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「牧場を拡張しよう」編

三十八話めぇ~ 「ジープ決戦」

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 ついにこの日がやってきた。

 そうだ。ジープとの決戦の日だ。
 あれからしばしの時間が経っちまったが、すべてはこの日のためにあったと今ならば断言できる。
 あの苦しい時間もあんな最低の時間も、すべては今のためにあったんだと。

 俺は勝つ。
 いや、俺たちは勝つんだ!!


 シゲキはバス停を設置した

 ブロロー

 野ジープがやってきてバス停に停まった
 野ジープは何かを言いたそうにこちらを見ている


「来たな。ああ、そうだよな。来るしかないよな、お前は」

 俺にはわかる。
 あの野ジープが好きでバス停に停まっているわけじゃないってことが。

 これは一つの呪縛なんだ。
 バス停があったら停まらないといけない。
 歪んだ社会で作られた機械的な仕組みさ。
 こいつもこの世界が作り上げてしまった哀れなマシーンなんだ。

 そして、だからといってこいつは手加減なんてしないことも知っている。
 できないのさ。


「そう、お前も漢だからな!!」


 シゲキはバス停に体当たりをした
 バス停は倒れた

 野ジープの目(ライト)が光った!!
 その目は怒りと焦りに満ちている!

 シゲキを敵と認識
 野ジープはバス停を穢す者を排除する


※BGM変更
 メタルマックス楽曲「お尋ね者との戦い」を聴きながらお読みください


「さあ、こい!!」


 ブオオオ
 野ジープがシゲキに向かって走り出す。

 しかし、先に進まない
 ブロロロローーーー
 エンジンを吹かすが前輪が空転

 前に進まない!


「!?!?」


 野ジープは困惑している


「わからないか? そりゃどうしてそうなるかなんて、お前にはわからないよな」

 俺は悠然と野ジープの前に立っている。
 それは野ジープが動けないことを知っているからだ。

 なぜならば。

「お前の弱点は、バス停に縛られているってことだ!!」

 こいつはバス停に必ず停まらなければならない。
 「それがどんな場所」であっても。

 俺がバス停を立てたのはどこか。
 俺は今どこにいるのか。
 その答えは「砂漠」だ。

 そう、今の俺がいるのは、あのサンドシャークと戦った幅五十メートルサイズの砂漠の上。
 厳密に言うならば、野バスがいる場所だけが砂漠なのだ。
 やつの後輪が砂漠に入るように計算して設置してある。
 だからあいつは動けない。

 だが、理由はそれだけじゃない。

「おやっさん、あ、足止め、足止めできた! おいらにもできたぁ」
「よくやった、ネブ!!」


□名前 :ネブ
□職業 :Hリザード
□レベル:2
□HP :18
□MP :5

◇攻撃力:7
◇防御力:10
◇素早さ:3
◇命中 ;9
◇回避 :0
◇装備
■頭  :トカゲヘッド
■胴  :安い尻尾装甲

☆スキル
「穴待ち」:穴に潜んで敵を待ち伏せる


 こいつの名前はネブ。
 根暗でデブなHリザードの落ちこぼれだ。

 あれから俺はモンスター仲間を増やしたが、その中で条件があることを知った。
 その条件がこれだ。

①自分よりレベルが低い(大人、幼態問わず)
②群れの中で孤立している
③言葉が通じる(意思疎通ができる)
④お互いの提示した条件を受け入れる
⑤一度倒したことがある種族である

 これが今のところ判明したものだ。
 ガルドッグもHリザードも倒したことがあるモンスターだったので仲間にできたようだ。

 俺が仲間にしたやつってのは、はっきり言えば「落ちこぼれ」連中だ。
 行き場がなくて群れでも孤立していて、マダオのように人生まっ逆さまみたいなやつだ。

 ガルドッグも母親が群れから離れた「はぐれ犬」だったようだ。
 たしかに簡単に群れの連中から見捨てられたからな。
 それを思うと孤立していたのだろう。

 思えばパンとライスもそうだった。
 もしあいつらがリア充ヒツジだったら俺はきっと仲間にできたかわからない。
 いや、きっと駄目だっただろうな。
 そもそも俺が受け付けられないんだ。

 へっ、俺もまた根っからのアウトサイダーってことだ。
 群れるのは嫌いでね。
 だが、ただ群れるのは嫌いだが、戦友(なかま)は嫌いじゃない。

 そうさ。
 ここに集まった連中は同じ志を持ったクズども!!
 根っからのクズ野郎どもなのさ!!

 だから強い!!
 だからくじけない!!
 俺たちの下克上を見せてやんぜええええええええ!


「お、おやっさぁん!! じ、ジープがぁああ!」


 ぶろろろろろ!!!
 ジープの後輪が高速回転!!

