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「牧場を拡張しよう」編

三十九話めぇ~ 「マイゴールドへ行こう」

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 俺たちはジープを倒した。
 それはもう必死な思いで多大な犠牲を払って。
 それなのに、それなのに…

「自家発電かよぉおおおおおお!!」

 せっかくのライトニングボルトじゃねえか!!
 そりゃどう考えてもヒツジがアイオリアにはなれないけどさ。
 せめて「シゲキ・ライトニング」とかにしてくれよ!!

 リーパさ、そこは考えてくれよ!

「自家発電は駄目でしたか?」
「それはまあ…駄目だろうな」

 自家発電というのは、まあみんな知っていると思うが、そういう意味だ。
 俺も中二の頃は一日何回できるかを友達と競ったりもしていた。
 もう六回か七回くらいで限界だったな。
 最後は何も出やしない。

 それどころかやりすぎて痛くなってきて、しばらく使い物にならなくなったことがある。
 お前らもやりすぎるなよ。
 人間ってのは限度があるんだ。あるから面白いんだからな。

「どうして駄目なんですか?」
「え?」
「自家発電って、電気を発電することですよね。どうして駄目なんですか? じっ~~~」

 リーパが俺をじ~~~っと見てくる。
 うう! うううう!

 や、やめてくれ! そんな目で見ないでくれ!
 そんな純粋な瞳で見ないでくれ!!

 たしかに自家発電は普通の意味では自宅で発電することだ。
 一番思い浮かべるのが自転車だな。

 ちょっと検索してみたが、今すごいのな!
 最初の投資は必要だが、やろうと思えばそこそこできるみたいだ。
 特に電動アシスト自転車を持っている人は気軽にできそうだ。

 いいなー、俺もやってみたいな。
 まあ、ヒツジだから無理なんだけどさ。
 もし人間に戻れたら実家のクロスバイクで試したいものだ。

「それで、どうして駄目なんですか? じっ」
「わかった! わかったよ! 自家発電でいいよ!!」

 ちくしょう! 完全に屈服させられた!
 もう俺の負けだよ!!
 卑猥な意味に捉えた俺が悪いんだ!!


「それにしても思ったより上手くいきましたね。電撃の新技も使えそうです」
「強いんだけどな…欠点も多いんだよな、これ」

 俺の新しい能力「吸収倍化」だが、実際はあまり便利な技じゃない。
 ジープとの戦いを見てもわかるように充電が必要だ。
 事前に充電もできるが、放電しちゃうので威力はすぐに落ちる。

 もし戦闘中に使うのならば直前の何ターンかの充電が必要だろうな。
 それならば普通に攻撃したほうが強いかもしれん。
 ただ、機械系の敵にはかなり有効なので、これからも使えるときは使いたいものだ。

「理論的には他の魔力も吸収できるんですよね?」
「練習が必要だけどな」

 吸収といってもすぐにできるわけじゃない。
 電気を吸収するにも練習が必要だった。
 その間に何度感電したことか…!!

 リーパの言う通り、理論的にはあらゆる魔力が吸収可能だ。
 魔力といっても、この世界のすべての要素は根源的なエネルギーが形を変化させたものなので、それら全部を魔力と言っているだけなんだ。

 だから炎や冷気とか、ああいったものも吸収できるはずだ。
 …できるはずだ。たぶんな。

「その理論だとシゲキさんの不死身も説明できません?」
「え? どういうこと?」
「シゲキさんって、角から生命エネルギーを摂取しているんじゃないでしょうか?」

 なんだってーーーーーー!!!!
 たしかにそれなら辻褄が合う!!
 俺の角がないときに再生時間が延びることも説明できる!

 ちょっとまだよくわからないことも多いが、もしかしたら俺は無意識のうちに角から再生エネルギーを摂取しているのかもしれん!!

 じゃあ、角って超大事じゃん!!
 思えばその角を力付くでもいだ女がいたな。
 削ったりもしやがった!

