手とり、足とり、愛してあげる 【2】

青森ほたる

文字の大きさ
16 / 22

初めての浣腸

しおりを挟む
いつもの、簡易便座のついた容器がベッドの側に置かれ、ベッドの上にはたぷたぷと音と水の入った洗面器と、グリセリンと書かれたボトル、大きな注射器のようなもの、そのほか細い管のようなものや、トイレットペーパーなど、ずらっと並べられている。

篠崎さんがカップでグリセリンをはかり、洗面器の水に加えてかちゃかちゃと混ぜ、注射器を手に、洗面器の水を吸い上げる。

その注射器いっぱいの水が、今からどこに挿れられることになるかはあまり考えたくない。

それに……。
「浣腸って、痛い、んですか……?」

「強制的に便意をおこすものだからね。お腹がぎゅるぎゅるなって痛いだろうけど、ユウくんはすでにお腹が痛いんでしょう? 浣腸しないとお腹はずっと痛いままだよ?」

篠崎さんは注射器を片手に「はい、じゃあいれるよ」と僕のお尻の片側を掴んで割れ目をひらくように引っ張り、ためらいなく注射器の先端を蕾に挿し入れる。

「……っ……」

股の間の注射器は僕の視界からは見えないけれど、ゆっくりと押し出し部分が押されて浣腸液が注入されていくのを微妙にあたたかい温度で感じた。

「すぐ出したらお薬だけ出て意味ないからね。10分は我慢だよ」

篠崎さんがからっぽになった注射器をもちあげて、パシンとお尻をたたく。

「ぅっ……」
浣腸をされたらすぐにお腹が痛くなるのかと思いきや、お腹が圧迫されたからなのか、最初に感じたのは異常なほどの尿意だった。

ベッドの上で仰向けで両足を縛られた格好でためらってる暇などなく「し、しのさきさん、おし、っこ……したいです」と訴える。

篠崎さんは洗面器や空になったカップを片付ける手をとめ、
「いまは、浣腸をしてるところでしょ。おしっこもしばらく我慢しなさい」
と、ぴしゃりと告げる。

「そ、んんな……もうぅ……もももれちゃ、……います……」
「たしかにベッドが濡れるのは困るね」

それが一番の問題、というような口調で篠崎さんは言うと、ベッドの上から細長い管のようなものを手にとった。そうして管の一方の端をベッドのわきにおかれた容器のなかに垂らし、もう一つの端を持ったまま僕のペニスを掴む。

「え、そ、れ……っ」
「管を尿道にいれて、膀胱から直接おしっこだすからね」

「こ、……こわぃっぃぃっいたぃぃっっ」

さけぶ僕を横目に篠崎さんはためらいなくペニスの先端に管を押し当て、するすると挿しいれた。

「そんなに痛くないでしょ。もっと太いと痛いだろうけど」

たしかに痛みは些細なものだったかもしれないが、細長い管がささっていくのを見ている怖さがまさっていた。

「ぅぅっっっ……」
どのくらいの長さのものがさされたのか篠崎さんが手をとめ、すぐに透明な管のなかを薄黄色の液体が流れていき、ぼたぼたぼたと容器の底におしっこが落ちる音がひびく。いつも以上に、その音が羞恥心を煽って、顔が熱くなる。

「こんな感じかな」
さいごにぎゅうっとお腹を押されて、管からおしっこが垂れなくなると、篠崎さんはするするとまたペニスにさした管を抜きとる。痛みと同時に、微妙に、射精に似た感覚が腰から下のあたりを駆け巡る。

「んっ……っ」
腰がわずかに浮いて、ペニスにじんわり熱が集まる。その生理現象を篠崎さんが見逃すはずがなく「ユウくん」と冷たい声がふってきて、どこから取り出したのか黒い鞭をするりと手に、パシィッ!!とペニスに振り下ろした。

「ぃいいっっっっ!!!!!」

そんなに思いきり振りかぶった叩き方じゃなかったのに、頭が真っ白になるような痛みが一瞬で全身をかけめぐる。

「なんで叩かれたかわかるね?」
こくこくと頷く。感じてしまったのは生理現象だけど、そう言い訳もできない。

「ごめ……なさぃ……っ」
鞭で叩かれたペニスは一気に萎えている。

「まあもうそろそろ浣腸が効いてきて、そんな余裕もなくなるとおもうけど。これ、一回綺麗にしてくるね」

簡易便座を持って篠崎さんが檻からいなくなると、たしかに尿意はおさまった下腹のあたりが今度はしくしくと別の痛みを主張し始めていた。

そして前触れなくいきなりぎゅぅぅううっと、太くて硬い縄でお腹を締め付けられるような痛みに襲われる。

「ぅうううっっ…………っ」

縛られたままの両足をさらにお腹に近づけてお腹を抱えるように体を横たえる。

「痛いの?」

篠崎さんが戻ってきたときには、体全体、脳みそまでぎゅうっと絞られるような痛みにじっとしていられず、シーツの上をばたばたと右に左にのたうちまわっていた。

「しのさきさん、おおおトイレ……っいきたいぃっです」

「うーん、いま何分かな」

篠崎さんがのんびりと腕時計を確認する数秒の間も我慢ができないほどお腹が痛い。

「いま五分すぎたところだよ。あと五分だね」
「む、むりです。が、がまんできないぃぃっ」
「ううん、我慢するの」

できない、できない。痛い、苦しい。
あまりの痛みに、息をするのも苦しい。

「うぅうぅううっっ……っ」

永遠にも感じられる五分、篠崎さんに「はい、もういいよ」と言われて、縛られていた縄と鎖につながった手枷と足枷を外してもらえたとき、普通の精神状態であれば簡易便座にまたがるのを躊躇っただろうが、限界まで我慢していた僕はもう一瞬でも躊躇う余裕などなかった。

全部出してもまだ息があがっていて体は頭の上から血の気が引いたように冷え切っているのに汗まみれで、いつものトイレと同じように篠崎さんがお尻をペーパーで拭くのにまかせて立ち尽くしていた。

「待っててね」

一人、檻の中に残されたぼくは、全身が重くベッドに倒れ込むようにして、あがった息をしずかに吐く。
汗と涙でべしょべしょになった顔が冷える。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...