令和の俺と昭和の私

廣瀬純七

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戸惑う優斗

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(第3章)

優斗が目を覚ましたとき、まず感じたのは、いつもと違う布団の硬さだった。そして次に、妙に体が軽いことに気づく。

「あれ…?」

手を伸ばして顔を触ると、触感がおかしい。頬に触れた瞬間、自分のいつもの顔ではないことに気づいた。慌てて跳ね起き、部屋を見回すと、和風の部屋が広がっている。すぐに気づく——また入れ替わったのだ。

優斗は恐る恐る部屋の隅に置かれた鏡を見に行く。そして映し出されたのは、黒髪の少女、紗江の顔だった。

「うわっ!…これが、紗江の顔…」

自分の声が高く、少し震えるような柔らかいものに変わっていることにも驚き、鏡の前でまじまじと自分を観察する。自分の顔ではない顔、自分の体ではない体。彼はその細さや、華奢な肩のライン、そして小さな手に違和感を覚えた。

---

着替えをするため、紗江の記憶を頼りにタンスを開ける。しかし、彼女の洋服のどれもが軽やかで、薄手で、優斗にとっては扱い慣れないものだった。ひとまずシンプルなスカートとブラウスを手に取るが、スカートにどう手を通せばいいのか分からず、しばらく四苦八苦する。

「これ、どうやって履くんだよ…」

ようやくスカートを履き終えたと思えば、次はブラウスのボタンを留めるのに手間取る。紗江の細い指先ではボタンがうまく扱えず、悪戦苦闘する。

「女子って…こんなに着替えるのが大変なのか?」

どうにか着替え終わり、髪を整えようと鏡の前に座ったが、彼の手は長い髪の扱いに慣れていない。紗江の記憶には、髪を結ぶ動作が断片的に残っているものの、自分の手がその通りに動かない。

「ああ、もう!これ、どうやって結ぶんだよ…!」

最終的に、優斗はあきらめて髪をそのまま下ろすことにしたが、それだけで汗をかいてしまった。

---

学校に向かう途中、体の違和感に再び驚かされる。紗江の体は小柄で歩幅が短いため、自分の感覚で歩こうとするとどうしてもぎこちなくなってしまう。また、制服のスカートが揺れる感触が気になって仕方ない。

「これ、ちょっと風が吹いたらやばいじゃん…」

女子たちが日常的に気にしている「スカート」という存在の大変さを初めて実感した。時折、すれ違う男子生徒たちの視線を感じると、さらに落ち着かなくなり、思わず裾をぎゅっと握りしめる。

「紗江…こんな世界でよく平気で生活してるな…」

---

教室に着き、紗江の友人たちが話しかけてきた。

「おはよう、紗江!昨日、部活どうだった?」

「え、えっと…普通だったよ…かな?」

優斗は彼女の記憶を頼りに返事をしようとするが、会話のテンポや内容が普段の男子同士のそれとはまったく異なる。笑顔を作ることさえ、どこか不自然になってしまい、友人たちは少し首をかしげた。

休み時間になると、友人たちに誘われて女子トイレへ向かう場面が訪れた。優斗は焦った。トイレの仕組みや空気感が男子トイレとは全然違うのではないかと想像し、ついおどおどしてしまう。

「あ…先に行ってて!ちょっと…用事があるから!」

なんとかその場を逃れたものの、女子の生活の難しさを改めて痛感する。

---

その日の帰り道、優斗は紗江の家の縁側に座りながら、溜め息をついた。自分の体では当たり前だったことが、紗江の体ではすべて新鮮で、そして難しく感じる。

「紗江、こんな世界でちゃんと生活してるんだな…すげぇよ」

彼は、彼女の日常を理解するにつれて、少しずつ異なる性別の視点を学び始めていた。そして、この不思議な入れ替わりが、ただの困惑だけではなく、自分に新しい経験と視野を与えてくれていることにも気づき始めていた。
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