 ぷるんがいなくてよかったぜ。
 もしいたら「じゃあ、試してみようか」とか言って角を削ったに違いない。
 怖い、怖い。あいつが戻ってくるのが怖いよー。

「オヤジ殿、ジープはもう動かないみたいです」
「そうだな。呪縛はもう解けたようだ。こいつはただのカッコイイだけのジープさ」

 これが本来の姿なんだ。
 あんなふうに操られるなんてクルマの本当の姿じゃない。
 クルマってのは俺たちの最高の相棒なんだからさ。

「シゲキさん、やりすぎましたね。さすがにこれは私でも駄目だとわかります」
「たしかに黒焦げだな…」

 ボンネットの中が酷いことになっている。
 俺やリーパのような素人でも、これは駄目だろうと思えるレベルだ。
 試しにリーパが動かそうとしたがまったく反応しない。

 最低限クルマが自走するうえで必要な部品は二つある。

 一つはエンジン。当たり前だが、動力がないと動かない。
 次にCユニット。エンジンやその他のシステムを管理する機械だ。
 PCでいえばCPUに当たる。
 メモリがいくらあってもCPUが壊れていたら動かないのと同じだ。

 さっきのダメージ表示を見るにエンジンはかろうじて生きているが、Cユニットは完全にイカれてしまったらしい。
 装甲も火で所々焦げているし、日本だったら確実に廃車レベルの状態だ。

 だが、こいつはクルマだ。
 紛れもないクルマなんだ。
 この世界でクルマがどれだけ貴重かわかるか。

「俺はクルマを見捨てない!!!」

 こいつはもう敵じゃない。
 俺の相棒なんだ!!
 引っ張ってでも連れていく!!

「ぬぐおおおおおおおおおお!! くそ重いーーーー!」
「駄目でしたね」

 ちくしょぉーーーーーーーーー!!
 ヒツジがどんなに引っ張っても、まったく動かねえ!
 ファンタとマダオと一緒でも全然駄目だ!

 ここまで来て駄目なのかよ!
 このまま置いていくしかないのか。

 いや、落ち着け。
 もしかしたら回収してくれる業者がいるかもしれん。
 それに頼むか?
 だが、このまま置いておくのも不安だな。

「その前にネブを弔ってやらないとな」
「肉を取得します?」
「仲間は見逃してくれよ!!」

 モンスターを仲間にすると死んだときが困る。
 一応素材をしっかりと持っているので、ついつい剥ぎたくなる気持ちにもなるが、そこは仲間として弔ってやりたい。

 俺が守ってやらないとリーパが狙うからな。
 ここは散っていった戦友のために俺ががんばるぜ!

「ファンタ、頼む」
「わかりました」

 ファンタが地中に埋まっていたネブを引っ張り出す。
 頭は砕けてしまっているので直視しづらい状態だが、ちゃんと埋葬してやらねばなるまい。

「ネブ…」

 そうして俺がネブに近寄ろうとした時だ。


 バサーーーー!
 ガブッ!!


「え!?」

 俺の目の前で砂が隆起したと思ったら、ネブの身体が消えた。
 砕けた頭だけ残して身体が消えちまった!!

 うおーーー、グロいーーーーー!!
 めっちゃグロ映像だよ、これ!!!

「って、なんだ!? 何が起こった!?」
「オヤジ殿、ご注意を!! 砂の中に何かいます!!」
「砂の中だって!?」

 たしかに今、砂の中から何かが出てきてネブを噛み千切った。
 よく見えなかったが何か牙のようなものが見えたぞ!

 なんだ、何がいるんだよ!!

「おい、聞こえているなら出てこい!!」

 俺は砂中に隠れているやつに声をかける。
 そう、これも一つ学んだことだ。

 いつも相手から話しかけられて言葉が通じることを知るが、それならばこちらから話しかけることもできるってことだ。
 まずは話が通じるか、この最初のリアクションでわかるってわけだ。

 俺が何度か話しかけると、砂漠が渦巻きのように回転を始め、その中央に何かが浮かんできた。

「背ビレ? あれは背ビレか!?」

 砂からは、まるで海で見かけるような魚の背ビレが浮き上がっていた。
 あれを見た瞬間、誰もがこう思うだろう。

「まさか…お前は!!」


 バサーーーーー!
 砂の中からサンドシャークが現れた


 マジかよ!
 砂の中から出てきたのは、あのサンドシャークだ!!

