入れ替わりノート

廣瀬純七

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隆司の家

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「ただいまー!」  
隆司の体になった朋美が玄関の扉を開けると、すぐに母親の声が聞こえた。  

「あら、お帰りなさい、隆司。今日は遅かったわね。」  
台所から顔を出した母親が、エプロン姿で微笑んでいる。  

朋美は内心緊張しながらも、努めて自然に振る舞おうとした。  
「あ、うん。ちょっと、友達と…その…。」  

「珍しいわね、あんたが友達と遅くまで遊ぶなんて。いつもまっすぐ帰ってくるのに。」  

その言葉に朋美は心の中で焦った。  
(え、隆司ってそんなに真面目キャラだったの!?)  

「う、うん。たまにはね!」  
ぎこちなく笑いながら靴を脱いでリビングに入ると、妹の美咲がソファで漫画を読んでいた。  

「お兄ちゃん、今日の数学テストどうだった?また100点取ったんでしょ?」  
美咲が顔を上げてニヤリとしながら尋ねてくる。  

「え?あ、テスト…?」  
朋美はとっさにどう答えていいかわからず、曖昧に笑ってごまかした。  

「え?もしかして今回ダメだったの?」  
美咲が驚いた顔をすると、朋美は慌てて手を振る。  
「そ、そういうわけじゃないけど、まぁ…まあまあかな!」  

「ふーん、お兄ちゃんがそんな曖昧な言い方するなんて珍しい。」  
美咲はじっと朋美(隆司)を見つめ、首をかしげた。  

その後、夕食が始まったが、さらに奇妙な会話が続く。  

「隆司、今日は部活の話しなかったわね。どう?調子は。」  
父親が唐突に尋ねた。  

「えっと…部活?ああ、部活ね!」  
朋美は慌てて頭をフル回転させる。  
(隆司って何部だっけ?体育会系っぽいけど、具体的に聞いたことない!)  

「まあ、普通かな!特に問題ないよ!」  
曖昧に答えると、父親は不思議そうな顔をした。  
「お前がそんなに熱心じゃないのは珍しいな。普段はもっと具体的に話すだろう。」  

母親が微笑みながら助け舟を出す。  
「疲れてるんじゃないかしら?たまには気を抜いてもいいのよ。」  

「そ、そうそう!疲れてるだけ!」  
朋美は勢いよく頷いたが、妹の美咲が疑わしげに言った。  
「今日のお兄ちゃん、なんか変だよね。全然お兄ちゃんっぽくない!」  

その言葉に朋美は内心冷や汗をかいた。  
(バレそう…いや、絶対バレたらまずい!)  

「そんなことないって!お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ!さ、食べよ、食べよ!」  
朋美は話題を変えようと必死に食卓の料理を口に運んだ。  

しかし、そのぎこちなさに家族は首をかしげつつも深追いはしなかった。  

その夜、朋美は隆司の部屋で歩美にメッセージを送った。  
「ヤバい!隆司の家族、めっちゃ観察力高いんだけど!バレる寸前だった!」  

数秒後、歩美から返信が返ってくる。  
「だから言ったでしょ…!明日どうするのよ。」  

朋美はベッドに寝転んでため息をついた。
(早く元に戻らなきゃ…でもちょっと面白いかも。)  

だが、この小さなトラブルは、明日以降さらに大きな混乱を呼ぶことになるのだった――。

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