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「牧場を拡張しよう」編

三十七話めぇ~ 「ひと皮剥けて大人になろう」

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 俺たちは無事マダオを仲間にしてアイアムタウンにやってきた。
 マダオとは一般的に「まるで駄目なオッサン」の略である。
 それゆえに名前の段階で非常に駄目そうな気がする。

「マダオ、お前の能力ってどうなってるんだ?」
「へっ、俺か? 俺はすごいぜぇ」

 ほんとか?
 では見せてもらおうじゃないか。
 妻に親権を取られ養育費を払っている男の実力をな!!



□名前 :madao
□職業 :ビビルン
□レベル:1
□HP :5
□MP :0

◇攻撃力:3
◇防御力:2
◇素早さ:0
◇命中 ;3
◇回避 :0
◇装備
■頭  :被った角
■胴  :敏感な皮

※備考 :現在の成長率 58%

☆スキル
「心を閉ざす」:哀しい現実から心を閉ざす



 使えねぇえええええええーーーーー!!
 なんだこの能力値!!

 しかもマダオってmadaoかよ!!
 俺のレベル1より酷いじゃねえか!

「しょうがねえ。俺はビビルンだぜ。ビビルンがいくら頑張ってもビビルンにしかならねえよ」

 リアルすぎる発言だ。
 それを言ったら終わりだが事実なんだよな。
 ヒツジの俺は身にしみてよくわかっていることだし。

「まあ、俺は修行なんてしねえから、ずっとレベルも上がらなかったけどな」

 これもリアルの人間世界と同じだ。
 基礎能力の高さや天性の能力でもなければ、運動をしなければ運動能力は上がらないもんだ。

 こいつはマダオ。
 まったく頑張らずに生きてきた男だ。
 そりゃこの程度だよな。

「ところでこの成長率ってなんだ?」
「そりゃおめえ、芋虫なんだから羽化しないとな。じゃあなんでお前芋虫なんだって話になるだろう?」

 おおお!! たしかに!!
 芋虫ってのはあくまで幼虫なんだ。
 それがサナギになって羽化して成虫になる。

 ということはビビルンってのは何かのモンスターの幼虫ってことだ。
 いったい何になるんだ?

「俺も知らねえな。大人になるやつはみんなどこかに行っちまうんだよ。遠い、遠いどこかにな…」
「お前だって子持ちだろう?」
「ガキがガキを作るようなもんさ。所詮半端もんよ」


 マダオのスキルが発動

「どうせ俺はいまだバイク盗んで突っ走るようなやつさ。まだ皮も剥けてねえよ。最初の一回で子供ができたからまったく人生エンジョイできてねえし。そのまま結婚→離婚→慰謝料・養育費の必殺コンボさ。へへ、笑え。笑えよ。もう殺せよ」

 マダオは心を閉ざした


 おおーーーーーい!!!
 いきなり自分の世界に閉じこもるなよ!!
 邪魔、ここ町の入り口で往来の邪魔になるから!!

「皮、皮が剥けたら働くから」

 お前、一生剥けねーよ!!
 それ口実にしてるだけじゃねえか!

 うん、べつに卑猥な意味ではないのだが、お前たちも皮とか気にしなくていいぞ。
 学生時代は色々と気になることもあるかもしれんが、大人になればそんなもん関係ないからな。

 人間ってのは自然にちゃんとできているんだ。
 そのままが一番いいんだぜ。
 変なクリニック行っても失敗するだけだ。
 自分らしく生きようぜ。

 って、こいつ人間じゃないけどな!


「ん? それなんだい?」

 ひーーーーーーーーー!!
 門番をしているマッド・スズキさんに見つかっちまった!!

 相変わらず火炎放射器を装備しておられる。
 しかもあれってビビルン駆除用のだよな!?

 やばい、やばいぞ、これは!!
 なんとか誤魔化すしかねえ!!

「えっと、その…なんというかマダオです」
「ビビルンに似ているね…」
「いやいやいや!! よく見てくださいよ! ほら、触角ないでしょ!? ビビルンじゃないですよ!!」

 苦しい。相当苦しい言い訳だ!!
 だが、せっかく仲間にしたのだ。
 俺はマダオだって見捨てないぞ!!

