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心の繋がり
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朝が来ていた。
カーテンの隙間から差し込む光が、ベッドの上に落ちている。
俺は、柴田の胸に頭を預けたまま、ぼんやりとそれを眺めていた。
部屋はタバコと男の汗と、交わった後の匂いで満ちていた。
だが不思議と、不快じゃなかった。
この匂いに包まれていることが、むしろ“安心”だった。
柴田はまだ寝ている。
大きな体がわずかに上下し、かすかないびきが聞こえる。
俺の下腹部には、昨日の名残が残っていた。
じんわりとした火照りと、使い切ったような疲労感。
肛門の奥に感じる違和感も、妙に心地よかった。
(……ちゃんと、抱かれたんだな、俺。)
ぼそりと、自分に向けて呟いた。
それは、実感というより、確認だった。
昨日のことが、夢じゃないと証明したくて。
ふと、柴田が寝返りを打つ。
その拍子に、俺の腕を引き寄せるようにして、自分の胸の中へ抱き込んだ。
「……ん……朝か。」
低く、寝起きの声。
目はまだ半分閉じているのに、その手はしっかりと俺の背を撫でていた。
「起こしました?」
「ええよ……朝の匂いやな。」
「……変な言い方ですね。」
「そやけど、間違うとらんやろ。」
くぐもった声で笑いながら、柴田の手が俺の尻を撫でる。
「昨日、痛なかったか?」
「……最初は、少し。でも、すぐに気持ちよくなりました…。」
「そうか。……よかった。」
その「よかった」が、どこか不器用で、真剣だった。
黙っていても、不安にならない沈黙がそこにはあった。
「柴田さん。」
「ん?」
「……あなたみたいな人が、どうして俺みたいな、何の面白味もないおっさんに……」
「そんなん、自分で言うもんちゃうやろ。」
「でも事実です。俺、無口だし、地味だし、デブだし……」
「……せやからええんや。」
「……え?」
柴田が顔を上げ、真正面から俺を見た。
「おまえ、なんにも飾っとらん。そういうとこ、しんどいときほど欲しなるねん。」
静かに言うその声に、胸が締めつけられた。
「俺はな、大きい声出すやつも、威張るやつも、もう見飽きた。
刑務所におったときなんか、男の虚勢しか見とらん。
でも、おまえは違う。あったかい。素直で、ちゃんと震えとる。
そういう人間のほうが、俺には眩しいんや。」
目の奥がまた熱くなる。
昨日、全部出し切ったはずなのに――
「……泣き虫で、すみません。」
「ええねん。泣けるうちは、生きとる証拠や。」
柴田の手が俺の後頭部に回される。
そして、再び唇が重なった。
今度のキスは、昨日よりもずっとゆっくりで、深かった。
性欲だけじゃない、もっと底のほうから滲み出るような温もりだった。
布団の中で、また柴田の体が俺を包む。
「もう一回……してええか?」
「……はい。」
ゆっくりと、静かな、しかし深い交わりがまた始まった。
指の絡まり、太い胸に頬を押しつける感触、
そして、奥を優しく擦ってくるあの熱。
朝の光の中で交わることが、こんなに満たされるなんて思わなかった。
外では病院の始業チャイムが鳴っていた。
だが、それはどこか遠くの出来事に思えた。
今日の俺の朝は、ここから始まった。
誰かの体温と、息遣いと、重なりながら――
カーテンの隙間から差し込む光が、ベッドの上に落ちている。
俺は、柴田の胸に頭を預けたまま、ぼんやりとそれを眺めていた。
部屋はタバコと男の汗と、交わった後の匂いで満ちていた。
だが不思議と、不快じゃなかった。
この匂いに包まれていることが、むしろ“安心”だった。
柴田はまだ寝ている。
大きな体がわずかに上下し、かすかないびきが聞こえる。
俺の下腹部には、昨日の名残が残っていた。
じんわりとした火照りと、使い切ったような疲労感。
肛門の奥に感じる違和感も、妙に心地よかった。
(……ちゃんと、抱かれたんだな、俺。)
ぼそりと、自分に向けて呟いた。
それは、実感というより、確認だった。
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ふと、柴田が寝返りを打つ。
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「……ん……朝か。」
低く、寝起きの声。
目はまだ半分閉じているのに、その手はしっかりと俺の背を撫でていた。
「起こしました?」
「ええよ……朝の匂いやな。」
「……変な言い方ですね。」
「そやけど、間違うとらんやろ。」
くぐもった声で笑いながら、柴田の手が俺の尻を撫でる。
「昨日、痛なかったか?」
「……最初は、少し。でも、すぐに気持ちよくなりました…。」
「そうか。……よかった。」
その「よかった」が、どこか不器用で、真剣だった。
黙っていても、不安にならない沈黙がそこにはあった。
「柴田さん。」
「ん?」
「……あなたみたいな人が、どうして俺みたいな、何の面白味もないおっさんに……」
「そんなん、自分で言うもんちゃうやろ。」
「でも事実です。俺、無口だし、地味だし、デブだし……」
「……せやからええんや。」
「……え?」
柴田が顔を上げ、真正面から俺を見た。
「おまえ、なんにも飾っとらん。そういうとこ、しんどいときほど欲しなるねん。」
静かに言うその声に、胸が締めつけられた。
「俺はな、大きい声出すやつも、威張るやつも、もう見飽きた。
刑務所におったときなんか、男の虚勢しか見とらん。
でも、おまえは違う。あったかい。素直で、ちゃんと震えとる。
そういう人間のほうが、俺には眩しいんや。」
目の奥がまた熱くなる。
昨日、全部出し切ったはずなのに――
「……泣き虫で、すみません。」
「ええねん。泣けるうちは、生きとる証拠や。」
柴田の手が俺の後頭部に回される。
そして、再び唇が重なった。
今度のキスは、昨日よりもずっとゆっくりで、深かった。
性欲だけじゃない、もっと底のほうから滲み出るような温もりだった。
布団の中で、また柴田の体が俺を包む。
「もう一回……してええか?」
「……はい。」
ゆっくりと、静かな、しかし深い交わりがまた始まった。
指の絡まり、太い胸に頬を押しつける感触、
そして、奥を優しく擦ってくるあの熱。
朝の光の中で交わることが、こんなに満たされるなんて思わなかった。
外では病院の始業チャイムが鳴っていた。
だが、それはどこか遠くの出来事に思えた。
今日の俺の朝は、ここから始まった。
誰かの体温と、息遣いと、重なりながら――
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