66 / 66
番外編
海で楽しく遊びたいっ!
しおりを挟む
※下ネタ注意
カレリアは内陸にあるので海がない。しかし!よくやく旦那様をゲットした今、私はどうしても砂浜のある海に行きたかった。
そこでアトス様にハネムーンは海のある国で!とねだったところ、二つ返事でオーケーをもらえたので、現在こうして砂浜にいるのである。
カレリアにはいくつか同盟国があって、中でもアルメリアは年中暑くて雪も降らない。そんなわけで各国のお金持ちがリゾートにやって来る。
この辺りの領主は一部の海岸を開放しているので、砂浜では結構な人数が海水浴や日差しを楽しんでいた。
とは言っても、湘南みたいにサーファーやビキニギャルがウジャウジャというわけでない。この世界は露出についてはまだ慎み深いところがあるので、みんなTシャツに短パンみたいな水着だった。
まあ、これについては計算違いだったものの仕方がない。何事も理想通りにはいかないものだ。
――そう、私には前世からの理想……もとい夢があった。それはウェーイ系パリピとなって、彼ピッピ(古い)とキャッキャウフフすることだ!
青い海と白い砂浜をバックに、「ほ~ら、私を捕まえてごらんなさ~い」「待て待て~!」と追いかけっこをしたりとか、バーベキューで二人で肉を焼きながら、「タカシ君、まだ生焼けだよお」「オレたちはアツアツだから大丈夫☆」とイチャイチャしたりとかしたかった……!
社畜系喪女だった前世の私には、夏の太陽やウェーイ系パリピは眩しすぎた。パリピと一言でも口を利いてしまえば、明るさに当てられ灰になるレベルだった。暗闇でしか生きて行けないのが社畜系喪女なのだ。
しかし、ようやくカップルとなった今、私こそがウェーイ系パリピなのだ!
アトス様は私の夢に嫌な顔一つせず付き合ってくれ、この日のために徹夜で書き上げた脚本を、細かなエピソードまで再現してくれた。もちろん、タカシの焼いた生焼けの肉もだ。
しかし、これが見事に、あるいは当然裏目に出るとことになる。
「う、うう……」
私はむくりと体を起こした。
隣ではアトス様がまだすやすやお昼寝をしている。私たちはこれでもかと遊び倒したあとで、木陰にキルトを敷いて休憩していたのだ。
ところが、三十分後に私だけ目が冷めた。理由は激しいお腹の痛みだ。ギュルグルウルルンゴゴゴゴグヮアと、この世のものとは思えない音がする。多分、生焼けの肉に当たったんだろう。
アトス様を起こせばすぐに魔術で癒やしてくれるだろう。でも、せっかく気持ちよさそうに寝ているのに、こんなことで起こすのは気が引けた。アトス様もワーカホリックで働きづくめの毎日。休暇くらいはのんびりしてほしかったのだ。
私はトイレを探しに砂浜を歩き回った。しかし、それらしき建物はどこにもない。二十一世紀の日本の湘南ではないので、海の家なんて気の利いた施設もあるはずがない。いくつかある木陰も必ず人目につく位置にある。
痛みはどんどん強くなり、波の音はもはや耳に入らない。私はギュルグルウルルンゴゴゴゴグヮア――と鳴るお腹を抱え、目を血走らせてひたすらトイレを探した。
海に入ってオノレを解き放つことも考えたものの、綺麗な海なので罪悪感がハンパないだろうだけではなく、万が一海水浴客にバレて「魔術団総帥の新妻が南の海で脱○!」――なんてニュースになれば首を括るしかない。
でも、もうガマンできそうにない。
ギュルグルウルルンゴゴゴゴグヮアをBGMに、ついに脳内に走馬灯が回り始めた頃、私ははたと目の前にある白い砂浜に気付いた。そう、砂。砂があったじゃないかと天啓を受けた思いがした。猫なら恥ずかしいもクソもないじゃないの!
が、が、が、それは人として何か大切なものを捨てるような気がして数秒躊躇う。しかし、再びやって来たギュルグルウルルンゴゴゴゴグヮアの波に、もはや尊厳とかプライドとかに構っている余裕がなくなり、結局私はなりふり構わず猫に変身して砂を掘り始めたのだった―ー
――〇〇〇との戦いにあえなく敗れ、敗北感に打ちひしがれ、トボトボと木陰に戻った頃には、アトス様はもう起きて本を読んでいた。
「おや、アイラ、猫の姿でどこへ遊びに行っていたんですか?」
「……」
アトス様の顔を見られずに後ろを向いて寝転がる。
猫の姿なら皆様にはバレないと思っていたけれども、それ以前に公衆の面前で〇〇〇をするって、どう考えてもティーンの新妻のすることじゃない、うっうっうっ……。
「何かあったんですか? 拗ねたアイラも可愛いですねえ」
アトス様によしよしと背を撫でられながら、私はその日の午後をしおれて過ごすしかなかった。
ハネムーンの思い出がこの出来事一色に塗り潰されたのは言うまでもない。こうして私の黒歴史に新たな一ページが付け加わったのだ……。
カレリアは内陸にあるので海がない。しかし!よくやく旦那様をゲットした今、私はどうしても砂浜のある海に行きたかった。
そこでアトス様にハネムーンは海のある国で!とねだったところ、二つ返事でオーケーをもらえたので、現在こうして砂浜にいるのである。
カレリアにはいくつか同盟国があって、中でもアルメリアは年中暑くて雪も降らない。そんなわけで各国のお金持ちがリゾートにやって来る。
この辺りの領主は一部の海岸を開放しているので、砂浜では結構な人数が海水浴や日差しを楽しんでいた。
とは言っても、湘南みたいにサーファーやビキニギャルがウジャウジャというわけでない。この世界は露出についてはまだ慎み深いところがあるので、みんなTシャツに短パンみたいな水着だった。
まあ、これについては計算違いだったものの仕方がない。何事も理想通りにはいかないものだ。
――そう、私には前世からの理想……もとい夢があった。それはウェーイ系パリピとなって、彼ピッピ(古い)とキャッキャウフフすることだ!
