22 / 194
おまけ(設定の備考などなど)
おまけ その3 魔王と女神の絆
しおりを挟む
おまけ3 魔王と女神の絆
「まったく……どうして、ヴィーネはこうも不器用なんですか」
ヴィーネと村を出た途端、シャプシャは嘆息した。
白銀の髪を後ろで束ね、やや朱がさした頬に、頬深いブルーの瞳をした美女である。そんな白い肌の美顔が、今は不満げに口を曲げていた。
つい先ほどのことである。路銀を得ようと、立ち寄った村で狩りの収穫を売ろうとしたのだが、ヴィーネが宿で働く女性に差し出したのは、よりにもよって牡鹿の生首だった。
「買い取って欲しい」
と、強面の顔で無愛想な大男に差し出されたのが、牡鹿の生首。
傍目から見れば、脅されているようにしか見えないだろう。その場はシャプシャが機転を利かせて、なんとか取り成したのだが――当のヴィーネは「なにか変だったか?」と、呑気に首を傾げている。
「変という言葉で済むほど、穏やかな状況ではありませんでしたけれど」
シャプシャはヴィーネの顔を見上げながら、出会ってからの三日間のことを思い出していた。
確かに、戦いにおいては一騎当千の腕の持ち主だ。狩りの腕も並以上で、この三日間の食料は、すべてヴィーネの狩りに頼っていたほどだ。
しかし――それ以外のことが壊滅的だった。特に対人とのやり取りは、道を尋ねるだけだとしても、喧嘩を売っているようにしか見えなかった。
これまで、どうやって生きてこられたのか――シャプシャは問う気にもなれなかった。
手に入れた銅貨数十枚を二人で分けると、ヴィーネはぎこちない動きで、シャプシャに頭を垂れた。
「同行の約束は、ここまでだったか。それでは、失礼する」
目を丸くしながらヴィーネが頭を上げるのを眺めていたシャプシャは、大きく息を吸ってから、両腰に手を当てた。
「そういうわけにはいきません。あなたを放っておくと、どこかで野垂れ死にしそうですもの。せめて、人との関わりが少しでもマシになるまで、ご一緒させていただきます」
「いや――待ってくれ」
ヴィーネからすれば、人との関わりなど、煩わしいだけだった。食料は狩りでどうにでもなるし、村で過ごさなくとも野宿で充分だ。
しかし、女人が同行するとなると、そういうわけにもいかない。それくらいのことは、人界の世俗に疎いヴィーネでも想像ができた。
元々、人間の世界への好奇心から、物見遊山をしているだけだ。他者と深い関わり合いをするつもりは、毛頭なかった。
手間や煩わしさを考慮すれば、これまで通り一人でいい――そう言おうとする前に、シャプシャは、真顔でヴィーネの顔を見上げた。
「あなたは、一人のほうが気楽なのでしょうけれど」
その言葉に、ヴィーネの背筋に緊張が走った。心の中を覗かれたのでは――そこまで気を緩めた気すらなかったが――と、無意識に右足を僅かに引いた。
その所作を目の端に捉えていたシャプシャは、まるで悪戯小僧を優しく窘めるような顔で、肩を竦めた。
「言いたいことが、顔に出すぎていますよ。特に、不平不満については」
シャプシャの指摘に、ヴィーネは左手で自分の顔に触れた。
「そんなに……表情でわかるものなのか?」
「ええ。表情とか……あとは、これまでの言動からの推測ですけれど」
「そういうものなのか――」
先ほどまでの警戒心から一転、困惑するヴィーネに、シャプシャは畳み掛けるように言った。
「ええ。そういうものです。ご理解して頂けたのでしたら、次の村へと向かいましょう。流石に、この村での宿泊は諦めたほうが良さそうですから」
杖で行き先を示しながら、シャプシャは山道を歩き始めた。しかし、ヴィーネは動こうとしない。視線を僅かに上へと向けて、目を細めている。
シャプシャは腰に手を当てながら、ゆっくりと振り返った。
「なにか言いたいことがあるのなら、遠慮なくどうぞ」
「……あなたは、宿に泊まれば良い。俺は野宿で構わぬ」
言葉の内容がすぐに掴めなかったシャプシャは、「なにを仰有っているか、説明を求めてもよろしいですか?」と眉をひそめた。
「もうすぐ、雨が降る。俺は平気だが、あなたは好んで濡れたくはないだろう」
「……雨」
シャプシャが空を見上げると、雲一つない青空が広がっていた。木々の枝から枝へ、小鳥が鳴き声をあげながら、飛び移っていた。
どこからどうみても、平穏で暖かな午後の一時であった。
ヴィーネへと視線を戻したシャプシャは、怪訝な顔をした。
「……雨?」
「雨だ」
真剣な表情で答えるヴィーネに、シャプシャは溜息を吐いた。
「雨なら、そんなに気にしませんから。もう行きましょう」
降るとも限らないし。
(宿で寝ているあいだに、逃げる気かしら)
さっさと先を進むシャプシャに少し遅れて、ヴィーネも歩き始めた。
*
村を出てからしばらくして、山道は雨が落ちて来た。まだ小雨程度だが、地面は徐々にぬかるみ始め、視界も悪くなっていった。
山道の右側からは、激しく水が流れる音が聞こえてきた。少し斜面を降りたところに、川が流れているらしい。左側には鬱蒼とした森が広がっていた。
黙々と歩くシャプシャの後ろ姿を眺めながら、ヴィーネは自身の変化に戸惑っていた。
人間界で過ごすようになってから、ここまで自分に関わろうとする者はいなかった。それは自身で望んだことであり、そうなるように過ごしてきたつもりだった。
そこへ土足で踏み込んだ挙げ句、堂々と居座られている。
普段のヴィーネならば、威圧するなりして、追い払うところだ。しかし、シャプシャに対しては、そうやって追い払う気になれなかった。
シャプシャに宿に泊まれと言ったときも、逃げるつもりはなく、彼女が村を出るまで待つつもりだった。
(なぜ――?)
わからない。魔王である自分に無遠慮な言葉を吐く者など、これまでにいなかった。それが新鮮ではあったが――自身の感情を整理し始めたとき、ヴィーネの耳に異音が飛び込んでいた。
川の濁流や雨音は、微かな物音をかき消してしまう。
しかし、明らかな指向性を以て近づいてくる異音を、ヴィーネは聞き逃さなかった。槍を持つ手に力を込めながら、ヴィーネは前を歩くシャプシャに声をかけた。
「シャプシャ」
「……なんです?」
歩きながらシャプシャが振り返ったとき、ヴィーネは空を切り裂く音を聞いた。
無造作に槍を振るい、飛来した矢を叩き落とすと、ヴィーネは短く答えた。
「備えよ。敵だ」
ヴィーネが槍を構えたのとほぼ同時に、五人の男たちが木々の間から飛び出してきた。
鎧や盾は、誰も持っていない。錆びた短剣や斧を手に、一斉にヴィーネとシャプシャに襲いかかってきた。
先陣を切ってきた男を一突きに絶命させたヴィーネは、シャプシャの動きが鈍いことに気がついた。
そんな彼女に、二人の男が迫っていた。一人目の斧を杖でいなしたものの、二人目の短剣への対応が遅れた。
ヴィーネは男の一人を穂先で貫きながら、左手でシャプシャの肩を掴み、そのまま山賊から引き離す。
「気を抜くな! 死ぬぞ!!」
ヴィーネの怒声に、シャプシャは我に返ったように杖を振るったが、男の斧を受け止め切れず、地面に倒れ――。
「ああっ!」
斜面を転がり落ちてしまった。
シャプシャが斜面の下へ消えるのを見たヴィーネの胸中に、烈火の如き激しい怒りが沸き起こった。
人間の姿では奥底に隠している魔王としての気性が、僅かだが表に漏れ始めていた。
無言の怒気を感じた山賊の生き残りは、その恐怖に身体が凍り付いたように動けなくなった。
そこへ、怒りに任せた槍が襲いかかった。
*
シャプシャが意識を取り戻したとき、暖かなものに身体を包まれていた。瞼を通して暖かな光が差し込み、パチパチという薪が爆ぜる音が聞こえていた。
「ここは――」
目を開けたシャプシャは、自身の状況に気づいた。
夜の帳が落ちた川岸で、焚き火が赤々と燃えていた。樫の木の杖は、焚き火から少し離れた場所に置かれていた。そしてシャプシャは今、胡座をかいて座りながら眠っている、ヴィーネに抱きかかえられていた。
服は着ている。ローブは泥や土で汚れているが、シャプシャはその理由がすぐに思い出せなかった。
回らない頭で周囲を見回していると、気配を感じたのかヴィーネが目を覚ました。
「……起きたか」
「あの、ここは――?」
「山賊に襲われたときに、斜面を落ちたのだ。覚えていないのか?」
ヴィーネの言葉を切っ掛けに、シャプシャは山賊に襲撃されたことを思い出した。そして、攻撃を受け止め切れず、斜面を転がったことを。
シャプシャが顔を上げると、ヴィーネは目を合わせないまま溜息を吐いた。
「体調が悪いなら、悪いと言うべきだ」
「あの――」
「浅瀬にある岩に引っかかっていたのを引き上げたとき、体温が異常に高かった。うわごとで寒い、とも言っていたな。熱があるのだろう?」
「……すいません」
「謝る必要はない。ただ、少し無理をさせた、と思っただけだ」
ヴィーネは再び溜息を吐くと、シャプシャを見た。
「だが、山賊どもと対峙した際、動きが鈍かったのは体調のせいだけではあるまい。人間を相手にするのは、抵抗があるのか?」
「……ええ。殺さずに、改心させられれば――と思います」
シャプシャの返答を聞いて、僅かに眉をひそめたヴィーネは、この晩で初めてシャプシャの顔を見た。
「すべてを救うのは、無理だ。あいう山賊の類いは、貴女が殺さなかった狼と同じだ。生きるために他者を殺し、奪う。狼にほかの動物や人間を襲うなと言っても、徒労に終わるのと同じだ」
「しかし――」
なにかを言いかけたシャプシャの言葉を遮って、ヴィーネは言葉を続けた。
「たとえ貴女が山賊を捕らえ、殺めるなと諭しても……次の日には貴女を嘲笑いながら、新たな旅人を殺し、奪うだろう。奴らは、そういう性質だ。ちょっとやそっとでは、変わらぬ。そして、殺された旅人の魂が現れたなら、きっと『なぜ、あのとき山賊を殺してくれなかったのか』と、貴女を攻めるに違いない。これは、狼とて同じことだ」
怒っている様子はない。淡々と語るヴィーネの言葉に、シャプシャは反論の言葉を失いかけた。
次の言葉を探すあいだにも、ヴィーネの言葉は続いた。
「盗賊を改心させようとするなら、四六時中、つきっきりで見張り、教えを説かねばならぬ。それを彼らが老衰で死ぬまで続けねばならぬ。途中で放り出しては、無責任というものだ。理想のために、どれだけの犠牲を払うおつもりか」
「それでも……知恵を授かった人は、その理想に近づかねばなりません。そうしなければ……人の手によって、この世は生物の住めぬ場所になってしまうでしょう」
辛うじて、シャプシャは言葉を発することができた。
神々が人類に教えを説く最終目的。それは、人類による大破壊――地を覆う紅蓮の炎、大気を覆う黒煙、そして、天高くそびえ立つ爆炎――、カタストロフィーを防ぐことに他ならない。そのために、人類を理性的、文化的な成長を促さなくてはならなかった。
シャプシャの反論を聞いて、ヴィーネに初めて、〝驚〟の感情が浮かんだ。
「人が、そこまで――?」
「はい。大破壊を防がなくては……人の世に未来はないでしょう」
「それが、シャプシャ、おまえたちが目指すものだと?」
「そう言っても差し支えはありません」
シャプシャが頷くと、ヴィーネはなにかを考えるように黙り込んでしまった。
やがて、静かに息を吐いたヴィーネは、脇に置いてあった大きな葉を手に取ると、シャプシャに差し出した。
「これは――」
「蜜蝋だ。少しでも食べねば、病は治らぬ」
黙って蜜蝋を受け取ったシャプシャは、ヴィーネからは見えぬように笑みを零した。
この無愛想な大男が、蜂の巣を探すために森の中を徘徊する様子を想像すると、胸の奥から笑いの衝動が込み上げてくる。
シャプシャとヴィーネの価値観は、ほぼ正反対だ。ヴィーネは無骨で無愛想、そして敵対する者には冷酷だ。
それでも――と、シャプシャは目を細めた。
この人は、悪人ではない。時として弱き者が犠牲にならないよう、自らを矢面に立たせるだけの高潔さを兼ね備えている。
そっけなくて、温かい
シャプシャは抱きかかえられていることも、気にならなくなっていた。
蜜蝋を囓っていると、ヴィーネは短く告げた。
「それを食ったら、早く寝るといい。朝になったら昨日の村へ戻って、体調が良くなるまで休め」
「……このままで、ですか?」
嫌な気はしなかったが、反応が見たくてシャプシャは問いかけた。
「……地面で寝るよりは、マシだろう。まだ濡れてもいるし、体温も奪われる。俺は慣れているから、心配するな」
予想通りの返答にシャプシャが苦笑いを浮かべた直後、自身の言葉に思い出したことがあるのか、ヴィーネが僅かに顔を上げた。
「下心はないから、心配するな。貴女が口走ったような、男色という訳ではないが――」
ヴィーネの言葉に、シャプシャの表情が強ばった。
ぎこちなくヴィーネを見上げるシャプシャは、震える声で訊いた。
「あの、わだじが、いづ、ぞんなごどをいっだんでずか?」
「この前の村での宴で。シャプシャ――貴女が酔っていたときに」
ヴィーネの返答を聞いて、シャプシャは熱で朱のさした顔を、さらに赤くしながら、虚空を見上げた。
