若者たち

ザボン

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第八章◆◆◆須藤

第五十八話

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「ところで」俺は、須藤先輩を見ながら言った。「俺たちの今後について話をしようと思いまして」
「今後と言うと、どう言うことですか?」須藤は聞いてきた。
「須藤先輩は、三年生なのでそろそろ就活じゃないですか。そしてこの寮を出ていく。そのあともこの関係を続けるための話ですよ」
須藤先輩困惑していた。
「まさか卒業して寮を出るまでの辛抱とか思ってた訳ではないですよね?」と斉藤が言うと「まさかそんなハズ」と伸一が笑った。
「須藤先輩が就職したら、寮を出て暮らす事になると思うのですが、遠いと5分以内の約束が守れないと思うんですよ。どうしたもんですかね」と須藤に聞いた。
須藤が黙っていると、伸一が「あ、須藤先輩が寮をでるときは、俺らも一緒に住ませてもらえばいいんだ」とわざとらしく言った。
「そうか、そうなると、就職先はなるべく大学の近くにしてくださいね」と俺はお願いした。
俺は就活の状況も、逐一報告するように指示を出した。


最近、本郷さんはポン太の世話で忙しくしていたので、俺は須藤の事を報告しに行った。
ポン太の散歩にも付き合って、撮影して欲しいとも頼まれていた。
田辺の事は、薬を盗んだことがバレると不味いので内緒にしておいた。
本郷さんは、須藤が俺たちの手の中にあることに、満足していた。
「須藤の部屋のカメラ映像は、俺にも配信しろ」と言われた。
散歩に出るとすぐに前方から警官が二人歩いてくる。
俺はドキドキしたが、すれ違い様に本郷さんは笑顔で会釈した。
 ポン太の散歩は地元警察にも黙認されているようだ。
ポン太は最初は嬉しそうに俺の足元に絡み付いていたが、ほかの犬の散歩とすれ違う度に、その犬とじゃれあっていた。
本郷さんも、普通にその犬の飼い主と世間話をしている。するとポン太はうんちをしてしまい、本郷さんが事もなくかたずけて、ポン太のおしりをふいている。その飼い主さんも「あらあら」といってやさしい眼をしていた。
少し歩くと年配の男性が中型犬を連れてやって来た。
知り合いらしく、また話し出した。
その中型犬は必用にポン太に絡んでいる。
(犬からもポン太は受け入れられたんだな)と考えていると、その中型犬は勃起して、ポン太の後ろに回り、交尾を始めた。
本郷さんは中年の飼主と話し込んでいる。
俺は悩んだが、ポン太も嫌がってないので、そのまま撮影を続けた。
中型犬はポン太の中で射精したらしく、ポン太から離れた。

そんな普通のポン太の散歩風景を撮影した。
「撮影はこんな感じで良いですか?」と確認した。
「あぁ、十分だ」と言い、今回の撮影の意図を話し出した。
「バスケ部でかっこよかった暖人が、こんなに可愛いポン太になるまでの記録映像をつくって欲しい。遍歴というものだ。たぶん暖人はポン太となって完成形だ」
俺は「それはいいですね」といって、快く引き受けた。今までの編集は如何にやらしく、如何に恥ずかしく編集してきたが、遍歴は感動的に仕上げよう。と張り切っていた。
その後、「射精マシンの3連結が成功した」と報告をし、そのときの様子を説明した。「なるほど、ありがとう。いま、もっとすごいものを作ってるから、期待してろ」と言ってニヤついた。内容については「できてからだ」と教えてくれなかった。
俺は本郷さんに、ひとつ案を話した。
「須藤先輩は、目黒台高校ラグビー部のメンバーから信頼があります。親にも、先生にも信頼されてます。シャワールームでは性教育のような事をしてました。ラグビー部の顧問に、泌尿器検査の提案をさせましょう」
本郷さんは驚いていた。「そんな事ができるのか?」俺はしばらく考えて、「本郷さんは本物の泌尿器科医です。嘘にはなりません。泌尿器の検査にあわせて性教育もすることにしましょう。須藤先輩が勧めればみんな希望すると思いますよ」
本郷さんは少し考え、「面白いな」と言った。

さっそく須藤先輩に内容を説明した。
須藤先輩は、
「たぶん俺が提案すればそうなると思う、けど」と、渋々言った。
「パスワードの、二文字目がかかってるんですから、お願いしますよ」と俺が言うと
「はい、絶対実現させます」と真剣に考えだした。

僕は助手として、本郷クリニックのパンフレットをもって、須藤先輩と目黒台高校に行った。「あっ、須藤先生。こんにちはー」「須藤先生、またコーチに来てくださいよ」など声をかけられて、「顧問の先生と話したら部室にも顔出すから」と答えていた。すごい人気だ。
面談室で顧問の先生と会うと「やぁ、須藤くん、久しぶり。たまにはコーチに来てやってくれよ」と、ここでも言われている。
「あ、こちら本郷クリニックで助手をやってる鈴木さんです」と、紹介された。
挨拶とちょっとした話は終わり、「それで今日はどうしたんだ?」と聞かれた。
「私がコーチできてたとき、シャワールームでペニス勃たせてふざけあってたのはご存じですよね?」と言うと、「ああ、誰も嫌がってなくて、楽しそうだったから黙認してたが、それがなにか?」と要領を得ず、顧問の先生は首をかしげながら聞き返した。
「みんなのぺニスを見たんですけど、真性包茎の子が何人もいて、しかもみんな知識がなさすぎで愕然としたんです。最近は中学校で教えないんですかね?」顧問の先生は、うなずきながら聞いていた。興味をもったようだ。「そんな話を後輩にしたら、そいつがバイトしてる喫茶店のオーナーが泌尿器科の先生だから相談してみるって言って、今回本郷クリニックが、地域協力として泌尿器の検査と、そのときに性教育を個別にやってくれると提案があったのです。もちろん希望者に」
顧問の先生は目を輝かせ、「無料でしてくれるのか。それはありがたい、さっそく保護者へのプリントを作ろう」
予定通りの展開である。
日程を決め、希望者を募る事になった。
「準備がありますので、希望者の名簿は4日前までにください」と言って部屋を出て、部室に向かった。
丁度練習が終わり、みんな校庭から引き上げてきた来たところだった。
須藤先輩は、たいした人気で取り囲まれていた。
「あ、須藤先生。こんにちは。シャワー浴びに来たのですか?」と誰かが言って爆笑している。一段落したところで、「今度、ラグビー部で泌尿器検査と性教育があるんだ」と言った。「えーっ、ぺニス触られるの」「恥ずかしーい」「性教育だけ、受けたい」など思い思い話をし出した。
「俺の知ってるお医者さんなんだ。みんな希望してくれよ」そして、「よし、全員揃って受診してくれたら、冬休みにまたコーチしに来てやるよ」と須藤先輩が言うと「マジに?」、「やったー」、「全員希望しろよ」と、盛り上がっていた。

本郷さんと斎藤で考えた、筋書き通りだった。
須藤も指示通り上手く話した。
果たして全員来るだろうか。
須藤に写真と名前の対比表を作らした。これで参加者名簿が来れば、割り振れる。
僕は斎藤に報告し参加者名簿を楽しみに待った。
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