは名前の通り、ずっとガルガル言っている犬で大型犬サイズだ。

 大型犬っていってもさ、海外の牧羊犬とかってマジで大きいんだよな。
 狼やコヨーテすら軽くあしらうというか、相手がビビッて近寄ってもこないレベルだ。
 で、このガルドッグもそれくらいでかい!
 こいつはやべえよ! マジこえー!

 それに、ゲームでもそうだがモンスターは突然現れる。これはけっこう驚くよな。
 しかも町の北側は荒野と林が広がっていて、まるで別世界だ。
 当然ながらモンスターのレベルも上がっている。

 ビビルン戦とは比べ物にならない緊張感だ!

「私がガルドッグの相手をするから、シゲキ君はイヤージョーを牽制してね」

 やはりガルドッグのほうが強いらしい。
 俺としてもヒツジと犬では相性が悪いので任せようとは思う。


 ぷるんはガルドッグに向かって攻撃。
 ガルドッグは素早く回避。


 あいつ、避けたぞ! 犬だけあって速いな!
 しかしぷるんもヒツジ戦士だ。
 すぐに追撃して買ったばかりの篭手で殴りつけた。


 ぷるんのナックル攻撃
 ガルドッグは六のダメージを受けた
 ガルドッグは素早さが二減った


 まともに入ったけどあれじゃ死なないのか。
 普通の犬だったら致命傷だろうが、さすがモンスターだな。耐久力が違う。

 どうやら打撃系のダメージを与えると相手の素早さを削るらしい。
 速い相手にも地道に攻撃していれば動きを鈍らせられるんだな。
 まさにボディーブローのようだ。

 と、俺が見ていたらコウモリたちに囲まれてしまった。
 上空から体当たりしてくる。

「うおっ!」

 思えば俺はビビルンとは戦っていないので戦闘経験はゼロであった。
 いきなりの攻撃に何もできない。

 イヤージョーの攻撃
 ピロン
 ダメージが与えられない

 おおお! ヌーボォォーーーーー!!
 ヌーボーの防護服すげぇーーーー!
 敵の攻撃を防いだぞ! 買っておいてよかった!!

 しかし、俺のHPは3なのでダメージを少しでもくらうとまずい。
 こちらも攻撃しよう。
 今の俺には男の象徴である角があるんだぜ!!

 見せつけてやんよ!!


 シゲキの攻撃
 シュッ
 イヤージョーは避けた。


 だよなーーー! 飛んでるもんなー!
 ドリルホーンの長さは八十センチくらいだ。
 これでも長いのだが、飛んでいる相手には届かない。

「シゲキ君、発射だよ!」

 そうだった! これは発射できるんだ!
 いきなり奥の手を出すのは嫌だが、これしかない!


「ドリルミサィーーーーール!」


 ボンッ!!
 ズルズルズルドニュルルルル!
 グサッ
 イヤージョーに十八のダメージ
 イヤージョーは死んだ


「うおおおおおおーーーー勝利!!」

 倒した! 初めて倒したよ!!
 俺、初めて敵を倒した!

 これはすごいぞ! RPGなんぞよりもはるかに充実感がある!
 このドリルすっげー使える!

「やあああ!」

 ぷるんは数度ナックルを叩き込んで動きが鈍ったガルドッグに渾身の一撃を繰り出す。


 ぷるんの攻撃
 ドルルル! 痛恨の一撃!
 ブシャーーーー!
 ガルドッグは六十三のダメージ。
 ガルドッグは死んだ。


 強ぇえ! ぷるん、つえぇえ!
 ニッキーが当たればマジつええな。
 痛恨の一撃も味方が使えるなら頼もしいぜ!


 ズルル
 ニッキーはガルドッグの血液を吸い怪しく光った
 あと四十九回


 これ本当に大丈夫なのかよーーー!
 なんかカウントダウンしているけど!
 ねえ、絶対呪いの武器だって! これやばいよ!

 よし、残りは一匹。あのコウモリだけだ!!

「やるぞーーー! ミサイル充填だ!」

 俺はドリルを補充しようとして足を動かす。
 動かして取ろうとする。
 カツガツッ コリコリ ツルツル

 しまったぁぁああーーーー!
 蹄じゃ滑って取れねぇええええええ!!
 つーか、そもそも俺の手(前足)はツノには届かないんだった!!

 その隙にコウモリが向かってきた!
 だが、ヌーボーがある! 今度も防ぐぞ!


 イヤージョーの攻撃
 ガスッ
 シゲキの尻に噛みついた
 シゲキは三のダメージ







 シゲキは死んだ








「シゲキくぅうーーーーん!」




しおりを挟む