 見間違うわけがない!
 だってあれほどの激闘を交わした相手だぞ!
 ぷるんだって血まみれになってようやく倒したんだ!

 まさかもう一匹いたのか!?
 だが、あれは…

「シゲキさん、あれは子供です!」
「子供…。俺たちが倒したサンドシャークの子供か!?」

 俺たちが戦ったときとサイズが違う。
 前は三十メートル以上はあったが、目の前のはせいぜい五メートルだ。
 それでもネブを丸呑みするくらいだ。
 かなり大きいのは間違いない。

 だが、解体した時に子供はいなかった。
 それ以前に産んでいたってことか。

「お前、覚えているわ。ワイのオカン(母ちゃん)殺したやつや」

 サンドシャークがこちらを見て呟く。
 やはりそうか!!
 くっ、子供がいたなんて…これも因果応報か。

「すまん。俺たちにはどうしても倒さねばならない理由があったんだ…」

 理由=犯罪者になりたくないから。
 くっそ、ますますこっちが悪者じゃねえか!
 何の弁解もできないぞ、これ!
 俺はどうすればいいんだ!!

「ああ、かまへん、かまへん。おかげで静かになったわ」
「え? そうなのか?」
「オカンいなくなったから馬鹿ップルが減っての。釘を投げられることもなくなったわ」

 そういやそうだったーーーー!!
 馬鹿ップルが「きゃっきゃうふふ」的な感じで釘を投げるから、怒ったサンドシャークが反撃して賞金首になったんだった!
 そりゃまあ、いなくなればもう来ないよな。

 いいのか? それでいいのか?
 本当に気にしていないのか!?

「オヤジ殿、我らモンスターの世界では親子も他人同然。一度別れれば違う個体です」

 ファンタの言葉は実にリアルだ。
 親子の情はあれど、その大半は本能にもとづいたものだ。
 子供も一定の時間が経てば別れる日がやってくる。
 俺たち人間とは違って、親が死んだからといって恨む必要はない。

 理屈はわかるさ。理屈はな。
 だが俺はお前たちを家族だと思っているぜ。

「オジキぃ、だから俺たちはあんたに惹かれるのかもしれねえな。家族の温もりを知らない俺たちに、あったけぇもんを教えてくれるからよぉ」
「ああ、俺がモンスター界に新しい風を吹かせてやるぜ!」

「なんやお前ら、なんだか楽しそうやな」
「なんならお前も来るか? それなりに楽しいぜ」

 たまにネブみたいに死ぬけどな。
 もちろん俺以外は不死身ではないので死んだら終わりだ。
 人生ってやつは厳しいもんだ。

「ここも退屈になってきた。かまへんで」
「マジか!!」
「ワイはオカンと違って暴れん坊やさかい、刺激ある生活を送らせてくれたらな」
「もちろんだ!! 俺ほど刺激あるやつはいないぜ!」

 だって、名前がシゲキだからな!!!
 こんな刺激的なやつはいないぜ!!
 …まあ、名前だけだけどな。

 だが、これからも戦いは続くから退屈しないのは間違いない。
 それだけは約束できるな。

「ほんなら、それなんとかしないとな」
「ジープのことか?」
「そうや。どうやらそれを持っていきたいらしいのぅ。ワイが引っ張ってやるわ」

 たしかにサンドシャークの大きさと力ならばジープは引っ張れそうだ。
 そのパワーは身にしみている。
 だが、気になることが一つある。

「それはありがたいが砂漠から出られるのか?」

 一番気になるところがそれだ。
 サンドシャークは砂漠でしか生きられないはず。
 だから親シャークも砂漠でじっとしていたんだ。

 ん? そういえばずっと一匹だったのにどうやって受胎したんだ?

「シゲキさん、サンドシャークは自己受胎ができるそうです」

 リーパがモンスター図鑑を見て教えてくれる。
 自己受胎というのは自分一人で受胎が可能ってことだ。
 いわゆる両性具有ってやつだな。

 孤立する環境に存在する生物が自己進化してそうなったりするらしい。
 アメーバみたいな増殖とはまた少し違う感じだ。

 ということは、サンドシャークはオスでありメスでもあるってことか。
 まあ、こいつはワイとか言っているからオスにしか思えないが。

「いつまでも砂にしか生きられないんじゃ時代に取り残されるわ。ワイはオカンとは違うで!」


 ズザザザ!!
 サンドシャークが陸地に上がってきた


「うおお! 出られるのか!!」
「これも自己進化っちゅーやつや」


 パパーン
 サンドシャークがランドシャークに進化した

 なんと陸地を移動できるようになった!!


「オカンの死にざま見て思ったんや。このままじゃあかんってな。試してみたらできたわ。もともとワイらは陸地も動けたんちゃうかな」

 なるほどな。
 ずっと砂地で過ごしてきたから忘れていただけで、本当はもともと陸地も動けたのかもしれん。
 だが固定観念が邪魔をして砂から出ることを拒んだ。
 だから滅んだのか。

 深い。深いな。
 まさに生物の進化を目の当たりにしているようだぜ。


「じゃあ、今日からお前も戦友だ!!」
「おっしゃ、よろしく頼むで!!」


 パパーン
 ランドシャークのティコが仲間になった


 ティコ!?
 こいつ名前はティコかよ!?

 なんかすごく惜しい!!
 あれってたしかシャチじゃなかったか?
 俺もうっすらとしか覚えていないから断言はできんが…

 ともあれステータスはこうだ。


□名前 :ティコ
□職業 :ランドシャーク
□レベル:1
□HP :68
□MP :13

◇攻撃力:35
◇防御力:18
◇素早さ:7
◇命中 ;11
◇回避 :1
◇装備
■頭  :鮫牙
■胴  :若い鮫肌

☆スキル
「土玉発射」:土や砂を弾丸として発射できる。大きさによって溜める時間と威力が変化。


 つ、つええ!!
 やっぱり種族の壁って大きくね?
 最初からこの強さってぷるん並みじゃねえか!!

 やっぱりモンスターって素の能力がかなり高い。
 そりゃ大自然で生きているから当然かもしれんが。
 こりゃとんでもない戦力アップだぜ!


「シゲキさん、どうします? このままマイゴールドに行きますか?」
「本当は一度準備をしたかったが、ジープが動かない以上、そうしたほうがいいな」

 本当はジープが手に入ったら一度アイアムタウンに戻る予定だった。
 ここからマイゴールドへは何十キロかあるから、しっかり準備を整えたいしな。

 だが、ジープが動けないのならば、修理ができそうなマイゴールドに行ったほうがいいだろう。
 アイアムタウンに戻ってもジープは邪魔になるだけだし。

 うむ、ここは勝負だ!!
 ティコも仲間になったし大丈夫だろう!!

「それじゃ、マイゴールドに出発だ!」


 俺たちはティコに引かれたジープに乗りながら道を進む。
 道といっても道路なんてない荒野だ。
 時々モンスターとすれ違うが、ティコにびびって近寄ってこない。

 最初のボスだもんな、砂鮫って。
 そこらの雑魚モンスターなら逃げるよな。
 そうして歩いていったら相当苦労しそうな道のりも、ティコのおかげで快適に過ごせた。

 そして、ついにマイゴールドに到着した。
 さすがに牽引しているから時間がかかったが、二日で到着したぞ。



「でかいぜ!」

 最初に出た言葉がそれだ。
 明らかにアイアムタウンとは規模が違うってのが遠くからでもわかる。

 アイアムタウンはちょっとした田舎町って感じだった。
 普通に生活するぶんには困らないが、やはり普通の町だ。

 だが、ここはもはや町というより地域だ。
 遠くにある何本もそびえ立った煙突から煙も出ているし、右手にはかなり大きい工業地帯が広がっている。
 こいつぁ、本当にでかいぜ!!