「まさか、そんなことを――よりにもよって、そんなことを――」
光のない目でブツブツとうわごとのように呟くシャプシャに、ヴィーネは宴の翌朝の一幕を思い出し、口元に笑みを浮かべた。
「もう寝たらどうだ? 寝て起きたら――その、少しは冷静になっているかもしれん」
「……ぞ、ぞうじまず」
言われるままに目を閉じて、シャプシャは頭をヴィーネの肩に預けた。
この日、シャプシャは思いの外、心地の良い眠りに落ちた。
*
ヴィーネが自らの変化に気づいたのは、シャプシャが病になってから、十日ほど経ったときだった。
シャプシャのことを足手まといなどと、思ったことはない。歯に衣着せぬ物言いは、物珍しさもあって、逆に好感が持てた。
大破壊についての話を聞いて、シャプシャへの見方が変わったのも事実だ。人間が未来のことまで見据えて、行動を起こしているなど、数百年前ではありえなかった。
(人界への意識を変えねばならぬか――)
これからのことを考え始めていたころ、ヴィーネはシャプシャの変化に気づいた。
それは村を出て三日目、山道を進む二人が山賊に取り囲まれたときだった。岩棚を背に、七人ほどの山賊と対峙したとき、シャプシャは開口一番に、こう言った。
「今すぐ、武器を捨てて改心なさい。わたくし自ら、太陽神の教えを説いてさしあげましょう。しかし……改心せず、わたくしたちを襲うというのなら、この人が、あなたがたを木っ端微塵にします」
ヴィーネの腕をぽんぽん、と叩くシャプシャの説得――どう聞いても啖呵にしか思えなかったが――に、山賊たちは一様に怒気を膨らませた。
先の言葉を山賊に告げた理由を問えば、
「だって、止めてと言っても、あなたは彼らを殺すでしょう? なら、こうしたほうが手っ取り早いですし。なにより、あなたとわたくしとのあいだで、無用の諍いを避けられますから」
こんなことを言いながらも、シャプシャは山賊たちの亡骸を埋葬し、祈りの言葉を捧げる。このちぐはぐな言動を、ヴィーネは彼女なりの譲歩だと理解した。
ヴィーネにとって、シャプシャは日に日に不可思議な存在となっていった。だからだろうか。シャプシャのことを理解しようと言動を目で追っているうちに、無意識に彼女を見るようになっていった。
目が合う回数が増え、そのたびにシャプシャは、はにかむように微笑みながら、
「なんですか。なにか、珍しいものでも見えますか?」
と、少し楽しげにヴィーネに言うのだ。
そこでヴィーネは、シャプシャを見ていたことに気づくのだ。
取るに足らない人間の女に――その想いは、三度目の山賊との戦いで覆すこととなる。
十人を超える山賊を撃退したあと、ヴィーネが右足を僅かに引いたとき、背中に柔らかいものが当たった。
「あ、ごめんなさい。気が緩んだみたいです」
軽い口調で謝るシャプシャの言葉を、ヴィーネは愕然とした気持ちで聞いていた。
人間の身体となっているにせよ、魔王の一柱である自分が、人間の女に背中を預けるなど、これまでなら有り得ぬことだった。
シャプシャが以前に口にした、絆という言葉。
その絆が今、自分とシャプシャを繋ぎつつある――ヴィーネはその事実に、戸惑いを隠せなかった。
----------------------------------------
おまけ3 を読んでいただき、ありがとうございます。
GWも普段と変わらぬ仕事――ではなく、普段よりも忙しい仕事をしてました。
現場仕事で、GWが忙しいって……どうなってるんでしょう……。
おまけの短編ですが、思いの外、長くなりました……楽しんで頂けたら幸いです。
シャプシャとヴィーネの短編も、次が最後――の予定です。
来週末にUPできたらいいな……という感じです。
おまけ3 から読まれたかた、本編のほうも読んでやって下さい。
「まったく……どうして、ヴィーネはこうも不器用なんですか」
ヴィーネと村を出た途端、シャプシャは嘆息した。
白銀の髪を後ろで束ね、やや朱がさした頬に、頬深いブルーの瞳をした美女である。そんな白い肌の美顔が、今は不満げに口を曲げていた。
つい先ほどのことである。路銀を得ようと、立ち寄った村で狩りの収穫を売ろうとしたのだが、ヴィーネが宿で働く女性に差し出したのは、よりにもよって牡鹿の生首だった。
「買い取って欲しい」
