七虹精神隔離病院～闇は誰もが持っている！！～

あの頃から

幼少時代―Ⅰ―

夢を見ていた。
まだ幼く純粋だった頃の夢だ。
当時は男の子なのだからお外で遊びなさいと勉強が終わると外に放り出されている事が多く、彩葉と初めて出会ったのも、そんな頃の事だった。
初めは、ただ優しくて一緒いるのが楽しかった。
何時からだろう。
いつからなのかはわからない。
彼が壊れ始めていたのは。
僕が中学生に上がった頃のこと。
彩葉にすっかり懐いていた僕は、夏休みの長期連休を使い、彼の家へ泊まり込みで、勉強を教わりに行っていた。

「午後からは√の計算から入ろうか」

「うん！彩葉お兄ちゃん教えるの上手いからほんと助かってる！」

パラパラと教科書をめくり、カリカリとシャーペンの芯の削れる音。
そして玉のような彩葉の声に心地よい昼下がり。
少しの睡魔も襲ってくるもそれは鳩時計の鳴き声で吹き飛んだ。

「よし。休憩にしようか」

「うん！」

「今日のおやつはマドレーヌだよ」

少し待ってて、とキッチンへと用意をしに行く彩葉。
その背中を見送ると、ゴロン、と床に寝転んだ。
そして、再び眠気が襲い、静かに瞼を閉じた。

そして目が覚めると、ベットと机しかない無機質な部屋だった。