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女子トイレの初体験
授業が終わり、昼休みのチャイムが鳴ると、クラスメイトたちは一斉に教室を飛び出していった。翔太――いや翔子は、自分の机に座ったまま少し迷っていた。
「翔子ちゃん、トイレ行こ!」
隣の席の美紀が声をかけてきた。彼女はランドセルの横に小さなポーチを持ち、翔子の手を軽く引っ張った。
「え、あ…うん。」
翔太は戸惑いながらも立ち上がり、美紀の後について廊下を歩き始めた。男子トイレには慣れているが、女子トイレに入るなんて考えたこともない。体は翔子だけど、心はまだ完全に翔太のままだ。
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### **女子トイレへの一歩**
トイレの入り口に立つと、「女子」と書かれたピンク色の看板が目に飛び込んできた。その文字が妙に重く感じられた。
「早く入ろうよ!」
美紀が軽快な足取りで中に入っていく。翔太は一瞬躊躇したが、周囲に他の子どもたちがいたため、怪しまれないようにと自然を装って後を追った。
中は男子トイレとは全く違う空間だった。明るいライトに照らされた白い壁、清潔に並んだ個室、そして可愛らしい花柄の消臭スプレーが目に留まる。
「翔子ちゃん、こっちこっち!」
美紀は手を振りながら、奥の個室に向かっていった。
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### **戸惑いの瞬間**
翔太も仕方なく空いている個室に入った。ドアを閉めると、一瞬静寂が訪れる。自分が本当にここにいることに、妙な違和感と緊張感を感じた。
「こんなところにいるなんて、変な感じだな…。」
小声で呟きながら、翔太は用を済ませる。普段なら何気ない行動のはずなのに、なぜか一つ一つがぎこちなく感じられた。
個室を出ると、美紀が手洗い場で蛇口をひねりながら待っていた。
「翔子ちゃん、ちゃんと手洗わないとダメだよ!」
「あ、うん。」
翔太は言われた通りに手を洗い、ハンカチで拭いた。手を拭くという行動すら、男子トイレでは見かけないような丁寧さを求められる気がして、少し戸惑った。
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### **女子の世界**
トイレから出ると、美紀がにっこり微笑んで言った。
「ね、翔子ちゃんってなんか女子力高いよね!ハンカチもちゃんと持ってるし!」
「え、そ、そうかな…?」
翔太は褒められているのか分からないまま、曖昧に笑った。女子トイレという未知の世界を体験し、少し疲れた気もしたが、美紀に合わせることでなんとか乗り切ることができた。
「さ、教室戻ろう!次は図工だよ!」
美紀の声に促され、翔太――いや翔子は再び教室へと歩き始めた。
それはほんの短い昼休みの出来事だったが、翔太にとっては「翔子としての自分」を少し受け入れるための、重要な一歩だったのかもしれない。
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