未定

雨雪

文字の大きさ
2 / 4

会長の電話

しおりを挟む
「もしm『遅い』……それくらい待てないんですか、悠臣ハルオミ

僕がもしもしとが言い終わる前に喋った電話の相手は生徒会長である神咲カンザキ 悠臣ハルオミだ。

朝早くに電話しておいてそれか、と思ったが、雅以外には演技しているのであまりキャラにあわないことは言えない。
本音を言えば、演技した僕なんかではなくて素の自分で話したいと思ったが、まあ、それも仕方ないかな。正体バレるとめんどくさいことになりそうだし。

「で、何の用ですか?こんなに早くに電話してきて用はないとか言いませんよね?」
『まぁな。お前が寝坊していないかと思ってな』
「……いくら僕の身長が低いからって子供扱いしないでくれませんか」

くそぅ、悠臣め。自分は186㎝あるからってバカにしてんのかっ!163㎝しかない僕への当てつけかっ!
本気でそう言ってやりたい。さっきも行ったように無理なものは無理なんだけど……

『子供扱いじゃねぇよ。お前、去年入学式サボったんだろ?1年だった去年はまぁいいとして、今年は生徒会役員なんだからサボんじゃねぇよってこと』
「去年のは不可抗力です。今年はサボりませんよ、流石に」

僕がそう返すと、悠臣は電話の向こうで笑っていた。
それに気づき、若干ムッとしたが、大人しく悠臣の返事を待った。

『それならいい。じゃ、切るが遅れんなよ?』
「分かってますよ。そういう悠臣こそ遅れないでくださいね」
『ハッ、誰に言ってんだよ。俺が遅れるわけないだろうが』

悠臣はそう言って電話を切った。

それから僕はスマホを耳から離し、画面に表示されていた悠臣の名前をじっと見つめていたらしい。

電話を切ったことで、今まで遠くで聞き耳を立てていた雅が近づいてきたかと思えば、ニヤニヤしながら僕をからかい始めた。

「おやぁ~?水姫君ってば、会長サマの名前なんかじーっと見つめてどうしたのかなぁ?」
「っ、み、雅っ!からかわないでよ!わかってるくせにっ」
「えー?俺が水姫の何をわかってるっていうんだ?そういう水姫は俺がなんのこと言ってるのかわかったの?」
「……うぅっ、その顔ヤメロっ!」
「うぐっ」

懲りずにニヤニヤと僕を小突く雅に僕はさっきのお返しとばかりに鳩尾にグーで殴ってやった。
ざまぁ。

「いつまでもそんな顔してるからだよ。これに懲りたら僕をからかわないでよね」
「いてて……水姫本気で殴った?」
「僕が本気で殴って雅が立ってられるわけないでしょうが。もちろん手加減したよ。今のは大体7割くらいの力かな」

僕がそういうと、雅は顔を引きつらせて恐る恐ると言った様子で僕に問いかける。

「おい……ちょっと待て今のが7割って、本気でやったらどうなるんだよ……」
「うん?雅だったら意識がなくなるってことはないだろうし……精々崩れ落ちるぐらいじゃない?まあ、そこらの下っ端レベルだったら意識がなくなるか吹っ飛ぶかってとこかな」
「うわー……俺そんなやつと一緒にいたのか……味方でよかったわ」

雅は僕を見て若干引いたような動作をする。失礼な。

「まあいいや。次に僕をからかったりしたらこれじゃ済まさないからね。あ、時間だ。じゃあ僕先に行くから」
「おーう。俺も今日はいつもより早いからもうちょいで出るわ」
「うん。戸締まりよろしく」

そう言って、僕は一度洗面所に行き地毛の長い銀髪をスプレーで黒髪に染め、生まれつきのエメラルドグリーンの目を黒いカラコンで隠してから部屋を出て悠臣達がいるであろう入学式会場の講堂へ向かって行った。

そして、水姫の去った部屋の中で、雅はポツリと独り言を呟いていた。

「……あいつ、電話中自分がどんな顔してんのかわかってんのかねぇ。あんだけ会長好き好きオーラ出しといて幼馴染の俺が気づかないわけないってのに。
もう、いっそのこと告っちゃえばいいのになー」

と、まあそんなことを。

ちなみに雅の主張。
「俺は水姫に恋愛感情は持ってない!」(キリッ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

fall~獣のような男がぼくに歓びを教える

乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。 強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。 濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。 ※エブリスタで連載していた作品です

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

処理中です...