魔剣士と光の魔女(完結)

わたなべ ゆたか

文字の大きさ
134 / 194
魔剣士と光の魔女 第四章 帝都に渦巻く謀みの惨禍

おまけ その1 上流階級の女装文化/フレッドケンディスがハンカチで口元を隠した理由~扇子について

しおりを挟む

おまけ その1 上流階級の女装文化/フレッドケンディスがハンカチで口元を隠した理由~扇子について

■上流階級の女装文化

 本作において、貴族や文化の参考にした国の一つが、イギリスです。
 イギリス紳士のあいだでは、仲間内だけで楽しむ、という文化がありまして。上流階級では、パイ投げと並んで伝統的な趣味として女装があります。
 参考文献が「モンティパイソン大全」なんですが、実際にモンティパイソンのスケッチ(コントの一幕)に、上流階級で強面の軍人が、ピンクのドレスを着てテレビに出ている、という内容のものがありまして。

 コントでしょ――という意見もあるでしょうが、モンティパイソンというのは世相や歴史などをとにかく皮肉る、馬鹿にする、という内容が多かったりします。

 もう一つ上げるなら、ブライアン・ジョーンズがいた頃のローリング・ストーンズでは、レコードのジャケットで女装を披露してまして。
 このブライアン・ジョーンズ、上流階級の出身だったりします。
 ちなみにこの話の顛末で、アメリカで批判が出た際、ミック・ジャガーが「英国紳士のたしなみなんだ」とフォローを入れていたりもします。
 そのくらい、イギリスでは上流階級の女装は有名なんですね。

 余談ですが、英国はヨーロッパでも有数の、同性愛大国という話もありまして。
 現在ではわかりませんが、少なくとも20世紀末くらいのスコットランドでは、同性愛を法律で禁止していたくらいの大国だったそうで。

 イギリスも大戦前後は厳しかったかも……というのは、映画のイミテーションゲームを観ていると思います。
 主人公は大学の講師になったあと、男子生徒に手を出して、ホルモン投与による治療処置になってますし。
 この映画、そっちの描写はないので、ご安心を。
 描写があるのは、ブレインゲームのほうですね。一瞬だけなんですが、飯を食べながら観たのを後悔した記憶があります。

 それにしても女装趣味の上級階級、そして同性愛……。そこでなにが行われたのか……。
 あとのことは、皆様のご想像にお任せします。

 今はわかりませんが、昔の英国貴族たちのあいだでは、こんな会話があったかもしれませんね。
↓伯爵


↓男爵


男爵「あら、伯爵様。今日のお召し物はとっても素敵ですわ」


伯爵「まあ、ありがとう男爵。あなたもその、新しいショールがドレスに似合ってるわぁ」


男爵「まあ、さすが伯爵様、お目が高いですわ! これ、実は有名なデザイナーAに造らせたものなんですの」


伯爵「あら、うらやましいわぁ。あのお店、注文しても半年先の納品なんでしょ? 依頼をしようか、迷ってるのよ」


男爵「実は……あたくし、少しコネがありますの。もしよろしければ、伯爵様の御依頼を優先にできるかもしれませんわ」


伯爵「あら……素敵。そのあたり、もっと詳しくお話ししたいわ。ねえ……今日は、そこでお部屋をとっているの。これから一緒に……どうかしら?」


男爵「まあ――光栄ですわ。うふふ――夜は長いですもの。ゆっくりとお話をいたしましょう」


 ……こういう会話があったと思うと、ほのぼの――

 ……は、しませんね。うん。しません。すいません、ちょっと書きながらSAN値下がってました。


 最後に……読者の方に女性がいるかどうかはわかりませんが、もしいたら、ご注意を。

 あなたの推している英国紳士キャラ――もしかしたら、夜な夜な女装をして、ほかの貴族たちと「キャッキャウフフ」してるかもしれませんよ……。


■フレッドケンディスがハンカチで口元を隠した理由~扇子について

 本文中、フレッドケンディスがハンカチで口元を隠しています。
 ご令嬢とかが口元を隠すとき、煌びやかな扇子を使う光景が一般的かもしれません。

 ですが、あの折りたたみのできる扇子というのは、日本発祥です。
 中世ヨーロッパに伝わったのは、16世紀。種子島に火縄銃が伝わったころとなります。日本と交流を始めたポルトガル人が、広めたといわれています。
 となると、火薬なんかも存在する時代。

 本作の舞台とは世界観的に合致しませんので、「世界のどこかにはあるかもしれないけど、帝国には伝わってない」としました。

 そんなわけで、扇子は帝国内にはないため、フレッドケンディスはハンカチで口元を隠したわけです。



 こういうのを調べていて思うことは、なんで日本の歴史教育って、こういうのを教えないんでしょうね。戦争や戦争や戦争ばかりじゃなく、こういうのも教えれば、歴史に興味を持つ人が増えると思うのに。
 上の項目の英国の女装なんかも、食いつく人とかいそうですよね。
--------------------------------------------------------------------
本作を読んで頂き、ありがとうございます!

わたなべ ゆたか です。

 なんで女装から、おまけを始めたんだろう……少し後悔しています。もうちょっとあとにすれば良かったです。心理的ダメージな意味で。

 歴史ですが、年号とか歴史マニアの趣味ですよね。鎌倉幕府みたいに、「あ、やっぱこっち」っていう感じで変わるものを必死で覚えさせられるなんて、無駄の局地だと思うんですよ。

 それより、AがあったからBがおきて、その結果、今ではCになってる。という流れが大切な気がします。

 知り合い曰く、年表は「歴史マニアの示威行為」だそうで。
「俺たちは楽に覚えたけど? これくらいできて当然でしょ」という意味しかないと豪語しております。

 さらに「世界史なんて、ペリー来航前は意味がない」とか言ってます。
 種子島や銃とかも海外から伝わってますし、それ以前には遣唐使や遣隋使なんてものもありましたが、日本が世界史としてもっとも重要なのは、ペリー来航から――という意見です。


それ以前の世界史なんて、戦争の戦争の戦争ばっかりですしね。とくにヨーロッパと中国。
三国時代を学びたかったら、横山光輝の三国志を見ろって感じらしいです。


概ね同意です。特に三国志については、間違いないと言えるくらい同意してます。


次回は日か月あたりに……。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

次回もよろしくお願いします!
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

処理中です...