お互いの幸せのためには距離を置くべきだと言った旦那様に、再会してから溺愛されています。

木山楽斗

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15.これからのこと

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「あなたの部屋はそのままにしておいたが、何か要望などはないだろうか?」
「要望、ですか」

 昼食と食べ終えた私は、ヴィクトール様からの質問に考えることになった。
 部屋について、何か要望などがあるという訳ではない。私にとっては、広すぎるくらいの部屋だ。それ以上に望むことなどあろうはずはない。

「……ヴィクトール様と同じ部屋という訳にはいきませんか?」
「む?」
「私達は夫婦ですから、そういう形もあると思うのです。そういったことについて、ヴィクトール様はどう思われているのでしょうか?」

 そこで私は、前々から少しだけ思っていたことを伝えてみることにした。
 アノート男爵家では、お父様とお母様は同室で過ごしている。夫婦というものは、そういうものだという認識が、私にはあるのだ。
 ただ、それは両親の仲が良いからこそ成立していることでもあるような気がする。ヴィクトール様の意思というものも考慮するべきだろうし、駄目なら駄目でも構わない。

「別に俺としては構わないが、あなたの方は良いのか?」
「え? ええ、別に大丈夫です」
「夫とは言っても、知らぬ男と同室するということには抵抗があるのではないか?」
「知らぬ人という訳ではありませんよ」

 ヴィクトール様は、私の心情を考慮してくれているようだった。
 しかし私としては、特に問題とは思っていない。ヴィクトール様となら楽しい生活ができそうだと、思っているくらいだ。

「なるほど、そういうことなら同室で過ごすということも考えても良いだろう。しかし、そのためには準備というものが必要だ。すぐにできることという訳ではない」
「それはそうですね。それなら、しばらくは元の部屋を使わせていただきます」
「ああ、そうしてもらえると、こちらとしても助かる」

 はやる気持ちからか、私は準備が必要だということをすっかり失念していた。
 突然同室で過ごすというのは、いくらなんでも無理があることだ。ヴィクトール様にも私にも、準備というものが必要である。
 とはいえ、ここで約束することができたということは、大きなことだといえるだろう。これでヴィクトール様とは、良き夫婦として過ごしていけるような気がする。

「これから、どうかよろしくお願いしますね、ヴィクトール様」
「む、そうだな。改めて挨拶しておくとしようか。これからよろしく頼む、アムリア嬢」

 最初はどうなるかと思っていたヴィクトール様との結婚だが、どんどんと良い方向に進んでいるといえるだろう。
 そのことに私は、どうしても笑みを浮かべてしまう。これからもこの楽しい生活が続いて欲しい。私はそんなことを思いながら、ヴィクトール様と過ごすのだった。
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