青い海と白い砂浜をバックに、「ほ~ら、私を捕まえてごらんなさ~い」「待て待て~!」と追いかけっこをしたりとか、バーベキューで二人で肉を焼きながら、「タカシ君、まだ生焼けだよお」「オレたちはアツアツだから大丈夫☆」とイチャイチャしたりとかしたかった……!
社畜系喪女だった前世の私には、夏の太陽やウェーイ系パリピは眩しすぎた。パリピと一言でも口を利いてしまえば、明るさに当てられ灰になるレベルだった。暗闇でしか生きて行けないのが社畜系喪女なのだ。
しかし、ようやくカップルとなった今、私こそがウェーイ系パリピなのだ!
アトス様は私の夢に嫌な顔一つせず付き合ってくれ、この日のために徹夜で書き上げた脚本を、細かなエピソードまで再現してくれた。もちろん、タカシの焼いた生焼けの肉もだ。
しかし、これが見事に、あるいは当然裏目に出るとことになる。
「う、うう……」
私はむくりと体を起こした。
隣ではアトス様がまだすやすやお昼寝をしている。私たちはこれでもかと遊び倒したあとで、木陰にキルトを敷いて休憩していたのだ。
ところが、三十分後に私だけ目が冷めた。理由は激しいお腹の痛みだ。ギュルグルウルルンゴゴゴゴグヮアと、この世のものとは思えない音がする。多分、生焼けの肉に当たったんだろう。
アトス様を起こせばすぐに魔術で癒やしてくれるだろう。でも、せっかく気持ちよさそうに寝ているのに、こんなことで起こすのは気が引けた。アトス様もワーカホリックで働きづくめの毎日。休暇くらいはのんびりしてほしかったのだ。
私はトイレを探しに砂浜を歩き回った。しかし、それらしき建物はどこにもない。二十一世紀の日本の湘南ではないので、海の家なんて気の利いた施設もあるはずがない。いくつかある木陰も必ず人目につく位置にある。
痛みはどんどん強くなり、波の音はもはや耳に入らない。私はギュルグルウルルンゴゴゴゴグヮア――と鳴るお腹を抱え、目を血走らせてひたすらトイレを探した。
海に入ってオノレを解き放つことも考えたものの、綺麗な海なので罪悪感がハンパないだろうだけではなく、万が一海水浴客にバレて「魔術団総帥の新妻が南の海で脱○!」――なんてニュースになれば首を括るしかない。
でも、もうガマンできそうにない。
ギュルグルウルルンゴゴゴゴグヮアをBGMに、ついに脳内に走馬灯が回り始めた頃、私ははたと目の前にある白い砂浜に気付いた。そう、砂。砂があったじゃないかと天啓を受けた思いがした。猫なら恥ずかしいもクソもないじゃないの!
が、が、が、それは人として何か大切なものを捨てるような気がして数秒躊躇う。しかし、再びやって来たギュルグルウルルンゴゴゴゴグヮアの波に、もはや尊厳とかプライドとかに構っている余裕がなくなり、結局私はなりふり構わず猫に変身して砂を掘り始めたのだった―ー
――〇〇〇との戦いにあえなく敗れ、敗北感に打ちひしがれ、トボトボと木陰に戻った頃には、アトス様はもう起きて本を読んでいた。
「おや、アイラ、猫の姿でどこへ遊びに行っていたんですか?」
「……」
アトス様の顔を見られずに後ろを向いて寝転がる。
猫の姿なら皆様にはバレないと思っていたけれども、それ以前に公衆の面前で〇〇〇をするって、どう考えてもティーンの新妻のすることじゃない、うっうっうっ……。
「何かあったんですか? 拗ねたアイラも可愛いですねえ」
アトス様によしよしと背を撫でられながら、私はその日の午後をしおれて過ごすしかなかった。
ハネムーンの思い出がこの出来事一色に塗り潰されたのは言うまでもない。こうして私の黒歴史に新たな一ページが付け加わったのだ……。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(46件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
2人の赤ちゃんニャンコも見たかったなぁ・・・
アビシニャー、キャラ変わってる(笑)
お慈悲を~とか必死だな、オレ様どこ行った?
でも嫌いじゃない、嫌いじゃないよ。
アトス様、一匹くらい嫁にあげてください。
感想ありがとうございますニャー(ΦωΦ)
私もなんかだんだん気の毒になってきて、彼なりの努力が報われてはいいのではないか?と感じてきましたww
間違いを発見しました!
「そんニャこんニャで大団円(8)」で
「私たちはまだ結婚したばっかで子どもなんでいないわよ!」とありますが
「私たちはまだ結婚したばっかで子どもなん”て ”いないわよ!」で
濁点は、いらないと思います。
ご報告ありがとうございますニャー(ΦωΦ)
先程なおしましたニャー!