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9話 コードネームシロツメクサ
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暫くルキーナは受話器に向けて流暢なアルキュミア語で話していたが、やがて話終わると受話器の先からキレ散らかしたような口調のレヴァン語が聞こえた。
『Sprechen Sie auf alchymia!Bist du verrueckt!』
いつもの口調だ。むしろそれ以外の口調だと落ち着かない。
「はい!分かりました
では任務結果を報告させていただきます!」
ルキーナは続けて喋り続ける。
電話先からは慌ただしい生活音と子供の喋り声のようなものが聞こえる。
「8月20日に『血の土曜日』の計画に関与したアルキュミア軍参謀、カシミール・モーガン=ペトログラード氏がマギ王国に亡命するそうです」
「現在ペトログラード氏は新たなる作戦を考えているみたいです」
「もし、情報が本当ならば……
私達は早急に彼を殺さなければいけません!」
『……そうか……シロツメクサ!その……『新たな作戦』というのをもう少し探れないか?』
地獄花が静かな声で言う。
本来の彼の声だ。低くもなく、高くもなく厳しそうで、でも優しさが少し含んでいるような……そんな声。
「はい!それと……同じく作戦に参加していた中佐である、アル=ハッサバードの暗殺の日程が決まりました……
1ヶ月後の4月6日に開催される誕生日パーティでやります」
地獄花はしばらく黙ったあと、一言眠たそうな声で『私は残念だが不在だなあ……よい報告を待ってる』と呟いた。
実は、ルキーナ・トレイボルブランコ=ヴィーゲンリートはレヴァン側のスパイだ。
コードネームは『シロツメクサ』
一部からは「道化の花」と呼ばれている。銃器の扱いと情報収集力に長けてるスパイだ。
季節は春に近づいていく。
街の高級住宅地の付近にそびえ立っているこの国の英雄ハーイ=ジョージの鼻についていた氷柱は溶けて、下に水溜まりが出来ている。
子供たちはそれを見て「ヘーイ鼻水小僧~!」と叫んでいるのを、買い物帰りのルキーナは微笑ましそうに見つめていた。
「何ボヤボヤしてるの?ルキーナ」
後ろからポンと軽く肩を叩かれる。
振り向くと、ショートカットでウェーブがかかったオレンジ色の髪に、サビアブルーの瞳、頭には黒のリボンをつけた女性がいた。
「ガブリエラさん!」
近所に住んでいる姉のような親しい存在の人だ。
顔が広く、現在の職を紹介してくれたのもガブリエラだった。
「ごきげんようMissルキーナ」
高級蜂蜜のように甘く蕩けそう声。
ブランドバッグの中にはアルキュミアの五つ星ホテル『hureiya』の制服が入っている。
「うわー!今から出勤ですか?」
「いや、違うわ。今から帰るのよ。大変愉快で元気がいいお客様がいらっしゃたからその対応をしていたら遅くなっちゃった……休日出勤よ……」
大変だな……という目線を送ると、ガブリエラは「案外そうでも無いわ」といい笑った。
「あ、そうだわ!せっかくだから今からお茶しない?」
ガブリエラはいつも通っているカフェを親指で指さした。
「ああ、すみません……今買い物帰りなので……あ、今日って何日でしたっけ……最近日数数えるのが億劫で……」
ルキーナ足で地面に胎内にいる赤子のようなマークを描きながら言った。
「6日よ!4月6日!近所のスーパーのたまご特売の日!安いは正義!」
「ありがとうございます……なら8時頃なら空いています。……というか、たまご特売とかどうでもいいんですけど……」
「あら、大切なことよ?たまごがあればなんでも出来る。プリンにオムレツ……スクランブルエッグ!これさえあれば毎日過ごせるわよ」
「じゃあ、8時頃にいつもの場所集合ね!楽しみだわ~!」
ガブリエラは上品さを残しつつ、嬉しそうにクスクスと微笑んだ。
「席はステンドグラスがある西側に座りたいですね……おすすめの赤ワインでじっくり煮込んだ林檎のコンポートも注文したいな……」
「いいね!それなら裏ドアの近くがおすすめだよ!私は蕩ける赤ワインの蜂蜜牛タン煮込みを食べようかしら……」
「あ、そういえばも私の友人も誘っていいですか?」
「ああ、あの子ね!いいわよ!面白いし……」
それからお互いに顔を合わせて「楽しみですね~!」といい笑った。
ガブリエラ=アヴェもレヴァンのスパイだ。
コードネームは『欝金香』
カフェの会話は先日地獄花に報告した暗殺の最終確認だ。ルキーナは、パーティが行われているハッサバード邸に偽造した参加券で入る。
