TOUCH

廣瀬純七

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慣れない女子の制服

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なんとか満員電車という修羅場を乗り越えた博史(愛)は、ヘロヘロになりながら会社のビルにたどり着いた。  
「これからが本番か……」  
エントランスに映る自分――いや、愛の姿を改めて確認し、深呼吸する。  
愛は受付嬢として働いているため、まずは制服に着替えなければならなかった。

エレベーターで更衣室の階に到着し、ドアが開くと、すでに何人かの女性社員たちが談笑しながら歩いている。  
(くっ……この中に、俺がいるのか……!)  
博史は内心で冷や汗をかきつつ、なるべく目立たないようにコソコソと更衣室に滑り込んだ。

---

「おはようございます!」  
同僚の女性たちが明るく挨拶してくる。  
「あ、あぁ、おはよう……!」  
なんとか声を作って返しつつ、自分のロッカーの前に立つ。

「よし……やるしかねえ」  
ロッカーを開けると、そこにはきっちり畳まれた制服が整然と置かれている。  
白いブラウスに、スカーフ、ジャケット、そしてタイトスカート。  
普段、愛が「動きづらい~」と言っていたのを思い出しつつ、博史はまずブラウスを手に取った。

「とりあえず脱ぐしかないよな……」  
慣れない手つきでブラウスを広げ、鏡を見ながら腕を通す。  
ボタンを留めるのもひと苦労で、細かいボタンに悪戦苦闘しながら指先がつりそうになる。

「くそ、なんでこんなにちっちゃいんだよ……」  
なんとかボタンを全部留めると、次はスカーフだ。  
「あれ?どうやって巻くんだっけ……?」  
記憶をたどりながらスカーフを首に巻こうとするも、上手く結べずに何度もやり直す。  
そのうち隣のロッカーで着替えていた同僚が声をかけてきた。

「愛ちゃん、今日なんか不器用だね~。昨日飲みすぎた?」  
「え? あ、いや、ちょっと……寝不足で……」  
ぎこちない返答をしつつ、なんとかそれらしく結び目を作る。  
(やべぇ、バレそう……)

---

そして最後はスカート。  
「この短さは犯罪だろ……!」  
タイトスカートを手に取り、片足を突っ込むも、バランスを崩してよろける。  
「うわっ……!」  
壁に手をついて持ち直し、なんとか両足を通す。  
スカートを腰まで引き上げ、ファスナーを上げるときも一苦労。  
ようやく履き終わったときには、うっすら汗をかいていた。

「ヒールにスカート、さらにこのスカーフ……戦闘装備としてはきつすぎるだろ……」  
ジャケットを羽織って鏡を覗くと、そこには完璧な制服姿の「愛」が映っている。  
(見た目は大丈夫そうだが……動きは完全に不審者だな)

---

更衣室から出るとき、またもや同僚に呼び止められる。  
「愛ちゃん、今日ちょっと猫背になってるよ?もっと胸張らなきゃ!」  
「あ、ああ……わかった……!」  
無理やり胸を張るも、その瞬間、慣れないブラウスのきつさに苦しむ博史。  
「く、苦しい……!」

それでも笑顔を作り、なんとか受付カウンターに向かう。  
一歩一歩、ヒールの音を鳴らしながら、博史は自分に言い聞かせた。  
(これが……愛の戦場だったんだな……!)

そして、受付の席に座った瞬間――  
「笑顔、忘れない!」  
博史は引きつった笑顔を必死でキープしながら、受付業務という未知のミッションに挑むのだった。
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