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17章
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志貴には最優先すべきことがある。そのために、公私ともに二人が必要なのは、この数ヵ月で嫌というほど身に染みていた。
中立国に赴任した外交官として母国のためにできることは、今となっては和平工作のみだ。偉大な先達・矢嶋周の息子、コスモポリタンの「非国民」が、全身全霊を傾け取り組む使命として、これ以上望むべくもない。
終戦は、無謀な戦場に駆り出された兵士たちだけではなく、国に残してきた大切な家族の命と生活を守る唯一の手段でもある。だからこそ志貴の担う役割は重く、時に圧し潰されそうになるのだ。詰めていた息を鋭く吐き出す音で、考え込むあまり呼吸を止めていたのだと、初めて気づくことすらあるくらいに。
和平工作を成すためなら、何を犠牲にしてもかまわない。だから、その前に重圧に負けることがあってはならない。そのために必要なものを手元に置くのは、強欲ではない。良心も痛まない。
今のままの関係を保つため、志貴はしたたかに言い訳と逃げ道を探し続ける。
平和のため、という大義名分がある限り。
中立国に赴任した外交官として母国のためにできることは、今となっては和平工作のみだ。偉大な先達・矢嶋周の息子、コスモポリタンの「非国民」が、全身全霊を傾け取り組む使命として、これ以上望むべくもない。
終戦は、無謀な戦場に駆り出された兵士たちだけではなく、国に残してきた大切な家族の命と生活を守る唯一の手段でもある。だからこそ志貴の担う役割は重く、時に圧し潰されそうになるのだ。詰めていた息を鋭く吐き出す音で、考え込むあまり呼吸を止めていたのだと、初めて気づくことすらあるくらいに。
和平工作を成すためなら、何を犠牲にしてもかまわない。だから、その前に重圧に負けることがあってはならない。そのために必要なものを手元に置くのは、強欲ではない。良心も痛まない。
今のままの関係を保つため、志貴はしたたかに言い訳と逃げ道を探し続ける。
平和のため、という大義名分がある限り。
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