「ビビルンってのは火が苦手だから火を放つと逃げるんだ。こいつはどうかな?」


 マッド・スズキは火炎放射器を放射。

 ボォオオーーーーー
 マダオは火に包まれた


 ひぃーーーーーーーー!!
 いきなりなんてことしてくれんだ、このモヒカンおばちゃん!!!
 つーか、火に包まれた誰だって逃げるじゃねえか!!!

「マダオ!!! 逃げろ!!」
「オジキぃ、俺はけっして動かねえ。皮被ったやつの底力、見せてやんよぉおおお!」


 マダオは皮に引きこもった

 ボォオオオーーー
 マダオは火に包まれている

 1のダメージ
 1のダメージ
 1のダメージ
 1のダメージ



 マダオは耐えている


「ふっ、どうやらあたしの思い違いだったようだね。あんたは立派な皮被りさ。悪いことしたね。お詫びにこれを持っていきな」

 マッド・スズキは火炎放射器をシゲキに渡した。
 シゲキは「マッド火炎放射器」を手に入れた。

 なんか火炎放射器もらった!!
 意味がわからないけど愛用の火炎放射器もらった!!

 なにこれ?
 モヒカン族の間じゃ自分の愛用の武器を手渡すのが詫びの証なのか!?

 それよりマダオ!
 あいつのHPは5だから、もう瀕死のはずだぞ!!

「マダオ! 無事か!」
「オジキ、俺はやった…のか」
「ああ、やったぞ! お前は頑張ったんだ!! 耐え抜いたんだ!」

「俺も少しは…大人になれた…かな?」

 マダオの外皮は真っ黒に焼けて、もともと緑だった色が焦げ茶色になっていた。


 パパーン

 マダオの皮が焼けて剥けた

 マダオは大人になった


□名前 :madao
□職業 :焦げ剥けビビルン
□レベル:1
□HP :10
□MP :2

◇攻撃力:5
◇防御力:8
◇素早さ:0
◇命中 ;3
◇回避 :0
◇装備
■頭  :剥けた角
■胴  :黒々とした大人の皮

※備考 :現在の成長率 99%

☆スキル
「開放心」:けっしてパンツをはかない男気
「皮剥け同盟」:戦闘中に皮剥け仲間を呼ぶ


 うおおおおおおおおおおおお!!
 なんだこれーーーーーーー!!
 マダオが変化した!!
 能力値がかなり変わってる!!

 いや、それだけじゃない!
 何かスキルも変わってる!!

「ひゃっほー、俺は大人だぜ!! オジキぃ、街に繰り出してぱーっとやろうぜぇ!」

 性格まで変わってるぅううう!!
 内向的で卑屈だったマダオが変わってるぅうう!!

「オジキぃ、俺の名前はマダオじゃねえ。マーダーOだ!!」
「わかりにくいよ!!」

 Oとゼロってさ、よく間違うよな。
 ダウンロードコードとか入力するとき、ゼロに斜線が入っていないとどっちだかわからないことが多い。
 俺もだいたい1回目は失敗するんだよ。

 つーか、面倒だからマダオでいいよ!!
 いちいち変換するのも面倒だしさ。
 登録するのもだるいし。

「それよりお前、養育費はどうするんだ?」
「オジキと一緒に稼ぐぜ!!

 一応そういう気持ちではあるんだな。
 思えばT事件では、ぷるんは金を持ち逃げすることばかり考えていた。
 あまつさえ冒険者になって犯罪歴を消そうとさえしていた。

 モンスターのほうが倫理観高いっておかしいだろう!
 馬もそうだったが、この小説は人間のほうが圧倒的に悪党だよ!
 ほんと、動物側のほうが善だよな。

「ところで一緒に街に入れるんだよな?」

 俺もパンとライスと一緒に入ったときは、はたしてヒツジだけで入れるのか不安だったが大丈夫だった。
 だが、こいつら思いきりモンスターだからな。
 大丈夫か?

