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愛の悪戯
しおりを挟む愛に手渡された、薄いピンク色のレースのパンツを手にしたまま、博史はしばらく黙り込んでいた。
しかし、愛のキラキラした期待の目と、「早く!」という無言の圧力に抗いきれず、しぶしぶ立ち上がる。
「……マジで、これ履くのかよ……」
「うん!さっさと!」
愛はにこにこと微笑みながら、腕を組んで待ち構えている。
博史は仕方なくタオルを外し、愛の視線を気にしながら、恐る恐るその可愛すぎるパンツを履いた。
布地は薄くてやたらと軽いし、腰にあたるリボンも妙にくすぐったい。
「……うわ、すげぇ落ち着かねえ……」
ぼそっと呟きながらも、パンツをきちんと直すと、顔はもう真っ赤だ。
そんな博史の様子をじっと見つめていた愛は、ふっと口元を緩めて言った。
「上半身はヒロくんのままだけど…下半身はわたしのだから、なんだかちょっとセクシーね。」
その言葉に、博史はますます耳まで真っ赤に染まる。
「おま……やめろよ、そういうの……」
恥ずかしさで目をそらす博史に、愛はそっと近づき、やさしくその腰に手を添えた。
スッと滑らかな指先が、博史の脇腹から腰骨あたりをなぞる。
すると――
「……あれ?」
突然、身体の感覚に変化が訪れた。
博史の視界がわずかにぶれて、さっきまであった奇妙な感覚がスッと消えていく。
そして、次の瞬間には、元の自分の下半身に戻っていた。
「えっ……戻った?」
博史は慌てて自分の足を見下ろす。
間違いなく、元の自分の足だ。
筋肉の付き方も、感覚も完全に戻っている。
愛はそんな博史の驚きの顔を見て、満足そうに微笑んだ。
「やっぱり、ヒロくんの体にはヒロくんのが一番似合うかもね。」
「お前、最初からこれ狙ってたのか……?」
「ふふ、内緒!」
愛は悪戯っぽくウィンクをして、パンツのリボンを指で軽く引っぱった。
「でも、似合ってたよ?ピンクのパンツ。」
「……もう二度と履かねえからな……」
顔を両手で覆う博史に、愛はクスクスと楽しそうに笑いながら寄り添った。
こうしてようやく、二人の“入れ替え”はひとまず終わりを迎えたのだった。
けれど、またいつ愛の気まぐれが始まるのか――博史は内心、警戒を怠れなかった。
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