はらすめんと

ザボン

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資生商事

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「今日から一緒に働いてもらう武蔵蘭舞さんです。じゃあ自己紹介して」
と三ツ島課長から言われ、
「武蔵蘭舞です。一日でも早く戦力になれるように頑張ります。よろしくお願いします」
無難に挨拶はできた。
「かっこいい名前だね。ではこれからは蘭舞君と呼ぶことにしよう」
と課長が言い、そして
「じゃあ宮前主任、指導よろしく」
そういって課長は自分のデスクに戻っていった。
僕は改めて
「宮前主任、よろしくお願いします」
と挨拶をした。
宮前主任とすこし話をした。
主任は29才なので僕の6才年上で独身だ。かなりのイケメンなので社内でもモテるだろう。

「蘭舞さん、明日の夜って時間ありますか?」
と聞かれた。
前の席の、確か、、
「ええ、大丈夫ですよ。水前寺さん」
と返事をすると、
「あの、蘭舞さんの歓迎会をします」
と言って、課長に報告に行った。歓迎会の幹事を言われてるのだろう。
配属された化粧品部営業3課は課長がいて、宮前主任と僕、田子主任と水前寺さんという組み合わせでチームとなっている。
水前寺さんは僕と同い年だと聞いた。田子主任の年齢はまだ聞いてないが宮前主任と変わらないのではないか?
そして課長を含めて5人で僕の歓迎会を明日してもらうことになった。

資生商事は薬と化粧品を販売する会社で、営業3課は男性用化粧品を商材として販促している。
男性用化粧品担当だからか宮前主任はもちろんだが田子主任、水前寺さんもタイプは違うが美形だ。しかし、化粧をしているわけではない。
直接お客様に買っていただくスタイルではなく、ドラッグストアーやデパート、専門店に当社の男性用化粧品を置いていただくように営業するのが仕事だ。
なので直接イケメンか不細工かは関係ないが、男性用化粧品の売込みをしに来た営業マンが不細工では
「まずは自分で使えよ」
となるかもしれない。
そのため課長以下、世間的に「カッコいい」メンバーが揃えられている。と思う。
それは当然、僕を含めての話だ!

席に戻った水前寺さんが
「今日は予定ありますか?」
と僕に聞いてきた。
特になかったため、歓迎会の前だが、二人で軽く飲みに行くことになった。

「じゃあ、よろしくお願いします」
と言って乾杯した。
すると水前寺さんが
「あの、タメだし敬語やめない?」
と言ってきた。
僕も思っていたが、一応この会社の先輩なので自分からは言い出せなかった。
「そうですか、水前寺さんがそう言うなら・・・おい、マコト、社内のこと教えろよ」
とタメ口で言って、二人で笑った。
「そうそう、僕も水前寺さんって言いにくいなと思ってたんですよ、、いや、思ってたんだ」
ちょっと間違えて言い直した。
彼は周りから“マコト”と呼ばれていた。
 マコトは
「蘭舞がうちの部署に来てくれて良かったよ、しかもタメだし」
と言ってから、
「僕は一浪で新卒入社だから、先輩って言っても3ヶ月なんだ」
と言った。
それなので
「僕は去年の三月に卒業したけど就職決まらなくて、1年3ヶ月バイトしてたんだ」
と僕の情報も話した。
そして気になっていたことを聞いた。
「この会社ってハラスメントの噂あるけど、されたことある?」
すると、急に表情が曇り
「入社初日に話すことではないんだけど、、なーんもない!」
とおどけて言った。
「なんやそれ」
僕は一応つっこんだ。
「僕の上司の田子主任は全くそんなことないし、宮前主任も部下が居なくなってから、よく僕の面倒みてくれる、いい人達だよ!」
と太鼓判を押した。

「宮前主任の部下だった人ってなんで辞めたの?」
と聞くと、
「辞めたんじゃないよ、他部署に引っ張られたんだ」
と聞かされた。
「課長はどんな人なの?」
と聞くと、
「飲み会とか行事の事では話すけど、仕事の事は主任が間にはいるからほとんど話さないな」
と言った。
入社前に聞いた噂は心配することなかったんだ!
そのあと、田子主任は宮前主任と同じ29才で同期だけど結婚していて子供がいる。とか、課長は32才独身で社内女性の間で結構ファンが多い。とか、事務のおばちゃんは40才だがバツイチだとか社内の情報を教えてもらった。
これで明日の歓迎会で地雷を踏まないですむ!
僕は安堵して、
「これから、よろしく!」
と言ってグラスをならした。
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