 ぐしゅぐしゅぐしゅ!!!
 ネブの頭が削れていく!!

 1のダメージ
 1のダメージ
 1のダメージ
 1のダメージ


「くっ、もう適応してきやがったか! さすがのパワーだ!」

 ネブは砂漠の中でジープを押さえつけている。
 地中をねぐらにするHリザードだからこそできる荒業だ。

 しかし、ジープのパワーは簡単に止められるものじゃない。
 このままじゃネブがもたない!!

「ファンタ! 行け!」


 シゲキの号令でファンタが飛び出した

 ファンタの噛み切り!!
 ガスッ!

 1のダメージ


「オヤジ殿、硬いです!」

 さすがの装甲だぜ。
 いくらファンタの牙が強いとはいえジープは「クルマ」だ。
 この差は大きいんだ。

 クルマってのは最強のマシンだ。
 モンスターを狩るための最強の力。
 それと生身で戦おうなんて正気じゃない。

 それをやるってんだから、これくらいの困難は覚悟しているさ!


 ブロロロ!!
 ジープは4WDに切り替えた。

 ガリガリガリガリガリ!!
 ぐちゃぐちゃぐちゃ!!

 ネブは3のダメージ
 ネブは3のダメージ
 ネブは3のダメージ
 ネブは3のダメージ


「ぎゃあああああ!!」
「ネブーーーーーーー!!」
「おやっさぁああん! おいらのことは…気にしないでくれ!! デブで根暗なおいらを救ってくれたおやっさんのためならば、おいらは命をかける!!」

「ネブ、お前!!」
「だから、だから作戦通りにぃいいい!」
「くっ、わかった!!」

 俺たちはここに来るまでに多くのものを失った。
 戦うために犠牲は必須なんだ。
 そこから目を背けたら何も成し遂げられない!!

 俺たちは勝つんだ!
 勝つためにここに来たんだ!!

「ファンタはそのまま続けてくれ!」
「了解です!」

 ファンタの破砕噛み!
 ガスッ!
 ガスッ!
 ガスッ!

 ジープのボンネットにダメージ
 ボンネットが破損した


 たしかにクルマは強い。
 だが、戦車ではないこのタイプのクルマには弱点がある。
 それはドアやボンネットなどの開閉部分だ。

 戦闘用に装甲を強化していれば多少強くなるが、ここはどうしても弱くなる。
 しかもこのジープはかなり昔のタイプのようで、長い年月をここらで暮らしているせいか装甲タイルもかなり減っているようだ。

 今のこいつの状況ならばファンタの攻撃でも破損はできる!
 ファンタがレベル3でこの技を覚えたのが大きかった。

 この破砕噛みは相手のパーツを破損させることができるんだ。
 機械相手にこれは大きい!!

「マダオ!! 次はお前だ」
「おう!! 任せておけ!」


 マダオは不思議な踊りを踊った

「へいへい、もう矯正パンツなんかに頼らないぜ! 俺は俺のまま、焼けた俺のままでいくぜぇええええ!」

 マダオのスキル、皮剥け同盟が発動。

 皮剥け仲間の亀吉(種族:燃料ガメ)が現れた。
 皮剥け仲間のルンペ(種族:放火ガエル)が現れた。

「マダオ、助太刀するよ!」
「火、火付ける! お、おれ、火つける!!」

「よし、お前ら! 今日もフィーバーすんぜ!!」

「「うおおおおおおおおお!!」」


 ブロロ!!
 ジープの強力馬力!!

 ネブは13のダメージ

「うわあああああああああああああ!! おやっさあぁああああん」

 ネブの頭蓋骨は砕けた
 ネブの脳みそが吹っ飛んだ

 ネブは死んだ


 ジープは砂漠を抜け出した
 ジープはシゲキに突っ込んでくる


 ネブがやられた。
 わかっていた。わかっていたんだ。
 犠牲が出るとわかっていた。

 だが、ちくしょう!!
 実際に戦友(とも)を殺されると平気じゃいられないぜ!
 必ず仇はとってやるからな!!


「ジープ、お前はもう逃がさないぞ!!」


 バチバチバチ!
 ジープは痺れ罠にかかった

 感電して動けない


 よし! なんとかかかってくれた!
 普通の痺れ罠はモンスター用なのでクルマには使えない。
 だが、こうして破損させて弱らせておけば、今のジープならば止められる可能性があった。

 それもこれもファンタの攻撃の時間を稼いでくれたネブのおかげだ。
 あいつがいなかったら俺たちは一瞬で轢き殺されていたはずだ。
 ネブ、お前のことは忘れないぜ!