それからガブリエラは得意のハニートラップと掌握術でベットに連れ込み、何もかも無防備になった瞬間に、ヴィーゲンリートが現れ射殺する。
それから、協力関係であるアマデウスの少女であるエマが記憶改ざんの魔法かけて何事も無かったようにするというのが一連の流れだ。
『Sprechen Sie auf alchymia!Bist du verrueckt!』
いつもの口調だ。むしろそれ以外の口調だと落ち着かない。
「はい!分かりました
では任務結果を報告させていただきます!」
ルキーナは続けて喋り続ける。
電話先からは慌ただしい生活音と子供の喋り声のようなものが聞こえる。
「8月20日に『血の土曜日』の計画に関与したアルキュミア軍参謀、カシミール・モーガン=ペトログラード氏がマギ王国に亡命するそうです」
「現在ペトログラード氏は新たなる作戦を考えているみたいです」
「もし、情報が本当ならば……
私達は早急に彼を殺さなければいけません!」
『……そうか……シロツメクサ!その……『新たな作戦』というのをもう少し探れないか?』
地獄花が静かな声で言う。
本来の彼の声だ。低くもなく、高くもなく厳しそうで、でも優しさが少し含んでいるような……そんな声。
「はい!それと……同じく作戦に参加していた中佐である、アル=ハッサバードの暗殺の日程が決まりました……
1ヶ月後の4月6日に開催される誕生日パーティでやります」
地獄花はしばらく黙ったあと、一言眠たそうな声で『私は残念だが不在だなあ……よい報告を待ってる』と呟いた。
実は、ルキーナ・トレイボルブランコ=ヴィーゲンリートはレヴァン側のスパイだ。
コードネームは『シロツメクサ』
一部からは「道化の花」と呼ばれている。銃器の扱いと情報収集力に長けてるスパイだ。
季節は春に近づいていく。
街の高級住宅地の付近にそびえ立っているこの国の英雄ハーイ=ジョージの鼻についていた氷柱は溶けて、下に水溜まりが出来ている。
子供たちはそれを見て「ヘーイ鼻水小僧~!」と叫んでいるのを、買い物帰りのルキーナは微笑ましそうに見つめていた。
「何ボヤボヤしてるの?ルキーナ」
後ろからポンと軽く肩を叩かれる。
振り向くと、ショートカットでウェーブがかかったオレンジ色の髪に、サビアブルーの瞳、頭には黒のリボンをつけた女性がいた。
「ガブリエラさん!」
近所に住んでいる姉のような親しい存在の人だ。
顔が広く、現在の職を紹介してくれたのもガブリエラだった。
「ごきげんようMissルキーナ」
高級蜂蜜のように甘く蕩けそう声。
ブランドバッグの中にはアルキュミアの五つ星ホテル『hureiya』の制服が入っている。
「うわー!今から出勤ですか?」
「いや、違うわ。今から帰るのよ。大変愉快で元気がいいお客様がいらっしゃたからその対応をしていたら遅くなっちゃった……休日出勤よ……」
大変だな……という目線を送ると、ガブリエラは「案外そうでも無いわ」といい笑った。
「あ、そうだわ!せっかくだから今からお茶しない?」
ガブリエラはいつも通っているカフェを親指で指さした。
「ああ、すみません……今買い物帰りなので……あ、今日って何日でしたっけ……最近日数数えるのが億劫で……」
ルキーナ足で地面に胎内にいる赤子のようなマークを描きながら言った。
「6日よ!4月6日!近所のスーパーのたまご特売の日!安いは正義!」
「ありがとうございます……なら8時頃なら空いています。……というか、たまご特売とかどうでもいいんですけど……」
「あら、大切なことよ?たまごがあればなんでも出来る。プリンにオムレツ……スクランブルエッグ!これさえあれば毎日過ごせるわよ」
「じゃあ、8時頃にいつもの場所集合ね!楽しみだわ~!」
ガブリエラは上品さを残しつつ、嬉しそうにクスクスと微笑んだ。
「席はステンドグラスがある西側に座りたいですね……おすすめの赤ワインでじっくり煮込んだ林檎のコンポートも注文したいな……」
「いいね!それなら裏ドアの近くがおすすめだよ!私は蕩ける赤ワインの蜂蜜牛タン煮込みを食べようかしら……」
「あ、そういえばも私の友人も誘っていいですか?」
「ああ、あの子ね!いいわよ!面白いし……」
それからお互いに顔を合わせて「楽しみですね~!」といい笑った。
ガブリエラ=アヴェもレヴァンのスパイだ。
コードネームは『欝金香』
カフェの会話は先日地獄花に報告した暗殺の最終確認だ。ルキーナは、パーティが行われているハッサバード邸に偽造した参加券で入る。
それからガブリエラは得意のハニートラップと掌握術でベットに連れ込み、何もかも無防備になった瞬間に、ヴィーゲンリートが現れ射殺する。
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