【R18】竜の器【完結済】

かすがみずほ@3/25理想の結婚単行本

文字の大きさ
39 / 61
和平会議

発情の衝動

しおりを挟む
「な、何を言って……、うンン……っ」
 下着の間から手を入れられて、雄を握られる。
 そこは後ろの穴を愛撫されている最中にそうなったように、痛いほどに敏感になっていて、イドリスは驚いた。
「いっ、入れられてないのにっ……俺のものがおかしくなってるっ……!?」
「お前の肉体の性が、過剰に雌に傾いてきている……。ほら、確かめてやるからこっちに来るがいい……」
 ラファトがきつくなっている自分のキュロットの前立てをくつろがせ、そこから凶暴にいきり勃った性器をとり出し、見せつける。
 それを目にした瞬間、何かの装置が押されたように、イドリスの理性が壊れた。
 狭い馬車の中で腰を曲げたまま立ち上がり、対面の座席に手をつきながら、相手の前まで移動してゆく。
 ラファトは目の前に突き出された尻を掴んで高く上げさせ、下着の紐をずらして、ヒクヒク蠢く小さな穴に口付けした。
「あ……!」
「そのまま、足を開いて腰を下ろせ……」
 言われるがまま、はしたなく膝を開きながら尻を怒張の上に落としてゆく。
 先走りで濡れた先端がついにそこに当たり、ゾクゾクと期待が高まった。
 もはや我慢できない。
 イドリスは自らそこに圧を掛け、恍惚とした表情で雄を徐々に呑み込んだ。
 今朝まで男を貪っていたそこは、まだ充分に柔らかく、ラファトの形を覚えていた。
「はぁぁ……ン……っ」
 壁一枚、カーテン一枚を隔てた外には人目があると言うのに、馬車の振動に合わせて小刻みに腰を振り、熱い吐息と共に男との交合に溺れてゆく。
 絹のシャツの中で二つの乳首を優しく引っ張られると、それだけで淫液が結合部からトロトロと溢れて、ラファトの色のない陰毛を濡れそぼらせた。
「あああッ、はあァッ……」
 すぐに果ててしまいそうな勢いで雄を夢中で飲み込んでいると、ラファトの手が下着の前を引き下ろし、イドリスの男性器を握り込んでくる。
「アッ、両方はっ、ンっ、まっ、前もイッてしまったらっ……汚れる……アアアッ!」
 きゅんきゅんと雄を締め付けながら、イドリスは雄への刺激で急速に達した。
 だが、後ろの淫液がどっと溢れるだけで、鈴口からは先走りしか出ない。
「え……なん……前、で果てた、のに……!?」
 雌の快感に浸りながらもイドリスは怯えた。
 雄を握り込んでいた手が移動して、性器の付け根を確かめるように触れてくる。
「……双玉が以前よりも小さくなっている……恐らくだが、一時的に子種を作らなくなってしまったのだ……赤子を産む時に竜の器が抜ければきっと元に戻るから、安心しろ……っ」
 ――こんな身体にされて、安心など出来る訳がない。
「い、嫌だ……怖い……っ、こんな身体……どんどん俺ではなくなって……っ」
 不安で涙を滲ませるイドリスの腰を掴んで、激しい水音を立てながら、ラファトは容赦なく中を突き上げてきた。
「んぁ! やめっ、はあっ!」
「お前の身体がもっと美しく変わっていくのが、楽しみで仕方ない……っ。イドリス、ああ、私のイドリス……っ」
 自らを犯す男の分身がどくどくと脈打ち、精を放つ。
 下腹で青い光が強くなり、イドリスは乱れた熱気の充満した馬車の中で、また夢中で腰を振り始めた。
「あ……もっと……もっと中に……最後まで出してくれ……、ラファト……っ」
 


 竜の器に狂わされ続けたまま、馬車の旅は続いた。
 発情の衝動が来るのはいつも突然だった。
 馬車の中でただ背中を撫でられたり、あるいは夜の野営の天幕の中で軽く口付けしただけであっても、ふとした瞬間にはもう、いつの間にか欲に堕ちている。
 そしてラファトがはっきりと誘う意志を示してくる時には、確実に答えてしまう身体になっていた。
 馬車で、天幕の中で、最中にあまりに喘ぎ声やよがり声が漏れてしまうので、もはや伴の御者や護衛の者と顔を合わせるのが恥ずかしくて辛い。
 移動中はせめて馬車の席の端に座るようにして、イドリスはなるべくラファトと接触や会話を避けた。
 それでも、食事を挟んだり、車窓の外の風景が変わってくると、つい気が緩む。
 そもそも馬車は酷く退屈な乗り物だ。
 無為な時間をしのごうと思えば、隣にいる男と話をするしかない。
 国境も近くなってくると、そこかしこの街にまつわる共通の思い出などもあり、淫らなことに至らずとも、自然と会話が増えていた。
 元々二人は同じ年齢で生まれている。
 子供時代の思い出や、同じ武芸の大会での笑い話などもし始めると、共通点が意外に多く、話が尽きないことに気付いた。
 ――アルスバーンまでもう一息という折。
 昼下がり、馬の交換で馬車が止まっている合間にも、イドリスは座席でラファトの肩にもたれながらぼんやりと話し始めた。
「この街には、帝国の戴冠式に行く途中に寄ったことがある……確か、肉料理がとても美味かった。アルスバーンでは、塩で焼くだけが主流だから……」
 ラファトも揶揄うような口調で話に乗ってくる。
「お前、思い出が大体、食い気なのだな……。戴冠式の式典の後の晩餐会でも、周りのことなど目にも入れず、作法もそっちのけで食べてばかりいただろう。私は見ていたぞ」
「なっ。子供だったのだから、仕方がないではないか!」
「私はお前と同じ年だったが、言いつけを守って大人しくしていたが?」
 確かに涼しい顔をしていたのを思い出して、イドリスがムッと押しだまる。
 ラファトは懐かしげに目を細めた。
「――あの時のお前の姿を見て、本当はお前を竜舎に誘い、一緒にドラゴンに乗りたいとずっと考えていたのだ。……同じ年頃の子供を見たのは、お前が初めてだったからな」
 イドリスがふと横を見ると、あの時には見ることができなかった輝くような微笑みに魅了され、ドキンと心臓が跳ねる。
 もしも幼い頃の彼が自分のそばにやってきて、そんな風に微笑みかけ、ドラゴン乗りに誘われていたら……。
 皇族席に見たこともないほどに美しい姫君がいると思い込んでいた自分は、お転婆な姫とドラゴンに一目惚れをして、生涯忘れられなくなっていたに違いない。
「その時にお前が誘ってくれていれば、サキルに乗るのにあれほど苦労しなかったろうに……」
 イドリスが小さく微笑むと、ラファトがイドリスの頭を抱き、黒髪を優しく撫でてくる。
「そうだな、誘えば良かった。きっとお前はドラゴンに夢中になって、帝国に残ると我儘を言ったに違いないぞ」
「そうしていれば今頃、俺はお前よりも騎竜術が上手くなっていたかもしれないな……」
 気付かれない程度にラファトの手に頭を擦り寄せて、イドリスは切なく目を閉じた。
 ――もしその頃に友人になれていたら、今頃の自分達はどんな関係だったのだろうと……あり得るはずのない世界に思いを馳せながら。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...