「出る、出るよぉおお」

 亀吉がオイルを吐き出した
 ジープはオイルまみれになった

「うおおお、火、火ぃいいいい!」

 ルンペは火を吐き出した
 ジープは火に包まれた

 ジープは燃えている
 12のダメージ


 この隙にマダオが呼び出した放火コンビがジープを火だるまにした。
 よし、確実にダメージは与えているぞ!
 相手がクルマだって恐れることはない!


「うひいいいいいいいい! フィーーーーバーーーー!」

 ルンペは興奮してジープに突進した
 ジープの炎がルンペに引火
 ルンペは燃えている

「ルンペェエエエエエエエエ!」

 亀吉はルンペを助けようとジープに突進
 火が亀吉の甲羅に燃え移った

 燃料タンクに引火
 亀吉は大爆発を起こした

 ジープは43のダメージ
 ルンペは23のダメージ
 亀吉は23のダメージ

 ルンペは死んだ
 亀吉は死んだ

 吹き飛んだ亀吉の甲羅の欠片がマダオに直撃
 マダオは6のダメージを受けた

「痛ぇ、痛ぇなあああ! ははははは!! ナイスなフィーバーだったぜぇええ!」

 マダオは血を流しながら踊っている
 最高にノリノリだ


 …なぜかあいつらは毎回ああやって死ぬ。
 放火魔の習性なのか興奮すると火に突っ込むらしい。

 燃料ガメは亀に似たモンスターだが、甲羅の中身は全部オイル(ガソリン)という非常に危険な存在だ。
 そんなやつが火に突っ込めばどうなるか。
 まさに火薬庫に火を放り込むようなもんだな。

 あくまでマダオの仲間なので俺としては制御できない。
 死ぬとしばらく同じ種族は呼び出せないが、まあ、当人たちが喜んでいるのだから気にしないことにしよう。


「!!!」

 ジープは燃えている
 ジープは感電している

 ジープは激しく怒ってシゲキを睨んでいる


「ふっ、俺が憎いか。勘違いするなよ。お前を縛っているのはお前自身だぜ!!」


 シゲキの攻撃

 ボン
 ボン
 ボン
 ボン

 ウサドリルホーンの四連射

 ドガドガドガドガッ!!

 ジープは3のダメージ
 ジープは4のダメージ
 ジープは5のダメージ
 ジープは3のダメージ

 ジープのボンネットが吹っ飛んだ
 ジープの弱点が丸見えだ!


「オヤジ殿!! とどめを!!」
「任せろ!!」

 すべての条件は揃った!!
 今こそアレを使う時だ!!


 シゲキは突撃

 ジープのボンネット内部に頭を突っ込んだ
 ビリビリビリ

 シゲキは感電している


 これだけを見たら馬鹿な行動だと思うだろう。
 ただの自殺行為だ。
 しかし、これにはしっかりとした理由がある。


 ビビビビビッ
 シゲキの角が電気を吸収していく

 充電完了
 角が黄色く輝いた


「いくぞおおおおお!! くらえ、俺のイナズマ!!」

「ライトニングボルトだああああああ!」


 ドシャーーーーン
 シゲキの角から強烈な雷撃が発生

 ドガンッ
 ジープのバッテリーが爆発
 ジープのエンジンが小破
 ジープのCユニットが大破

「――――――――――――!!?」

 ジープを操っていたメガミユニットが大破

 ジープは自走不能になった
 ジープは動きを止めた


 ジープは解放された


 シゲキは勝利した




「やった…やった…のか?」


 俺は呆然とその光景を見つめていた。
 勝った。勝ったのだ。


 俺たちは勝ったんだぁあああああああああ!!




※ここから回想シーンに移行
 画面がセピア色になる



「そこの坊主、ちょっと待ちな」

 ファンタとマダオに装備を付けて、試しに外のモンスターと戦った日。
 なんとか渡り合って手ごたえを感じた日の帰りの森。
 そこで俺は一人の老婆と出会った。

 全身を深い外套で覆っており、うっすら見えるのは魔女のように高い鼻としわしわの手だけだ。
 こんな暗い森で出会うとかなり怖い。

「え? 俺のことか?」
「ああ、そうさね。お前さん、かなり変わってるね」
「そうらしいな。俺はいつだって普通のつもりだが」

 そうなんだよな。
 俺はこの小説の良心ともいえるくらい真面目で普通な男なんだよ。

 ぷるんやリーパとかモヒカンとかいる世界では単なるエロい中二でしかない。
 なんとかラム肉というポジションだから埋もれずにいるにすぎないんだ。

 といっても、だんだん俺はヒツジであることに疲れていた。
 弱いままの自分が嫌だったんだ。

 だが、そんな俺に老婆は思いがけない言葉を発した。

「お前さんの角、不思議なオーラを放っておる。特別な力があるかもしれんぞ」
「本当か!? って、あんた誰だ?」
「わしか? わしはケズリンダ。「角煎じ」をやっておる」

 ケズリンダと名乗った婆さんはそう名乗った。
 角煎じ? なんだそれ?

