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「牧場を拡張しよう」編

三十一話めぇ~ 「初全滅」

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 チャチャーン♪

 ああ、オレたちはヒツジィーー
 ロンリーヒツジィーーー さもしいヒツジぃーー
 それは選ばれたぁー ヒツジだけの誇りぃー
 バラ肉にされても ロースにされてもぉ~
 戦うことを諦めない戦士のあかしぃぃ~

 HITUJI COME TRUE
 あぁぁ~~ 白い羊毛たなびかせー
 どんなに傷ついてもぉぉーーー
 オレたちはヒツジだから 星を見るぅ~

 哀しみを背負って 涙をこの胸に抱いてぇ~
 ヒツジは今日も眠る
 明日への戦いと愛のためにぃ~~

 ああ HITUJI
 それでも HITUJI
 おやすみ HITUJI








「シゲキさん、シゲキさん、起きてください」



 う、うーん。声が聴こえる。
 俺を呼ぶ声が聴こえる。
 この熱く燃えるような声はいったい…

「じゃあ、ヒーローかけますね。麻倉未稀の」

「あっつ!!!」

 寝起きにいきなりヒーローかけるなよぉおお!
 あっつ!! 心があっつ!!
 この凄まじいまでの熱量は半端ないぞ!!

 ヒーローは、あのスクールウォーズの歌だな。
 俺もまだ小学生になる前だったから、生で観ていたわけじゃないが相変わらず熱い歌だ。
 まあ、俺も朝テンションが低いときは、これをよく流す。
 一気に熱くなるぞ。おすすめはしないけどな。

「ん? なんだ? ここはどこだ?」

 俺はいったいどうなった?
 うう、記憶が飛んでいるぞ…
 もしかして、また死んだのか!?

「ここは牧場ですよ。シゲキさんたち、全滅しちゃったんです」

 な、なんだってぇええええええええ!!
 恐れていたことがついに起きたってのか!!

 そうだ!
 たしか野良ジープと戦って、俺は…

「そうだ、ぷるん!! あいつはどうなった!?」

 俺の記憶によれば、あいつもやられたはずだ。
 リーパが全滅したって言うからには、ぷるんも死んだのか?

「そのことでシゲキさんにお話ししないといけないことがあるんです。…でも、まだ決心がつかなくて」

 リーパは、視線を外しながら言いにくそうにしている。
 こ、これは…まずいんじゃないのか?
 こういうときって悪い報せが多いよな。

 き、聞きたくない!
 聞きたくないが、現実から目を逸らしても何も解決しない。

 俺も男だ!!
 いいぜ、リーパ。バシッと言ってくれよ!!
 俺のハートに響くように言ってくれ!!!




「実は…」





「ごくり」




「作者さんが投稿したアニマルアイランドが完結しましたので、ぜひ読んでくださいね♪」

※けっこう前に完結しました。



 宣伝かよぉおおおおおおおおおおお!!
 なにいきなり宣伝してくれてんの!?

 そりゃ言いにくいよな!!
 作者のやつ、相変わらずこの小説をなめ腐ってるだろう!?

「でもシゲキさん、こんなことでもなければ、こんな小説更新される時ないですよ?」
「おかしいよ! 絶対におかしいよ!!」

 それは絶対におかしいと言いたい。
 宣伝のついでにこの小説を更新するというパターンが意味不明だ。
 もっとがんばろう!?
 ねえ、もっとがんばって!!

 それはともかく、アニマルアイランドは絶賛掲載中だ。
 はっきり言って、同じ作者が書いているとは思えないような内容だが、あまり気にしないように。

「動物ネタは被ってますね」

 どこが!?
 いったいどこが被っているんだ?

 このヒツジ虐待小説と、あの美しい愛の物語のどこが被っているのか、俺にはわからない!?
 あれだけのやる気を、ぜひラム肉にも費やしてほしいもんだぜ。

「じゃあ、今度はちゃんと言いますけど…」
「おう、頼むぜ。ちゃんとしてくれよ」


「実は…」




「ぷるんさんの意識が戻らないんです」




 ……は?

 リーパ、何を言っているの?
 ぷるんの意識が戻らない?
 あの死んでも死なないようなやつだぜ?

 戦闘になったら世紀末のモヒカンも真っ青なくらい恐ろしい戦闘狂だぜ?
 いやいや、そんな冗談、笑えないって。

「シゲキさん、本当なんです。あれから一度も目覚めなくて…。もう三日も経つんですけど」

「…マジで?」

「…はい。もしかしたら、もう目覚めないかも…」


 うっそぉおおおおおおおおおおおお!!
 ええええええええええええええ!?

 この小説、どうなっちまうんだぁああ!!
 おいおい、ぷるんでもっているようなもんだろう?
 ヒロイン消えたら終わりだよ!!!
 どうしようもないよ!!

