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雨呼び男・一
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朝陽が痛い。
普段からぼんやりしている目元がどうしても重くて、元々の目つき以上に半開きになり、さらに人相が悪くなっている。こんなに早起きしたのは何ヶ月ぶりだろう。
大きいなあくびをして空を仰いだ。
「なぁ、茜。やっぱり俺が中学生って設定、無理があるんじゃねぇ?」
クロは眠気覚ましの煙草をくわえて、まだ半分以上起きていない頭を起こすようにガシガシ掻いた。
その独り言のような質問に、彼の肩にかけたスポーツバッグがもぞもぞ動く。
「全然大丈夫よ。アンタの見た目は十分中学生だから。成人男子なんて、誰も気づかないわよ」
品のある大人の女性の声が返ってきた。
「てめぇ!俺はは、これでも立派な大人・・・」
そう言いかけて、言葉に詰まった。
自分は本当に成人男子なのか?名前すら憶えていないくせに、そう断言できるのか?
もしかして、自分がそう思いたいだけで、本当の年齢は彼女が言うように・・・
「あぁ、くそ!」
もやもやする苛立ちを肩にかけたスポーツバッグに吐き出すように振り回した。
バッグからは悲鳴があげる。
あの雨の日、狐のような顔をした白衣の男に拾われ、言われるがままに彼が趣味でやっているという研究所に案内された。そこは市街地から離れた山間の雑木林の奥に、まるで人目を避けるように立っている小さく古い建物だった。
舗装路から外れた砂利道の先にある廃屋のようなその場所へ、自分はどうしてたどり着いたのか・・・
所長だという色白痩身の男は『鹿野シロ』と名乗り、自身の名と黒衣の青年の容姿にちなみ、名無しの彼に『クロ』という仮の名を付け、「いずれ記憶は戻りますよ、気長に待ちましょう」と励まし、研究助手として住み込みで雇うことを申し出た。
つい先日、現場調査をしていた助手が行方不明になってしまい、何もできずに困っていると眉をひそめて。
その落胆した姿に「助けてくれた礼だし、それくらいかまわねぇよ」と応じたのだった。
「今回の調査対象はどんなヤツだ?」
吸殻をポンと地面に投げて、まだ眠そうな目を擦りながらバッグに訊いた。
「水上悠、14歳。〈雨男〉の能力はまだ覚醒していないみたいよ」
バッグは楽し気に、もぞもぞ揺れて答えた。
「おまえ、対象者が男だとホントやる気満々だな」
「あら、そんなことないわよ~♪」
クロのトゲのある言葉にも楽しそうに返事をした。
「この色惚けババァ」と胸の内で罵ったクロの耳に、通りに向こうから中学校のチャイムが響いた。
しおりを挟む 普段からぼんやりしている目元がどうしても重くて、元々の目つき以上に半開きになり、さらに人相が悪くなっている。こんなに早起きしたのは何ヶ月ぶりだろう。
大きいなあくびをして空を仰いだ。
「なぁ、茜。やっぱり俺が中学生って設定、無理があるんじゃねぇ?」
クロは眠気覚ましの煙草をくわえて、まだ半分以上起きていない頭を起こすようにガシガシ掻いた。
その独り言のような質問に、彼の肩にかけたスポーツバッグがもぞもぞ動く。
「全然大丈夫よ。アンタの見た目は十分中学生だから。成人男子なんて、誰も気づかないわよ」
品のある大人の女性の声が返ってきた。
「てめぇ!俺はは、これでも立派な大人・・・」
そう言いかけて、言葉に詰まった。
自分は本当に成人男子なのか?名前すら憶えていないくせに、そう断言できるのか?
もしかして、自分がそう思いたいだけで、本当の年齢は彼女が言うように・・・
「あぁ、くそ!」
もやもやする苛立ちを肩にかけたスポーツバッグに吐き出すように振り回した。
バッグからは悲鳴があげる。
あの雨の日、狐のような顔をした白衣の男に拾われ、言われるがままに彼が趣味でやっているという研究所に案内された。そこは市街地から離れた山間の雑木林の奥に、まるで人目を避けるように立っている小さく古い建物だった。
舗装路から外れた砂利道の先にある廃屋のようなその場所へ、自分はどうしてたどり着いたのか・・・
所長だという色白痩身の男は『鹿野シロ』と名乗り、自身の名と黒衣の青年の容姿にちなみ、名無しの彼に『クロ』という仮の名を付け、「いずれ記憶は戻りますよ、気長に待ちましょう」と励まし、研究助手として住み込みで雇うことを申し出た。
つい先日、現場調査をしていた助手が行方不明になってしまい、何もできずに困っていると眉をひそめて。
その落胆した姿に「助けてくれた礼だし、それくらいかまわねぇよ」と応じたのだった。
「今回の調査対象はどんなヤツだ?」
吸殻をポンと地面に投げて、まだ眠そうな目を擦りながらバッグに訊いた。
「水上悠、14歳。〈雨男〉の能力はまだ覚醒していないみたいよ」
バッグは楽し気に、もぞもぞ揺れて答えた。
「おまえ、対象者が男だとホントやる気満々だな」
「あら、そんなことないわよ~♪」
クロのトゲのある言葉にも楽しそうに返事をした。
「この色惚けババァ」と胸の内で罵ったクロの耳に、通りに向こうから中学校のチャイムが響いた。
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