と、強面の顔で無愛想な大男に差し出されたのが、牡鹿の生首。
傍目から見れば、脅されているようにしか見えないだろう。その場はシャプシャが機転を利かせて、なんとか取り成したのだが――当のヴィーネは「なにか変だったか?」と、呑気に首を傾げている。
「変という言葉で済むほど、穏やかな状況ではありませんでしたけれど」
シャプシャはヴィーネの顔を見上げながら、出会ってからの三日間のことを思い出していた。
確かに、戦いにおいては一騎当千の腕の持ち主だ。狩りの腕も並以上で、この三日間の食料は、すべてヴィーネの狩りに頼っていたほどだ。
しかし――それ以外のことが壊滅的だった。特に対人とのやり取りは、道を尋ねるだけだとしても、喧嘩を売っているようにしか見えなかった。
これまで、どうやって生きてこられたのか――シャプシャは問う気にもなれなかった。
手に入れた銅貨数十枚を二人で分けると、ヴィーネはぎこちない動きで、シャプシャに頭を垂れた。
「同行の約束は、ここまでだったか。それでは、失礼する」
目を丸くしながらヴィーネが頭を上げるのを眺めていたシャプシャは、大きく息を吸ってから、両腰に手を当てた。
「そういうわけにはいきません。あなたを放っておくと、どこかで野垂れ死にしそうですもの。せめて、人との関わりが少しでもマシになるまで、ご一緒させていただきます」
「いや――待ってくれ」
ヴィーネからすれば、人との関わりなど、煩わしいだけだった。食料は狩りでどうにでもなるし、村で過ごさなくとも野宿で充分だ。
しかし、女人が同行するとなると、そういうわけにもいかない。それくらいのことは、人界の世俗に疎いヴィーネでも想像ができた。
元々、人間の世界への好奇心から、物見遊山をしているだけだ。他者と深い関わり合いをするつもりは、毛頭なかった。
手間や煩わしさを考慮すれば、これまで通り一人でいい――そう言おうとする前に、シャプシャは、真顔でヴィーネの顔を見上げた。
「あなたは、一人のほうが気楽なのでしょうけれど」
その言葉に、ヴィーネの背筋に緊張が走った。心の中を覗かれたのでは――そこまで気を緩めた気すらなかったが――と、無意識に右足を僅かに引いた。
その所作を目の端に捉えていたシャプシャは、まるで悪戯小僧を優しく窘めるような顔で、肩を竦めた。
「言いたいことが、顔に出すぎていますよ。特に、不平不満については」
シャプシャの指摘に、ヴィーネは左手で自分の顔に触れた。
「そんなに……表情でわかるものなのか?」
「ええ。表情とか……あとは、これまでの言動からの推測ですけれど」
「そういうものなのか――」
先ほどまでの警戒心から一転、困惑するヴィーネに、シャプシャは畳み掛けるように言った。
「ええ。そういうものです。ご理解して頂けたのでしたら、次の村へと向かいましょう。流石に、この村での宿泊は諦めたほうが良さそうですから」
杖で行き先を示しながら、シャプシャは山道を歩き始めた。しかし、ヴィーネは動こうとしない。視線を僅かに上へと向けて、目を細めている。
シャプシャは腰に手を当てながら、ゆっくりと振り返った。
「なにか言いたいことがあるのなら、遠慮なくどうぞ」
「……あなたは、宿に泊まれば良い。俺は野宿で構わぬ」
言葉の内容がすぐに掴めなかったシャプシャは、「なにを仰有っているか、説明を求めてもよろしいですか?」と眉をひそめた。
「もうすぐ、雨が降る。俺は平気だが、あなたは好んで濡れたくはないだろう」
「……雨」
シャプシャが空を見上げると、雲一つない青空が広がっていた。木々の枝から枝へ、小鳥が鳴き声をあげながら、飛び移っていた。
どこからどうみても、平穏で暖かな午後の一時であった。
ヴィーネへと視線を戻したシャプシャは、怪訝な顔をした。
「……雨?」
「雨だ」
真剣な表情で答えるヴィーネに、シャプシャは溜息を吐いた。
「雨なら、そんなに気にしませんから。もう行きましょう」
降るとも限らないし。
(宿で寝ているあいだに、逃げる気かしら)
さっさと先を進むシャプシャに少し遅れて、ヴィーネも歩き始めた。
*
村を出てからしばらくして、山道は雨が落ちて来た。まだ小雨程度だが、地面は徐々にぬかるみ始め、視界も悪くなっていった。
山道の右側からは、激しく水が流れる音が聞こえてきた。少し斜面を降りたところに、川が流れているらしい。左側には鬱蒼とした森が広がっていた。