「主人公って、シゲキさんじゃないんですか?」
「ヒツジじゃ誰もついてこないって!!」

 俺の言葉に嘘偽りはない。
 あのな、俺はよく知らないけどさ。
 世の作品には、こうした意表を突いたような設定もいろいろとあるようだ。

 うちの作者は「なんとなくラム肉って響きが面白そう」という浅い、とてもあっさーーーい気持ちで始めたが、さすがにヒロインはつけた。
 女の子がいないとやばい、というのは理解していたんだろう。

 さすがのあいつも、そこは気を遣ったんだ。
 本当ならば、全員オッサンの物語がいいと思っていたが、さすがにそれはまずいという危機感は持っていた。

 でだ。

 ヒロイン消えたら、もう終わりだよぉおおおおおおおおおおおお!!

 これはマジの話だ。
 今まで支えてきたのは俺じゃない。
 どんなに最低の人間でも、ぷるんなのだ。

「シゲキさんも、今までけっこう下種でしたよ」

 ゲスとか言うなよぉおおおお!
 漢字で書くとさらに卑しく感じるじゃねえか!!
 たしかに下ネタも多かった。反省しよう。

 俺には一つ、絶対に捨てられないプライドがある。
 それは最低でもぷるんより上のモラルを持とう、というものだ。

 あいつより下にはなりたくないのだ。いや、マジでさ。
 だが、そんなあいつでも、いないと困るんだよな。

「リーパ、もうちょっと詳しく説明してくれよ!」

 もう必死だ。
 ただのリーパの思い込みであってほしいと願っているくらいだ。

 いや、ドッキリでもいい。
 ここから看板持ってきて「はい、お疲れさまでーす」とか出てきてくれてもいいから!

 まあ、それを言ったら、異世界自体がドッキリであってほしいと思っているわけだが。
 ほんと、いいことないよな、この世界って。
 俺、ヒツジだしさ。まさに下種だよ。
 種族的に下層だよ。

「シゲキさんが死んだあと、お二人を教会の人が町まで運んでくれたんです」

 ん? どういうことだ?
 教会の人って何だ?

「竜の神様を信仰する教会があるんです。外で戦闘不能になったら、彼らが運んでくれるみたいです。棺桶で」

 ドラクエかよ!?
 そういえば、ドラクエって死ぬと棺桶に入れて運ぶよな。

 あの棺桶って、日々常備しているのか?
 あんな邪魔なものを持って旅するとか、あまりに嫌すぎるな。

 それに、全滅したあとは誰が教会まで運んでくれるんだろうな。
 魔王の城にだって出張ってくれるんだぜ?
 相当な猛者じゃないと無理だな。

「あれは魔王側に許可もらっているみたいですよ。魔王も勇者あっての商売ですから」

 商売って言うなよぉおおおおお!!
 なんだよ、あれって仕事だったのかよ!?

 そりゃ、勇者いなくなったら商売できないけどさ…
 人生全部出来レースだよ!!

「ぷるんさんは厳密には死んでいないんですけど、戦闘不能扱いになったみたいです」

 ああ、あれだ。
 全員が麻痺や石化になると全滅ってゲームもあるよな。

 ぷるんが何かの状態異常で戦闘不能になって、俺も死んだ。
 これで全滅扱いになったんだ。

「それで、ぷるんはどうなったんだ? どこにいる?」
「寝室で眠っています。お医者さんの話では、後遺症とかはないみたいですが…目覚めないのです」

 うーん、あの時の様子からは気絶って感じに見えた。
 でも、全滅後も目覚めないのはおかしいよな。
 ただの気絶ってわけじゃないみたいだ。

 もしかして呪いとかか?
 ゲームには疎いのでよく知らないが、それだと厄介かもしれないな。

 ああいうのって、普通のやり方じゃ消えないしな。
 つーか、野良ジープにそんな力があるのか?

「シゲキさん、だからですね、働いてください」

「え?」

 その言葉に思わず、「え?」とか言っちゃった。
 リーパ、今なんて?
 あまり聞き慣れない言葉だったんで、聴こえなかったよ。



「シゲキさん、働いてください。お金を稼いでください」


 いやぁあああああああああ!!
 知らない! そんな言葉知らない!
 何も聴こえないぃいいいいい!!

「ジタバタしてもお金は生まれません。こうなったら仕方ないです。シゲキさんに稼いでもらうしかありません」
「嘘でしょ!? 嘘だと言って!!」

「シゲキさん、働いてください!」

 いやぁあああああああ!!
 嫌よ! 働くなんて嫌よ!!

 それ以前にヒツジだ!
 俺はヒツジだぞ! 家畜だぞ!

「いいえ、シゲキさんは普通のヒツジじゃありません」

 そうだ。俺はファイターだ。
 戦うヒツジなんだ。
 普通の家畜とは違う存在なんだ。

 うう、俺の牙が!
 荒ぶる牙が再び叫んでいる!
 天を奪え! 大地を穿てと!!

「えーい!!」

 ざくーーーー!

「いってぇぇぇぇええええええ!!」

 いきなりリーパが斧で斬りかかってきた。
 こえーよ! つーか、本当に刺さったよ!!
 いってーーー!

