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後編
2-3「自らを慰めても、足りない」*
しおりを挟むだが、心の奥でそう思う事に反して、獣人族の本能は日に日に増していった。
彼女に近付くと、たまに押し倒してしまいそうになる。奪ってしまうそうになる。
ゆえに彼女が眠った後、自室にこもって荒ぶった熱を放出することに専念した。
「ぁ…ッ、は、ァ……あり、す……ッ」
こんなことをしてはいけないと思いつつも、頭の中では愛らしい少女を組み敷いている姿を思い浮かべ、己の雄に手をかけ扱いていた。そうでもしないと、夜な夜なアリスの部屋に夜這いでも仕掛けてしまいそうで、興奮して眠ることもできない。
おかげで朝寝坊を頻繁に繰り返した。
「ありす……、ありす……っ!」
日に日に抜く回数が増え、自らを慰め終えてやってくるのはどうしようもない疲労感と虚しさ。
両想いになって、彼女と一つになりたい気持ちを胸の奥底にしまい込み、ベッドで丸くなる日々。
だがそんなたゆまぬ努力も、無駄になった。
リクは薬を飲み、理性が飛びかけていた。
彼女を押し倒したあのとき、肌がとても柔らかく感じた。顔を近づけると甘い香りがして、ひどく……興奮した。
アリスに自分と同じ番紋が存在した。
その事実が、よりリクの理性を崩落させていった。
無理やり彼女から離れ、自室にこもり、いつものように自分を慰めたが、吐精しても全然勢いが収まらない。達するたびに体が熱く苦しくなる。彼女に救いを求めそうになった。
そして──
気が付けば、リクはアリスの部屋の前に立っていた。
心臓が破裂しそうなほど早鐘を打っている。間違っても自分が部屋に入らないようにバリケードを作れと言っておいたが、アリスの部屋はドアノブを回しただけで簡単に開くことができた。
「あ、りす……」
簡易的な木製ベッドの上に、あどけない寝顔をさらしたアリスがいた。
起こさないようにそっと近づく。
寝間着の隙間から、誰にも暴かれていない白い肌が見えていて、自然と喉が鳴った。
リクはアリスの名前を呼びながら、アリスの服を思い切り引き裂いた。起きてほしい、という思いと、起きないでくれ、という矛盾した思いが胸をつく。だが派手な音を立てても、アリスは小さな唇を開けて息を吐くだけで、起きる気配がなかった。
眠っているアリスの肌に舌を這わすと、かすかに「んっ」と声がもれる。
脳を焼かんばかりの背徳的な感情が背中に走り、もう……だめだった。
リクはアリスの体全体を舐め回し、丹念に愛撫を施した。彼女の肌はどこを舐めても甘くて、小さく震える花唇から溢れてくる蜜は、ずっと飲んでいたいほど濃厚で。
自分が狼の姿になっていることに気付いていなかった。
ただ彼女の甘い匂いと、切なく喘ぐ姿に興奮して、無我夢中で彼女の中に精と魔力を注ぎ込んだ。
彼女は、番になってしまった。
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