魔力を持たない僕は魔法を使いたい!

まったりー

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2章 魔法

36話 圧倒的な国境戦

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私は今、高い壁に向かって立っていて、そこには敵の兵士たちが沢山見えたわ。


「それに対して、私達は35人なんて、普通なら戦いにもならないけど、それはここに来るまでに十分分かってるから不安にもならないわね」


ここに来るまでに4回の戦いを勝利していて、どれも余裕だから今回も同じと気にも止めません。
砦戦は、相手よりも多くの兵が必要なのに、私たちは35人で銃を構え壁に向かって撃ち始め、砦から悲鳴が聞こえてきたわ。


「戦っている感じはないけど、これで終わりかしら?」
「レリュ、そうもいかないみたいだぜ、兵が出てきた」
「キララ行くわよ」
「おう、久しぶりに暴れるんだな、良いぜ」


今までは兵が逃げて終わっていて、相手がそれも出来ないほどに追い込まれているから、あと少しと私も武器を剣に持ち替えて突撃しました。
向かってくる敵兵士は100人は余裕で超えていたけど、前方のキララが拳を繰り出すと、そのほとんどが吹き飛び道が出来ていきました。


「ちょっとキララ、私の分も残してよ」
「そうはいかねぇぜレリュ、銃を撃つだけの戦いなんてつまらねぇからな」
「そんなこと言って、あなたは接近して撃っていた事もあったでしょう、私の指示を無視して」
「そうだったか?」


別に良いじゃないかっとキララは言うけれど、それで陣形は崩れて普通ならそこは弱点になってしまいます。
それは今後問題なので、師匠に言いつけると忠告したら、直ぐに反省して謝ってきたわ。


「それで良いのよ、師匠もきっと喜んでくれるわ」
「アルサ師匠、今どうしてるのかな」
「それは、研究してるんじゃないかしら?」
「そうだろうな、きっと凄い魔道具作ってるんだろうな」


銃以外にも手榴弾とかいう、爆発魔法が付与されている石を支給してきたりしていたから、いつ作ったのかとみんなで突っ込みを入れたりしていたわ。
次はもっと凄い品を期待していたけど、砦戦には来てくれませんでした。


「次ってあるのかしら?」
「来ないってことはそうなんじゃねぇかな、アルサ師匠は先を読んでるからな」
「でも、相手の強さが必要とは思えないレベルなのよね」
「確かにそうだな、もっと歯ごたえが欲しいぜ」


気功術もほどほどにしか使って無いから、身体を動かせてもあまり楽しくない状態で、誰かいないか向かってくる兵士を倒して周囲に視線を動かしました。
そんな人はいないと思っていたけど、ひときわ気の高い人が大きな剣を肩に担いで歩いてきて、もしかしたらと期待したわ。


「そこまでだお前たち」
「威勢が良いな、止められるもんなら止めてみろよ」
「言われなくて、勇者ミンガルがお前たちを倒す」


勇者と聞いて身構えたけど、勇者は大剣を持ってまっすぐに走ってきて、その行動が隙だらけでキララが呆れていたわ。
私も隣で同じような顔をしてしまっていて、あの大剣を受けるか躱すか悩んでしまったわね。


「おいおい、マジかよ」
「気が高いと思ったのだけど、使って無いじゃない」
「どうするよレリュ、勇者の一撃だぜ」
「そうは言っても、気が高くてもあれじゃねぇ」


気功術は、持っている気を圧縮したり爆発させる事で強さを増すけど、勇者は持っているだけの存在で、それ以上してこないのが気の動きで分かったわ。
大振りの攻撃が今まさに振り下ろされそうな状態でも、相手の気は高まる事はなく、素手で攻撃を受け止めました。


「なっ!」
「そんなに驚かれても困るわ、良くそんな腕で戦いを挑んできたわね」
「そ、そんな腕だと、俺は勇者だぞ、最強なんだ」
「そっちの国ではそうだったのかもしれないけど、こちらではかなり下なのよ」


