未定

雨雪

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生徒会メンバー

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部屋を出た僕は一直線に講堂へと向かっていた。
とは言え、寮の僕の部屋から講堂までは距離があるから20分前後かかっちゃうんだけどね。
この学園敷地広すぎるんだよ……

途中、朝早くに登校している生徒に挨拶されて返したりしてたらちょっとだけ時間遅れちゃったんだよね。
ああヤバイ。早く行かなきゃ悠臣に怒られる。

そう思いながら早歩きして講堂に着くと、そこにはすでに会長である悠臣と、生徒会補佐の華山カヤマ 李月イヅキ君がいた。

どうやら会計の律架リツカと書記の佑夜ユウヤはまだみたいだ。

「遅れましたか?」
「いえ、まだ時間にはなっていないので大丈夫ですよ、朝日奈先輩」
「そうですか。それは良かったです」

僕の言葉に返事を返してくれたのは補佐の李月君だった。

あ、ちなみに朝日奈は僕の苗字だよー。雅の苗字は白乃李シラノイ。言ったっけ?

僕がチラッと時計を見ると、7時28分。ギリギリだったようだ。

そういえば、今日はやけに悠臣が静かだなぁ、と思っていると、突然頭の上に何かの重みが加わった。何かっていうか、腕なんだけど……
っていうか、僕にこんなことをするのは二人だけど、そのうち一人は雅だからありえない。

そんなわけで犯人を確信した僕は、睨むようにして上を見上げた。

「……ちょっと。いい加減に僕の頭の上に腕を乗せるのはやめてくださいって前に僕言いませんでしたっけ……?」
「ああ、すまん。丁度いいところに頭があったもんでな」

予想通り……悠臣だ。
僕は内心騒ぎながら、それを表に出さないように極力無表情でいることを心がけて、溜息をつきながら呆れたようになるように演技して、悠臣に返事を返した。

「その言い訳何回聞いたと思ってるんですか。ていうか言い訳にもなってないじゃないですか」
「あれ、そんな言ったっけか、コレ」
「ええ。もう何っ回も同じことをね。っていうかいい加減に腕をおろしてくれませんか」

僕はそう言って、悠臣の腕を無理矢理頭から投げるようにして離した。

……自分で離したのに若干残った腕の温もりが離れてちょっと寂しいとか思ってない!断じてそんなこと思ってないからねっ!
って、僕は何に言い訳をしているのだろうか……

「痛ぇ……お前強くやりすぎだろうが。ただ乗っけてただけなのによ」
「だからそれをやめなさいと言っているんです。……いくら僕が悠臣よりも20㎝くらい低いからってそれはないでしょう……」

後半は本音がボソッと出てしまっただけなのだが、悠臣にそれが聞こえたのか、悠臣はククッと笑って僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。むぅ……

「っ、こ、子供扱いはやめてくださいっ」
「ククッ、子供扱いじゃねぇよ。なんか撫でたくなっただけだ」
「っ……なおさら悪いですっ」

こんなやりとりは日常茶飯事であるから、李月君は少し遠目から、微笑ましそうに僕らを見ていた。

僕と悠臣がそんなやりとりをするのは高1の初対面の時に悠臣が僕を見て『……お前、小学生か?』などと忌々しい失礼な台詞を言った時からだった。まあ今の僕は163㎝だけど当時は……もっと低かった。なにせ155㎝しかなかったんだから。
なのに悠臣……奴ときたら、腹立たしいことに当時既に179㎝とか180㎝手前だったのに今じゃあ186㎝で……忌々しい上に腹立たしいことこの上ない。

もちろん第一印象は最悪。
でも、その出来事から僕と悠臣は仲……良くなったかはわからないけど、よく話すようになった。
それから、悠臣と話しているうちにいろんな表情を見た。
いたずらに笑った顔、優しく微笑んだ顔、悔しそうに歪ませた顔、あとは……泣き顔も見たかな。悠臣が泣いたのは、後にも先にもあの一回だけだったけど。

そして、そんな悠臣のいろんな表情を見ているうちに……いつのまにか、僕は悠臣が好きになってた。
この学園に染まることはないって思ってたんだけどなぁ。

だけど、悠臣はすごくモテたし、いつも周りに可愛い子がいた。男だけどね。みんなそこらの女の子よりも可愛いんだよね。
だから正直、この想いは自覚したと同時に諦めていた。

多分、叶わないだろうと思って。

悠臣の容姿は客観的に述べれば男前というんだろうか?
髪は銀色。襟足が少し長くて、ウルフカット?っていうんだっけ。そんなの。
切れ長の瞳は灰色っぽいけど少し青の入ったブルーグレー。
目はほんとの色だけど、髪は染めてるんだって。
本当の髪の色は教えてもらえなかったけど。嫌いなんだって。

その話をした時の悠臣、どこか悲しそうだったからそれ以上は聞かなかった。
だって、好きな人のそんな顔は見たくないもんね。

それからしばらくして高1の夏、ランキングの投票が始まり、僕と悠臣は共に生徒会に入ることになった。
その時に今の生徒会メンバーとも出会って、仲良くなった。

そして、今に至る……かな。

結局、僕は悠臣に想いは伝えてない。
伝えられない理由もあったし……

「……み、き……ずき、水姫、どうした?」
「うあっ、な、何ですか?」
「いや、何回か呼んだんだが、返事をしなかったからな。どうかしたか?」

どうやら僕は少し昔を思い出していたらしい。
今思うと恥ずかしいことばかりだけどね。

「何でもないですよ。それにそろそろ、律架と佑夜も来るんじゃないですかね?」
「ああ……それにしても、あいつらは毎回毎回遅刻して、生徒会の自覚はあるのか……?」

悠臣はまったく……と呆れながらも、悠臣が生徒会メンバーを大切に思っていると一目でわかるくらいの穏やかな笑みを浮かべていた。

その悠臣の微笑みを、僕は僕だけのものにしてしまいたいという欲求が湧き上がった。
そんなこと、できやしないのに。















悠臣が僕だけの悠臣になるなんて、絶対、無いのに















叶わないものを求めてしまうのは、自然なこと?















求めてしまえば、僕らの関係はもう終わってしまうから……















ねぇ、悠臣














君に僕を好きになって欲しいなんて贅沢なことは言わないから






























僕が君を好きでい続けることを、許してくれる……?
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