TOUCH

廣瀬純七

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有給休暇

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博史と愛が体ごと入れ替わったまま、すでに丸一日が過ぎようとしていた。  
「なあ、愛……もうそろそろ元に戻るんじゃないか?」  
愛の姿になった博史は、自分の長い髪を指先でいじりながらソファに座っている。  
「それ、昨日も言ってたじゃん。朝起きたら戻ってるかと思ったのに、このザマだよ?」  
博史の姿になった愛は、いつもの低めの声で肩をすくめた。

「でさ、今日はどうする?お互い会社あるし」  
「無理無理無理!俺が受付なんかやったらまたミスるわ!昨日のヒールでのダメージ、まだ残ってるんだぞ!」  
博史は足をさすりながら叫んだ。  
「じゃあ、私がヒロのふりして会社行くの?営業トークとかマジ無理!」  
「……とりあえず、今日もお休みで」  
二人はうなだれて、同時にスマホで有給申請をする。

---

昼過ぎ。  
「なあ、腹減らない?」  
「うん、お腹空いた。何か作る?」  
愛が博史の体で立ち上がり、キッチンに向かう。  
しかし――  
「お、おっも……!」  
手に取った鍋が、思ったよりも軽く感じて力加減を誤り、シンクにガシャン!  
「あああっ!もっと繊細に動いて!」  
「だって、この体、妙にパワーあるんだもん!」  
「そりゃ男だもん!」  
ブツブツ言いながらも、愛はなんとか目玉焼きを焼き始めた。  
博史はそれをソファから見守りながら、じーっと自分(愛)の足を眺めている。  
「なに見てんの?」  
「……いや、この足、意外とキレイだなって」  
「見ないでー!」  
フライパンを持った愛(博史)が振り返ると、あわてて博史(愛)は顔をそむけた。

---

午後は二人で外出することに。  
「とりあえず、スーパー行こっか」  
愛(博史)が財布をポケットに突っ込み、博史(愛)はサンダルに履き替える。  
「おい、その格好ヤバいって!」  
「え?ラフでいいでしょ?」  
「ミニスカートにスウェットはないだろ!」  
「この体だからいけると思ったんだけど」  
「やめろ、俺の名誉のためにスカート履き直せ!」  
と、ひと悶着してジーンズに履き替えさせられた。

---

スーパーではさらなる試練が待っていた。  
「すみませーん、試食どうぞ♪」  
明るい声に反応して、つい博史(愛)は受け取る。  
しかし、愛(博史)がすかさず耳打ち。  
「……その食べ方、完全におっさんになってる」  
「マジか……」  
あわてて姿勢を正し、小さく一口だけにする博史。  
そんなやりとりを見て、試食のお姉さんが「仲良しですね~」と微笑んだ。

---

家に帰る頃には二人ともぐったり。  
「これ、戻るまであと何日かかるんだ……」  
「次のデートまでには戻ろうね……」  
そう言いながら、愛(博史)は博史(愛)の髪をブラッシングしてやる。  
「意外と気持ちいいな、これ」  
「でしょ?日課だからね」  
「俺も今度はヒロくんにやってあげるよ」  
「いや、やめてくれ……」

---

そんな二人のドタバタは、まだまだ続く――!  
明日はどんな事件が起こることやら…!
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