Daruma

ザボン

文字の大きさ
6 / 20
Daruma

4

しおりを挟む
着いたのは倉庫のような建物で、そこでやっと檻から出された。
しかし高い天井から下りている鎖に両手首を固定された状態だ。
そして「長旅お疲れ様だったね、多胡勇也さん」と声をかけてきたのは、あの弁護士だった!
俺は訳がわからずに「どうなってるんだ?」と呟いた。
「おっと、もう多胡勇也さんじゃあなかった。多胡勇也さんは死刑となって戸籍が抹消されたんだった」そう言って弁護士は書類を見ながら「429号」と言い換えた。
「なんだそれは、まずこれをはずしてくれ」俺は両腕をガシャガシャ言わせて訴えたが、「国籍のない君はただの動物だ、そこらのネズミと等しい。それをわきまえなさい」と言い、更に「ネズミの分際で服着てることが生意気だ」と言って横にいた作業員に何語かはわからない言葉で何やら指示を出した。その作業員はハサミをもって近づいて来て、俺の着ている囚人服を切り裂いて全裸にされた。「いい格好だ」弁護士は満足そうに言って「君たちみたいに親の金でのほほんと暮らしていた大学生は、今までよい思いをしてきたのだからこれからは日本のために自分の体を捧げるんだ」と続けた。
俺はハッと思い出した。
そうだ、こいつは目白台大学の法学部に特別講師もやってる。たしか名前は、、田原だ!
「自分の大学の講師の顔をやっと思い出したのか」田原は少しあきれた顔をしたが「まあ、もうお前はただの動物だ、そんなことどうでもよい」と笑った。

「俺は元々無実だ、こんなの違法だ」と俺は叫んだが田原は笑いながら「知ってるよ、それに関しては君の無実を信じてると、伝えてたつもりだが?」「全部お前が仕組んで、俺たちをハメたのだな、あの二人を殺したのもお前か!」俺は全てを悟ったつもりになった。
田原はケラケラ笑いながら「そんな僕一人でできることではないですよ。しかもあの女性二人はピンピンしてます。ちゃんと社会に貢献している立派な人達だからね」そして俺にたずねた。「法務大臣発行の刑執行命令書、赤くなかったか?」

そして田原は講義のように語り出した。
「元々は極悪非道な死刑囚を、そのまま殺してしまうのは勿体ない、例えば製薬会社は殺してもいい人体が喉から手が出るほどほしいはずだ、と当時の厚生省が考えたんだ。そして死刑執行したことにして生かされて日本の薬学の発展のために、この島に研究所を作ったんだ」
俺はショックだった。一応法学部だ。違法であることは明白だ。
「そして、厚生省と法務省が密約を取り交わした。戦後すぐのことだ。それを知った外務省がこちらにも回せと言い出した。429号、お前は外務省に動物として買われたんだ」俺は厚生省が人体実験として死刑囚を買っていることは(ショックだが)理解できた。外務省が何で人体を欲しがるのだろう?
「厚生労働省が欲しがるのは年齢が異なる男女のサンプル人体だが、外務省が欲しがるのは若くて容姿端麗な男女だ!日本人は世界的に需要が高い」
俺は自分のおかれている立場に気がついた。
「ようやく理解できたようだな。かつては若い美人女性しか要求がなかったが、諸外国の要人に婆さんが増えたことと、LGBTが叫ばれる昨今、若い男性の要求が急に増えたんだ。容姿端麗のな!お前は円滑な輸入のために日本国から東南アジアに贈られる貢ぎ物だ!」
俺の頭の中は「性奴隷」という言葉しか浮かんでこなかった。

「外務省の条件は厳しくて、法務省はなかなか要求に答えられなかった。健康なら誰でもよいと言う厚生労働省の条件で良いわけでもない。なので法務省は警察庁に相談したのだ。縦割り組織の垣根を越えて」そう言うと、少し考え込んでから続けた。
「警察庁は各都道府県警察に要請して、容姿端麗だが日本の社会には特段必要のない人を探して候補を絞った。それで選ばれたのが君たちだ」
(・・・日本、腐ってる!)
俺は自分の人生を奪うこの組織に全力で立ち向かうべきたが、容姿端麗という条件に少しだけ優越感を覚えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

水泳部物語

佐城竜信
BL
タイトルに偽りありであまり水泳部要素の出てこないBLです。

処理中です...