「牧場関係者ならば入れるよ」

 マッド・スズキさんが教えてくれた。

 おお、そうなのか!
 そういやガルドッグも登録すれば牧羊犬扱いだし、そこは柔軟なんだな。
 それじゃ改めて中に入ろうぜ。



「オヤジ殿、これからどうします?」

 うーむ、そうだな。
 まずはこいつらの装備を軽く整えようと思っている。
 ザオラルはあるようだが、一応死んだら終わりの世界なんでな。
 やっぱり最低限の強化は必要だろう。

 で、現在の資金なんだが。

 牧場全体の資金がだいたい100万円くらいだ。
 俺のレスキュー代金や寄生虫の治療費、その他諸経費が引かれている。
 これに羊毛単体の納品が加わってこの金額だ。

 リーパは使用人ではあるが、いまのところ牧場経営の中心人物になっているので給与支払いは後回しになっている。
 もともと自分たちの牧場だったので、そのあたりは大丈夫らしい。
 ほんと、すごい幼女だよな。

 ここでリーパのステータスを公開しておこう


□名前 :リーパ
□職業 :牧場使用人
□レベル:5
□HP :8
□MP :30

◇攻撃力:1+15
◇防御力:2+4
◇素早さ:2
◇命中 ;2
◇回避 :1
◇装備
■頭  :柔らかい髪の毛
■胴  :牧場作業服【防御力+4】
■右手 :幼女の手
■左手 :ワルサーP99【攻撃力+15】
■足  :リーパの靴

☆スキル
「中級ヒツジ防具生成術 レベル2」:白ヒツジ防具を装備できる。
「下級ヒツジ肉加工術 レベル4」:通常ヒツジ肉の加工処理、肉料理、缶詰、燻製などが作れる
「アピール上手」:アピールする。幼女が使うと効果二千倍
「ヒツジの絶対者」:管理するヒツジを絶対支配する。逃亡不可、完全服従。逆らうと死ぬが、そもそも逆らえない。


 うむ、当然ながら戦闘系ではなく完全牧場特化型だ。
 レベルが高いのは幼い頃から牧場の仕事をやっていたからだろう。
 HPよりもMPが多いな。
 それだけスキルを何回も使えるということだろう。

 おばあちゃんから受け継いだスキルも健在だ。
 今ではヒツジ防具も作れるしな。
 まあ、使う人が眠っているので今のところ作る意味がないわけだが。

 おばあちゃんではまったく意味がなかったアピール効果だが、リーパが使うとなぜか効果が二千倍になるらしい。
 たしかに幼女に可愛くおねだりされたら、親ならともかく他人の大人はなかなか断れないよな。

 そして、最後の恐るべきスキル!!
 ヒツジにとっては悪魔ともいえるスキルを保有している。
 これがあるだけで俺は逆らえない。

 加えて俺の管理下にあるファンタやマダオも逆らえん。
 今後俺がヒツジである限り、どんな強力なモンスターを仲間にしたところでリーパの支配下にある。
 恐ろしい。ある意味ではぷるんよりも怖い存在だ。

 ただ、リーパはそれに見合うだけの仕事をしている気もするな。
 財政の管理、ヒツジの世話管理を行い、新たな問屋と契約し、さらに羊毛やラム肉を使って加工したものを売る。

 まだまだ始まったばかりだが一人でやるにはすごい作業量だ。
 普通に考えるとやっぱり一人じゃ追いつかないよな。
 これで踏ん張っていられるリーパの手腕がすごいのだろう。

 だが、このままでは牧場はあっという間に赤字経営だ。
 それゆえに俺たちに課せられた使命は重い。
 最低でもレスキューのお世話にならず自力でモンスターを狩って金を稼がねばならん。

