40 / 82
早く迎えに行きたい
しおりを挟む
6月下旬。
花梨に付きまとわれているのは変わらず。
花梨のお腹は日に日に大きくなる。
今日は病院でこんなふうに言われた、
赤ちゃんはどんなふうに育っていた、
と言われても、なんの感情も沸かない。
エコー写真を見せつけられても、ウザったらしいだけだった。
これが蜜璃なら……俺だって一緒に喜んだだろう。
そっけない俺に、花梨は『男親なんてそんなものよね。』と勝手に解釈して、休みのたびにベビー用品の買い出しに付き合わせる。
国家公務員試験は、一次試験を無事に終えた。
7月頭に発表がある。
合格していたら、官庁訪問。
プライベートで色々ありすぎて、勉強に身が入らなかったが、全て終わって蜜璃を迎えに行く時に、彼に相応しい自分でいたいから頑張った。
蜜璃と近い仕事がしたい。
でも、裁判所の職員や検察庁は近すぎて、蜜璃が仕事をしづらくなったら困るから、法務省を狙っている。
「早く結婚したいなあ。拓海が卒業してから、なんて先過ぎるよお。」
「…………。」
「でもでも、結納は来月だもんネ!」
キャッと腕を取る花梨。
この無邪気さに、仕方ないなあと微笑ましく思っていたのは、もう昔のこと。
無邪気さが、今は怖い。
7月。
勝負の月。
氷室が結納に乗り込むことになっている。
これで、この問題を片付けて、蜜璃のところへ帰るんだ。
「荷物はここでいいかい?」
「斉藤さん、ありがとうございます。すみません、休みなのに。」
「いいんだよ、お腹に赤ちゃんがいるのに、無理しないで。」
俺は、出産に向けて引越をした。
スマホの番号も変えた。
赤ちゃんを産むとなると、余計に拓海とのニアミスを避けたい。
それにベビーカーを考えたら、オートロックまでいかなくても、エレベーターのあるところがいいって。
「最後の実習先はどう?」
「いいところ、配慮してくださって感謝しています。」
斉藤さんは俺のために、働くママたちが多く勤務している弁護士事務所を斡旋してくれた。
俺、きっとうまくやっていく。
ね、海。
お腹の子に語りかける。
花梨に付きまとわれているのは変わらず。
花梨のお腹は日に日に大きくなる。
今日は病院でこんなふうに言われた、
赤ちゃんはどんなふうに育っていた、
と言われても、なんの感情も沸かない。
エコー写真を見せつけられても、ウザったらしいだけだった。
これが蜜璃なら……俺だって一緒に喜んだだろう。
そっけない俺に、花梨は『男親なんてそんなものよね。』と勝手に解釈して、休みのたびにベビー用品の買い出しに付き合わせる。
国家公務員試験は、一次試験を無事に終えた。
7月頭に発表がある。
合格していたら、官庁訪問。
プライベートで色々ありすぎて、勉強に身が入らなかったが、全て終わって蜜璃を迎えに行く時に、彼に相応しい自分でいたいから頑張った。
蜜璃と近い仕事がしたい。
でも、裁判所の職員や検察庁は近すぎて、蜜璃が仕事をしづらくなったら困るから、法務省を狙っている。
「早く結婚したいなあ。拓海が卒業してから、なんて先過ぎるよお。」
「…………。」
「でもでも、結納は来月だもんネ!」
キャッと腕を取る花梨。
この無邪気さに、仕方ないなあと微笑ましく思っていたのは、もう昔のこと。
無邪気さが、今は怖い。
7月。
勝負の月。
氷室が結納に乗り込むことになっている。
これで、この問題を片付けて、蜜璃のところへ帰るんだ。
「荷物はここでいいかい?」
「斉藤さん、ありがとうございます。すみません、休みなのに。」
「いいんだよ、お腹に赤ちゃんがいるのに、無理しないで。」
俺は、出産に向けて引越をした。
スマホの番号も変えた。
赤ちゃんを産むとなると、余計に拓海とのニアミスを避けたい。
それにベビーカーを考えたら、オートロックまでいかなくても、エレベーターのあるところがいいって。
「最後の実習先はどう?」
「いいところ、配慮してくださって感謝しています。」
斉藤さんは俺のために、働くママたちが多く勤務している弁護士事務所を斡旋してくれた。
俺、きっとうまくやっていく。
ね、海。
お腹の子に語りかける。
46
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【ひみつの巣作り】💖書籍化進行中です✨
星井 悠里
BL
第12回BL大賞参加✨
3作品奨励賞を頂いた内のひとつです🥰 💖書籍化進行中です✨
応援ありがとうございました♡
明るく可愛いオメガバです…♡ 学生結婚の夫夫🩵 仲良しです(*´艸`*)
何もかもを張り合ってきた同級生と、運命の番になってしまった元αのΩ。
番になって結婚してからは、αのことが好きだけど、前の名残で素直になれない。
巣作りってやつをしてみたいので、αのいない隙に、やってみることにした。
◇表紙絵:モロツヨシさま「人間(男)メーカー(仮)」
◇ ◇ ◇ ◇
2023/9/9投稿→9/10BLranking15位♡
9/14 12位🥰♡ ベスト10入りありがとうございます💖 9/20 ベスト5入り🥰♡
BL大賞初日6位スタートでした。ありがとうございます☺️
最終結果8位でした🥰 ありがとうございました✨
◇ ◇ ◇ ◇
2024年 またBL大賞参加します。完結できるといいな。よろしくお願いします🩷
初日のrankingは3位でした✨ありがとうございます( ノД`)🩷
2024/11/28 完結しました。
感想など、ありがとうございます。
意地っ張りな元αのΩくんが素直になってく様。可愛がって頂けますように♡
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる