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「牧場を拡張しよう」編

四十二話めぇ~ 「この電撃でぇ~!」

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「うう、俺はいったい…」

 俺は暗い世界で目が覚めた。
 頭がくらくらしてまだよく思い出せない。
 俺はどうしてこんな場所に…

 それに何だかピリピリするし、けっこう臭いぞ。
 そういえば俺はゴミの世界である瓦礫センターに来ていたような…

 とりあえずここから出よう。
 ここは何か嫌な感じがする。
 出口はどこだ…!


 むくっ
 シゲキは立ち上がった

 ぶすっ
 ドリルホーンが何かに刺さった


「ぶはほぉおーーーー!!」

「うおおおっ、なんだーーー!?」


 ティコはシゲキを吐き出した。

 ごろごろごろー
 がすっ


 いってぇえーーーー!!
 何かの角(かど)に頭をぶつけたーー!
 いったい何がどうなったんだ!!

「あっ、オトン。生きとったんか」
「ティコ、無事だったか!」

 おお、ティコは生きているぞ!
 上手く逃げ延びてくれたんだな!!

 こいつがいたからこそ俺は躊躇なく餅ネタが使えたんだ。
 ほんと大活躍だよな。

 あれ?
 俺って今、どこから出てきた!?
 なんだか身体もべとべとするし…

「って、俺を食うな!!」

 疑うまでもなく今俺はティコの口から出てきた!
 それはつまり食われたってことだ!

 さっきのは胃の中か!?
 どうりで暗くて臭かったわけだよ!!

「しゃあない。急いで逃げたんや。そこしかなかったわ」

 敵は逃げたが、いつ戻ってくるかわからない。
 ティコはすぐさま俺たちを胃の中に収納して逃げたらしい。

 サメには手がない以上、仕方がない判断だな。
 たしかに一番安全だといえるかもしれん。

「でも、オトンが生き返るなんて初めて知ったわ」
「あれ? 言わなかったか?」
「初耳や」

 そういやティコが仲間になってから死んでないかもな。
 わざわざ言わないし、普通は知らないか。
 「俺、不死身なんだよね」なんて言っても信じないだろうし。

 ん? 知らなかった?
 俺が生き返るのを知らなかったということは、そのまま死んだと思っていたわけだ。
 そしてティコは逃げたあとも胃の中に俺をしまったままだった。

 ということは…!

「お前、やっぱり俺を食おうとしたな!!」
「死肉ならええかなと」

 あぶねぇえええーーーー!!!
 危うく消化されるところだったぜ!!

 俺は再生するからひたすら消化と再生を繰り返すという負のスパイラルに陥るところだった!!
 肉食サメは恐ろしいよ!!

 まあ、そのことはいい。
 こうして無事に逃げられたわけだから責めないでおこう。
 それより確認しなければならないことがある。

「ファンタとマダオは?」
「ファンタは中におるで」
「出せ! すぐに出せ!!」

 俺に言われると仕方なくティコはファンタを吐き出した。
 だが、俺とは違ってぐったりしている。
 脈を確認したが、やはり死んでいた。

「くっ、ファンタ…すまない!」

 あのミサイルをくらったら生物はひとたまりもないな。
 レベルが高いとかティコみたいに強靭な種族じゃないと無理だ。
 ちくしょう、また大切な息子を失った!!

「ところでマダオは?」
「虫は食わんから置いてきた」

 拾ってやれよぉおおおおーーーーー!!
 せめて一緒に胃の中に収納してやれって!!!

 しかも改めて虫とか言われるとドキッとするよ!
 思えばあいつ、ただのでかい芋虫だからな。
 そう思うと俺よりキモく感じる。

「荷物もある。拾いにいくか」

 俺たちが掘り出した物も一緒に置いてきたので、取りに行くついでにマダオも回収する。
 哀しいかな、マダオの優先順位が銅線より低いが仕方ない。
 今やただの虫の死骸だもんな。


 そうして俺たちは無事荷物とマダオの死骸を回収した。
 まだあまり時間が経っていなかったので無事だった。

 こんな場所じゃ、さっきのハエとかがすぐにやってきそうだ。
 あのサイズのハエだと蛆も相当大きいんだろうな。
 もし産み付けられていれば、かなりグロい映像になるところだった。

「俺が甘かったな…」

 少し有頂天になっていたかもしれん。
 ジープを倒し、ティコを仲間にして油断していた。
 俺たちは強いのだと錯覚していたのだ。

 しかし、賞金首に出会った途端このざまだ。
 本気のクルマが相手だとモンスターなど狩られる側に回る。

 今回の出来事は俺のミスだ。
 俺がファンタとマダオを殺したんだ。

 こいつらは俺と違って生き返らない。
 なんて残酷な現実なんだよ。

「オトン…」
「ティコ…」

 ティコは俺に寄り添って慰めてくれる。
 もう残っているのはこいつだけだ。
 お前も哀しんでくれるか?

「もう食べてええ?」

 ちがったーーーーー!!!
 全然違ったよ!!

 ファンタの死骸を狙っていただけだった!!
 だからせめて仲間は我慢しようぜ!!
 どんだけ野生の力に溢れているんだよ!!

「せめて綺麗な場所に埋めてやるか。そうだ。牧場がいい」

 ネブは無理だったが、牧場の一部に墓を作ろう。
 俺は死んだ仲間を忘れないぞ。

 そういえばベルウィックサーガでは、仲間が死ぬと教会の裏に十字架の墓が増えていく。
 思えばああいうのってあまりないよな。
 自分のミスで殺したと思うとなかなかヘビーだ。

 まあ、俺は死んだらやり直していたので誰も死ななかったが。
 負傷兵を回収するステージでは何度もやり直したものだ。
 懐かしいな。

 しかし、今度はゲームではなく現実だ。
 リアルで墓が増えていくのは精神的にきつい。
 戦友を失う兵士の気分だ。

「一度戻るか…」

 いつまでも呆けていても仕方ない。
 俺たちは生きているのだから前を向かねばならない。

 賞金首は恐ろしいが、今度出会ったら即餅ネタで追い払おう。
 正直やりたくないが生きるためだ。
 まさかこのネタに頼ることになろうとは…

 そう俺たちが帰ろうとした時だ。

 がさごそ がさごそ

「なんだ、この音は? また敵か!?」

 なんだか変な音が聴こえる。
 まるでゴミを漁っているような音だ。
 誰かいるのか!? それとも敵か!?

「死体、死体~~死体はねーがー」

 警戒する俺たちに対し、声はどんどんと近づいてくる。
 このゴミ山の向こう側に誰かがいるらしい。
 声を出していることからモンスターではないのか?

 いや、油断はできん。
 今まではいなかったが、普通に言葉を話すモンスターもいるかもしれん。
 モンスター図鑑を軽く見た感じだと知能の高いモンスターもいるそうだ。

 人間型や悪魔型、竜タイプのモンスターは高度な知能を有するという。
 魔法すら使うというのだから恐ろしい相手だ。
 今の状態でそんな輩と出会ったら勝ち目はない。

 ただ、今言ったように餅ネタがあるので少しは安心だ。
 あまり認めたくはないが、あれは絶対に逃げられるというチート級の能力だったりする。

 思えば相当優遇されている能力のような気がするな。
 俺が死ぬのを我慢すれば、ラスボスの魔王城だって一度も戦闘せずに魔王にたどり着くことができる能力だ。

 が、やっぱり死ぬのは嫌なのでそういう考え方はしないようにしよう。
 あくまで保険。最終手段だ。


 そんなことを考えていると、そいつがゴミ山の頂上に到達してこちらを向いた。
 まだ距離はあるが、いかんせんティコが大きい。
 見るなというほうが無理だろう。

「………」
「………」

 俺とそいつの視線が交錯する。
 やばい、なんだか見つめあっちまった!!!

 そいつはなんていうか、けっこう大きな男だった。
 けっこうどころか、かなりの大男じゃね?
 たぶん、マイゴールドで出会ったガテン系のおっさんたちよりでかいぞ!

 それより気になるのがそいつの顔だ。
 顔には縫い目があって所々色も違う。
 それに耳から何かネジのようなものが出ている。

 どこかで見たことあるような。
 あれ? なんだ?
 怪物くんでこんなの見たことあるな。

 これってまさかフランケン…

「っ!!」


 ドカドカドカ
 フランガーはファンタに駆け寄った


「死体ー、新鮮な死体だがー!」

 そいつは俺に脇目も振らずファンタの死体に近寄ると、ひょいっと持ち上げて背中のカゴに放り込む。

「おー、こっちにもあるがー」

 続いてマダオにも目をつけ、再び背中のカゴに放り込む。
 よくよく見ると、そのカゴの中には他にもいくつかの生物の死骸と思わしきものが入っていた。

 今はファンタとマダオも加わったので実にカオスなことになっている。
 うう、視覚的にかなりきつい映像だぞ!

「死体が集まったがー。帰るがー」

 マダオがちょっとでかいのでカゴが一杯になった。
 それに満足したのか、そいつはガニ股でどかどか歩きながら帰ろうとする。

「おい、ファンタとマダオを返せ!! おいって!!」
「うがー、うがー」

 全然聞いてない!!

 というか、こいつ大丈夫なのか!?
 敵じゃないようだが非常に気持ち悪い!
 顔もそうだが全体的に意思疎通が難しいような気がする。

 話は変わるが、俺が前にディズニーシーに行ったときに初めてディズニーの劇みたいなのを観た。
 普段そんなものをまるで知らない俺は何の予備知識もなかったのだが、アヒルだけがしゃべらないことに思わずツッコんでしまった。

 あいつら、あれで意思疎通ができるなんてすごいな。
 メスのほうはしゃべっていたのに…なぜあいつはしゃべらなかったのか。

 しかも当時の俺は、ここでも言えないような単語を使って揶揄してしまった。
 あぶねぇ。ディズニー好きにボコられるところだった。

 しかし、いろいろと見回ったが、けっこうツッコみどころ満載だった。
 あれは運営側がわざとやっているんじゃないかと思うくらいだ。
 ところどころにさも「ツッコんでください」というものに溢れていた。

 くっ、ツッコみの血が騒ぐ恐ろしい場所だったぜ。

「オトン、あいつ、行っちまったで」
「おおーーーーい、待てーーーーー!!」

 俺が変なことを思い出している間に、そいつはすたこら行っちまった。
 慌てて追いかける俺たち。


 そいつに追いつけたのは追いつけたのだが、意思疎通ができる状態ではなかったので、そいつの後をつけることしかできなかった。
 いや、だってさ、奪い返そうとして戦闘になったら面倒だしな。

 しかもファンタたちはすでに死んでいる。
 非情かもしれんが、死んだ者のために危険を冒せるほど俺たちに余裕はない。
 まずはあいつが死体を何に使うかを見てから判断してもいいだろう。

 もしかしたらノーリスクで奪い返すことができるかもしれん。
 うん、あいつ頭悪そうだしな。隙は必ずできるだろう。

 そんなこったで後をつけていくと、そいつは瓦礫センターの中心部に向かって歩いていくようだ。
 瓦礫センターはかなり広い。
 地図でしか知らないが、たぶん一つの区ぐらいはあるんじゃないだろうか。

 瓦礫センターの中央には何があるんだ?
 普通に考えればゴミが広がっているだけなんだろうが…

 ゴミが溜まるのには何かしら理由がある。
 人間、いきなり綺麗な場所にゴミを投げ捨てるのはなかなか勇気がいるものだ。
 しかし、一つでもゴミが捨ててあれば、「まあ、俺もいいか」となりやすい。

 その最初のきっかけが何かしらあったはずだ。
 誰かが何かを捨てたから、それが連鎖してここまでになったのだろうな。
 その原因があるかはわからないが少し興味があるな。


 そして、ついに瓦礫センターの中心部に到着する。
 なぜ俺が中心部だとわかったのか。
 その理由は簡単だ。

「なんだ、この建物は?」

 瓦礫の山の中に何かが埋まっている。
 表面上はゴミなので外からはわからないが、中にはちゃんとした建物が存在していた。

 なんていうか外見は玩具のお城のようだ。
 妙にカラフルでこの場にそぐわない感じかな。
 といっても周囲のゴミもけっこうカラフルなので、むしろ似合っているのかもしれんが。

「もどったがー」

 そいつが当たり前のように城の扉を開ける。
 やはりここがやつの根城らしいな。

「オトン、どうする?」
「ここまで来たんだ。少し見てくる」

 さすがに迷ったが、俺も入ることにする。
 俺の息子の死体を変なことに使われるのは嫌だからな。
 当然だがティコは入れないので外で待機だ。

「よし、行くぞ」

 幸い、門は開けっ放しなので問題なく入れるだろう。
 そもそも鍵なんてなさそうだが。

 門のところからしばらく様子を見ていたが、特に警備の人間がいるわけでもないらしい。
 あの大男が開けたまま、開けっ放しの状態になっている。

 めっちゃ無用心だな。
 こんな場所じゃ泥棒に入るやつもいないということかな。
 俺からすればあいつのほうが泥棒なので、勝手に中に入るのに罪悪感はないな。

 それじゃ、もう少し中に入ってみようか。


 バチバチバチーーーー


「どわーーー!!」

 俺が建物の中に入った瞬間、何か凄い光が発せられた。
 一瞬何かのトラップかと思ったが俺に異常はない。

 異変がないことを確認して、勇気を出して廊下を歩いていく。
 建物自体はなかなか大きいようで、中はけっこう広いな。

「旦那さまー、死体、死体見つけたがー」
「おー、新鮮なのはあった?」
「これ、これ、見つけたがー」

 話し声が聴こえてきたな。
 どうやら奥で何かやっているらしい。
 それにもう一人いるようだ。

 二人か…。
 正直敵だと厳しいな。
 もし危なくなったらすぐに外に出よう。

 俺は一度帰り道を確認したあと、さらに奥に進んでみる。
 こういうときはドキドキするな。

 ゲームでいえば、目的のダンジョンで全滅寸前にまでなって必死に歩き回っていたところ、また新しいイベントが発生した感じだ。
 「おい、まだセーブしてないけど大丈夫か?」という感じでヒヤヒヤする。
 もちろんこれはゲームではないのでやり直しとかはないけどさ。

 ここまで来たら見ないで帰るわけにはいかない。
 声が聴こえるのは、この先の部屋のようだ。
 あの大男は閉めるという行動を知らないのか、こちらも開けっ放しだ。

 俺はヒツジの能力である、後ろまで見える視界の広さを利用し、慎重に部屋の中をうかがう。

「うん、けっこう集まったね」

 見えたのは溶接マスクのようなものを被った人型のやつ。

 あれだ、よく車の修理とかの溶接とかでバチバチやるときに目や顔をガードするマスクだな。
 ただ、手で持つタイプではないので、潜水服の顔の部分といったほうがわかりやすいかもしれん。

 人間だと断言しなかったのは、やっぱり人型のモンスターもいるからだ。
 一番有名なのがゾンビとかアンドロイドとかだな。
 そういうタイプは見分けがつかない場合もあるから、ダンジョンでは慎重に判断する必要がある。

 ここからだと全身が見えないので、どういったやつかはわからないが…

「それじゃ、出してー」
「うがー」

 大男がカゴの中から死体を次々と出して並べていく。
 最初に出したのは元が何かよくわからない死骸。
 たぶん鳥か何かの死骸だと思うが明らかに死んでいる。

 だって、もう身体の半分がないしな。
 あまり描写したくないが、死んだあとに体を食い散らかされたのだろう。
 よくサバンナ特集とか、動物の番組で見そうな感じだ。

 それを台の上に置き、溶接マスクの人物が何かを持って構える。

「さあ、蘇れーーー、この電撃でーーー!!」


 バチバチバチー

 だが、生き返らなかった


「うーん、死んでるねー。じゃあ、次」
「次だがー」

 そして、次々と死骸に電撃をかまして何かをやっている。
 蘇れーとか言っているので、まさか蘇生実験をしているのか!?

 そりゃまあAEDとかあるから電気ショックの有用性は知っているつもりだ。
 だが、あれは心肺停止とかのためにあるんじゃないのか?
 すでに体が大きく破損している場合は意味がないのでは…

 そうそう、AEDについて調べると注意事項に「胸毛が多い場合」という項目がある。
 どうやら胸毛が濃いと火傷の危険性があるようだ。

 不謹慎だと怒られそうだが笑ってしまったな。
 たしかに外人とか胸毛の濃い人も多い。

 胸毛が燃えて火傷したらそれはそれでネタになるだろう。
 蘇生した場合に限って許されるジョークだが。

「うーん、駄目だなー。フランガー、もっといいのを持ってきなさいよ」
「うがー?」

 いやー、無理じゃないかなー、あの感じでは。
 俺としては命令を聞いているだけでも奇跡に思える。
 というか、俺がモンスターと話すより意思疎通できていないな。

「じゃあ、次」
「うがー」

 とと、次はファンタか!?
 おいおい、そんなんで焦がされたらショックだ!!

 あいつは胸毛うんぬんの前に毛でふさふさだからな!
 あんな電撃をかまされたら焼け焦げてしまう!!
 力づくでも止めねば!!

 電撃は怖いが、俺の角の能力を発動させれば死ぬことはないはずだ。
 ええい、ままよ!

「ちょっと待て! そいつは俺の…!」

「蘇れー、この電撃でぇーーー!」


 バチバチバチー


 やべー、間に合わなかった!!

 すまん、ファンタ!!
 黒焦げのお前なんて見たくないが、ちゃんと埋葬してやっからな!!


 ビクビクン
 心臓が動き出した

 ファンタは蘇生した


「あっ、成功したわ」

 うおおおおおおおおおおおおおおお!!
 マジかーーーーーーー!!!

 え? 嘘!? マジで!?
 マジで復活したの!?
 だって、ファンタってミサイルで吹っ飛んだのでは?

 いやしかし、たしかに外傷はあまりなかったような。
 もしかして仮死状態だったのか?
 でも、死んだような…

「じゃあ、次」
「うがー」

 バチバチバチー

 ビクビクン
 心臓が動き出した

 マダオは蘇生した


「なんじゃこりゃーーーーー!!」

「ん? 誰かいるの?」

 あまりの驚きに西部警察のワンシーンのような台詞を叫んでしまった。
 それによって俺の存在に気づかれてしまったようだ。

 だが、しょうがない。
 二人が生き返ったんだから驚くのが当然だ。

 思えば俺は誰かが蘇生するのを見るのは初めてだったりする。
 俺が復活する場面を見ているやつはこんな気分なのだろうか。
 マジでびっくりするぞ!

 おいおい、こりゃとんでもないことだぜ。
 こんなことができたら俺の不死身能力が霞むかもしれんが、今はそんなことを言っている場合じゃない。

「ファンタ、マダオ!!」
「オヤジ殿…うう」
「オジキぃ…か?」

 おお、おおおお!!
 二人が生き返ったぞぉおおお!!
 嬉しい、俺は嬉しい!

「オジキィ、どこだぁ。声しか聴こえねえよぉお」

 ひぃーーーーー!!
 マダオの目がないーーーーー!!

 ミサイルで吹っ飛んだのか!?
 うおー、グロいー!

「あっ、ごめん。焦がしちゃった」

 あんたかーーーーい!!

 どうやら溶接マスクのやつが蘇生の時に焦がしてしまったらしい。
 つーか、こいつは何者だ!?

「まったく、今日は騒がしいわね」



「え? 女なのか!?」

 その女がマスクを取ると、下からは人間の女の顔が出てきた。
 よくよく見ると着ている白衣の下には胸の膨らみもあるので、ちゃんとした人間の女のようだ。

 …ぷるんより小さいな。
 いや、これは表現が違うな。
 ぷるんが大きいんだ。

 中二のくせに大きい、と常々俺は言っているが、中二のくせというより、もともとあいつの胸が大きいのだろう。
 しかもまだ成長期なのだから、これからもっと大きくなる可能性がある。

 末恐ろしいやつだぜ…

 と、そんなことを考えるよりも先に、こいつを問い詰めるほうが先だ!

「あんた、何者だ!? ここで何している!?」
「何者って言われても、見ての通りよ」
「電撃で蘇生しているんだな!? まさかドクターミンチか!」

 俺は知っている。
 電撃で蘇生を繰り返す者といえば、もうお馴染みのドクターミンチしかいない!

 俺もあの人に何度お世話になったことか。
 そしてその時の絶望感の半端なさ。

 最初のシリーズなんてクルマの回収なんてシステムはなかったから、これから歩いて取りに行かねばならないという、あの恐怖がわかるか!?
 俺の中のミンチ先生は尊敬と恐怖で彩られているのだ。

 なあ、あんたはミンチなんだろう!?
 そうなんだろう!?

「私の名前はデンコよ」
「微妙だ!!!」

 それだと違うキャラクターと同じ名前になっちゃうじゃん!!
 電気つながりでわかりやすいけどさ、もっとなかったのか!?

 そういえば原発の事故から一時期でんこちゃんが消えていた。
 俺は好きだったのでショックだったが、最近はまた復活したようだ。
 元気そうで何よりだ。

「名前のことはいい。それよりここで復活の仕事をしているのか?」
「仕事ではないわ。あくまで私の好きでやっているのよ」
「趣味か?」
「うーん、なんというか、私って賞金首なのよね」

 ええぇっーーーーー!?
 マジで!? 嘘!!
 こんな普通の女がか!?

「あー、大丈夫。もう変なことしてないから」

 本当か!? 本当に大丈夫か!?
 俺は今、その言葉に相当敏感だぞ。

 なにせ賞金首と聞いた瞬間に、思わずマダオを盾にしてしまったくらいだ。
 それだけ恐れている相手だからな。

「オジキぃ、何かあったのかぁ?」
「あ、ああ、なんでもない。気にするな」

 すまん、マダオ。
 目が見えないのをいいことに利用しちまった。
 蘇生したせいか安心しちまってるな。
 気をつけねば。

「昔、けっこう殺しちゃってね。その罪滅ぼしで同じ数だけ蘇生しようって決めたの」

 なんだろう、あまり良い話に思えない。
 軽い感じのノリだからだろうか。

「で、何人殺したんだ?」
「千人くらいかな」

 ひぃーーー、殺しすぎ!!
 それってもう賞金首ってレベルを超えている気がする。
 大量殺人の超危険人物じゃねえか!!

「最初は肩こりを治すために開発した電気ショックが強すぎてね。思わず殺しちゃった♪ それがだんだん快感になってね…ふふ」

 こえーーーー!!!

 ぷるんとは似ていても違う怖さだ!!
 こいつ、マジで殺人鬼的な怖さがあるぞ!!!

 それに俺の目がおかしいのでなければ、目の前の女はどう見ても二十代ってところだ。
 いったいいつから殺しをやってんだ!?

 いやいや、落ち着け。
 もうこいつは殺すのをやめたとか言っていた。
 ならば安全だ。安全だと思いたい。

「で、今のところ何人蘇生させたんだ?」
「え? 今のが初めてだけど?」

 どうして蘇生できると思ったんだよ!!!
 何の確証もない作業じゃねえか!!

 どうりで半壊した死骸までやってると思ったよ!
 お前全然物事知らないじゃねーか!!!

「よくしゃべるヒツジね。電気やってみる?」
「嘘です。ごめんなさい!」

 笑顔で言わないでほしい。
 というか、お前は蘇生を目指すんだろうが。

「股間が柔らかくなるわよ」
「股間が!?」

 どういう意味なのかわからない!?
 まあ、興奮していない状態なら、ある意味いつだって柔らかいのだが…
 とと、すまん。またシモが出たな。

「でも、びっくりしたわー。本当に蘇生したのね」

 デンコは不思議そうにファンタとマダオを見つめる。
 初めて復活させたので興味津々らしい。
 何にせよ復活したのだから喜ばしいことだ。

「オヤジ殿、お腹が変です。気持ち悪いです」

 って、お腹が破れてるよぉおおおおーーーーーー!!
 ファンタ、超重傷じゃねえか!!
 死ぬ、これまた死んじゃう!!

「あっ、それは電撃の代償だわ」
「またあんたかーい!!」

 その電撃、どうなってんだよ!
 強すぎだろうが!!

「強すぎないと意味がないわ」
「そうだけど、また死ぬぞ」
「やっぱりイライラ棒って駄目なのかな?」

 それってイライラ棒だったのーーーーー!?
 なんか見たことあると思ったよ!!

 俺、あの番組好きだったんだよなー!