 ぷるんがいれば悪行もできただろうが、俺は真っ当な人間(ヒツジ)であることを自負している。
 少なくとも強盗などは行わずに地道にやる予定だ。

 まずは戦闘面で自立する。金を稼ぐ。
 金があれば使用人や職人も雇える。家畜も増える。
 結果、さらに金が増えて牧場は拡大されていく。

 うむ、実に当たり前の構図がここにある。
 そして戦闘を重ねていけば俺もジープに勝てるかもしれんのだ。

「よし、お前たちの装備を買うぞ!」



「モンスター用の武器ってなかなかないのな…」

 いろいろと見回った俺たちだが、モンスター用の武具ってあまりないことに気がつく。
 あまりというか、まったくない。

 そりゃそうだよな。モンスターって普通戦う側の存在だ。
 それが仲間になること自体が相当レアなんだよな。
 それに合わせた武器なんて簡単にはないよ。

 では、俺と同じヒツジ装備はどうかといえば、やっぱり規格が違う。
 同じヒツジ系の種族じゃないと駄目らしい。
 これもやっぱりモンハンの猫と同じく専用装備なのだ。

 となれば、これしかないか。

「素材があればやれなくはないぜ」

 そうだ。改造屋。
 こないだ俺のウサドリルを改造してくれたグラサンのモヒカンだ。
 そこで訊いてみたらなんとかいけそうとのこと。

 でもな、素材は全部売っちまったしな。
 やっぱり素材集めからやるしかないか。

「おっ、サンドシャークの砂肝があるのか。それで武器と防具が作れるぜ」

 またモヒカンが勝手に提案を始めたぞ!!
 何度も言うがどうやってこちらのアイテム調べているんだろうな。

 そういや砂肝はまだ持っていたな。
 でも、こないだはそんなこと言われなかったぞ?
 モンスターが仲間にいるのがフラグなのか?

 てか、砂肝で装備なんて作れるのか?
 あれって食用のイメージしかないが…

「サンドシャークの砂肝は裏側がギザギザになっているのさ。これで食べたものを切り砕くからな」

 おお、なるほど。
 もともと砂肝は咀嚼するための器官だ。
 サンドシャークにも歯はあるが、あくまで敵に噛み付いて切り取るもの。
 さらに細かくするのが砂肝ってわけか。

「じゃあ、お願いしやっす!」
「おう、任せておけ!」


 グラサンモヒの装備製造
 カンカンカン

 砂牙が出来た
 砂突の薄皮が出来た
 大人の砂皮が出来た


 おおおおおおお!
 三つもできたぞ!!

「俺は武器専門だが防具も作っておいたぞ」

 このグラサンモヒは武器が得意なので武器改造屋を名乗っているが、防具作成スキルも持っているので一緒に作ってもらった。
 レベルは大丈夫だったようだ。

「代金は40万だ」

 ぐおお、値段が高いぃいーーー!

「オヤジ殿、店に頼めば割高になる。常識です」

 まあ、そうなんだよな。
 何でも店に頼むと手数料がかかる。
 それだけの仕事をするのだから当然ではあるが、今の俺たちには高いな。

「店が嫌なら自前で雇うしかないな」
「あんたは駄目なのか?」
「俺は組合に入っているから自由に抜けられないんだよ。抜けるためには胸に七つの穴をあけないといけねぇんだ。まあ、たいていのやつは四つ目で死んじまうんだけどな」

 超厳しい!!
 なにその鉄の掟!!

 その世紀末救世主伝説式の儀式には耐えられないよな。
 そりゃ仕方ないって。

 うーむ、ここでもまた組合か。
 ギルドもそんな感じだったよな。
 意外とこの世界の社会はしっかりと形成されているようだ。

「人材を探しているならハローワークに行くのがいいぜ」

 ハローワーク!?
 ハローワークって、あのハローワーク!?
 俺は行ったことないけど、いわゆる職業案内所だよな。
 ここにもあるのか!?

「こんな小さな町にはないが、この先のマイゴールドにならあるぜ。あそこはそこそこ大きい町だしな」

 そうか。これでさらに行く目的ができたな。
 俺たちはジープを手に入れてマイゴールドに向かう。
 そこで人材も確保だ。

「ジープを手に入れたらマイゴールドの『穴モグラ』って店に行きな。車両の改造をしてくれるぜ」

 マジか!! ついにそこまできたか、この小説!
 だんだんメタルマックス化が進んできたな!
 だが、俺としてはかなりテンション上がるぞ!!

 よおおおし!
 絶対にジープを手に入れるぞぉおおおお!!




「オヤジ殿、オチはどうします?」

「いやいや、いらんだろう。たまにはなくていいよ」

「オジキぃ、俺に任せてくれよ!!」


「皮で困ったら高須クリ…」



 それだけはらめぇえええええええええええええええええ!

 あのCM見るだけで吹いちゃうからぁああああああ!!

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