51才ゲイだって恋したい!

あらんすみし

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マジカルダンシングナイトの夜はふけて

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待ちに待った週末、40・50代ナイト当日。ついに、この俺が夜の表舞台に再び降臨する日がやって来た。
さぁ!大地を足掻く猿どもよ、我の帰還を祝福せよ!
「なんだよ、気持ち悪いなぁ、ニヤニヤして」
いかん、はやる気持ちを抑えきれず、気づかないうちに顔がニヤけてしまっていたらしい。
「な、なんでもないさー。久しぶりだから楽しみなだけさー」
「でも懐かしいよなぁ、ねるとんイベントなんて今どき珍しいし」
俺の事を気持ち悪いと言いながらも、隼人も満更ではなさそうだ。
「昔は皆勤賞だったもんな。懐かしいよな、あの頃が」
「なんか、あの頃の俺たちがこんな年になってイベント行って、こんな会話するなんて想像も出来なかったよ」
隼人が当時のことを思い出して感慨深そうにしている。
「お互いに、こんなに長生きするなんて思わなかったよな」
こんな昔を懐かしんで昔話をするのも、なんだかんだで俺たちが年を取ったという証明なのかもな。
「さて、着いたぞ」
俺たちは、小さな雑居ビルの地下へと続く階段を降って行く。
地下に降りると、扉越しに俺たちの世代には懐かしい音楽が聴こえてくる。まるで、あの頃に引き戻されたような錯覚に陥る。
料金を払い、手の甲に入場証明の蛍光スタンプを押してもらう。これで外出しても、スタンプをかざす事で再入場できるシステムになっている。
何もかもが20年前のままだ。
と、懐かしさに浸れたのはここまでだった。
「どうぞ、入場して下さい」
スタッフに促された。あれ?俺の番号札は?
「あの、番号札をもらってないんですけど」
「番号札?何ですか、それ?」
若いスタッフは、何を言われているのか分からない、とキョトンとしている。
「おいおい、何言ってるんだよ?」
隼人が俺に加勢する。
「番号札くれないと投票出来ないじゃないか、なぁ?わけわからない事言ってないで、早く番号札をくれよ」
「おめーが何を言ってんだ!だよ!」
隼人が呆れたような目で俺を見て、小さくため息を吐いている。
「え?どういうことだよ?」
「今どき相手の番号札見て投票するなんて、そんなアナログなことするわけないだろ?今どきはアプリでマッチングするんだよ!」
えぇ!?今のイベントって、そんなシステムになってるの!?
「いいか?今はそんなアナログな方法じゃなくて、マチアプを使うんだよ。タイプの相手がいたら、マチアプ開いてそこでいいねするなりDM送ってマッチングするんだよ」
そんな…それじゃあ、俺が普段から使っているこのマチアプを、ただこの会場で使うというだけのことじゃないか。
それだったら、わざわざ金を払ってイベントに来てまでマッチングする意味ある?
「ほらほら、後ろがつかえているんだから、さっさと奥へ行け」
俺は隼人に背中を押されてメインフロアへと入場した。
メインフロアの中は、俺と同年代のゲイ達でごった返していた。
友達同士で固まって、あちらこちらで盛り上がって嬌声を上げている。
最後にマッチングイベントに来てから十数年経っているわけだし、これも世の流れと受け入れるしか無いか。そうさ、どんなに世の中が移り変わってシステムが変わろうとも、始まってしまえばこっちのものだ。今でも俺の魅力が通じることを証明してみせる!
「それで、このあとどうなる?」
「だーかーらー、マチアプ開いていい男がいたらアプローチする。それだけ」
「えぇ?何もイベント起きないの?昔は定期的に番号貰ってた人を呼び出したり、モニターに番号出してお知らせしてくれてたのに」
「いつの時代の話をしてるんだよ?今は平成じゃなくて令和なんだぞ!全ては自己責任、自分で何とかしろ」
嘘だろ?それじゃあ、ただ狭い箱の中に人詰め込んで、あとは勝手にどうぞってだけじゃないか。これをマッチングイベントと言っていいのか?
しかも、ざっと周りを見渡しても、誰もイベントに参加しているようには見えないのだが、それは俺の気のせいか?
皆んな、友達とくっちゃべってるだけにしか見えないのだが、まるでただの社交場じゃないか。
「どうだ、久しぶりのイベントは楽しいだろ?」
「はぁ?誰も参加してない、ただ飲みながらお喋りしているだけの、ねるとんイベントが楽しいわけねーだろ!」
「そんなにガツガツするなよ。ほら、果報は寝て待てと言うだろ?しばらくしたら、きっと誰かからアプローチされるって」
隼人からそう諭されて、仕方なく俺は何かが起きる事を期待して待ってみることにした。
しかし、そんな淡い期待は徒労に終わることとなった。
隼人は終電で帰ってしまい、1人取り残された俺は、ただ何かが起きる事を期待しながら行き場も無いまま、夜が明けて始発が動き出すまで壁の花となっていることしか出来なかった。
時代の流れに乗れなかった俺は、この先どうしたらいいんだー!?
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