黙々と歩くシャプシャの後ろ姿を眺めながら、ヴィーネは自身の変化に戸惑っていた。
人間界で過ごすようになってから、ここまで自分に関わろうとする者はいなかった。それは自身で望んだことであり、そうなるように過ごしてきたつもりだった。
そこへ土足で踏み込んだ挙げ句、堂々と居座られている。
普段のヴィーネならば、威圧するなりして、追い払うところだ。しかし、シャプシャに対しては、そうやって追い払う気になれなかった。
シャプシャに宿に泊まれと言ったときも、逃げるつもりはなく、彼女が村を出るまで待つつもりだった。
(なぜ――?)
わからない。魔王である自分に無遠慮な言葉を吐く者など、これまでにいなかった。それが新鮮ではあったが――自身の感情を整理し始めたとき、ヴィーネの耳に異音が飛び込んでいた。
川の濁流や雨音は、微かな物音をかき消してしまう。
しかし、明らかな指向性を以て近づいてくる異音を、ヴィーネは聞き逃さなかった。槍を持つ手に力を込めながら、ヴィーネは前を歩くシャプシャに声をかけた。
「シャプシャ」
「……なんです?」
歩きながらシャプシャが振り返ったとき、ヴィーネは空を切り裂く音を聞いた。
無造作に槍を振るい、飛来した矢を叩き落とすと、ヴィーネは短く答えた。
「備えよ。敵だ」
ヴィーネが槍を構えたのとほぼ同時に、五人の男たちが木々の間から飛び出してきた。
鎧や盾は、誰も持っていない。錆びた短剣や斧を手に、一斉にヴィーネとシャプシャに襲いかかってきた。
先陣を切ってきた男を一突きに絶命させたヴィーネは、シャプシャの動きが鈍いことに気がついた。
そんな彼女に、二人の男が迫っていた。一人目の斧を杖でいなしたものの、二人目の短剣への対応が遅れた。
ヴィーネは男の一人を穂先で貫きながら、左手でシャプシャの肩を掴み、そのまま山賊から引き離す。
「気を抜くな! 死ぬぞ!!」
ヴィーネの怒声に、シャプシャは我に返ったように杖を振るったが、男の斧を受け止め切れず、地面に倒れ――。
「ああっ!」
斜面を転がり落ちてしまった。
シャプシャが斜面の下へ消えるのを見たヴィーネの胸中に、烈火の如き激しい怒りが沸き起こった。
人間の姿では奥底に隠している魔王としての気性が、僅かだが表に漏れ始めていた。
無言の怒気を感じた山賊の生き残りは、その恐怖に身体が凍り付いたように動けなくなった。
そこへ、怒りに任せた槍が襲いかかった。
*
シャプシャが意識を取り戻したとき、暖かなものに身体を包まれていた。瞼を通して暖かな光が差し込み、パチパチという薪が爆ぜる音が聞こえていた。
「ここは――」
目を開けたシャプシャは、自身の状況に気づいた。
夜の帳が落ちた川岸で、焚き火が赤々と燃えていた。樫の木の杖は、焚き火から少し離れた場所に置かれていた。そしてシャプシャは今、胡座をかいて座りながら眠っている、ヴィーネに抱きかかえられていた。
服は着ている。ローブは泥や土で汚れているが、シャプシャはその理由がすぐに思い出せなかった。
回らない頭で周囲を見回していると、気配を感じたのかヴィーネが目を覚ました。
「……起きたか」
「あの、ここは――?」
「山賊に襲われたときに、斜面を落ちたのだ。覚えていないのか?」
ヴィーネの言葉を切っ掛けに、シャプシャは山賊に襲撃されたことを思い出した。そして、攻撃を受け止め切れず、斜面を転がったことを。
シャプシャが顔を上げると、ヴィーネは目を合わせないまま溜息を吐いた。
「体調が悪いなら、悪いと言うべきだ」
「あの――」
「浅瀬にある岩に引っかかっていたのを引き上げたとき、体温が異常に高かった。うわごとで寒い、とも言っていたな。熱があるのだろう?」
「……すいません」
「謝る必要はない。ただ、少し無理をさせた、と思っただけだ」
ヴィーネは再び溜息を吐くと、シャプシャを見た。
「だが、山賊どもと対峙した際、動きが鈍かったのは体調のせいだけではあるまい。人間を相手にするのは、抵抗があるのか?」
「……ええ。殺さずに、改心させられれば――と思います」
シャプシャの返答を聞いて、僅かに眉をひそめたヴィーネは、この晩で初めてシャプシャの顔を見た。
「すべてを救うのは、無理だ。あいう山賊の類いは、貴女が殺さなかった狼と同じだ。生きるために他者を殺し、奪う。狼にほかの動物や人間を襲うなと言っても、徒労に終わるのと同じだ」