「モンスターの角ってのはいろいろな効果があるもんさ。薬になったり毒になったり、魔法の媒体になったりね。それを作って売るのが角煎じ。昔は魔女だなんて呼ばれたこともあるがねぇ、魔法とは別物さ」

 そういや前にリーパがそんな話をしていた気がする。
 ふーん、そういう職業があるんだな。
 で? 俺が何だって?

「ふむ、お前さんはヒツジか。それにしては魔力がないね」
「意味がよくわからないんだが…」
「人間にしろモンスターにしろ、微弱でも何かしらの魔力を有しているもんさ。それがお前さんにはない。それが不思議でね」

 ふーん。そういうのってよくゲームや漫画で聞くな。
 本当にそういうもんなんだな。
 それが俺にはないって?

 まあ、ヒツジだからな。
 いまさら弱くても驚きはしないが…

「お前さんのスキル、魔力を使ったものがないじゃろう?」

 ん? そうだったか?
 リアップとかは毛が生えるから魔力じゃないのか?

「それは毛根を酷使しているだけじゃ」

 嘘だろぉおおおおおおおおお!!
 それじゃ俺の毛根やばいじゃねえか!!
 すぐにハゲるよ!!

 婆さん曰く、どうやらぷるんの野生化も魔力を使って自分を強化しているらしい。
 たしかにそうでないと説明できない強さだもんな。

 一方の俺のスキルは魔力を使わないもので構成されているそうだ。
 それはつまり何かをすり減らしているということか!?
 やばい、やばいよ!!

「俺の不死身って大丈夫なのか!? やっぱり何か減ってるんじゃね!?」
「ほぉ、不死身か。ますます面白い」

 やべっ、これってかなり重要な情報だった!
 しかも相手は胡散臭い婆さんだ。
 こりゃしくじったかもしれん。

 だが、婆さんは驚いたものの態度を変える様子はない。

「懐かしい。あのヒツジも不死身じゃった。ヒツジにはよくあることなのかの」
「なに!? ほかにも不死身がいるのか!?」

 しかも同じヒツジだと!!
 そんな情報初めて知ったぞ!!
 この婆さん、何者だ!?

「強くなりたくはないか。わしならお前さんを強くしてやれるかもしれんぞ」
「…俺は群れない! 荒ぶる牙だからな!」
「坊主、ヒツジに牙はないぞ」

 うえええええええええええええええ!?
 ほんとだ!?
 ヒツジに牙ってなかったああああああああ!!

 じゃあ、全部俺の妄想だったってのか!?
 中二病だったってのかよぉおおおおお!!

「お前さんは本当の力を手に入れる時が来たのじゃ。この出会いも運命じゃったのよ」
「本当の…力」

 ムツゴロウさんを得たことも一つのきっかけだった。
 そこから俺の人生は変わった。

 だからこの出会いも同じなのか!!
 世界が俺を欲しているというのか!!

「さあ、来るがよい。力の使い方を教えてやろう」
「婆さん、何が目的だ!」
「珍しいものが好きなだけじゃよ。その角を調べたい。それが動機じゃいかんか?」

 たしかに筋は通っているが…
 はたして信用すべきか。

「すべてはおぬしが選ぶこと。好きにせよ」
「俺が…選ぶ。そうだ、俺が選ぶんだ!!」

 自分で選ばなければ何も変わらない!!
 俺は強くなりたいんだ!!

「婆さん、あんたに命預けるぜ!!」
「ほほ、不死身のくせに偉そうに言うものじゃ。その傲慢さ、気に入ったぞ」



※回想終わり



 そして俺は角の力を解放した。
 俺の角の能力は「吸収倍化」だ。

 この世界の魔力を吸収して、それを何倍にして放出する力。
 今回は電気のエネルギーを吸収して放ったから強烈な稲妻になった。
 それは機械のジープには致命傷だったってことさ。

 すべては作戦通り。
 ジープを倒すために準備を重ねたんだ!!
 この電気放出も何度も練習して身につけた技だ!


「そう、名付けてライトニングボルトだ!!!」


 超カッコイイ!!!
 俺、アイオリア並みにカッコイイ!!

 まさかこんな日が来るとは!!


 やったぜえええええええ!






「あっ、スキル名は『自家発電』にしておきました」





 リーパぁあああああああああああああああ!!


 やめろよぉおおおおおおおおおおおお!!!

 せっかく格好良く決まったのに、またこれかよ!!

 

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