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「ここは異世界だよ」編

十七話めぇ~ 「スキル名を変えよう」

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「シゲキ君さ、スキル名変えたら?」

「え? 変えられるのか?」

 ぷるんがいきなりそんなことを言い出す。
 俺だって変えたいけどな。
 どうやって変えるんだ?

「えっとね、ここ右クリックすると変えられるよ」

 どうやって右クリックするんだよ!!
 右がねーよ、右が!!

 俺はマックを初めて使ったときクリックのやり方を発見するまで三十分かかった。
 今まさにそう言いたい気分だ。

「右手で触ると右クリックだよ」
「ん!! んっ! できないぞ!」

「それ右足だよ」
「手だって言ってるだろぉぉおおお!」

 つーかなにか?
 俺は右クリックができないのか!?
 だから名前を変えられないのか?

 ヒツジにはそんな権利もないっていうのか!
 ヒツジの権利を守れーーーー!

「あっ、右の鼻でつつけばいけそうだよ」

 どういう仕様なのーーーー!?
 近いーーー! やっぱり画面が俺のだけ近いーーー!
 しかも顔と一定の距離で固定されているから鼻がつけられないーー!

「シゲキ君、追い込むんだよ!」

「わかってた!!」

 どりゃーーーーー!

 ビヨヨーーーンッ!
 ドゴッ! メキ!
 ボキィイイイイ!

 鼻がーーー!
 鼻が折れたーーーー!

 ジャンプして追いつこうと思ったが、そのまま地面にダイブして顔面強打したー!
 それで鼻が折れたーーー!

 そりゃそうだよな。距離固定されているんだからどんなに寄っても届かないに決まっている。

「惜しかったね。シゲキ君。あとちょっとだったよ」

 どうして俺はこいつの甘言に乗っちまったんだろうな。
 わかってはいけない。
 こいつの発言に同意しては駄目だ。

「でも、わかってたって言ってたよ」

 すまん。実はわかっていなかった。
 ついはずみで言ったのだが、言葉には気をつけないといけないな。

 わざわざ教えてもらったのに「知ってるぅ♪」とかいうムカつく人間になるところだった。
 いや、ヒツジになっていた。反省しよう。

 しかも「わかった!」「わかってる!」ではなく「わかってた!」だ。
 すでに遥か前から理解していたことをアピールしてしまったことを皆に詫びたい。
 おかげでその通りに鼻が折れた。もう治ったけど。

「じゃあ、私が代わりに押してあげるね」

 おおーーーーい!!
 いかりや長介さんばりのツッコみ声を出すぞ!
 押せたんならお前が最初からやれよ!

「だって、手を伸ばすと鼻息がかかって気持ち悪いし」

 ぬぐぅううううう!!
 怒りだ。俺は初めて本気の怒りを感じている。

 しかし、今はスキルのほうが先だ。
 ぐっと我慢して改めてスキルの確認をしよう。


 スキル名:『ヒツジ1』
 使用MP:年齢ちょっと消費
  効果 :羊毛をモコモコにする。
      防御力アップ
      素早さダウン


 うぉおおおお!
 ちゃんとした効果キターーー!
 増毛はちゃんと意味があったんだな!

 そうだよな。毛ってさ防御力なんだよな。
 髪の毛がないと当たった時に痛いって話だし、ちゃんと意味があるんだって。
 じゃあ、これの名前を変えよう。

「デンジャラススパイラルシールドとかどうだ? 略してDSSだ!」

 くくく、中二を甘く見るなよ。
 もしくはギャラクシーエレメンタルメテオシールドなんてどうだろう?
 なあ、どうだろう?

「リアップにしといたよ」

 発毛剤じゃねえかぁああああ!
 日本で唯一の発毛剤って触れ込みのやつじゃねえかよー!

 勝手に命名するなよーーー!
 やだよぉーーー! 毎回リアップ言うのやだよーー!

「じゃあ、リアップX5プラスにする?」

 シリーズにしたいわけじゃねえから!
 そんなにリアップ推してねえから!

「カロヤンガッシュにする?」

 知ってる人しか知らねーよ!
 一見すると名前カッコイイけど育毛剤だからさ!
 リアップより安くてちょっと効果があるけどさ!

 仕方なくリアップになった。
 蹄で押せないからぷるんのやりたい放題なんだよな。

 マジでぷるんをどこかで止めないとヤバい。
 一度天罰下ればいいのにな。


 スキル名:『ヒツジ2』
 使用MP:なし
  効果 :永遠にヒツジとして生きる
      使い続けるとツッコミのキレがなくなる


 えぇええーーー!
 俺、芸人なの!?

 ツッコミのキレがなくなるって、芸人にとっちゃ致命的だけど、俺って一般人だぜ!?
 キレとか知らねーよ!

「やっぱりね。シゲキ君、最近キレを失ってるよ。三村さんクラスになってるし」

 うそーーーー!
 俺のツッコミってそんなに弱ってるの?

 そうか。思えばツッコミのパターンとか単調かもしれん。
 「図工か!」くらいのレベルだしな。
 図工か!はまあ…、俺が見ていた動画の中でのネタだから知っている人がいたら俺と握手だ! 

「って、俺は芸人じゃないぞ! そんなこと気にしない!」

 どうして俺がツッコミのキレを気にしないといけないんだ!
 芸人でもないし、ツッコミが仕事であるわけでもない。

 だから気にしないぞ。
 とりあえずスキル名は不死身にしよう。

「えーと、『三村並み』と」

 やめろーーーーー!
 頼むからやめてくれーーーー!
 せめて、さん付けしてーーー!

 俺、超好きなんだよ! 誤解されるから!
 ねえ、誤解って損だから!

「ファンとか言っておきながらアマゾンで☆4とか付ける人のこと?」

 言うな!
 俺も気になるけど言うな!

 ファンなのに全部の作品に☆4を付けるような面倒臭いやつには俺はなりたくないんだよ。わかるな?
 本当はお前ファンじゃねーだろ! みたいな感じのは嫌なんだよ。

「うわっ、厳しいね。容赦なく厳しいね」

 そうだ。俺は厳しいのだ。
 お前たちも気をつけろよ。

「じゃあ、『アマゾンの☆』にしとくね」

 いやぁぁあああーーーーー!
 わかりにくいからぁあああ!

 いちいち説明しないといけないの嫌だからさぁーーー!
 また☆の読み方で揉めたら嫌だから!!

 俺の必死の懇願が実って、スキル名は「永遠のヒツジjになった。
 その名も哀しいな。
 永遠の少年とかならまだいいのに、ヒツジだもんな。

「スキル3は『サザエさんの悪影響』でいい?」

 だめぇええーーーー!
 もう最近隠さなくなってるから駄目!!

 せめて伏せ字にしてくれ!
 何か問題があったらこんな小説すぐに潰れるからさ!

「じゃあ、『餅ネタ』にしとくね」

 悔しい!
 悔しいが、余計な騒動を避けるためには俺が身を低くするしかない。
 仕方なく受け入れることにしよう。

 こうしてスキル改名作業は終わった。
 ただの改名なのにこんなにも疲れるとは恐ろしい。



「つーか、餅ネタっておかしいよな。俺毎回餅ネタって言わないといけな…」



 んがんんっ











 シゲキは死んだ







「シゲキくぅーーーーーんっ!」




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