「しかし――」
なにかを言いかけたシャプシャの言葉を遮って、ヴィーネは言葉を続けた。
「たとえ貴女が山賊を捕らえ、殺めるなと諭しても……次の日には貴女を嘲笑いながら、新たな旅人を殺し、奪うだろう。奴らは、そういう性質だ。ちょっとやそっとでは、変わらぬ。そして、殺された旅人の魂が現れたなら、きっと『なぜ、あのとき山賊を殺してくれなかったのか』と、貴女を攻めるに違いない。これは、狼とて同じことだ」
怒っている様子はない。淡々と語るヴィーネの言葉に、シャプシャは反論の言葉を失いかけた。
次の言葉を探すあいだにも、ヴィーネの言葉は続いた。
「盗賊を改心させようとするなら、四六時中、つきっきりで見張り、教えを説かねばならぬ。それを彼らが老衰で死ぬまで続けねばならぬ。途中で放り出しては、無責任というものだ。理想のために、どれだけの犠牲を払うおつもりか」
「それでも……知恵を授かった人は、その理想に近づかねばなりません。そうしなければ……人の手によって、この世は生物の住めぬ場所になってしまうでしょう」
辛うじて、シャプシャは言葉を発することができた。
神々が人類に教えを説く最終目的。それは、人類による大破壊――地を覆う紅蓮の炎、大気を覆う黒煙、そして、天高くそびえ立つ爆炎――、カタストロフィーを防ぐことに他ならない。そのために、人類を理性的、文化的な成長を促さなくてはならなかった。
シャプシャの反論を聞いて、ヴィーネに初めて、〝驚〟の感情が浮かんだ。
「人が、そこまで――?」
「はい。大破壊を防がなくては……人の世に未来はないでしょう」
「それが、シャプシャ、おまえたちが目指すものだと?」
「そう言っても差し支えはありません」
シャプシャが頷くと、ヴィーネはなにかを考えるように黙り込んでしまった。
やがて、静かに息を吐いたヴィーネは、脇に置いてあった大きな葉を手に取ると、シャプシャに差し出した。
「これは――」
「蜜蝋だ。少しでも食べねば、病は治らぬ」
黙って蜜蝋を受け取ったシャプシャは、ヴィーネからは見えぬように笑みを零した。
この無愛想な大男が、蜂の巣を探すために森の中を徘徊する様子を想像すると、胸の奥から笑いの衝動が込み上げてくる。
シャプシャとヴィーネの価値観は、ほぼ正反対だ。ヴィーネは無骨で無愛想、そして敵対する者には冷酷だ。
それでも――と、シャプシャは目を細めた。
この人は、悪人ではない。時として弱き者が犠牲にならないよう、自らを矢面に立たせるだけの高潔さを兼ね備えている。
そっけなくて、温かい
シャプシャは抱きかかえられていることも、気にならなくなっていた。
蜜蝋を囓っていると、ヴィーネは短く告げた。
「それを食ったら、早く寝るといい。朝になったら昨日の村へ戻って、体調が良くなるまで休め」
「……このままで、ですか?」
嫌な気はしなかったが、反応が見たくてシャプシャは問いかけた。
「……地面で寝るよりは、マシだろう。まだ濡れてもいるし、体温も奪われる。俺は慣れているから、心配するな」
予想通りの返答にシャプシャが苦笑いを浮かべた直後、自身の言葉に思い出したことがあるのか、ヴィーネが僅かに顔を上げた。
「下心はないから、心配するな。貴女が口走ったような、男色という訳ではないが――」
ヴィーネの言葉に、シャプシャの表情が強ばった。
ぎこちなくヴィーネを見上げるシャプシャは、震える声で訊いた。
「あの、わだじが、いづ、ぞんなごどをいっだんでずか?」
「この前の村での宴で。シャプシャ――貴女が酔っていたときに」
ヴィーネの返答を聞いて、シャプシャは熱で朱のさした顔を、さらに赤くしながら、虚空を見上げた。
「まさか、そんなことを――よりにもよって、そんなことを――」
光のない目でブツブツとうわごとのように呟くシャプシャに、ヴィーネは宴の翌朝の一幕を思い出し、口元に笑みを浮かべた。
「もう寝たらどうだ? 寝て起きたら――その、少しは冷静になっているかもしれん」
「……ぞ、ぞうじまず」
言われるままに目を閉じて、シャプシャは頭をヴィーネの肩に預けた。
この日、シャプシャは思いの外、心地の良い眠りに落ちた。
*
ヴィーネが自らの変化に気づいたのは、シャプシャが病になってから、十日ほど経ったときだった。
