若者たち

ザボン

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第十六章◆◆◆堕落

第百十六話

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秋川顧問と本郷は、料亭で酒を飲みながら楽しそうに話している。席は3人分用意されていた。
「少し予定は変わりましたが、新宿にSMクラブは2店舗開店がようやく実現しましたね」
と本郷が嬉しそうに言った。
裏人だった場所はそのままクラブHの2号店であるクラブAとなった。
クラブHは若手有名人限定で、クラブAは一般と45才以上の有名人とした。Mスタッフは2店舗を往き来させていた。
「裏人の時の教訓を生かし、クラブAでも月曜を20代限定、火木曜を30代以下限定にしたのも、評判よいです」と本郷は報告した。
秋川は「屋敷で鍛えた3人のケツの穴の評判はどうだ?」と聞かれたので、「それぞれにファンがついて、順番待ちになることもしばしばあります。あの3人と仙頭は、指名料を特別に徴収しています」と答え、満足そうだった。
クラブAでは「ケツの穴にひじまで入れさせろ」とか、「俺の糞を食え」など、ムチャなS会員もいるが、「すみません。そのプレイはこちらのドMスタッフが担当します」と別料金で断ることなく対応でき、「何でもやらせてくれるSMクラブ」として全国的に評判になった。更に、(クラブAで 川崎龍聖がいた)とか、(俺は福島宗太を見た)とか、(埴生柚葉にしゃぶられた)など、ネット上で大炎上が続き、会員希望が殺到している。
また、クラブHでは高い頻度でMスタッフの檻に貞操帯をつけた浜崎健太がいることも、芸能界では有名な話だ。
浜崎健太は、ノーマル貞操帯を装着しMスタッフとして生活しているが、芸能活動をするときだけ、電子貞操帯を装着し外出させている。
真面目に貞操帯を着けさせる芸能人仲間を探さなかった代償は、かなり大きいものとなった。
suttojr.もクラブHの会員となり、頻繁に通っている。
海外からも入会希望が殺到した。特に韓流スターの間での評判が凄く、テレビで見る若手俳優や男性グループはほぼ会員となり、クラブHに来たいがために日本メディアへの出演も多くなった。

「暖人に伸一を騙させて動画を撮ってから、ずいぶん長い道のりでしたね、理事長」本郷はしみじみと思い返し言った。
秋川顧問は目白台学園の理事長になっていた。
秋川理事長は「男女平等が叫ばれる今、女子大があって男子大がないことがおかしい」と世論に訴え、目白台大学を男子大とした。また、男子生徒に対する教師の強姦が表沙汰になり、生徒が集まらず経営が成り立たなくなった目黒台高校も目白台大学の付属とし経営統合を行った。そして、新たに目黒台中学校も高校と同じ敷地に開校して一貫教育の体制を整え目白台学園としたのだ。
今後は韓流スターに対抗する芸能コースも設立し、ビジュアルに力をいれていく教育方針を掲げた。
小学5年、6年の間では目黒台中学特進クラスへのお受験が、ステータスとなっていた。
学力だけでなく面談や身体測定もあり、総合的に合否を決めると言う独自のやり方で、全国的に話題になった。
特進クラスは全寮制で、入学できれば中1から増築した松波寮へ入ることとなる。
「中学生のうちから、個々に経過観察を行い、キッチリと育て上げよう」と言う秋川理事長の教育プログラムが始まった。

仲居さんが「お連れのかたがお見えです」と言いながら遅れてきた客を案内して来た。
その男は、ふすまの扉をガラガラと開けながら「お待たせしてすみません」と、少し変わったイントネーションで言った。


(本編 完)


寒さをしのぐため河原の橋の下に段ボールで作った寝床で、古新聞を体に巻き付けている若い男は、何気なくその新聞の記事が目に留まった。(東京湾であがった若い男の死体は、その身元が行方不明だった元株式会社ストの社長、須藤正則と判明した)と書いてあった。須藤先輩の名前が正則だと、はじめて知った。
日付を見ると、裏人倒産から2週間後だった。夏輝は「死ぬという選択もあるな」
流れる川を見つめて考え始めた。

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

「若者たち」をお読みいただきありがとうございました。本編は完結いたしました。引き続き高校時代の本郷のストーリーを描いてみました。
そのあと、「若者たち」のプロローグをちょこっと書きたいと思ってます。
もう少しお付きあいいただければ幸いです!

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