「いや、ラム肉を取得しようと」

 取得とか言うなよ!
 なんか言い方おかしいだろう!?

 って、そっちかよぉおおおお!!
 リーパが期待していたのって、そっちの役割!?

「無理無理無理!! 俺だって、死ぬのは痛いんだぞ!」
「じゃあ、どうやってお金を稼ぐんですか!! お金が必要なんです!!」

 リーパの顔がガチだ。
 さすが牧場経営をやっていただけあって、子供でも金にはシビアだな。
 何よりヒツジを殺すことに躊躇がないのが怖い。

 が、俺も殺される役回りは御免だ。
 毎回のように死んではいるが、ただ殺されるだけの人生は嫌すぎる。

「わかった! とりあえず、ぷるんが復活するまではがんばってみる。だから斧は下ろしてくれ!」
「本当ですか? 働きますか?」
「は、働く! 働くから!!」

 なんだか、ニートの息子に就職を迫る母親のようだ。
 息子が暴れて~とかならわかるが、親のほうが怖いな。

 いやな、人生ってのはいろいろあるんだ。
 人生ってのは短いが、思ったより長いもんだ。
 そんな長い人生の中で、一年や二年、ニートだってまったく問題ないぞ。
 べつに五年や十年だって、たいした時間じゃない。

 だからみんなも、浪人したってリストラされたって気にするな。
 その時間で他のことを試してみる時間ができたって思えばいいんだからな。
 いやー、俺もなかなか良いこと言うな。あははは。

「シゲキさん、現実逃避はダメですよ」
「わ、わかってるって」

 もしかして、ぷるんの代理をリーパがやるのか?
 この流れだとそんな感じだよな。
 なんか、リーパのほうが怖いかもしれん。

 ぷるんは一応幼馴染みということで、俺も甘える部分があった。
 あいつの理不尽さは昔からで、いまさら驚くことはない。

 それにぷるんは、なんだかんだで金を稼いでいたしな。
 戦闘でも主力だから、頼っていた部分も多い。

 が、リーパは牧場関係者ということもあり、俺たちの資金状況に左右される存在だ。
 しかも、もともとは自分の牧場だしな。
 思い入れがあってしかるべきだ。

 思えばこの牧場、俺の名前入ってないんだよな。
 俺にはまったく愛着のない牧場なんだが…
 ここの寝床も気に入っているからな。
 がんばるとしようか。

 少し今の状況を整理するか。
 残金は220万弱はあったよな。

 それだけあれば少しはもつし…

「あっ、レスキューで30万円使いました」

 おい、教会ぃいいいいい!!
 慈善事業じゃないのかよぉおおおお!!
 それにけっこう高いぞ!

 そういえば、遭難すると救助ヘリの金がかかるんだよな。
 一時間50万円とかだっけ?

 公的機関は無料らしいが、警察が民間に依頼するとそれくらいかかるらしい。
 しかもそれ以外の人員も動員したら、一人あたり一日2万円以上はかかるらしいし…

 仮に俺が遭難したら確実に見捨てられるな。
 ヒツジ一匹なんて、そんなもんさ。
 いや、モヒカンだって同じだろう。
 モヒ一人にそんな金は出せない。

 俺もあいつらも消耗品だからな…!!
 ちくしょーーー!

 ともあれ全滅しても、30万あれば戻ってはこられるらしい。
 それがわかっただけでもいいか。

「教会で生き返らせることもできるそうです。こっちは100万円らしいですけど」
「教会のやつら、足下見やがって!」
「しかもザオラルらしいです」

 せめてザオリクにしてくれよぉおおおお!!!
 ザオラルって、ほんと生き返らないときあるよな!
 四回連続で生き返らなかった時は絶望したぞ。

「教会でぷるんは治せなかったのか?」
「そう聞いています。原因はわからないみたいです」

 うぉお、本当にやばいな、これ。
 まあ、ヒロインだからそのうち復帰するとは思いたいが…

 いや、ヒロインだから絶対復活するはずなんだが、稀にレベルとかそのままの場合があるよな。
 あれっていきなり戦力外になるからやめてほしいと毎回思う。

 パーティー不参加に経験値入らない、とかもきつい。
 暇がある学生ならいいが、忙しい大人がサブパーティーを育てる時間はないんだぞ。

「噂によると、この世には何でも治せる薬があると聞きます。それがあれば…」

 出たよ。めっちゃRPGっぽい話だ。
 お使いイベントか?
 どうせ、どこかの山の洞窟に…

「魔王が持っているそうですけど」


 違った!!
 それ、ラスボスじゃねえか!!!
 倒したころには、もういらなくなっているもんじゃねえかよ!
 ゲームクリアだよ!!

「というわけで、これからがんばってくださいね。シゲキさん」


 目が笑ってないよぉおおおおおーーー!


 働きたくねええええーーーーーー!!




 ボンッ








 シゲキは死んだ。








 うっそぉおおおおおお!!
 こんな時まで殺すなよぉおおおおお!!

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