勇者の一撃は、ドラゴンを倒せるほどではないし、オーガの一撃が良い所と教えてあげたわ。
探索者の中で中堅よりは上だけど、それでも最強とは呼べないレベルだったから、本当にやる気があるのかと不思議でなりません。


「他の国が攻めるからって、さすがにこれはないわね」
「だな、弱すぎだ」
「くそったれ、こんな所で切り札を使う事になるってのかよ」


勇者が悔しそうにしながら、首に掛けていたネックレスの鎖を引きちぎり空に掲げると、空から光輝くドラゴンが降りてきて、勇者のいた場所に頭から墜落し、私とキララは距離を取りました。
ドラゴンがエネルギーの塊なのは分かっていたので、勇者は死んでいないから身構えると、そこには勇者ではなく法衣を来た女性が立っていたわ。


「お前、勇者を飲み込んだな」
「あら、良く分かったわね」
「オレたちは気で分かるんだ、お前はさっきまでいた勇者じゃねぇ」
「ふふふ、そう、勇者はわたくしが具現化する為の贄なのよ」


ただの食事と言い切った女性は、勇者が両手で持っていた大剣を片手で軽く持ってきて、これは確かに凄いと感じたわ。
女性から感じる力は勇者よりも強大で、気ではないからかなり警戒して武器を構え、何者なのかを聞きました。


「あなたたちは直ぐに死んじゃうけど、復活出来たお祝いに教えてあげる、わたくしは聖女フィローラルよ」
「フィローラルって、世界の半分を壊滅させたっていう」
「あら、わたくしはそんな事はしないわ、ちょっとお仕置きしただけよ」


お仕置きで国が亡んだりしてはたまらないのだけど、女性は笑うだけで怖いと思ったわ。
キララも同じ気持ちではあったけど、こいつは野放しには出来ないと小声で伝え、魔法銃を撃ちましたが、フィローラルに当たる前に消滅したのよ。


「な、なんで」
「あら、わたくしの恐ろしさを知りながら、わたくしの事を知らないのね」
「レリュ、構わず魔法は撃て、オレも攻める」
「気を付けてキララ、魔力で守りを固めているわ」


見えないけど感じる力は魔力であり、魔法が消えた事もそれで説明がつくと思い魔法銃を撃ちました。
火の弾は、フィローラルの前で同じように消えたけど、キララの拳がフィローラルのお腹にヒットしたわ。


「どうだよ」
「あら、痛いじゃない」
「「なっ!」」


キララと一緒に驚いた私は、フィローラルの次の行動に反応できず、キララの悲鳴で正気に戻りました。
肩を押さえて下がって来たキララを見て、何をされたのかを理解してゾッとしたわ。


「腕がなくなってる」
「レリュ気をつけろ、あいつは普通じゃねぇ」
「あら失礼ね、あなたの腕を美味しい飴に変えただけじゃない」
「な、なんですって!」


触れた部分を変質させる魔法と聞き、どうしたら勝てるのか分からなくなりました。
魔法は打ち消され、接近すればキララの様にダメージを受けてしまうから、もうダメだと諦めてしまったわ。


「あらあら、もう降参かしら?」
「あなたに敵わないのは分かったわ、殺しなさいよ」
「ふふふ、良い覚悟じゃない、好きよそういう人、食べたくなっちゃう」


舌なめずりをしたフィローラルが私を見てきて、ゾッとした私は恐怖を受けて震えながらキララを守るように抱えました。
全身飴にされるのだと思い、その時を悔しさでいっぱいになりながら待ったのだけど、フィローラルの攻撃は来なかったわ。


「なんで?」
「やれやれ、新しい魔道具を持ってきたのに、それどころじゃないみたいだね」


いつの間にかフィローラルとの距離が離れていて、私の前には希望の光である師匠が立っていました。
離れている位置のフィローラルが不思議そうにしてきたけど、形勢は逆転してるから私は安心しました。
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