「ファンタ、大丈夫なのか?」
「え? 何がですか?」
「不思議ね。どうして生きているのかしら」

 たしかに、これはかなり異常な状況だ。
 しかし、それでも死んでいない。

 いや、もしかして死ねない…のでは?
 まさか今のショックでお前までフランケンみたいになったのでは!?
 それはそれで怖いぞ!!

「オヤジ殿だって不死身では?」
「そう言われるとそうなんだが…」
「あれ? あなたの角が光っているわよ」

 ん? 俺の角が?
 なんで、どうして?

「オヤジ殿から力が分けられている気がします」
「それって俺の角の能力のことか?」

 そういえばリーパが俺の不死身について言っていたな。
 俺の角の能力は吸収倍加。
 周囲の魔力を吸収して何倍にもする力だ。

 俺が不死身なのは周囲の生命エネルギーを無意識に摂取しているかららしい。
 あくまで推測だが、それだと理由は説明できる。

 そして今、角が光ってファンタに力を与えている。
 これはつまり俺の能力が発動して、おそらく生命エネルギーを分け与えているってことだ。

 つーか、この蘇生が成功したのって俺のおかげじゃないか!?
 ファンタやマダオは俺の力によって使役されている。
 だからもともと蘇生の力の一部を持っているのかもしれん。

 ただ、俺の場合は自動的に復活するほど吸収力が強いが、ファンタたちの場合は自力では復活できない。
 たまたま電流がショックとなって蘇生したって感じじゃなかろうか。

 逆にいえば、電流があれば復活の可能性があるということだ。
 これってすごいことではないだろうか!

「オヤジ殿、すごいです」

 ドバドバ出てるぅううううう!
 ファンタのお腹から血や腸とか出てるから!!

 お前のほうがすごいことになってるよ!!
 あまり人様にお見せできないことになってるから!

「とりあえず縫っておきましょう」

 デンコが何の躊躇もなく糸と針で縫いつけていく。
 ついでに他の死骸の皮を使って補強。
 やばい、このままではファンタまでフランケンにされてしまうぞ。

「ねえ、あなたがいれば電撃で蘇生ができるのよね?」

 デンコは蘇生ができたのが嬉しいらしく俺に興味を持ってきた。
 そりゃまあ、俺って相当レアなヒツジだからな。
 興味を持つのが普通だ。

「たぶん。推測だけどな」
「推測じゃないわ。だって今まで千回試して初めて成功したんだもの」

 その確率だと、電流だけじゃ絶対駄目ってことじゃないのか!?
 もっと早く駄目って気づこうぜ!

 それって単純に電流流すのが楽しいってだけじゃねえかよ!

「もしあなたがまた新鮮な死体を持ってきてくれるなら、また復活させてあげてもいいわよ」

 ううーん、申し出はありがたいが、ここはなんか怖いんだよな。
 こいつも賞金首みたいだし…

 だが、デンコは粘る。

「ここの電撃は特別なのよ。それと蘇生のたびにこれもあげるわ」

 デンコは何かのカプセルのようなものを渡してきた。
 普通に薬で飲むカプセル状のものだな。
 色は赤と青で、風邪薬みたいな感じだが。

「なんだこれ?」
「これは再生カプセル。壊れた組織を再生させるの」

 どうやらこの再生カプセルは、破壊された細胞を復活させるものらしい。
 たとえばファンタの内臓は破壊されているが、飲めば少しずつ治っていくという。

 デンコは死体を「直す」ことには成功している。
 だが、治すことはできなかったそうだ。
 戻るのは体組織だけで離れた生命は戻らない。

 だが、俺がいれば角の力を使って蘇生が可能だ。
 それはデンコの目的とも合致する。

 悪くない取引だ。
 俺も最悪の状況を回避してもらった恩義もあるしな。
 ちょっと怖いが乗っておくか。

「オジキぃ、俺の目も治してくれよぉ」

 そうだな。
 このカプセルがあれば目も治る…

「あっ、目は治らないわよ」

 言えねええええーーーー!!

 マダオの目だけ治らないなんて、俺には言えねえよ!!

 なんだこのオチ!
 自分が死ぬよりつらいオチじゃねえか!!



「なあ、オジキぃ、俺の目…」



 やめてくれーーーー!


 目のない目で俺を見ないでくれぇええええ!


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