シャプシャのことを足手まといなどと、思ったことはない。歯に衣着せぬ物言いは、物珍しさもあって、逆に好感が持てた。
大破壊についての話を聞いて、シャプシャへの見方が変わったのも事実だ。人間が未来のことまで見据えて、行動を起こしているなど、数百年前ではありえなかった。
(人界への意識を変えねばならぬか――)
これからのことを考え始めていたころ、ヴィーネはシャプシャの変化に気づいた。
それは村を出て三日目、山道を進む二人が山賊に取り囲まれたときだった。岩棚を背に、七人ほどの山賊と対峙したとき、シャプシャは開口一番に、こう言った。
「今すぐ、武器を捨てて改心なさい。わたくし自ら、太陽神の教えを説いてさしあげましょう。しかし……改心せず、わたくしたちを襲うというのなら、この人が、あなたがたを木っ端微塵にします」
ヴィーネの腕をぽんぽん、と叩くシャプシャの説得――どう聞いても啖呵にしか思えなかったが――に、山賊たちは一様に怒気を膨らませた。
先の言葉を山賊に告げた理由を問えば、
「だって、止めてと言っても、あなたは彼らを殺すでしょう? なら、こうしたほうが手っ取り早いですし。なにより、あなたとわたくしとのあいだで、無用の諍いを避けられますから」
こんなことを言いながらも、シャプシャは山賊たちの亡骸を埋葬し、祈りの言葉を捧げる。このちぐはぐな言動を、ヴィーネは彼女なりの譲歩だと理解した。
ヴィーネにとって、シャプシャは日に日に不可思議な存在となっていった。だからだろうか。シャプシャのことを理解しようと言動を目で追っているうちに、無意識に彼女を見るようになっていった。
目が合う回数が増え、そのたびにシャプシャは、はにかむように微笑みながら、
「なんですか。なにか、珍しいものでも見えますか?」
と、少し楽しげにヴィーネに言うのだ。
そこでヴィーネは、シャプシャを見ていたことに気づくのだ。
取るに足らない人間の女に――その想いは、三度目の山賊との戦いで覆すこととなる。
十人を超える山賊を撃退したあと、ヴィーネが右足を僅かに引いたとき、背中に柔らかいものが当たった。
「あ、ごめんなさい。気が緩んだみたいです」
軽い口調で謝るシャプシャの言葉を、ヴィーネは愕然とした気持ちで聞いていた。
人間の身体となっているにせよ、魔王の一柱である自分が、人間の女に背中を預けるなど、これまでなら有り得ぬことだった。
シャプシャが以前に口にした、絆という言葉。
その絆が今、自分とシャプシャを繋ぎつつある――ヴィーネはその事実に、戸惑いを隠せなかった。
----------------------------------------
おまけ3 を読んでいただき、ありがとうございます。
GWも普段と変わらぬ仕事――ではなく、普段よりも忙しい仕事をしてました。
現場仕事で、GWが忙しいって……どうなってるんでしょう……。
おまけの短編ですが、思いの外、長くなりました……楽しんで頂けたら幸いです。
シャプシャとヴィーネの短編も、次が最後――の予定です。
来週末にUPできたらいいな……という感じです。
おまけ3 から読まれたかた、本編のほうも読んでやって下さい。
0
あなたにおすすめの小説
唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。
彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました!
裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。
※2019年10月23日 完結
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった
黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった!
辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。
一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。
追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる