【完結】美貌のオメガは正体を隠す

初詣

１月。

「初詣、時間ずらして元旦の朝に行こう。地域の神社ならそれほど混まないし。」

蜜璃を誘うと、すごく喜んでくれた。

スカイツリーもそうだけど、オメガの蜜璃はアルファの同伴なしには、人混みには行き辛い。

だからはじめから、人が混みそうなイベントは避けてきたらしい。

蜜璃のアパートに迎えに行くと、蜜璃は羽織袴をはいていた。

そう言えば蜜璃の実家も政治家の家だった。
フォーマルは和装洋装最低限は持ってるよな。


やばい、かわいい……。


「俺も和装にしてくればよかったなあ…。」

「ごめん、何着るか言っとけば良かった。」

「ううん、次の楽しみに取っておくよ。さ、いこ。」

指を絡めて手を繋ぎ、神社で二人、手を合わす。

御神籤は二人とも大凶………だったけど、俺は『いつまでも、二人で一緒にいられるように』お願いした。






「これは俺への裏切りだ！俺は責任をとらないからな！」

ホテルの一室では、ベッドの上で氷室が顔色を変えて花梨を責めていた。

花梨はヒートが来るのを隠して誘い、自分で用意した穴の空いた避妊具にすり替え、最中に来たヒートにあてて、中に子種を受けたのだ。


「………ううっ。酷い！お嫁さんにしてくれるって信じていたのに！処女を捧げたのに！」

「俺は最初から一度も交際や結婚を明言してない！」

「私がそういう話しても否定しなかったじゃない！」

「金なら出す。出来てたらおろしてくれ。」

氷室は、金額欄が空欄の小切手を一枚、花梨の前に落とし、去っていった。


「ああっ、やっぱり私には拓海しかいない……。でも拓海は……。」


一人残された花梨は、ぶつぶつと虚ろな目で呟いた。