入れ替わりノート

廣瀬純七

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消えた隆司

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翌朝、隆司の体になった歩美は制服のネクタイを直しながら、少し重い足取りで登校していた。  
(やっぱりこの体、慣れないな…。男子って力はあるけど、動きが重たい感じがする。)  

歩道を歩いていると、前方に見慣れた姿――自分の体になっている隆司の姿が見えた。  
(あ、隆司だ!こんな体験してるんだから、少しは顔を合わせたらどうするか話し合わないと…!)

歩美(隆司の体)は急ぎ足で追いつき、元気よく声をかけた。  
「おはよう、隆司!」  

すると、自分の体であるはずの隆司が振り返り、不思議そうな顔をして言った。  
「…え?『隆司』?何言ってるの、私は歩美よ。」  

その瞬間、歩美(隆司の体)は動揺して立ち止まった。  
「は?いやいや、どうしたの?隆司、冗談はやめてよ!」  

しかし、歩美の体に入っている隆司は真顔のまま答える。  
「冗談なんか言ってないわよ。あなたが隆司くんでしょう?私は歩美だってば。」  

「えぇ!?ちょ、ちょっと待って…隆司、本気で言ってるの?」  
歩美(隆司の体)は目を見開きながら必死に状況を確認しようとする。  

「本気も何も、私は最初から歩美だし。隆司くん、変な夢でも見たの?」  
歩美の体に入った隆司は冷静な口調でそう言うと、小首をかしげた。  

「ちょ、ちょっと待って!いやいや!あんたが隆司で、俺が歩美でしょ!?何かおかしいよ!」  
歩美(隆司の体)は必死に訴えたが、歩美の体に入った隆司は困惑しながら後ずさった。  

「え、何それ…。もしかして本当に具合悪いの?顔色も変だし…。」  
「いや、顔色が変なのはこの体が私の体じゃないからで!」  

必死に説明しようとする歩美だったが、隆司の体で話す自分の声がさらに混乱を招くばかりだった。  

「もしかしてストレスで記憶が混乱してるのかな…。」  
歩美の体に入った隆司はそう呟き、心配そうに歩美を見つめる。  

「違う、混乱してるのはあんたの方だってば!」  
「やめてよ、隆司くん。そんなに大声出したら、他の人に聞かれるじゃない。」  

「だから!私が隆司じゃなくて…!」  
歩美(隆司の体)は頭を抱えながらため息をついた。  

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周囲の登校中の生徒たちは、二人の奇妙なやり取りを遠巻きに見ていた。  
「ねえ、田中くんと北原さん、朝から何か揉めてない?」  
「最近、あの二人妙に仲が良いって噂だけど、あれってもしかして…?」  

そんな視線に気づき、歩美(隆司の体)は焦って話を打ち切ることにした。  
「…とにかく、あとで話す!学校でちゃんと説明するから!」  

「…分かったけど、本当に大丈夫?あんまり無理しないでね。」  
歩美の体に入った隆司は優しい声でそう言いながら歩き出す。  

「いや、だから、そっちが無理してるんだって…!」  
歩美は疲れた表情で後を追いながら、自分たちの状況がさらにややこしくなったことを実感していた。

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