「シゲキさん、ティコとジープはこのあたりに置いておきましょう」
「ああ、そうだな。ティコは目立つし大きいからな」

 さすがにティコは町には入れそうもないな。
 工場のほうならば行けそうだが、普通の町並みを連れて歩くわけにはいかないな。
 町中を巨大な鮫が歩いていたらマジ怖いからな。

「初めての町だし、お前たちも待機していてくれ」
「了解です」

 ファンタとマダオもここで待機で、行くのは俺とリーパだけだ。
 大丈夫だとは思うが初めての町だから注意しておこう。


 俺とリーパは町中に入る。
 アイアムタウンのように特に門番がいるってわけじゃなかったな。
 最初は検問とかあったらどうしようと警戒していたが、そんなことはなかった。

「この町は体の大きい人が多いですね」

 リーパが周囲を珍しそうに観察している。
 その中で気になるのが、がたいの良いやつが多いこと。
 リーパが子供だからそう思うのかと思いきや、実際にそういうやつが多い。

 なんつーか、ガテン系ってのかな。
 肉体労働をしそうなイメージの人が多い。

「私の地域とは全然違います」

 リーパもこんな大きな町は初めてらしい。
 田舎の牧場から出たことがなかったのだから仕方ないな。
 俺はヒツジになる前は日本にいたから慣れているから問題ない。

 こうして考えると日本ってのは、いつも車が行き交っている騒がしい場所だったなと思うわけだ。
 それが異世界じゃ可愛いもんよ。
 馬車はあっても車なんてめったに…


 ブオオオオオオオオオオオオ!!
 暴走車が現れた

 ドガッ
 シゲキと衝突

 シゲキは吹っ飛んだ


「ぎゃああああああああああああああああああ!」


 突然現れた暴走車に轢かれて、俺は吹っ飛ばされた。
 完全な交通事故だよ!!
 いきなり町中に暴走車ってどうなってんのこの世界!?

 事件、事件だよ、これ!
 日本だったら大ニュースだよ!!

「シゲキさん、大丈夫ですよね? うん、大丈夫ですね」
「反応が薄いよ!! もっと心配してくれ!」
「いや、不死身だからいいかなと」

 だんだん俺に対するリアクションが薄くなってきたよ!!
 不死身だからって痛くないわけじゃないんだぞ!!
 いてーーー! また骨折したかもしれん!!
 もう治ったけどさ!!

「また暴走車だ」
「どうなってんだよ最近は」

 周囲からそんな声があがっている。
 どうやら暴走車が日常の光景ではないらしい。
 それは安心したが、あのまま放っておいてもいいのか!?


 マイゴールドの自警団が現れた。

 ドガガガ
 射撃を開始
 グレネード弾を発射

 ボンッ
 暴走車は撃破された


 うおおお! すげーーー!
 ザ・傭兵みたいな人たちが現れて一気に暴走車を鎮圧しちまった。
 しかも全員がグレネード付きのアサルトライフルを装備している。

 こいつは強いぜ!!
 相手が車程度ならば簡単に制圧できる力がありそうだ。

「ここではあまり目立たないほうがいいですね」

 リーパもそれを見物しながらそう呟く。
 ああ、そうだな。
 アイアムタウンでもモヒカンにびびったもんだが、ここはそうしたレベルを少し超えている。

 門番がいないのも頷けるってもんだ。
 この自警団がいれば迂闊な行動になんて出られないしな。
 へっ、なかなかいい感じじゃないか。
 俺は好きだね、こういうきな臭い町は。


 その後、一通り町を回ってみた。
 アイアムタウンにあった施設は全部あるようだし、規模もこちらのほうが数段上だ。
 しばらくここを拠点にするのも良いかもしれないな。

「まずは車の修理ですか」
「そうだな。出費がかさむが大丈夫か?」
「仕方ないです。動けないともっと困りますから」

 まずはクルマの修理が最優先だ。
 アイアムタウンに戻るにしてもクルマが必要だからな。

 だがその後、俺たちは自分たちの甘さを痛感する。


「修理代が100万か…」

 侮っていたぜ、クルマの値段の高さを!!
 クルマの修理工場に行ってざっと聞いただけだが、今の状態を復帰させるには最低その金額がかかるとのこと。

 そりゃクルマだもんな。
 日本だって高い車は何百万もするし、バンパーを軽くこすっただけでも十万とかするしな。
 それがクルマとなればもっと高くなるのは当然だ。
 こりゃまずいな。

「この値段はさすがに出せませんね」
「下手すりゃ小さな牧場を買えちまうからな」

 牧場が潰れるどころの話ではないな。
 さらに借金まで背負うのは勘弁願いたい。

 俺たちはうなだれながらも一度ジープのもとに戻ることにした。
 一度作戦会議を開かねばならないな。
 しかし、まいった。どうするか…

「おや? 誰かいません?」
「え?」

 俺はうなだれていたので発見が遅れたがジープの前に誰かがいる。
 その男はボンネットの中を見ているようだ。
 何者だ? まさか泥棒か?

「おい、俺のクルマに何している!!」

 思えば登録とかしていないので俺のクルマというのはおかしいが、荒野では拾った人間に権利があるものだ。
 だからこのジープは俺のものなのだ!!

「おい、聞いているのか?」
「こいつぁひでぇな。エンジンは何とかなるが、Cユニットとバッテリーは交換だな。それにこいつはまさか…」
「おい、そこのモヒカン!! お前だ!」
「ん?」

 その男、赤いモヒカンの男はようやく俺とリーパに気がついたようで、ボンネットから頭を上げる。
 なんというか、少しすらっとした感じの兄ちゃんだな。
 モヒカン族なのは頭を見ればすぐにわかる。

 さらにタンクトップと少し透けたグラサンを身につけているので、日本で見たらパンクロッカーと勘違いしそうだ。

「こいつはあんたのクルマか?」
「そうだ」
「ずいぶんとやらかしたな。工場に頼むと高くつくぜ」
「それはもう知ってるさ。最低100万だとよ」
「100万? まあ、工場ならそんなところか。相変わらずボッてやがる」

 男は皮肉な笑みを浮かべて肩をすくめる。
 なんだ、この兄ちゃんは?
 悪人という感じはしないが、やはり不審者だ。

「ファンタ、どうして追い払わなかった」
「もぐもぐ、この人は良い人です。もぐもぐ」

 何食ってんのーーーーーー!?
 それ完全に買収されてね!?
 なんかもらったんだろう、それ!!
 知らない人から餌もらっちゃ駄目よ!!

「心配するな。わんわんグルメが余っていたからやっただけさ。しかしまあ、すごい面子で旅してるもんだ」

 しゃべるヒツジに幼女にガルドッグにビビルンに、おまけにランドシャーク。
 実際に俺が見ても意味がわからない。
 仮にここにぷるんが加わったとしたら、さらに意味がわからない。
 そりゃ誰もがそう思うよな。

「おい、行くぞ」
「行くってなんだ?」
「クルマ、直すんだろう。Cユニは交換だが、あとはなんとかしてやる。俺んちの工場に運ぶぞ」
「おいおい、勝手に何言ってやがる!」

 クルマの修理には金がかかるんだ。
 こちとら貧乏だぞ!!
 レスキューを一回やったら、すっからかんになるほど貧乏だ!
 その状態で修理なんてできないって!

「いいジープだ。腐らせるにはもったいない。まあ、オレに任せておけ」

 そう行ってモヒカン兄ちゃんは強引に俺たちを工場に連れていった。


 この兄ちゃん、何者だ!?


「シゲキさん、いいじゃないですか」
「リーパ、だが…」


「最悪は直った瞬間にジープに乗って逃げましょう」


 あくどーーーーーーーーい!!

 この幼女、相変わらず超あくどいよ!!


 ぷるんはとっさに好き勝手動く感じだけど、リーパは計画的なんだよなー!!



 頼もしいやつだぜ!!


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